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1章 

18 北極星に願いを(賢者サイド)

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 有理は以前のメール全てが本当に異世界からだと仮定して読み直していた。

 「(・・・それだと辻褄合うかも・・・。でも、そんなことあり得ないし、ネット小説読んだ事あるけどあれって大抵死んでから向こうに行くとかでしょ?私死んで無いし、パソコン死んで無いよ?買ってまだ数年だし。今まで特に不思議な経験とかも無いし・・・。あれか?データって0と1で出来ているって言ってたし、向こうに送信する手段があるならデータとして届いても不思議じゃ無いのかなー・・・?うーん。分からん!!)」

今日は通販サイトでも見ようかなと思っていたのに気付けば夕方。有理はメールについて考えすぎて何もする事が出来なかった。

 「(もう今からコインランドリー行くのめんどくさいし、風呂場で洗濯すればいいか・・・。あ、メール来てる。んー・・・ステンレス鋼の作り方ねぇ・・・勝手にして良いのに。私の知識じゃ無いし。そういやチタンって無いのかな?あんまり無さそうだけど。
あー・・・そういや、錬金術師ならヤバい物いっぱい作れちゃうよね・・・。地球の人間が沢山の犠牲を伴って作り出した物とか。うーん。錬金術師ってかなり危険な存在じゃ無いの?危険無く作り出せるって・・・。そんな錬金術師達を虐げる国って・・・無知って怖いわ~。フィールの今いる国は戦争とか無いよね??あったらどうしよう・・・。見捨てられないけど、戦争の道具は危険な物が多過ぎる・・・。あー・・・私が大量殺戮のきっかけになったとか笑えないよね・・・。気をつけなきゃね。)」


 有理はフィールにメールを送信した。
するとすぐに返信が届いた。明らかに異常な速度であった。メールの文にも昨日ステンレスについて連絡した旨が書かれており、その上長文である。有理は考えるのを諦めて、フィールは異世界人だと認識する事にした。

 「(なんかよー分からんが、鍋とコップ売れたんだねー。んで、酒をルークと呑んだ、と。へー、ルークには私の事親友って説明してんのか。別に嫌じゃ無いのになんでか毎回言い逃げするよね~私怒りそうな感じするのかな~?)」


 『         フィール
   順調に買い上げてくれる人がいて何よりだよー
  優しい町の人間に出会えて良かったね!!今まで虐げられた分
  フィールや他の錬金術師達も幸せがたくさん訪れて欲しいな。
  
   廃ダンジョン?危険じゃ無いの?
  危険には無闇に飛び込まない様にね!!!

  あと、最近言い逃げが多いぞっっ!!フィールに親友って呼ばれても
  嫌じゃ無いから言い逃げしないっ!分かった?

                  フィールの親友      』



フィールの言い逃げには困ったもんだと思いながら笑みが溢れる。

夕飯は軽く済ませて、上着を着て少し散歩に出る。
田舎なので星が都会より良く見える。セフィールとメールのやり取りしなかったら、田舎の夜道を散歩なんかせず部屋に篭ってネットでTV観て寝るだけだった。
有理は段々と色付き始めた景色が最近はどんどんと輝いて見え違う景色に見える様になった。今なら何でも出来る様なそんな気持ちであった。


 「(あっ北極星発見っっ!!前フィールに言ったフィールの錬金術師としての成功まだ願って無かったからね。)」


あの時有理は社交辞令で書いただけなのだが、親友とまで言ってくれている相手に社交辞令のままはモヤモヤするので北極星にセフィールの錬金術師としての成功を願った。

 「(やっぱまだ4月の夜は寒いわ~帰ろ)」

長めに願ったので身体が少し冷えたので帰って熱いお湯でシャワーを浴びる事にした。
家へと足早に帰る。

セフィールへの気持ちは変わっていっているが、職場の人間と仲良くする気はまだ芽生えない。有理は自分の時間を割くのが苦では無いのはまだセフィールしかいない。
この不思議な関係が有理の警戒心を解いたのであって、有理の根本的な性格が変わるわけでは無い。


ーーその頃部屋ではノートパソコンが勝手に起動していた。ノートパソコンは黄緑色の光に包まれながら、画面いっぱいに0と1の数字で埋め尽くされていく。数分その現象が続くと突然シャットダウンした。有理が帰り着く頃には行く時と何も変わらない室内に戻っていた。



ーー無機質な一週間が始まるが、セフィールという色彩を得た有理は少し心が満たされた。



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 アイヲン町 宿屋


夜遅く町は静かで人の声もしない。
そしてセフィールとルークはベットで深い眠りについていた。

クロとアオだけが何らかの異変を感じ、同時に目を覚ました。すると黄緑色の光にアオとクロが一瞬包まれた。その光は2匹の身体の中に吸い込まれる様に消えた。
光はその一瞬だけで、その後は何も起こらなかった。これ以上何も起こりそうには無かったため2匹は再び眠った。


ーーアオとクロの異変にセフィールが気がついたのは翌朝であった。






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