上 下
5 / 35

5.そのような関係

しおりを挟む


一日の授業が終わり、帰る準備をする。
お昼にあのような事があった為、あまりダンテに会いたく無い。


(まぁ…でも一度ダンテ様に報告と確認をしなければならないわね。アリエラ様が言っている事はきっと真実では無いだろうけれど…) 


「シャティア!」


そんな事を考えていると、今日も教室まで迎えに来たダンテに名前を呼ばれる。
しかし。その声は怒気を含んだ声色だ。

「ちょっとこっちに来るんだ」

そう言われ、半ば強引に手を引かれ教室の外へ連れて行かれる。

(…?何…?怒りたいのはこちらですが…)


連れ出された教室の外にいたのは…。
涙を拭う素振りをしているアリエラ様だった。


(…うん、とても嫌な予感がする)


私の今までの人生の経験上、悪い予感程見事的中するものだ。


涙を拭う素振りをしているアリエラ様を庇うように立つダンテ。


「シャティア!君には失望したよ!今日の昼、僕が席を立った後、アリエラを虐めたようだね。君はもっと聡明な女性だと思っていた」

「はぁ…?」

はっ!!いけない!淑女らしからぬ間の抜けた声を発してしまった。
しかし、このようなトンデモナイ事を言われたらきっとこの国1番の神官様ですらこのような声を発してしまうに違いない。
それでも…。今後気をつけなければ。


「ダンテ…やめてあげて…!シャティア様もダンテが私に夢中で嫉妬してしまっただけなの…!ごめんなさい、シャティア様…!でも、皆の前でダンテに近付くななんて罵るのは淑女としてあるまじき行為だと思うわ…!」


「…はぁ??」


シャティア様の更にトンデモな発言に先程の戒めは秒で破られた。



「ん?僕がアリエラに夢中…?いやそれは置いておいて…。シャティア。君は醜い嫉妬心から僕の古くからの友を見下したり近付くなと脅したりしたようだな。陰でそのような事をするなんて恥ずかしくは無いのか?」


アリエラ様…いえ、アリエラがダンテの後ろで勝ち誇った顔をしてこちらを見ている。

大方、アリエラは私が彼女の嫌味に大した反応を示さなかった事に苛立ちを覚え、ダンテに嘘八百並べて泣きついたのだろう。



「アリエラ様が貴方に何を言ったのか知りませんが、私はそのような事を言っておりません。それに…」

ダンテとアリエラを真っ直ぐ見据える。
言われたままではこちらも気が済まない。


「恥ずべきなのはあなた方ではありませんか?アリエラ様は婚約者様がいる身にも関わらず、必要以上に男性と親しくし、ダンテ様はそれを咎める事もせずさらには婚約者である私に事実も確認せずあらぬ疑いをかけるなんて…言語道断では?私の方こそ失望しましたわ」

私が淡々と述べると、ダンテの顔がどんどん赤くなっていく。

「なっ…!僕とアリエラはそのような関係では…」

「あら、私には以前から関係にしか見えませんし、アリエラ様からはお二人は関係と聞いていますが」


「ぼ、僕とアリエラは幼馴染で、ただの友人だ!」


ダンテが叫ぶと、周りからヒソヒソ声が飛び交う。


「え…?あんなにもシャティア様を差し置いてイチャイチャしていたのにただの友人だって…?絶対できてると思っていた~」
「私、いつもシャティア様が不憫だと思っていましたの…」
「そもそもこんな人の目につく所で婚約者を断罪しようなんて信じられないわ…」

周りからのヒソヒソと話される内容に、さらにダンテの顔が赤くなっていく。


「なっなっ!今日はこれで失礼する!!」

「あっ!ちょっと待ってダンテェ~!」

分が悪いと気がついたのかダンテは周りに集まった人だかりをかき分け去って行く。


アリエラはその後を追いかけていくのだった。














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました

紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。 だがそれは過去の話。 今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。 ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。 タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

私は既に結婚していますけど

杉本凪咲
恋愛
パーティー会場で婚約破棄を告げられた私。 彼の隣には、美しい女性が立っていた。 しかし私は困惑を露わにして、淡々と言う。 「私は既に結婚していますけど」

愛されたのは私の妹

杉本凪咲
恋愛
そうですか、離婚ですか。 そんなに妹のことが大好きなんですね。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

婚約者は幼馴染みを選ぶようです。

香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。 結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。 ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。 空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。 ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。 ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。

処理中です...