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1章
14 損して徳とれ
しおりを挟むーーバタンッッッッッ!!
「ルークッッッッッ!!!ステンレス鋼教えても良いんだってっっっっっっ!!!」
「うぉっ!?びっくりしたっっっ!!!・・・早くないか?本当に聞いたのか?」
「あ、俺スキル持ちなんだよ。親友とは心が繋がっているから手紙のやり取りが出来るみたいなそんな感じのスキルなんだ」
「随分曖昧なスキルだな~」
親友と言っているのが賢者だとバレると大事になりそうな気がして、セフィールは適当に誤魔化した。
「お前世間知らずっぽいし、町での鍋売り一緒に行ってやるよ。だから今日も晩飯宜しくな!」
「ありがとうっっ!!!任せてくれっ!クロは獲物を俺達が行っている間に獲ってきてくれないか?帰るのは遅くなるかも知れないから、先にご飯食べててくれて大丈夫だからな?」
ーーがうっ!
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
今日はクロはお留守番をして貰い、ルークとアオの2人と1匹で町へと向かった。ルークは町の近くまでは行ったことがあるが兵士が立っているのが見えたので引き返したそうだ。
村から1番近い町までは徒歩で2時間程度掛かった。そこまでの人口密度はないがそれなりに物は揃っている様である。
町の出入り口は厳しそうな顔の兵士が1人立っているだけである。
「お前達はみない顔だな?どこから来た?身分証はあるか?」
「俺達フォルテム国から亡命してきた錬金術師で俺がセフィールでこっちはルークです。この町の外れに住んでいます。身分はどうやったら手に入れる事が出来ますか?」
「あぁ・・・お前達は錬金術師か。あの国どうなってんだ?月に何人か錬金術師だけが亡命してくるんだ。最近財政逼迫しているらしいが、こうも錬金術師だけが来るっていうのはな・・・。まぁ、いいか。取り敢えず大変なんだろ?うちの国は裕福じゃないが、お前達を見捨てる様な国じゃ無いからな。
身分は・・・冒険者ギルドか商業ギルドで身分証を作って貰えば良い。あー・・・ちょっと待ってろ」
兵士は自分の首に掛かっていた紐を手繰り寄せると、その先には小袋が付いていた。袋の紐を解き中から何かを取り出すとセフィールに握った手を差し出した。よく分からないセフィールは受け取ると銀貨1枚手のひらの上にあった。
銀貨1枚で王都のそこそこ良い宿に泊まれる位の価値でかなり大きい額である。
「え!!!どうしたら良いんですか!?これっっ・・・」
「うわ~俺銀貨初めて間近で見たわ~」
慌てふためくセフィールとなんか発言がおかしくなっているルークに兵士が苦笑いをしている。
「あのな、冒険者ギルドでも商業ギルドでも初回登録費用に銅貨50枚いるんだよ。それで登録しろ。俺のへそくりだから気にすんな。どうしても貰いにくいなら、出世払いか・・・お前らの持っている物と交換でも良いぞ?」
そこで、セフィールは良いものがあると思い付きリュックから取り出した。
「じゃあ、このコップ2つと銀貨1枚の交換と言うことでどうですか?」
「おー!なんか格好いいな!良い感じのコップじゃ無いか♪良いぞ。俺の懐にへそくりあるより実用性のあるコップに変わった方が俺の妻も喜んでくれるってもんだ」
兵士にお礼を良い別れる。
「めちゃくちゃ良い人だったな。セフィール俺の分も肩代わりしてくれてありがとうな!」
「付いてきてもらってるんだから良いよ。あの兵士さんのお陰だしね。・・・あ。あー・・・あのコップの特徴伝え忘れたなぁ・・・まぁ使ってたら分かるだろうからいいかー」
「なんだ?特徴って。飲み物入れたら別の味に変わったりすんのか?」
「いやいや、そんな魔法使えないよ。ーー熱い飲み物入れたら冷めにくく、冷たい飲み物入れたら温くなりにくいって感じだよ。試してみたけど熱い飲み物入れた時、器が熱くて持てないって事にもならないんだ。便利だろ?」
「何その夢のようなコップはっっ!?鍋よりそっちの方が良いんじゃ無いか??」
「今日ステンレス鋼について親友が教えてくれたんだ。出掛ける前に作りたい衝動に駆られて5つだけ作って見たんだ」
「やっぱ俺お前と錬金術やるわ。お前の下でのみ働いて知識漏らさない契約するからそのコップ貰えない?」
「安上がりだなルークって。はい、コップ。これからも宜しく頼むよ!!」
「あぁぁ・・・最高だ・・・早く帰りたい・・・試したい・・・」
「おいおい・・・もし、全部売れたらどっかで冷たいエールでも飲むか?」
「よしっ!!売るぞっっセフィール!!っと、その前に商売するのに必要な商業ギルドに登録だな!!」
エールとコップで張り切り出した現金なルークと一緒に商業ギルドで登録を行った。冒険者ギルドと違いそんなに登録する人が多くないので個室に通されての登録である。
受付の男性が登録用紙に記入し終わると、何を販売するのか問われた為『ステンレスの鍋』と伝えると見せる様に言われた。
「成る程、これがステンレスですか?新しい合金というのは本当でしょうか?錬金術師なので不可能ではないとは思いますが、使用中に害になるとも分かりませんのでギルド長に確認を取りますのでお待ちください。」
「はぁ・・・。どうぞ。」
ーー受付の男性は鍋を持って部屋を出て行った。
「やっぱり、全くの知識外の物になると時間かかるんだなぁ・・・。これ、帰るの夜にならないか?」
「そうだな・・・。もう村を出て3時間位だもんな・・・。帰り2時間掛かるし・・・。マズイなクロは餌自分で獲れるから良いけど、心配するかも知れないな。森も夜は危ないよな・・・?売り終わったら持ち帰り出来る物買ってすぐ帰ろう。ルークには悪いがエールはまた次だな」
「俺には魔法のコップがあるから問題ないっっ!!楽しみは家にもまだある!!」
ーーガチャッ
「ほう、魔法のコップですとな?興味深い話をしておられますな。」
突然現れた知らないおじさんに話に入ってこられて2人は固まった。アオはセフィールの足元で丸くなってお昼寝中である。
知らないおじさんの後ろから先程の受付の男性が入ってきた。
「いきなり人の話に入っていくのは失礼ですよ。ギルド長。」
「あぁっ!!こりゃすまんかった!!私はこのアイヲン町の商業ギルド長でポドムと言う。セフィール殿とルーク殿と言ったか。ステンレスという金属の鍋は素晴らしかったぞ。お前さん達の話を聞かせてくれんかの?」
「んー・・・短いなら良いんですけど村に犬を待たせているんで、早く売って早く帰りたいんですけど。」
「そうか・・・残念じゃのう。今回の鍋は全部私が買い取るから明日も来てくれんか?その時魔法のコップも見せて貰いたいんじゃが。今は持っておらんかの?」
「良いんですかっっっっ!?早く帰れるっっっっ!!セフィール売ってしまおう!!!」
「鍋は一つ銅貨65枚で今日は販売用に5つ持ってきているんで、全部で銀貨3枚と銅貨25枚になるんですが良いんでしょうか?あと、コップは販売用には2個あるんですが門番の方に良くして頂いたので、1つ銅貨50枚でお譲りしたのでそれ以上下げることは出来ません。」
親切にしてくれた門番の兵士には損をさせたくなかったセフィールは、コップにしてはかなり高いが銅貨50枚の価格設定にした。これで安く売ってしまったらいくら善意で高く買い取ってくれたからと言って、門番の兵士が奥さんにめちゃくちゃ怒られてしまう可能性が高い。親切にしてくれただけにセフィールはそれだけは絶対に阻止したいと譲らない姿勢を見せた。
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