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27.見るに堪えないモノ

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「ダンテからだとぉ…!?」

ダンテからドレスが届き、先程まで上機嫌でポエムでも読んでしまいそうな勢いだったお父様が今は怒りで額に血管を浮き上がらせている。


「貸してみろ!!」

お父様がメイドから乱雑に奪い取った箱を開けると、そこには何とも流行遅れの水色のドレスが入っていた。
怖いもの見たさで、試しに広げてみたがサイズも大きく全く私に似合わない。

ドレスを広げた時に1枚の手紙が落ちる。

メイドのベルが拾い上げ、宛名を見ると同時に「うげぇ…」と声を漏らす。

そこには確かにダンテの筆跡で『親愛なるシャティアへ』と書いてあった。

……。
何を考えているのだろうか…。


「旦那様、お嬢様、見るに堪えない物だと思いますのでよろしければ私がお読みしましょうか…?」

ベルがおずおずと申し出た。
仮にも差出人は伯爵家の令息であるのに、見るに堪えない物と言い切るベル。大好きだ。

確かに見たくもないが、何を考えているか知っておく方が良いかもしれない。

「あぁ、ベル、頼む」
「そうね、お願いするわ」


では、僭越ながら…
と咳払いしてベルが読み上げる。



「『親愛なるシャティアへ

久しぶりだね、元気にしてるかい?
僕は、正直元気では無いよ…。
なぜって?勿論、君に会えないからだよ。

優しい君のことだから、君も僕の事を心配して食事も喉を通らないだろうね。
でもきちんと食べるんだよ??
ただでさえ華奢な君なんだから…。


君に、伝えたい事があるんだ。
君は勘違いをしている。
アリエラには何の感情も抱いていない。
僕は、本当にシャティア、君が好きなんだ。

だから、僕の幸せの為に身を引いてくれたのだと思うけれど、そんな必要は無いんだ。
僕たち遠回りをしてしまったけれど、また共に歩もう。

そして遅くなったけれど、シャティアにドレスを贈るよ。

もうすぐ開催される生誕祭にぜひ着てきてほしい。
僕の瞳の色のスカイブルーのドレス。きっと君に似合うだろうな。

会場で会えるのを楽しみにしているよ



君の愛する ダンテ』 …だ….そうで…す」


あ…。
ベルからベルの魂が抜けていく…。
嫌な役をさせてしまって申し訳ない…。

心配されなくとも食事はキチンと3食摂っているし、何も勘違いはしていないし、私の事を華奢だと言いながらも大きなドレスを贈ってくるし、誰も貴方の事など愛していないし…。

色々と物申したい箇所がありすぎてどこから訂正すれば良いかわからない。


「なっっにを考えているんだあの阿呆は!!!!レヨング伯爵に、2度とシャティアに関わるな、そうでないとレヨング伯爵家との取引を一切拒否し領地に入る事も許さないと手紙を送れ!!そしてこのドレスも送り返せ!!!」

ベルから手紙を奪い取り、それをビリビリに破きながらお父様が叫ぶ。

ハードラー子爵領でしか採れない染料や果実などある上に、我が領地は様々な場所へ移動する際、避けては通れない関所がある。レヨング伯爵領から王宮へ向かう際もこの関所を通らなければならない。

レヨング伯爵もこの事を分かっているはずであるし、こう言えばもう近付いてくる事は無いだろう。


ダンテは頼り甲斐はなくとも、婚約している時はもう少し賢い人だと思っていたが…。


今では、彼と婚約解消できて心の底からホッとするのだった。






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