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6.男運

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「ん?何だか怯えた様子で出て行ったな、あの男。体調でも悪いのか?」

天然なのかマイクさんが首を傾げる。

「ふふっ、マイク。グッジョブよ。貴方の顔を見て恐れ慄いて鼠が逃げて行ったわ」

フルールさんが笑って親指を立てると、マイクさんはショックを受けたようだ。

「えっ!?えぇっ!?そ、そんなに俺は怖い顔してますかねぇ…」

店に置いてある鏡を覗き込んで自分の顔を触りながら確認している。
なんだろう…この人可愛い…。

はっ!!!それどころでは無くて…!!

「フルールさん…。本当にごめんなさい…!」

急いでフルールさんに謝り頭を下げる。

アルベルトは、私とフルールさんが歩いている所を見てフルールさんに目をつけてしまった。
私の男の見る目が無いせいで変な男とフルールさんを関わらせてしまった。

「実はさっきの男は、恥ずかしながら私の元恋人なんです。以前私がフルールさんと2人でいる所を見てフルールさんが運命の人だとか言い出して…頭がおかしい奴なんです…」

「さっきの男が私の運命の人ですって?確かにそれは頭がおかしい奴だわ。エリスも大変ね」

とんでもない迷惑をかけられているのにも関わらず、怒るどころか私の事を心配してくれるフルールさんは控えめに言って女神だ。

「大丈夫よエリス。貴女のせいじゃ無いわ。私も大概男運が無いのよ。もう前の夫なんてほんっっっっとうに最低最悪の男で…っと…。この話を始めたら、小説にすると25話くらいになってしまうわ…」

こんな完璧な女性なのに男運が無いなんて…。
むしろそんな小説があれば一度読んでみたい気もする…。

「でも…」
「まぁ、私も過去に変な男に捕まったからエーリクっていう最高の夫に出会えたんだけどね!エーリクは今仕事で2週間ほどいないけれど、警備も雇っているし私は大丈夫よ」

そう言って微笑むフルールさんはとっても可愛い。
エーリク様とは、フルールさんの旦那様で凄腕の元騎士様だ。何度かお会いしたけれど、それはもう美男美女でお似合いすぎる夫婦だ。



「私よりもエリスの方が心配だわ。そうだわ、マイク。貴方エリスを気にかけてあげるようにして?ちょうどエリスにマイクを紹介しようと思っていたのよ。彼はマイク。ブティックフリージアお抱えの製糸工場の長を任せているの」

…工場長!?
失礼だけども、取り立て屋かギャングのリーダーか…そちらの方にしか見えない…。

「マイクです。エリスさんですね?フルールさんに聞いていますよ。とても素晴らしい作品を作られると。これから共に仕事ができて嬉しいです」

そう言って差し出された手を取り、握手する。
それはそれは逞しい手で、それに加えて強面なのに、不思議と怖くない。むしろ、とても温かい。

「エリスです。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」

「はい、俺が作った糸でエリスさんがレースを作る。楽しみですね!」

そう言ってニカっと太陽のように笑うマイクさんに、不覚にも見惚れていた私の事をフルールさんがニヤニヤして見ていたのを私は気づかなかった。



















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