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17.はい!喜んで!
しおりを挟む「まぁ…!凄い!」
父の隣国への視察についてきたが、先程から感動の連続だ。
この国は、元々独裁政治を行なっていた王国だったが30年ほど前にクーデターにより王国は滅び、民主主義の国となった。
その影響もあり、色々な国の人々の移住も多く様々な国の文化が入り混じる自由な国風だ。
どこを見ても何を食べても新鮮で面白くて、思わずキョロキョロしてしまいそうになる。
「さぁ、目的地に向かおうか」
私の様子に目を細めてお父様が言う。
きっと視察へ連れてきて下さったのは、婚約解消で私が傷付いていると心配してくださったからだろう。驚く程に傷付いていないのだが、その心遣いが嬉しい。
そして視察の目的はこの国の河川だ。
我が国では度々水害が起きている。降水量も川も多くどこの領主も頭を抱えている問題だ。
龍神様の怒りだと考えられ氾濫した川には祈りを捧げたり、お供えをしたりするが水害が減る事は無い。
それに比べ、この国では同じような土地柄であるのに水害の被害が少ない。聞くところによると、水害を防ぐ工夫をしているようだ。
「こちらで川の水の量を調整しています。こうする事で川の氾濫だけではなく日照りの際に起こる水不足にも対応できます」
この土地の領主様の説明を受けながら、画期的な方法に目から鱗が落ちる。我が国では、自然に手を加える事は龍神様の怒りを買うと言って敬遠されていた。
しかしこの方法でたくさんの人が救えるのならば…!
「ふふ、隣国から来たもう1人の貴族様もそのような目をしておられました。ちょうど今日、我が家に来られるのでご紹介しますよ」
そう言って領主様が紹介してくださったのは…
「ハードラー子爵、シャティア嬢。ご無沙汰しておりました」
なんと、ダンテとアリエラの幼馴染であるマテリア伯爵家のユーリス様だった。
ユーリス様はその整った容姿と、文武共に優秀であるという事から令嬢の憧れの存在でとても有名な方である。
ここ2年ほどは隣国へ留学されていて姿を拝見しなかったが、相変わらず整いすぎた容姿はご健在だ。
「おぉ、ユーリス殿もこちらにいらっしゃっていたのですね」
「はい、この国は本当に学ぶ事が多くて気が付けば2年も経っていました。特にこの水害対策は私も興味深く何度もここで学ばせて貰っていたのです」
ユーリス様のお父様であるマテリア伯爵が、お父様と同じ趣味をお持ちで、父は何度もマテリア伯爵家に行っていた。
その為お父様はユーリス様とも顔馴染みなのだ。
私も数回父と一緒にマテリア伯爵家へ行ったことがあり、幼い頃はユーリス様と一緒に遊んだ事もある。
「あぁ、本当にご立派になられて。ユーリス殿のような青年がシャティアと結婚してくれたらどれだけ嬉しいか…」
「おっお父様…!」
しんみりとそう呟くお父様を慌てて止める。
「えっ…?」
ほ、ほらユーリス様が引いて……
「ハードラー子爵!それはどういう事ですか!?シャティア嬢はダンテと婚約していたのでは!?何かあったのですか!?」
いるかと思ったら…
何だかユーリス様が前のめりになってお父様に迫っている。
「ユーリス殿…その男の名前は出さないでくれたまえ…かくかくしかじか…というわけであんな男、もう婚約者でも何でもない!!」
お父様は怒りからか口早に一通り説明をして肩を上下させている。
あぁ、こんなとばっちりを受けてユーリス様がお気の毒……と思ったら…
「なんという事だろう…!という事はシャティア嬢には今婚約者がいないという事ですね!!それならば!私が立候補させて頂いても良いですか!?」
ユーリス様が目を輝かせてまさかの提案をしてきた。
えっ…えーーーーーーーーっ!?
ちょっと待って色々と頭がついていかない…
私が1人混乱していると…
「はい!喜んで!!」
お父様が即答で返事をした。
効果音は"キリッ"だ。
お父様ーーーーーー!!それは私のセリフ!!
いや、そもそも婚約解消したのは昨日の話で……
あぁダメだ…
頭の処理能力がついていかない……
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