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1章 

23 会食の攻防戦

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セフィールとルークはアオとクロが居るので大きい4人部屋に通された。
部屋が綺麗で2人は王都の高級宿屋はきっとこんな感じだろうと、気分が高揚して話を弾ませる。
アオとクロもいつもと全く違う環境に興味がある様で、キョロキョロと見回していた。

埃を浴びていた為、2人はお風呂に入らせて貰った。アオとクロも風呂場でセフィールが汚れを洗い流した。
お風呂に残ったお湯が勿体無かったので、ついでに服もこっそり洗いヒートの魔法で乾かしそれを再び着た。それを聞いたルークは魔道具の蛇口から水を足首が浸かるまで出した後水をヒートの魔法で少し温めて、自分の服を洗っていた。服は洗ったし乾いているが、ちゃっかり用意された服を着ていた。


ーーコンコンコンーー

扉を開けると侍女と思われるエプロンを付けた女性がいた。

 「皆様、夕飯の御支度が整いましたので私について来てくださいませ。」

全く知らない世界に思わず2人は顔を見合わせた。ここまでバタバタして廃ダンジョンに潜ったりしたのにお昼を食べていなかった2人は喜んだが・・・

ーー2人には緊張の会食が始まる。



♢♢♢♢♢♢♢




食堂へ来ると、大きな長いテーブルに美しい壁燭台や綺麗なテーブルクロス、高そうな椅子に上質だろうスプーンやフォークが並んであった。2人は余りにも場違い感に気遅れする。

2人がまごついていると、こちらで出して貰ったのであろうシンプルな服を着て兵士長とゼルも入ってきた。セフィールとルークは『お前らが先に座れよ』という目で後から入って来た2人をジトッとした目で見やる。
しかし、いくら兵士長とは言えここまで上の位の貴族と一緒に食事する事も今まで無く、兵士長とゼルは『お先にどうぞ』っと2人を席へ掌で促す動きをする。4人の戦いが続いている中、領主とその妻と娘と息子それとパドムも一緒に入って来た。


 「はっはっは!!要らぬ気苦労をさせてしまった様だね?楽にすると良い。内輪の食事だからな。」

そう言われてもという微妙な空気が4人の間に流れていたが、それまで空気と化していたアオとクロが自分達に用意された床の受け皿に向かって歩き出してちょこんと座った。

それを見ていた領主の子供達の目がキラキラしている。男の子は父親のズボンを引っ張って「お父さまっお父さまっ!」と何か訴えている。

 「2匹の方が度胸があるとは・・・・!!負けられん!!ゼルっっ!!俺は座るぞっ!!」
 「どうぞ、どうぞ」
 「そこはお前も来いよっっ!!」

声を抑えた攻防があったが、なんとか皆席に着くことが出来た。領主が家族の紹介をして、セフィール達も挨拶をした後、食事が運ばれて来た。平民4人組は領主達一家やポドムの一挙手一投足を見逃すまいと真剣である。誰もテーブルマナーを知らないからである。

 「・・・あれ、いつの間にかあっちのフォーク1本少なくなって無いか?俺なんか多いぞ?・・・」
 「・・・俺、ナイフも多いかも・・・」
 「あ、ゼルの野郎アイツ数合ってやがる・・・」
 「兵士長のは・・・俺達と同じっぽいな・・・」

コソコソとナイフやフォークの数が合わなくなっている事を話す2人。味もそっちのけでいっぱいいっぱいになっている。

 「今度皆様と食事をする時は気軽に食べられる物に致しましょう。」

領主の奥さんが微笑んで、4人に向かって言うと『今の発言は2度と食事をお前らと食事をしないって事なのか?お前らには携帯食出しとくわ、のどっちの意味なんだ!?』とセフィールは悩んだ。ルークは「そうして貰えると助かりますっっ!!(そんな日は来ないけどな!!)」と元気な返事をしていた。



 「セフィール殿、貴殿は悪魔に刺すのに使った槍で以前より丈夫な真空断熱コップが作れると言っていたが今は手元に素材はやはり無いのか?」
 「え、いや、ありますよ?」
 「ん?あるのか?・・・では何か作って貰えないか?陛下に献上したいのだが・・・。」

 「旦那様、お仕事の事は食後に致しませんか?」
 「そうですよっ!!お父さまがお仕事の話をしたいのは我慢して下さいっ!」
 「わたくし達があちらの2匹の動物さんと遊びたいの我慢していますのにっっ!!」
 「そうだな・・・セフィール殿、後でアオ殿とクロ殿と子供達で遊ばせて貰えぬか?」
 「え?大丈夫ですかね・・・。クロは大丈夫だと思うんですけど・・・。アオは加減を知らないからな・・・。後でしっかりアオとクロにお願いしておきますね」
 「私共も御令息、御令嬢を見ておきます」

 「うむ、頼んだぞ。では、談話室に我々は移動しよう。私とポドムは先に行っているから2人は後で執事に送って貰ってくれ。」
  
領主と奥さん、ポドムと数人の執事と侍女が出て行ので、席を立ち2匹の元へ行きセフィールはアオに話しかける。領主の子供達もセフィールの後ろに寄って来た。

 「アオとクロ、この2人がお前達と遊びたいんだって。いいか?」

クロは無言の肯定をしてアオは遊んでくれるの?と言わんばかりにソワソワし始めた。

 「・・・いいかアオ、この子達に怪我をさせたらダメだからな?クロお前がしっかりアオを見張っててくれ・・・。」

ソワソワして耳に届いていない様子なのでセフィールは諦めてクロに頼んだ。

 「兵士長とゼルいるから良いだろ?そろそろ談話室行こうぜ?」
 「そうだな」

アオの事はクロや兵士長達に任せて談話室へと向かった。



♢♢♢♢♢♢♢





部屋に通されると、領主とポドムがお酒を嗜みながら待っていた。2人のお酒も用意されていた。

 「おお、来たか。早速だが新しい素材で何か献上出来るものを作って貰いたい。ーーそれと勝手な申し出なのに悪いのだが、今はそんなに資金がなくてな・・・。図々しいのだが金貨1枚で作って貰えないか?」
 「良いですよ??廃ダンジョンの許可貰いましたし。取り敢えず真空断熱コップ錬成しますね?」
 「良いのか!?・・・では、頼む。」

セフィールはみんなから離れた場所に移動して、黒い石の塊を出した。みんなが見守る中、石に手を当て最初の精錬作業に移ると先程の大きさの半分くらいになった高品位のチタンが生成された。それから片手で掴める位の大きさのチタンを錬金術で切り取ると、早速真空断熱コップの精錬に入った。
真空にするのが意外と1番集中力がいる。目を閉じて、集中しながら形を作り空気を抜く。

 「はいっ!チタンの真空断熱コップ完成です!」

口々に褒めてはくれるが、彼らの目が訴えていた。“自分達のは無いのか?”と。
催促の言葉は無かったが、6人分作る事にした。兵士2人にもあげないとなんだか仲間外れの様な気がして、可哀想に思ったからだ。
作り終わると、今度こそ手放しでセフィールを褒めた。苦笑いをこぼすセフィールを領主が席に呼び戻す。このコップでホットワインでも呑もうと言い出したが、流石に馬車で吐きそうだと言うと諦めた領主は侍女にホットミルクを持って来させた。ルークは「今日頑張ったんだから!!エール呑ませてくれるって言ったのは嘘だったのか!?」と散々駄々を捏ね1人幸せそうにホットワインを呑んでいた。



 「はぁ~これは良いですなぁ・・・前回のコップより軽いとは・・・」
 「しかも丈夫なんだろ?最高じゃね?・・・はぁ~幸せ・・・」
 「これが採れた部屋にアパオシャが居たのか・・・。他の廃ダンジョンも調べたいが危険であるな・・・」

 「報告している時知っている様な口調でしたので、領主様はアパオシャの事知っていたんですか?」

 「あぁ、お前達はこの国に来たのは最近だったから知らんだろうが、アパオシャが30年に1度現れ大旱魃だいかんばつを引き起こすのだ。大旱魃の所為でここの領地は領民が一気に減っては30年かけて人口を戻す事を繰り返し、中々栄えないのだよ。来年が30年目だったのだが来年は平穏な1年が遅れるかも知れんな・・・楽観は出来ぬが2人と魔獣に感謝している。」

神妙な面持ちでお礼を領主に言われて慌てふためくセフィールと、ホットワインを呑み全く聞いていないルークを見て領主とポドムが笑っていた。








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