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7.では、義両親もどうぞ。
しおりを挟むメリッサさんからの驚きの提案から3日が経ち、ついにその日がやってきた。
正午にお店の扉にCLOSEの看板を掛けようと扉を開けると
「わっ」
「きゃっ!」
扉の目の前にエーリク様が立っていて思わず声をあげてしまった。
エーリク様はたった今ノックをしようとしたようで、左手は拳を握って胸の高さまであがっている。
「エーリク様っ申し訳ございません。たった今CLOSEの看板を掛けようと扉を開いた所だったのです」
「私も、ちょうど今ノックをしようと思った所で急に扉が引かれたから宙をノックしてしまいました」
そう言って二人で笑い合う。
今から夫の不倫現場に乗り込むというのに、自分から笑顔が出るなんて信じられない。これもエーリク様のおかげだろう。
「少し早いかと思ったのだけど、フルールさんが先に一人で行ってしまったらどうしようと思ってソワソワしてしまい早く来てしまいました」
「まぁ、ありがとうございます。でも、今から1件先に野暮用を済ませなければいけないのですが…」
義両親の元へ行かなければならない。
そして最後の援助金を渡す。これが最後だとも伝えなければならない。
「良ければお供しますよ。いえ、もう来てしまったのでお供させてください。仕事柄、人のお供は得意なのです」
そう言って自分の胸を叩き微笑むエーリク様はとても眩しい。
「ありがとうございます。では、行きましょうか」
「はい!」
あ、大事な物を持っていかければ。
出る前に、一枚の記入済みの紙を丁寧に折って懐に入れた。
店に鍵をかけて、義両親の家へ向かう。
エーリク様は大柄でオーラもあり、街を歩いていたら目立つ存在だ。
要らぬ噂が立たないようにと隣を歩かず、少し斜め後ろからついて来てくださる。
それにも関わらず、皆が私達の為にスッと道を開ける。
エーリク様は凄いのね…
さすが、王家御用達の用心棒だ。
そして義両親の家に着いた。
「こんにちは、お義母様お義父様」
「やあ!フルール、いつもありがとうねぇ!」
部屋へ入ると、義父母が嬉しそうに手を出して近付いてくる。
お金を持ってきた時は、義父母はとても上機嫌だ。
しかし…今日は言わなければならない。
「いえ…しかし、お金を持ってくるのは今日で最後となるかもしれません」
お金の入った封筒を手渡しながらそう告げると、義両親の顔が一瞬で曇る。
「えっ…?そんな事カルロから聞いてないぞ」
「はい。まだカルロには言ってませんが…私、カルロと離婚しようと思っています」
「なっ!!なんだと!?どういう事だ!!?」
義父が声を荒げる。
「その、とても言いにくいのですがカルロが浮気していて、浮気相手に離婚しろとせがまれているのです。店の商品も勝手に渡しているようですし、仕事中にも逢瀬を重ねているようで、私はこれ以上やっていけません」
「そんな…信じれないわ。カルロは何と言っているの?」
「カルロとはこれから話そうと思っています」
私がそう言うと、義母は少しホッとしたような表情をした。
「…カルロは浮気したとは言ってないのね?じゃあ、それは貴女の勘違いよ!その押しかけてきた女が嘘を言ってるのに間違い無いわ!もう驚かせないでちょうだい!!夫を信じられないだなんて恥ずかしい事よ!」
義父もそうだそうだと頷いている。
やはり、予想通りだ。
義両親は我が子である息子が1番可愛いのだ。
この二人も縁あって義理とはいえ親子になった人達。
あまりこの手は使いたくなかったが…。
「では…お義父様とお義母様も…カルロ様の元へ確かめに行きますか…?」
「「へ??」」
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