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1章
19 廃ダンジョン
しおりを挟む「うあぁぁぁぁっっっっっーーーーーーーーっっっっっっ!!!」
翌朝、セフィールの驚いた声が宿屋の室内に響き渡る。
「んぐぁっっ!?・・・セフィールっっどうしたっ!?って、えぇぇっっっ!!!」
思わずルークも驚きで声を上げてしまう。恐怖で思わずセフィールに抱きついた。
ーーギャウ?
ーーガルル?
余りにも2人が騒いだ為に2匹も目を覚ました。
セフィールの目の前には見慣れた蜥蜴と犬ではなく、部屋の大半を覆い尽くす青いドラゴンと犬ではあり得ない程大きな犬がいた。
「セフィール・・・コイツら魔獣じゃねぇの?どう見ても蜥蜴と犬じゃ無いぞ・・・。」
「・・・そうだね。・・・アオとクロ小さくなれないかな?」
「問題そこか?・・・いや、確かにこのままじゃ宿破壊しないと外に出られないよな・・・。流石にそんな金ないしな・・・。」
ーーコンコンコン!
「お客様??叫び声がしましたがどうかなさいましたか!?」
「い、いや何でもないんですっ!寝ぼけてて勘違いしてしまって・・・」
「開けてもらって宜しいですか?こちらから開けますよ?」
ーーガチャッ
そこには上半身半裸の男がもう1人の男に抱きつく姿が客室係の女性の目に入った。客室係の女性は一瞬2人を見てギョッとしたがすぐに無表情になった。
「問題ない様ですね。失礼しました。」
アオとクロは元の大きさにいつの間にか戻っていた。
「最悪だ・・・これセフィールとそういう風に見られたよな・・・。こんな小さな町すぐ広まってもうナンパしてもきっと振られる・・・。」
「ほとんどルークの所為だろ。半裸で俺に抱き付いてた。」
「わりぃ。だって思わないだろ起きたら竜がぎゅうぎゅうに部屋に詰まっているなんて・・・。」
「まぁ、アオとクロの事はまた考えるとして朝の支度終わったら商業ギルドに行って廃ダンジョンへ入る許可貰えたか聞いてみよう。今日廃ダンジョンに潜る時はアオとクロも一緒に来て欲しいんだ、いいか?」
ーーきゅいっ!!
ーーがうっっ!!
ーー朝食後、みんなで商業ギルドへ向かった。
商業ギルド長のポドムさんに会い、許可を貰うついでに昨日話しに出たゴーレムを倒したアオと支えてくれているクロを紹介した。
その後許可は既に出ており貰うと早速、廃ダンジョンへ向かう事にした。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「本当に早かったな?許可貰えるの。」
「そうだなぁ、2~3日は掛かると思っていたからな~・・・。あ、ここだ!」
ギルド貰った地図の通り歩くと町から30分程離れた森の中に、コアを失ったダンジョンが訪れるものも無くひっそりと存在していた。
2人と2匹は早速廃ダンジョンを潜っていった。中は新たに創造されない死んだダンジョンなので、湿気や苔が多くジトジトしている。
「こんな町の近くにダンジョンあったとか町の人怖かっただろうなぁ」
「だよなぁ・・・。夜呑みにも出歩けねぇよ・・・。」
「あ、ここが中ボスの居た部屋だな」
「おお!ここが言わずと知れた冒険者の憧れの中ボスの部屋!!ーーなんか冒険者になった気分だな?」
「分かる、今まで縁もゆかりも無かったダンジョンの中に居るんだからな!ワクワクするよな!!」
割れた扉の隙間から中に入ると壁が砕け石が沢山転がっていた。それらを素材ボードにしまうと『鉄鉱石(未精錬)102kg 銅鉱石(未精錬)55kg 方鉛鉱(未精錬)76kg』等と出ていた。
「うっわぁ!セフィールのスキル最高だな!!人間の力じゃ30キロ位しか持って帰れないのに、それあったら無限に持って帰られるんじゃないのか?」
「そういえば限界あるのか聞いた事なかったなぁ・・・」
『ゴザイマセンガ、大陸ヲ回収スルナドハデキカネマス』
「スキルが喋ったぁぁぁぁ!」
「そういや最近喋ってなかったな。そうなんだ変わったスキルだろ?」
「すっげぇ変わってる。あ、でも・・・世の中のスキル知らね~から、もしかしたら回収スキルや喋るスキルって普通にあんのかも知れないから案外普通なのかも知れねーな。」
「錬金術師同士以外じゃ会話して貰えなかったからな。一般的な事が全く分からないよな~。」
「そうそう、天気の話ですら無視されるから何も話せないし。」
喋りながらどんどん下の階層に進んで行く。先頭をクロが足取り軽く進んでいる。ダンジョンに住み着いた魔物はアオとクロが倒してくれている。アオは今朝から羽を出し入れ出来る様になった様で、楽しくなったのか一気に先に進んで姿が見えなくなっている。
今朝のドラゴンの姿を見ているセフィールとルークは『死なないな』と思って放置した。
「ここが20層か。」
「ここのダンジョンって何層あったってなってるんだ?」
「ポドムさんは30層って言ってたよ。」
「結構深いな・・・。」
「後、ここも中ボスがいた部屋みたいだ。入ろう」
20層も床や壁がボロボロになっておりそれらを回収すると『クロム鉄鉱石(未精錬)90kg ペンドランド鉱87kg 』が主に回収出来た。
「おぉっ!ルーク、これでしばらくステンレス錬成出来るぞ!!」
「必要な材料揃ったんだな?どうする?もう帰るか?」
「ーいや、アオを捜さないと行けないし、30層何があるかルークも気になるだろ?」
「ま、当たり前だよな♪なんせ、男の一度は憧れる職業冒険者に今はなっているも同然だもんな!!」
「あ、クロが進み出した!追いつかないと!」
再び先頭を歩くクロに追いついて歩き始めた2人は25層過ぎた辺りから違和感を感じ始めていた。
「セフィール・・・なんか・・・」
「ルークも感じるか?圧迫感みたいなのを感じるよな・・・。アオ先に行ったけどどこまで行ったんだ・・・ここまで会わないと流石にドラゴンでも心配になるな・・・。」
「うん・・・。多分大丈夫だろうけど、あの姿にあの時限定でしかなれないとか無いよな・・・?」
「「・・・・・・。」」
「「急ごうっっ!!」」
慌てて階層を駆け下り始めた2人とクロは30層に辿り着いて、今まで同様扉の割れた隙間から中に入る。
ここまで全くアオには会っていない。
ーーそこの部屋は扉も全部真っ黒であり、まるで異空間にいるかの様な錯覚を受けた。そこには先を進んでいたアオの姿もあった。祭壇の真っ黒なテーブルを爪で引っ掻いていた。
「アオ!!」
呼ぶとチラリとセフィールを見るがすぐ祭壇に顔を向け引っ掻く事に集中する。
「アイツ何真剣に削ってんだ?セフィールあの祭壇石みたいだし回収してみれば?」
「そうだな、やってみよう」
素材ボードを出して祭壇に手を当てると回収出来た。素材名を確認すると『チタン鉄鉱(未精錬)120kg』とあった。
「ルークっっっっ!!!!!!チタンっっチタンっっっっ!!!」
「チタン?」
「ほら、俺が昨日ギルドでステンレスより長持ちする素材があるって言っただろ?それがこれなんだよ!!」
「おお!これで真空断熱コップ錬成したら美味しいエールがずっと呑めるのか!!」
「もしかして、この部屋って全部チタン鉄鉱だったりするのかな?」
「いいねー♪やってみろよ」
セフィールは巨大な扉を回収してみた。やはりチタン鉄鉱である。
「今度部屋全体やってみるから一旦黒くない地面の通路に出よう。そこから黒い床を触って回収する」
「そうだな。床が抜けたら困るしなー」
「アオっ今からこの部屋の黒いの回収するから気をつけるんだぞ!!」
何故かまだ祭壇があった付近から離れないアオに注意を促して2人とクロは通路に出た。
まだこの部屋から謎の圧迫感が消えないが、特に何も無いので回収して帰ろうとセフィールが床に手を当て回収した。
全てチタン鉄鉱の名で回収されており、合計13tと表示されていた。
これでしばらくは、錬金術で商売が出来る。ルークが隣で棒立ちになって部屋の中を見ていた。何も無くなった部屋に驚いただけだろうと思い素材ボードを閉じて顔を上げた。
「じゃあ帰ろうか、アオもどっーーー!?」
黒いチタン鉄鉱を回収した部屋は真っ白の部屋に変わっていたが、何より違和感があったのは床全体に広がる真っ赤な魔法陣があった事だ。真っ赤な魔法陣からは先程より威圧感が大きく膨らんでいた。
何か強いモノが迫って来ている、そんな感覚がしてアオを呼ぶものの全く来る様子がない。
「おいっっ!!マズくないか!?アイツあんな所にいたら・・・俺連れて来るっ!」
「ダメだっっ!!もう来るっっっ!!」
行こうとしたルークの襟をセフィールは引っ捕まえて止めた。次の瞬間、部屋中に魔法陣から赤い稲妻が走り始める。セフィールとルークはその光景に息を呑んだ。2人は冒険者にはなれなかったし攻撃魔法と言えるレベルのものが無い。その為今まで魔物を避け続けて生活していた。魔王でも現れるのかと言わんばかりのその光景に逃げることも出来ない。
ーーー床の赤い魔法陣から大きな黒い馬が現れた。
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