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3.とんだ罰ゲーム
しおりを挟む帰りの馬車でも相変わらず、ダンテとアリエラ様は2人にしか分らないような会話を続けたのだった。
次の日。
「シャティア!昨日はごめん!アリエラが勝手をして…」
昼食の時間、顔を合わせるとすぐに顔の前で手を合わせて申し訳無さそうに謝るダンテ。
「いいえ、昨日の件は結構です。けれども…。やはり婚約者以外の女性と親しくされると良からぬ噂が立ったりしますので、ダンテ様も気をつけた方が良いかと…」
「そ、そうだな。シャティアも僕がアリエラと親しくしていると嫉妬してしまうからな」
当たり前の事を指摘される事は恥ずべき事だと私は思う。思うのだが。
なぜかダンテは指摘された事に悪い気はしていない様子だ。
何と返答すべきか悩み、いっその事話題を変えようと次の言葉を発しようとした時。
「え?えぇ…あぁそう言えば…」
「ダンテェ~!!」
この声は……
嫌な予感がしつつ声の方を振り返る。
やはりそこには満面の笑みを浮かべたアリエラ様が立っていた…。
後ろから、アリエラ様の使用人が昼食を持って追って来ている。
(また…?い、いえでもさすがにたった今ダンテ様には苦言を呈したところ。きっときちんと断ってくれるはず…)
しかし。
そんな淡い期待はすぐに裏切られてしまう。
「ダンテ!良かったわ!私もちょうど昼食を頂こうと思っていたの。一緒にいただいても良いわよね??」
そう言って当たり前のようにダンテの隣に座り、使用人に目配せをして昼食を並べさせている。
「あ、あぁ!大勢で食べる方が美味しいしな!なぁ、シャティア??」
(えっ⁉︎)
ダンテが昨日の事を謝罪したのはいつの話だっただろうか。自分の記憶を疑いたくなる。
「ほら、ダンテもこのチキン好きでしょ?あ、大丈夫よ、マスタードは抜いて貰ったわ。ダンテったら昔から生野菜と辛い物は苦手なんだから。はい、あーん」
「そ、それは昔の話でっ…」
と言いながらも、目の前で自分の婚約者が別の女性に食べさせて貰うというよく分からない場面を見せつけられる。
ん??
なんなんだこの茶番劇は……
(よし、さっさと退散させて頂こう)
と思ったが、今日のメニューは我が子爵家のシェフが腕によりをかけて作ったスペシャルメニュー。急いで食べるのは勿体無い。
そんな事を考えていると、ダンテに1人の男生徒が声をかけてきた。
「おーいダンテ!教授が君の事を探していたぞ!急ぎの用事で、何でも前回のテストが…………」
「なっなに、それは行かなくては!!すまないが僕は行ってくる!シャティア、アリエラはゆっくりしていってくれ!」
そう言ってダンテは急ぎ足で去っていってしまった。
残されたのは私と、アリエラ様と、美味しそうな昼食だけ。
な ん だ この罰ゲームは……!
私も今すぐにでも立ち去りたいが、食事中に立つ行為はいけない事だと両親に厳しく言われて育った私には到底できない…!
そう思っていると。
「ねぇシャティア様。ダンテって顔は良いわよねぇ」
「そうですわね、整った顔立ちだと…」
先程までの甘えた声とは違った少し低い声でアリエラ様が話しかけてきた。
顔はって失礼だと思うけれど…。ここはスルーしておくのが無難だ。
しかし、なんて事だ。
今日に限って、週末特別メニュー我が子爵家自慢のフルコースの日だ…。
さっさと美味しくいただき、退散することが最良であると判断した。
けれど…
アリエラ様は不穏な笑みを浮かべる。
昼食を邪魔されずに美味しく食べたい私と、
なぜかマウントを取りたい?アリエラ様の戦いの火蓋が落とされたのだった…
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