放浪戦記

アブナイ羊

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幼少期 盗賊団時代

マルサン

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「…とまぁ、こんなところか。仕事場はおいおい覚えていけばいいから今は覚えなくていいよ」

今日はわたしたちへの説明があったから仕事は午後からだが、普段は朝早いうちから仕事場に待機してちょうど良い獲物を待ち続ける。そのため1日分の水や食料を入れておけるリュックサックを渡され、そして仕事においての役割を言い渡された。

年長の戦闘に慣れた人たちが切り込んで撹乱して、主に護衛などの人間を抑える。身のこなしが素早いものが荷物をかっさらい、しんがりを残して素早く退却。場合によっては、数で脅して運んでいる一部の荷物を戦闘なしで置いていかせることもある。
そして新入りの役割と言えば…

「君たちはちょっと離れたところで声だして騒いでてくれ。こっちの士気が上がるし、向こうには圧迫感をあたえられるからね!」

決まってこれだ。多分、仕事の雰囲気を掴ませるためだと思う。

「ちぇっ、やっぱそれかよ。…あ、向こうからこっちに来たらぶっ殺していいんだよな!?」

「そうなったら戦ってもいいけど、殺したらみんなの警戒心が高まるから殺しはだめだ。それにこんな路地裏なんかで剣振り回したら壁にぶつかって折れるかもしれないから気を付けてね。ただでさえ王都とは言え貧民街は道が狭いんだから」

アルトが顔を赤らめている。アルトのことはバカだと思っているけど、アルトが聞かなかったらわたしも同じことをしようとしてたから人のことは言えない…?
ぶんぶんと首を振ってそんなアホらしい思考を取り止める。そもそもわたしはこんなことろで興奮して剣なんて振り回さない。

「どした?ラヴィ」

「い、いや!なんでもない」

「そっか」

それじゃあ、マルサンに向かうよと言うリーダーについていく。貧民街は外壁の外にあるから、街の出入りは基本的にフリーだ。とは言え、大通りのような役目をギリギリ果たしている太い道から出るのが一般的だし、現在わたしたちもそれに倣っている。

仕事場はどれも街が見えるか見えないかといったところにある。旅人は街が近づくと張りつめた緊張感が多少なりともほどけ、油断が生まれてくるからだ。
街に近いほど油断が大きいが、近付きすぎると衛兵が飛んでくる。そんな理由でのこの距離感だった。







「おっと、僕たちが最後だったみたいだね」

普通に街道を移動している最中、突然リーダーがわたしたちの手をひいて茂みに入ったかと思うと、藪の中に作られた3メートル四方くらいの空間に盗賊団員がたくさんいた。

「おせーよ!さっきカモが通ったのに逃しちまった」

「あっはは、ごめんよカイン。でもまだ時間はあるだろう?」

あれがアルトが慕っているカインさん。粗暴だけど、気に入った後輩にはすごく甘い。仕事ではだいたいしんがりを任されている強い味方だ。

「で、アルトと…ラヴィだったか?そいつらは自分の役割をわかってんのか?」

「はい!リーダーから教えてもらいました!」

カインさんは頷くとまた武器の整備に戻った。と、そのとき、見張り役が声をあげた。

「しーっ!くるぞ!馬車1、護衛2、ロバ1。護衛はこの前成功したときと同じ奴らだ。装備も多分変わってねぇ。」

どうやら早速仕事が来たらしい。
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