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Ep.1-2 ブラウバウム樹海
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ゴーレムの形状は人型、獣型、昆虫型、乗物型、道具型などがある。体を構成する主な素材も土、木、ゴム、プラスチック、鉄、合金など形状や用途に応じて様々である。
純白の布から出てきたゴーレムは身の丈一メートルそこそこのスリムな人型で見た限り戦闘タイプというより作業タイプだった。
全身は光沢がある白色で塗装され、ツルッとした肌触りで適度な柔らかさがあるゴム素材、腕は細身だが丸い腕輪が付いた手は少し大きいのが特徴だ。
「かわいい~」
「小さい……」
「二人の要望を形にしてみたぞい」
俺が要望したゴーレムは二、三メートルの人型で見た目がゴツゴツした無骨で強そうな戦闘タイプだった。ちなみに、エミルの要望は比較的小さい人型で感触柔らかくスベスベした作業タイプらしい。
「人型しか俺の要望通ってないよ! もっとデカいの作ってくれよ!」
「私の要望は全部通ってるわよ、かわいぃ~」
エミルは光悦な表情でゴーレムを撫で回していた、くそっ! その表情も可愛い。
「アカデミー卒業したてホヤホヤ小僧にそんな大きいのを動かすのは無理だわい、ゴーレムを使って功を成してきた偉人達も最初は小さなゴーレムから扱い始めておる」
「もー偉人なんてどうでもいいよ……あっ!」
「ルードのバカ……」
しまった、迂闊な発言をしてしまった。じいちゃんはゴーレムの歴史や偉人をとても大切に重んじる人だ。軽はずみなことを言うと歴史の講義が始まってしまう、俺もエミルも小さい時から何百回も同じ話を聞かされていて一言一句覚えてしまっている程だ。
「なんじゃと~そこに直れぃ! ゴーレムを扱う者として先人達の歩んできた歴史を軽んじることは許さんぞ! そもそもゴーレムとは……」
講義モードに入ったじいちゃんは一通りゴーレムの歴史を話さないとスッキリしないらしい。
30分後……
「こうした歴史の成功や失敗を経て今の儂らがおるんじゃよ、わかったか?」
「はぁい」
二人の力無い返事が工房に響いた。しかし、じいちゃんの講義はアカデミーの授業より面白い。特に大戦の英雄ヤーコプ一派の冒険譚を話す時には力が入ってる。
ヤーコプは大戦終結後に自伝や紀行書を出版していて、それがアカデミーの指定教科書にもなっていることから老若男女誰もが彼らの話を知っている。
ただ、じいちゃんはその教科書には載っていないような話も何処から情報を仕入れてきたのか沢山出してくる。だから面白い、ただ長い……。
「それよりルードや光石は集まったかの?」
それよりって……すっかり機嫌が戻ったな、良かった良かった。
光石とは光を吸収し暗くなったり衝撃を与えたりするとぼんやり光る不思議な鉱石のことだ。昔、町の隣に広がるブラウバウム樹海で俺が見つけた。じいちゃんからはその光石の収集を頼まれていた。
「あぁ森の基地に置いてあるよ、もう持ってくるかい?」
「おぉ頼む」
「光石? 基地? 何それ?」
エミルがゴーレムを撫で回しながら聞いてきた。いつまで撫でているんだ、いい加減ゴーレムにちょっと嫉妬を覚える。
樹海は人を迷わし拐うと言われ、樹海の奥地は獰猛な猛獣や精霊の棲家、人が立ち入ってはいけない場所とも言い伝えられている。それ故に子供だけで樹海に入ることは町で禁止されていた。
町では樹海の入り口付近で木こり場として開墾し、伐採と植樹を繰り返して利用しているのと町で災害が起きたときの避難所が設けられているくらいだった。
だから、森の基地については知っているのはじいちゃんしかいない。
「樹海に作った秘密基地で、ただの遊び場だよ」
「へぇ面白そうね、じゃあ私も付いて行くから、その基地でゴーレムを起動させましょうよ」
エミルは目を輝かせながら、長い黒髪をキュッと縛りポニーテールを作って行く気満々のご様子だ。
(ここでゴーレムを起動してから行った方が楽そうなんだけど……)
そう思ったが、口に出してしまうと興が冷めそうだったので言わないことにした。ポニーテール姿も可愛い。
「じゃあ今から行こうか、遅くなってもいけないし」
「気をつけるんじゃよ、あまり樹海の奥地には行かんようにの」
必要最低限の物資をリュックに詰めてエミルが担ぎ、ゴーレム二体は俺が担ぎ樹海へと向かった。
……何故だろう? 重くはない、重くはないのだけれども理不尽感が否めない。
樹海の入り口に着くと俺は小さな袋を取り出した、中には光石がじゃらじゃら入っている。
「あれ、それ言ってた石じゃないの?」
「そうだけどコレは小石だよ、じいちゃんに集めて欲しいと言われたのはもう少し大きいサイズのやつ」
この光石の小石は帰る時の道標に使うもので、行き道の最中に地面にコレを落としておけば、夜になっても帰り道を光で照らしてくれて迷う心配がない。
以前パン屑を使って道標にしていたら、森の鳥たちに全て食べられてしまって見事に迷子になったことがある。
「あ~あの時のことは覚えてるわ。八才くらいの時だったね、夜になっても全然帰ってこないから大人総出でルードを探したけど見つからなくて」
「いや面目ないな……」
「でも、樹海の奥地まで探しに行こうかってなった時に大泣きしながらひょっこり帰ってきたのよね」
あの時の記憶は曖昧で、パン屑が無くなって帰り道が分からず途方に暮れて泣いて樹海を彷徨っていたんだ。
そうしたら、急に目の前が温かい光に包まれて、その光の先に見えた人影に向かって歩いて行ったら、いつの間にか町へ着いていたんだ。
「不思議な体験だったな」
そんな懐かしい昔話を思い出しながら俺達は樹海の中へ入っていった。
いつ来ても樹海は息を呑むほど壮大で厳かな雰囲気を醸し出している。周りを囲う巨大な樹々は樹齢何十年、何百年もしくは何千年と計り知ることができない原生林だ。
爽やかな風が樹々の間を吹き抜け、樹木から運ばれるまだまだ若々しい生木の香りが体を潤してくれる。ボーッとしてるだけでも心が清く満たされていく、そんな場所だった。
だけど、今日はなんだか風が鋭く吹き荒び、樹々が騒々しく揺れているように感じる。
「初めて奥まで来たけど凄いわね、なんかこうグッとくるものを感じるわ」
エミルが感動するのも無理もない、樹海は奥に進むほど壮麗さが増していく。深い森の中にいるのに感じる温かな空気は不安の一切を払拭し、自身を包み守ってくれている感覚さえある。暫く歩くと少し場の開けた泉に出てきた。
一切の雑音もない静寂に包まれた泉は底までハッキリと見える程に澄みきっている。水面は空を覆う樹々の隙間から射し込む陽光で宝石のように輝いており、より一層の神秘的な空間を作り上げている。
俺のお気に入りスポットである。しかし、やっぱりおかしい、いつも泉で休憩している鳥や鹿などの動物達の姿が全然見当たらない。
「ルード! 足!」
「キィキィ」
足下を見ると長い尾が二本ある猿がズボンを引っ張っていた。
「わっ! びっくりした! なんだお前か~」
この猿は樹海に住むニビザルという種類の猿で、黄金色のフサフサな毛並みとピンっと立った耳に二本に分かれた尻尾が特徴だ。滅多に人前に姿を現すことがなく、姿を見ると幸運が訪れると言われている。
何故だか今ズボンを引っ張っている尻尾の先が黒いニビザルに凄い懐かれている。尻尾が黒いからクロニビと名付けて呼んでいて、泉に来るといつも遊び相手をさせられている。
「キィキィ~キッキッ」
いつもの明るくはしゃいだ雰囲気ではなく、ズボンをゆさゆさと引っ張ったり、パシパシ叩いたりしてきて、警告しているように見えた。
「どうしたんだよクロニビ、何か教えてくれているのか? 分かった分かった気をつけるよ」
「キィ~……」
そう言うと、クロニビは木の陰から見ていた仲間達の下へ戻り何処かへ去ってしまった。去り際の心配そうな顔がなんとも気になった。
「今のニビザルよね、いつもあんな感じなの?」
「あぁクロニビって言うんだ、ちょっと変だったな。基地までもう少しだから急ごうか」
泉から基地まではもう目と鼻の先だ。一抹の不安を抱えながら少し足早に基地へ向かうことにした。
基地はとりわけ巨大な樹木の中に作ったものだ。表面にできた大きな亀裂が入り口になっていて、中は大人四、五人が雑魚寝出来る位の空間が広がっている。入口には動物達が入って来れないように扉を設置し間抜きを掛けてある。
「あれっ、ちょっと待って扉が開いてるぞ」
その間抜きが外されているのが遠くから目に入った、間違っても動物達では外せない造りにしてある。とすれば犯人は人間しかあり得ない。
「基地の事はお爺様以外知らないのよね?」
「あぁ……じいちゃんだけだ」
「もしかしたらクロニビはこの事を教えてくれてたんじゃないかしら」
「そうかもな……よし! ちょっと覗いてくる! エミルはゴーレムを見ててくれ」
「えっ、ちょっ危なくない?」
「もう出て行った後かもしれないし、もし危なそうだったら逃げたらいいさ」
心配そうなエミルを残し、恐る恐る息を殺して扉に近付いて行った。エミルの手前カッコ悪い姿を見せたくないが、正直めちゃめちゃ怖い。
(お願いだから誰も居ないでくれ!)
そう心の中で叫んだ儚い願いは叶わず、扉を少し開けて中を覗き込むと蠢く人影があった。もっとよく見てやろうと目を凝らし生唾をごくりと飲み込もうとした瞬間。
「むっ誰だ!」
「うわっ!」ーーゴテン
息を殺して気配を絶っていたつもりが、すぐに見つかってしまった。余りの見つかる速さに驚き、体が後ろに仰け反って尻もちをついてしまった……カッコ悪い。
純白の布から出てきたゴーレムは身の丈一メートルそこそこのスリムな人型で見た限り戦闘タイプというより作業タイプだった。
全身は光沢がある白色で塗装され、ツルッとした肌触りで適度な柔らかさがあるゴム素材、腕は細身だが丸い腕輪が付いた手は少し大きいのが特徴だ。
「かわいい~」
「小さい……」
「二人の要望を形にしてみたぞい」
俺が要望したゴーレムは二、三メートルの人型で見た目がゴツゴツした無骨で強そうな戦闘タイプだった。ちなみに、エミルの要望は比較的小さい人型で感触柔らかくスベスベした作業タイプらしい。
「人型しか俺の要望通ってないよ! もっとデカいの作ってくれよ!」
「私の要望は全部通ってるわよ、かわいぃ~」
エミルは光悦な表情でゴーレムを撫で回していた、くそっ! その表情も可愛い。
「アカデミー卒業したてホヤホヤ小僧にそんな大きいのを動かすのは無理だわい、ゴーレムを使って功を成してきた偉人達も最初は小さなゴーレムから扱い始めておる」
「もー偉人なんてどうでもいいよ……あっ!」
「ルードのバカ……」
しまった、迂闊な発言をしてしまった。じいちゃんはゴーレムの歴史や偉人をとても大切に重んじる人だ。軽はずみなことを言うと歴史の講義が始まってしまう、俺もエミルも小さい時から何百回も同じ話を聞かされていて一言一句覚えてしまっている程だ。
「なんじゃと~そこに直れぃ! ゴーレムを扱う者として先人達の歩んできた歴史を軽んじることは許さんぞ! そもそもゴーレムとは……」
講義モードに入ったじいちゃんは一通りゴーレムの歴史を話さないとスッキリしないらしい。
30分後……
「こうした歴史の成功や失敗を経て今の儂らがおるんじゃよ、わかったか?」
「はぁい」
二人の力無い返事が工房に響いた。しかし、じいちゃんの講義はアカデミーの授業より面白い。特に大戦の英雄ヤーコプ一派の冒険譚を話す時には力が入ってる。
ヤーコプは大戦終結後に自伝や紀行書を出版していて、それがアカデミーの指定教科書にもなっていることから老若男女誰もが彼らの話を知っている。
ただ、じいちゃんはその教科書には載っていないような話も何処から情報を仕入れてきたのか沢山出してくる。だから面白い、ただ長い……。
「それよりルードや光石は集まったかの?」
それよりって……すっかり機嫌が戻ったな、良かった良かった。
光石とは光を吸収し暗くなったり衝撃を与えたりするとぼんやり光る不思議な鉱石のことだ。昔、町の隣に広がるブラウバウム樹海で俺が見つけた。じいちゃんからはその光石の収集を頼まれていた。
「あぁ森の基地に置いてあるよ、もう持ってくるかい?」
「おぉ頼む」
「光石? 基地? 何それ?」
エミルがゴーレムを撫で回しながら聞いてきた。いつまで撫でているんだ、いい加減ゴーレムにちょっと嫉妬を覚える。
樹海は人を迷わし拐うと言われ、樹海の奥地は獰猛な猛獣や精霊の棲家、人が立ち入ってはいけない場所とも言い伝えられている。それ故に子供だけで樹海に入ることは町で禁止されていた。
町では樹海の入り口付近で木こり場として開墾し、伐採と植樹を繰り返して利用しているのと町で災害が起きたときの避難所が設けられているくらいだった。
だから、森の基地については知っているのはじいちゃんしかいない。
「樹海に作った秘密基地で、ただの遊び場だよ」
「へぇ面白そうね、じゃあ私も付いて行くから、その基地でゴーレムを起動させましょうよ」
エミルは目を輝かせながら、長い黒髪をキュッと縛りポニーテールを作って行く気満々のご様子だ。
(ここでゴーレムを起動してから行った方が楽そうなんだけど……)
そう思ったが、口に出してしまうと興が冷めそうだったので言わないことにした。ポニーテール姿も可愛い。
「じゃあ今から行こうか、遅くなってもいけないし」
「気をつけるんじゃよ、あまり樹海の奥地には行かんようにの」
必要最低限の物資をリュックに詰めてエミルが担ぎ、ゴーレム二体は俺が担ぎ樹海へと向かった。
……何故だろう? 重くはない、重くはないのだけれども理不尽感が否めない。
樹海の入り口に着くと俺は小さな袋を取り出した、中には光石がじゃらじゃら入っている。
「あれ、それ言ってた石じゃないの?」
「そうだけどコレは小石だよ、じいちゃんに集めて欲しいと言われたのはもう少し大きいサイズのやつ」
この光石の小石は帰る時の道標に使うもので、行き道の最中に地面にコレを落としておけば、夜になっても帰り道を光で照らしてくれて迷う心配がない。
以前パン屑を使って道標にしていたら、森の鳥たちに全て食べられてしまって見事に迷子になったことがある。
「あ~あの時のことは覚えてるわ。八才くらいの時だったね、夜になっても全然帰ってこないから大人総出でルードを探したけど見つからなくて」
「いや面目ないな……」
「でも、樹海の奥地まで探しに行こうかってなった時に大泣きしながらひょっこり帰ってきたのよね」
あの時の記憶は曖昧で、パン屑が無くなって帰り道が分からず途方に暮れて泣いて樹海を彷徨っていたんだ。
そうしたら、急に目の前が温かい光に包まれて、その光の先に見えた人影に向かって歩いて行ったら、いつの間にか町へ着いていたんだ。
「不思議な体験だったな」
そんな懐かしい昔話を思い出しながら俺達は樹海の中へ入っていった。
いつ来ても樹海は息を呑むほど壮大で厳かな雰囲気を醸し出している。周りを囲う巨大な樹々は樹齢何十年、何百年もしくは何千年と計り知ることができない原生林だ。
爽やかな風が樹々の間を吹き抜け、樹木から運ばれるまだまだ若々しい生木の香りが体を潤してくれる。ボーッとしてるだけでも心が清く満たされていく、そんな場所だった。
だけど、今日はなんだか風が鋭く吹き荒び、樹々が騒々しく揺れているように感じる。
「初めて奥まで来たけど凄いわね、なんかこうグッとくるものを感じるわ」
エミルが感動するのも無理もない、樹海は奥に進むほど壮麗さが増していく。深い森の中にいるのに感じる温かな空気は不安の一切を払拭し、自身を包み守ってくれている感覚さえある。暫く歩くと少し場の開けた泉に出てきた。
一切の雑音もない静寂に包まれた泉は底までハッキリと見える程に澄みきっている。水面は空を覆う樹々の隙間から射し込む陽光で宝石のように輝いており、より一層の神秘的な空間を作り上げている。
俺のお気に入りスポットである。しかし、やっぱりおかしい、いつも泉で休憩している鳥や鹿などの動物達の姿が全然見当たらない。
「ルード! 足!」
「キィキィ」
足下を見ると長い尾が二本ある猿がズボンを引っ張っていた。
「わっ! びっくりした! なんだお前か~」
この猿は樹海に住むニビザルという種類の猿で、黄金色のフサフサな毛並みとピンっと立った耳に二本に分かれた尻尾が特徴だ。滅多に人前に姿を現すことがなく、姿を見ると幸運が訪れると言われている。
何故だか今ズボンを引っ張っている尻尾の先が黒いニビザルに凄い懐かれている。尻尾が黒いからクロニビと名付けて呼んでいて、泉に来るといつも遊び相手をさせられている。
「キィキィ~キッキッ」
いつもの明るくはしゃいだ雰囲気ではなく、ズボンをゆさゆさと引っ張ったり、パシパシ叩いたりしてきて、警告しているように見えた。
「どうしたんだよクロニビ、何か教えてくれているのか? 分かった分かった気をつけるよ」
「キィ~……」
そう言うと、クロニビは木の陰から見ていた仲間達の下へ戻り何処かへ去ってしまった。去り際の心配そうな顔がなんとも気になった。
「今のニビザルよね、いつもあんな感じなの?」
「あぁクロニビって言うんだ、ちょっと変だったな。基地までもう少しだから急ごうか」
泉から基地まではもう目と鼻の先だ。一抹の不安を抱えながら少し足早に基地へ向かうことにした。
基地はとりわけ巨大な樹木の中に作ったものだ。表面にできた大きな亀裂が入り口になっていて、中は大人四、五人が雑魚寝出来る位の空間が広がっている。入口には動物達が入って来れないように扉を設置し間抜きを掛けてある。
「あれっ、ちょっと待って扉が開いてるぞ」
その間抜きが外されているのが遠くから目に入った、間違っても動物達では外せない造りにしてある。とすれば犯人は人間しかあり得ない。
「基地の事はお爺様以外知らないのよね?」
「あぁ……じいちゃんだけだ」
「もしかしたらクロニビはこの事を教えてくれてたんじゃないかしら」
「そうかもな……よし! ちょっと覗いてくる! エミルはゴーレムを見ててくれ」
「えっ、ちょっ危なくない?」
「もう出て行った後かもしれないし、もし危なそうだったら逃げたらいいさ」
心配そうなエミルを残し、恐る恐る息を殺して扉に近付いて行った。エミルの手前カッコ悪い姿を見せたくないが、正直めちゃめちゃ怖い。
(お願いだから誰も居ないでくれ!)
そう心の中で叫んだ儚い願いは叶わず、扉を少し開けて中を覗き込むと蠢く人影があった。もっとよく見てやろうと目を凝らし生唾をごくりと飲み込もうとした瞬間。
「むっ誰だ!」
「うわっ!」ーーゴテン
息を殺して気配を絶っていたつもりが、すぐに見つかってしまった。余りの見つかる速さに驚き、体が後ろに仰け反って尻もちをついてしまった……カッコ悪い。
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