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2.嫌悪感

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「シャティア!」

一日の授業が終わり帰る準備をしていると、教室の入り口からダンテが笑顔で私の名を呼んだ。


「ダンテ様」

基本的に、婚約者がいる令嬢は婚約者が家まで送り届ける事が多い。私達も例外ではなく、今日も馬車乗り場まで2人並んで歩く。


「シャティアは凄いな!前回の試験もまた学年で1番だったんだって?」

「そんな…得意分野からの出題だっただけですので…」


こうして2人で何気無い話をする時間は、政略結婚とはいえ、良い関係を築く為に大切な時間だ。


「シャティア、お手をどうぞ」

「ありがとう」

ダンテの手を取り馬車に乗り込もうとした。


が…。



「お昼ぶりですわね!シャティア様!」

「ア…アリエラ様…」


なんと信じられない事に、既にアリエラ様がダンテの馬車に乗っていた。

「アリエラ!?なぜ君が馬車に乗っているんだい??」

ダンテも知らなかったようで驚き、御者の方を見る。
すると御者がしどろもどろに答える。

「あ、あのダンテ様…。アリエラ様がダンテ様とお約束しているとおっしゃるので乗せなさいとおっしゃって…」

この様子を見ると、アリエラ様に半ば無理やり乗り込まれたのだろう。
お気の毒に……。


「だって…お友達は皆婚約者に送って貰っているのに私だけ1人で帰るなんて…寂しいんだもの!ね、良いでしょう?ダンテ…」

そう言ってダンテをうるうると見つめるアリエラ様は可愛らしく、いかにも男性が好きそうな女性だ。


確かにアリエラ様の婚約者のコニール様は卒業され学園にはいない。
しかし、年の離れた婚約者を持つ方、領地が離れているなどの理由で婚約者に送っていただく事ができない方はたくさんいる。

「いやぁ…えっと…」

ダンテは困った様子でチラリチラリと私の方を見ながら返答に困っている。

(ま…まさか助け舟を出せと…⁉︎)

自分の幼馴染なのだから自分で何とかしてもらいたいものだが、このような人通りの多い所で揉めているのは外聞が悪い。

ふぅ…
と小さくため息をつき、なるべく穏やかな声でアリエラ様に語りかける。

「アリエラ様、幼馴染とはいえ婚約者がいる男性の馬車に許可無く乗られる事は少しいかがな事かと…」


私が婚約者に蔑ろにされているという噂が出回ってしまうと、我が家にも迷惑をかけてしまう。
いや、もう十分今まで散々に蔑ろにされているのだが…。


「そっそんな…!そんな冷たい事を言うなんて…酷い!シャティア様は私とダンテの仲を疑っているのですか?シャティア様は嫉妬からそんな事を言うのね!?私、大切な幼馴染の婚約者様と仲良くなりたいだけなのに…!」

うぅっと出てもいない涙を拭いながら用意していたかのようなセリフを吐くアリエラ様。



「そ、そうだな!アリエラはシャティアと仲良くしたいだけなんだ…。シャティア…良いよな…?」


……。
なぜ私が反対している事になっているのだろうか…。
私が、ダンテとアリエラ様に嫉妬??
確かにダンテとは婚約者であって、政略結婚だが良い関係を築いていく事ができればと思ってはいるが…。


嫉妬……?


いや、この2人に抱いている感情は嫉妬なんかでは無く。


(嫌悪感だわ。)


すっかり悪者を見る目の2人に気付かれないように小さくため息をつき、笑顔で答える。


「…そんな、私が決める事ではありませんわ」


そう言ってダンテの馬車に乗り込み、アリエラ様の迎えに座る。


そしてダンテも馬車に乗り込み。


なぜか婚約者である私ではなく、アリエラ様の隣に座るのだった。







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