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11.似たもの親子

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「な、何だこの紙は…?」

「見えないの?離婚届よ」

しっかりと自分の名前は記入してきた。
あとはカルロの名前を記入するだけだ。

「いや、それは分かる、それは分かるんだが…なんでこれがここに?」

「分からないの?貴方とは…離婚だと言っているの」

「な!!どういう事だ!?正直に話したら考えるって言っただろ!?騙したのか!?」

「考えたわ。考えた結果が離婚よ。早くここに名前を書いて。これ以上私を失望させないで欲しい。そもそも貴方は正直に話していないわ。私に対する謝罪もね」

自分でも、これ程冷たい目で人を見る事ができたのかと驚く。
カルロは私が本気な事をやっと理解し、自分が謝罪の言葉を述べていない事に気付いたようだ。

突然膝をついた。

「そ、そのフルール!悪かった!この通りだ!まさかフルールが離婚を考えるなんて思っていなかったんだ!どうか離婚はやめてくれ!」

ろくに仕事もせず、噓も露呈し、極めつけに不倫相手との情事を目撃されてなぜ離婚されないと思っているのか…。
確かに私に離婚されたら困るのはカルロだろう。お金も仕事も無く、今のような自由気ままな生き方はできなくなる。

「もう、遅いわ。貴方の謝罪に価値を感じないわ」

「嘘だろ…?フルールは俺を愛してる。そうだろ?あ、なるほど。ヤキモチ妬いているのか?拗ねるなよ…コイツとは遊びだ!ただの性欲の掃け口だ。機嫌を直してくれよフルールぅ…」

「愛していた時はあったかもしれないけれど…今は、私を私の仕事を、そして女性を馬鹿にする貴方を心から軽蔑しているわ!!分かったら大人しくこれに貴方の名前を記入して!でないと、不倫の慰謝料を請求するわ!」

慰謝料の言葉にビクッと肩を震わせた。

「わ…わかったよ…1度、1度離婚しよう…。その代わりフルールの機嫌が直ったらまた…結婚しよう!!」

………ナンデスッテ…?
突然夫が異国語を話し始めたのかと思い自分の耳を疑う。
機嫌が直ったら…復縁…?
『そんな事あるわけ無いでしょう!』と叫びたくなるが、これを逃せば離婚できそうにない…。

私が無言でペンを渡すと、渋々離婚届にサインをした。
離婚届を受け取り、しっかりと確認する。
そして、義両親の方へ向き直る。

「というわけで、私達離婚しますのでこれからは他人となりますが…。今までお世話になりました」

少しの皮肉を込めて最後の挨拶をすると…。

「う、浮気くらいで騒ぐなんてみっともないわっ!男なんて浮気する生き物よ!それを理由に離婚だなんて…貴女は妻失格だわ!そうよ!他人はどこへでも行くが良いわ!」

義母がありえない事を言い出した。

「あ、あぁ!そうだな、そうかもしれないな…」

義父は目が泳ぎながらも同調する。


あぁ、そういう事を言うのね…
今まで仮にも義両親だったから、これは無かったことにしようと思ったのだけれど…。

「そうですね、失格ですし他人です。他人ですからお二人に情けをかける必要も無いですよね?お義父様が事業を起こすと言ってお二人に貸した500万ドラーと、お義母様が新しいキッチンにしたいと言って貸した200万ドラー、計700万ドラー耳を揃えて1ヶ月以内に返してくださいね?」

「なっ!あれは貰ったもので…!」

「いいえ、借用書もありますから。踏み倒すようならこちらもツテはいくらでもありますから覚悟はしておいてくださいね」

そうニッコリと微笑むと、二人は膝から崩れ落ちた。


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