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11 魔術団と騎士団からの護衛
しおりを挟むミュナは総長2人に自分がレンと別の世界から転移して来た話をした。
「・・・と言うことは、文献に残っている偉大なる魔法使いは異世界を渡って来た人物であると・・・」
「まさかゆな嬢がレン殿と同じくこの星の人間で無かったとは・・・」
「この事は文献を読み解くのに大きな手がかりとなるぞ!!ゆっゆな嬢はもしや文字も読めるのでは!?」
「はい、読めますよー」
「まさか私が退官する前にこんな奇跡が訪れるとは!!!私は魔術団辞めてもまだ隠居はせんぞ!!!ゆな嬢、レン殿我らで魔術界に旋風を巻き起こすぞ!!!こっこうしちゃおれん!『旧原始の魔術書』を実家の金庫から持ってこねば!!オフェール、後は任せた!!うちの護衛がもうすぐ来るから其奴と一緒に適当に施設内を案内して制服渡して返してくれたら良いから!!じゃあのっ!!!」
捲し立てる様に騎士団団長に用件を伝えて、どこにそんな元気があったのかと思う程の速さで執務室を去っていった。
「うちの総長に何かありましたか?」
入れ違いに今まで見た事ない総長にヒューヴァーが入って来た。騎士団総長が「夢見る少年に戻っただけだ」で説明を省いてしまった。確かになんと説明して良いか難しい状況ではあった。
『誰か来たぞ』
「誰か来たみたいですけど?」
「あぁ、さっき言ってた魔術団の護衛の者だろう。ヒューヴァー、ドアを開けなさい」
「はっ!!」
ドアを開けると魔術団のローブを身にまとい、深くローブを被り顔が一切見えない人物が立っていた。
「名乗れ」
ヒューヴァーはそのまま部屋に入ろうとした人物を止めた。確かにこのままでは不審人物である。顔も隠して勝手に入ってこようとするのは危険人物であってもおかしくは無い。
「(騎士が牽制する姿がカッコいいのでこんな状況でもときめいてしまうとかダメな奴過ぎる・・・。得体の知れない人のお陰で目の保養!)」
それでも無視して入ってこようとしたのでヒューヴァーが剣を抜いた。しかし怪しい人物が剣に電気を流し弾きミュナの方に向かって来た。
『ーーーガキ、身の程を弁えよ』
「ーーーーーーうぐぅっっ!!」
怪しい人物はレンによってあっという間に床に縫い付けられた上に、指一本も動かせない様に重力魔法で押さえつけられた。このままではこの者を殺すのでは無いかとその場にいた者全員が感じていた。
「レン一応まだ護衛の人かも分かんないから解いてあげてよ」
『この様な無礼なガキが護衛ならば我の星ならばこの部屋に入る前に消しておったぞ』
「もー!分かった、もし護衛か危険人物だったら好きにしていいから!!」
「「えっ」」
騎士団総長とヒューヴァーの声が見事にハモった。
『それならば一瞬だけ解放してやろう』
「ゲホッッ!!!ゲホッ!!!」
圧迫されていた肺に急に酸素を取り入れた事で咳き込む。
「貴様は何者だ。何故名乗らない」
ヒューヴァーが蹲っている怪しい人物に再び剣を向けた。
「ーーーーーー・・・シュロー・・・」
声があまりにも小さく聞き取れず、全員首を傾げる程ある。再びボソボソっと喋って何を言っているのか聞こえない。
「貴様いい加減にしろ!ゆな様この者を地下牢に放り込んで参ります」
「ーーえ・・・えぇっ・・・」
怪しい人物はヒューヴァーが腕を捕まえて立たせようとしても、ヒューヴァーの脚にしがみ付き立ち上がらない。じたばた怪しい人物が抵抗しているとローブが落ち、そこにいたのはボロボロ泣いている童顔の少年だった。
『此奴、極度の内向的性格であるのか?』
「どうなんでしょう・・・」
流石に震えて泣いている少年を牢に入れるのも、レンに任せて消されるのもミュナは忍びなく思いヒューヴァーの脚にしがみついている少年を後ろから抱き締めた。
「ーーーーーーーっっっっっっっ!!!」
ミュナに抱き締められている事に気付いた少年は、わたわたと慌てヒューヴァーの脚から手を離した。なんとかミュナを引き剥がそうと頑張るローブから覗く手は真っ赤である。手以外にも首の後ろや耳ローブから出ている部分は全て真っ赤であった。
しばらくわたわたしていると、静かになり動かなくなった。
『此奴気絶したぞ?なんなのだ??』
「取り敢えずよくわからないのでそこのソファーに寝かせて、我々で施設を回りましょう。」
「そうですね」
少年を寝かせてみんなで移動し、その日は施設を見て回って解散した。
城門の外に出てからは人の姿に戻ったレンと一緒に徒歩で帰る事にした。
『ん?』
レンが立ち止まると空に向かって手を翳し、そして空気を掴む様に握る。
「どうしたの?」
『綿ゴミが飛んでいただけだ』
「飛んでいる綿ゴミ捕まえたんだ?器用だね?」
『造作もない』
「ふふふ♪レンって面白い事たまに言うよね?」
『そうか?ミュナは面白い事は好きか?』
「好きに決まってるでしょ?レンも面白い事好きじゃん」
『そうだな、我は面白い事が好きだ』
会話を弾ませながら2人は帰路についた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
真っ黒く空が濁った地域に大きくそびえ立つ城。この世界の魔王城である。
大広間の一番奥でぶくぶくと肥えた巨体に、成金趣味な貴金属を身に付けた魔王イヴィーレが椅子にふんぞり返りっている。
『おい、一つくらい国を滅ぼした報告は無いのか?先月我らに楯突いた国に制裁は与えておらんのか?誰に任せておったか・・・』
魔王は無駄に大きく豪華な椅子に腰掛け肘掛けに頬杖をつき、誰に任せてあったのかを思い出そうとする。さしたる敵の居ないこの魔王は自身の配下に適当に国を割り当て制圧に当てた為に、全く誰を当てたのかを思い出せない。
『魔王イヴィーレ様、そこを任せていたのは破壊竜ウロムにございマス』
返事をしたのは側に控えていた側近である見目麗しいグレーの髪色の美女・・・に見える邪竜の男である。
『彼奴か、呼び出せ』
『本日楯突いた国に見せしめに行きましたのデ、もう少ししましたら戻って来ると思いマス』
『フハハハハ!!流石に奴も分かっておったか!!』
魔王のいる大広間に比喩でなく本当に飛び込んで来たのは、真っ黒な翼を羽ばたかせた幼女の様な容姿をした悪魔だ。その手には黒い石の玉を持っている。
『魔王様!!大変でございます!!破壊竜ウロムの魔力が先程消失したのを確認致しました!!』
『何っっっっ!!どう言う事だ!!あの国は何か我らに対抗しうる兵器を持っておったから反抗しおったのか!?そんな話聞いておらんぞ!!』
『我らも各国に送った密偵からは何も聞いておりません、何かの間違いでは?』
いつの間にか大広間にいた、全身真っ黒い服で覆われ顔も全く見えない黒子の様な出立ちの者が聞いた。唯一人間でない事が分かるのは頭に被った頭巾から覗いているツノの存在だ。
『アタシもそう思ったさ!!だから数回間を置いて交信したけど全く反応しなかったんだ・・・確実に消されたね。しかもこっちに連絡する間も無くだ。とんでも無い兵器を用意したらしいね』
『常闇の騎士を向かわせろ』
『滅ぼすのですネ。承知しましタ。・・・でしたら私も共に向かいまショウ』
『ーーー虫1匹生かすな』
『お任せくだサイ』
大国を一夜にして滅ぼす力を持った常闇の騎士と、人型を解いて咆哮すれば星の反対側まで空気を揺らす邪竜がミュナとレンがいる国に向かった。
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