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7.僕の素敵な婚約者(ダンテ視点)

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僕、ダンテ・レヨングとユーリスとアリエラの3人は幼馴染だ。


同じ伯爵家で領地も近い事、親達がとても仲の良い事から、僕たち3人は兄妹のように育てられた。


物心つかない頃は、純粋に3人で過ごす事がとても楽しかった。


しかし、10歳を越えたあたりからユーリスと比べられる事が癪に触るようになってきた。
ユーリスは成長するにつれて同じ男の僕から見ても綺麗な顔立ちに成長し、勉学、武術にも秀でていると周りから一目置かれるようになった。

それに比べて僕には何も才能は無く、極々平凡だった。顔立ちは褒められる事が多く、3人でいると伯爵家の3宝石だなんて揶揄される事もあったが、周りの大人たちに、

「ユーリス様は類い稀なる神童なのにあとの2人は…」
「宝石と言われてるけどユーリス様がダイヤモンドとすればダンテ様はガラス玉ね」


なんて言われている事を知っていた。


アリエラも顔だけは物凄く可愛いものの、ホンットーニ伯爵家の7人兄妹の末っ子で、唯一の待望の女児だったのでそれはそれは甘やかされて育ち、淑女の教育も疎かに我儘に育っていった。


アリエラがユーリスの事を好きな事は誰が見ても明らかだった。いつも後をついて回り、甘い声で擦り寄っていた。


ユーリスの父は、息子が類い稀なる才能の持ち主だと分かり、ユーリスを自分の仕事に連れ回すようになり、そのままユーリスは隣国へ留学へ行き僕達3人は会う事もどんどん減っていった。


そうこうしている内に、アリエラは侯爵家のコニール様と。僕はハードラー子爵家のシャティアと婚約を結ぶ事になった。


シャティアと初めて会った時に僕は衝撃を受けた。
世の中にはこんなにも教養があり、所作が綺麗で美しく、更に凛として輝いた女性がいたのかと。
今まで1番身近な女性といえばアリエラだった。アリエラには悪いけれど、全てが雲泥の差だった。


あぁ、この人が僕のお嫁さんになるのかと思うと身震いした。その時の感情は言葉では言い表せない。


そして、学園の入学式で久しぶりにアリエラと会った。

「あら、ダンテ。お久しぶり!ユーリスは隣国に行っちゃって一緒に学園に通えないなんて悲しいわ」

アリエラにも婚約者がいるのに、まだユーリスに執着してるなんて相変わらずな女だ。


「アリエラ、婚約者がいるのだからあまりそういう事を言っちゃ駄目だろ?」

「え~私の婚約者、なんだかパッとしないし~。ダンテも婚約したんでしょ?どうせ、大した女じゃ無いでしょ」

いくら甘やかされて育ったとはいえ、伯爵令嬢としてもう少しマシな教育はされなかったのか…。
こんな女にシャティアを馬鹿にされるのは非常に腹が立つ。


「アリエラ、幼馴染とはいえシャティアの事を悪く言うのはやめてくれ。彼女は美人で気品があって教養深くて…素晴らしい人だよ」


(君とは違ってね)
と、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ自分が偉いと思う。


「はっ⁉︎ダンテがそんな事言うの⁉︎私の事ずっと追いかけてきていた癖に」


「はぁ⁉︎誰が…」

聞き捨てならない言葉が出てきたので反論しようと声を荒げると、後ろからある人に声をかけられた。


「ダンテ様、ごきげんよう。あら、そちらの方は…」

シャティアだった。


「あ、あぁシャティア!ちょうど良かった。紹介しよう。こちら僕の幼馴染でホンットーニ伯爵令嬢のアリエラだ」


「ダンテ様の幼馴染の方なのですね。私、ハードラー子爵家のシャティアと申します」

そう言って頭をわずかに下げる。シャティアの綺麗な蜂蜜色の髪が揺れるその横顔に思わず見惚れてしまう。
だから気付かなかった。


「へぇ~…貴女がダンテの婚約者…」


そう言ってアリエラがシャティアを値踏みするように上から下まで見ている事に。




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