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21.隣国での1週間
しおりを挟む隣国の視察中毎日、ユーリス様はこの国の事を案内してくれた。
1日目は美味しいケーキ屋へ。
「この紅茶…とっても珍しいですね。凄く香りが良くて美味しいです」
「この茶葉は種さえ手に入ればどんな土地や気候でも育てやすいので、比較的安価で手に入るのです。庶民の間でも人気のようです」
「こんなに美味しいのに、育てやすくて安価だなんて!我が国でも仕事が無くて困っている人に栽培を斡旋できたら…!」
「ふふ、私も同じ事を考えていて、既に種を確保して育て方も伝授して頂きました」
美味しいケーキやお茶を楽しみつつも、茶葉やケーキの材料について夢中で話しあったのだった。
2日目はこの国最大の川へ。
ここでは、我が国でもできる水害対策について何時間も話し合った。
ユーリス様は既に我が国でもできる対策の計画書も作成していて、国に戻ったら早速提案するらしい。
「凄い…!」
計画書を見せて貰って、その壮大な計画に驚く。
「ユーリス様は、私と違って被害を嘆くだけでは無く、こうして実際に行動していらっしゃって尊敬します」
ユーリス様に比べて私は何もできなかった。
「違います。私は貴女に出会うまで、領民の暮らしに目を向けてさえいなかったのです。幼い頃の貴女と出会って領民の事を思いやる姿勢に感銘を受けました。無知な自分が恥ずかしかった。こうして学び、行動できたのは貴女のおかげなのです」
そう言ってユーリス様が私の手を握ってくれたおかげで、自分の無力さが少し救われた気がした。
3日目は市場へ。
「なんて活気溢れる市場なのでしょう…!」
我が国の市場と比べて活気が全く異なる。
店数も多く、値段も随分と安い。
「ここでは、出店料が必要無いのです。ただ、儲けた額の割合に応じて税を納める事になっています」
我が国では決まった額の出店料を毎月払う事になっている。
その為、天候等によって売上が落ち込む時は出店料を払う事が出来なくて潰れてしまう店もある。
「このやり方なら、気軽に商売ができますし、出店する店が多くなればなる程価格競争が生まれて値段も安くなり、客も増え活気が溢れる」
そう言って目を輝かせて語るユーリス様の横顔をそっと見つめる。
彼はきっと自分の国の市場が変わる姿を想像しながら語っているのだろう。
4日目は孤児院へ。
「いらっしゃーい!見て行ってくださいなー!」
子ども達が楽しげな声で呼び込みをしている。
「孤児院で商売…?」
「ここでは不用品を回収して修理したり綺麗にして売っているのです」
我が国の多くの孤児院は貴族からの寄付で成り立っている為、領主によって大きな差がある。こんな風に自分達の力で生きて行く術が有れば更なる可能性が生まれて行くだろう。
「あっ!ユーリス様!」
1人の少年がユーリス様を見つけて嬉しそうな声をあげた。
すると他の子ども達も声をあげ駆け寄ってくる。
「ユーリスさま!この間くれた隣国の絵本、とっても絵が素敵でした!ぼく、隣国の言葉も勉強してるんだー!」
「ユーリスさま!また今度剣を教えてね!」
あっという間に子ども達に囲まれるユーリス様。
彼が子ども達に慕われている事は一目瞭然だ。
何と微笑ましい景色だろうと思いながら微笑ましく見つめていると、1人の女の子と目が合った。
「あれ!?お姫様がいる!もしかしてユーリスさまの恋人!?」
(ど、どうしましょう…!?)
子どもの無邪気な質問に戸惑う私を他所に、ユーリス様が笑顔で答える。
「そうだったら良いのだけれど…。今、恋人になってくださいってお願いしている所なんだ」
ユーリス様がそう言うと女の子達が「キャーッ」と盛り上がる。
その内の1人の5歳くらいの女の子が私に耳打ちした。
「ねぇ、ユーリスさま、とっても優しいよ。それにとってもかっこいいの。だから、おすすめ だよ!」
可愛らしい助言に思わず笑みが溢れてしまうのだった。
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