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1.不倫相手の突撃

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「立場をわきまえずいつまでここに居座るつもり!?早く彼を解放してあげて!」



私が店番をしていると、突然店の扉が開き一人の女性が私の前につかつかとやってきてそう言い放った。



彼とは…?私の夫の事かしら。
居座るつもり…?どういう意味でしょうか?
ここは私の店ですけども…?


ここは祖母から私が譲り受けたブティックだ。
ありがたい事に、王家の方々も御用達の誇れる店だと自負している。


「彼とは?私の夫カルロの事かしら?そして貴女は一体どなたでしょうか?」

私が息まく彼女にそう尋ねると、待ってましたと言わんばかりに答える。

「ふんっ!私はメリッサよ!夫ねえ……確かに今はアナタの夫だけれど、すぐに私の夫となるのよ!」

メリッサと名乗る彼女は、金色のウェーブの髪の毛を揺らした可愛らしい風貌で何よりも出るとこがしっかり出ている。歳は18くらいだろうか。


「メリッサさんね。私はフルールと申します。あら、メリッサさんうちのお洋服を着てくださっているのですね。ありがとうございます」


そう言って軽く頭を下げると、メリッサさんは怪訝な顔をする。


「あら、貴女随分余裕ぶっているのね!カルロ様の言う通り本当に嫌な女ね!カルロ様も愛想を尽かすハズだわ」


「あら、私の事は何と聞いているのでしょう?」

陰口とは頂けない。

「あまりにもしつこく結婚を迫ってくるからしょうがなく結婚したのに、店でも座っているだけで何も働かないし、家の事も何もしない、夫を立てようともせず可愛げもない…他にも色々貴女の悪評は聞いているわ!」

「そうですか…メリッサさんは随分夫と親しいのね?」

酷い言われようだ。
しつこく結婚を迫ったのはカルロだったし、働かないのはカルロ。家の事をしているのは使用人だが、そこまで言われているだなんて。

「ええ、ええそうよ!カルロ様は会えばいつも愛の言葉を囁いてくださるわ!可愛げの無い妻を早く追い出して私と結婚したいって!何度も言ってるのに妻が泣き喚いて話もできないってね!」

「そう、カルロは私と別れて貴女と結婚したいと言っているのね」


「その通りよ!まぁ…同じ女として貴女の考える事も分かるわ。こんな高級で素敵なお店を経営してる夫だなんて誰でも憧れるわよね…!でも…あまりみっともなくしがみついているのも惨めよ?早く出て行った方が良いわ!」


夫が経営しているお店ねぇ…。


「そう…。でも…私、夫が本当にそんな事を言うなんて信じられないわ…。夫が本当に貴女と親密な仲で貴女を愛しているという事が分かったら潔く身を引きます…」

私がそう言うと、メリッサさんの目が輝く。

「本当!?フルールさんは意外と良い人なのね!正直に言うとカルロ様が言うフルールさんのイメージって凄く汚いオバサンのイメージだったけど、思ってるよりずっと綺麗で素敵だわ!カルロ様と私が恋人の証拠を持ってこれば良いのね!?」


「そうね、貴方達が愛し合っている証拠を目の当たりにしたら、諦めがつくわ」


「ありがとう!じゃあまた数日後に来るわ!」


そう言って笑顔で出ていくメリッサさんにこちらも笑顔で手を振るのだった。




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