12 / 27
1、毎日サンタ・月曜日営業所
第12話 プレゼント開始! なんだけど?
しおりを挟む
道具の使い方をルミ君に教えてもらい、いざプレゼント開始!
どうやらこのマジックハンド――じゃなかった『かゆいところにハンド』は当たり前だけど、ただのおもちゃではなかった。なんと、二本あるのだ! じゃじゃーん、二刀流! ってそうじゃなくて。
なんと、その先端についている手にも感覚があるのだ。試しにワッカの背中を突いてみると、まるで実際に自分の手で触ってるみたい。それに、操作自体は持ち手を握るだけなんだけど、その握る強さと、頭に思い描くイメージで細かい作業もできたりする。
さらに――、
「壁や窓も通り抜けられるの?! 長さも自由自在?!」
ルミ君の説明によるとそうらしい。さすがはサンタクロースの秘密道具!
だから、家の外からでも理玖君の積み木遊びのサポートができるというわけ。どうやら私は、理玖君が積み木を上手に自分の手で積み上げられるように、この『かゆいところにハンド』を使って手助けすればいいみたい。
もう全然思い描いてたサンタクロースのプレゼントじゃないんだけど、本当にこれでいいのかな?
そう疑問に思うけど、いまはそんなことを考えている場合ではない。やらないと! 待ってて理玖君! お姉さんが君の『欲しいモノ』をプレゼントしてあげるからね!
「……おい、まだかよ」
「もうちょっと! ちょっとレラ、動かないで!」
「俺は動いてない。お前がふらふらしてっからだろ」
私はいま、トナカイ姿のレラの上に座っている。
さすがに持ち上げてもらいながら積み木サポートの作業は難しかったのだ。それにたぶんレラも大変そうだし。
それで、トナカイの上に乗ればいいんじゃない? とワッカが提案してくれたのだ。そこへ、それを押しのけて、「俺が一番デカいんだから、俺に決まってる」とレラがしゃしゃり出てきたのである。たしかにこの中ではレラが一番大きいし、と思って、背中に横座りしてるんだけど、やはり生き物だから、ベンチとは訳が違う。本人は動いているつもりはないんだろうけど、何だかふわふわしていて不安定なのだ。
それで、どうにか理玖君が積んだ積み木を彼に気づかれないよう、さりげなーく、ちょっとずーつ調整して、まっすぐ積み上げられるように手助けしているというわけである。
「頑張れ花ちゃん! いい感じだよ!」
「これは最高記録なのでは?! あと一つですよ!」
この『かゆいところにハンド』、さすが名前の通り『かゆいところに手が届く』というか、思った以上に繊細な動きができるし、めちゃくちゃ軽いから全然疲れない。それでも相手は一歳半の子ども。せっかくいい感じで積み上げても、どたどたと足を踏み鳴らしたり、身体がぶつかったりしちゃって、せっかくの塔は、残るはあと数個、というところでガラガラと崩れてしまう。
それでもあきらめずに何度もトライするところを見ると、やっぱり彼はどうしてもこれを高くきれいに積みたいのだろう。
そしてついに、その時は来た。
理玖君は、手持ちの積み木をすべて積んだのだ! もちろんその陰にはサンタクロースであるこの私の協力もあるわけだけど!
理玖君は、ぱちぱちと手を叩いてとっても嬉しそうだ。その場で何度も足を踏み鳴らして、大興奮である。もちろん、その足踏みでこれが倒れたら大変だから、そこは私がちゃんと支えてました。えっへん!
すると彼は、何かを思い出したようにくるりと回れ右をした。えっ、もうこの積み木おしまいなの? あんなに頑張ったのに、積み終わったらおしまい?
そう思ってちょっと寂しく思っていると――、
「まま、まま」
とたとたと、可愛らしい足音を立てて、部屋の奥へと走っていく。そうか、頑張ったもんね、ママに見せたいんだね。大丈夫、お姉さんずっと押さえてるから、ママ呼んどいで!
「……おい、何が起こってるんだ。まだか」
窓に対して横向きになっているレラは、家の中の様子が見えない。首を動かせば見えるんだろうけど、それで私の操作に支障が出たらと思うと動けないみたい。
「理玖君、ママ呼びに行ったみたい。見せたいんだと思う」
「ああ、そういうのは大事だな」
「大事? 何のこと?」
「それは――」
とレラが続きを話そうとした瞬間。
「あっ」
そう言ったのは、ワッカだったか、それともフミだったか。それとも私だったかもしれないけど。
ママを連れてきた理玖君は「あら、りっくん上手に積めたわね」というその言葉を聞いて、にっこりと満足気に笑った後――、
その積み木を壊してしまったのだ。
いくら私が支えているといっても、壊すつもりで手を出されたら、それを阻止することは難しい。
「嘘でしょ。せっかく積んだのに」
無残にも散らばった積み木を見て、思わずそんな言葉が口から出る。『かゆいところにハンド』は窓を通り抜けているけど、さすがに私のこんな小さな声までは届かない。
がくりと肩を落とし、『かゆいところにハンド』を引き抜こうとすると、
「おい、待てチビ」
それを止めたのはレラだ。
「まだプレゼントは終わってない。抜くな」
「は?」
「そうだよ花ちゃん。これからだよ」
「ここからが一番大事なんです」
トナカイ達が口々に言う。ここから? どういうこと? と視線を上げると、隣に座るママの方をちらちらと見ながら、再び積み木を積み始めている理玖君がいた。
「そうか、積むところをママに見てもらいたいんだ……」
丸い目をぱちぱちと瞬かせ、むちむちのほっぺを赤くして、ふんふんと荒い鼻息まで伝わってくるようである。彼はいま真剣なのだ。大好きなママに、自分のすごいところを見せるために。
「よっしゃ、わかったよ理玖君。一緒に頑張ろ! 私がついてるからね! あきらめずに頑張ろうね!」
理玖君につられてか、私の鼻息までふんふんと荒くなってしまったけど、こういう時真っ先に茶化してきそうなレラは、何も言ってこなかった。
そして、やっぱり何度かの失敗を経て、それはやっと完成した。
「すごいわ、りっくん」
ママは隣でぱちぱちと手を叩き、理玖君の頭をするり、となでた。理玖君はそれはもう満面の笑みで、やっぱり足をどたどたと踏み鳴らしている。あっ、あんまり揺らさないで! また倒れちゃうから!
まぁ、とにかくこれでプレゼントは終了かな? そう思って、ふぅ、と息を吐いたその瞬間。
理玖君は再びそれを壊した。
「は?」
どうやらこのマジックハンド――じゃなかった『かゆいところにハンド』は当たり前だけど、ただのおもちゃではなかった。なんと、二本あるのだ! じゃじゃーん、二刀流! ってそうじゃなくて。
なんと、その先端についている手にも感覚があるのだ。試しにワッカの背中を突いてみると、まるで実際に自分の手で触ってるみたい。それに、操作自体は持ち手を握るだけなんだけど、その握る強さと、頭に思い描くイメージで細かい作業もできたりする。
さらに――、
「壁や窓も通り抜けられるの?! 長さも自由自在?!」
ルミ君の説明によるとそうらしい。さすがはサンタクロースの秘密道具!
だから、家の外からでも理玖君の積み木遊びのサポートができるというわけ。どうやら私は、理玖君が積み木を上手に自分の手で積み上げられるように、この『かゆいところにハンド』を使って手助けすればいいみたい。
もう全然思い描いてたサンタクロースのプレゼントじゃないんだけど、本当にこれでいいのかな?
そう疑問に思うけど、いまはそんなことを考えている場合ではない。やらないと! 待ってて理玖君! お姉さんが君の『欲しいモノ』をプレゼントしてあげるからね!
「……おい、まだかよ」
「もうちょっと! ちょっとレラ、動かないで!」
「俺は動いてない。お前がふらふらしてっからだろ」
私はいま、トナカイ姿のレラの上に座っている。
さすがに持ち上げてもらいながら積み木サポートの作業は難しかったのだ。それにたぶんレラも大変そうだし。
それで、トナカイの上に乗ればいいんじゃない? とワッカが提案してくれたのだ。そこへ、それを押しのけて、「俺が一番デカいんだから、俺に決まってる」とレラがしゃしゃり出てきたのである。たしかにこの中ではレラが一番大きいし、と思って、背中に横座りしてるんだけど、やはり生き物だから、ベンチとは訳が違う。本人は動いているつもりはないんだろうけど、何だかふわふわしていて不安定なのだ。
それで、どうにか理玖君が積んだ積み木を彼に気づかれないよう、さりげなーく、ちょっとずーつ調整して、まっすぐ積み上げられるように手助けしているというわけである。
「頑張れ花ちゃん! いい感じだよ!」
「これは最高記録なのでは?! あと一つですよ!」
この『かゆいところにハンド』、さすが名前の通り『かゆいところに手が届く』というか、思った以上に繊細な動きができるし、めちゃくちゃ軽いから全然疲れない。それでも相手は一歳半の子ども。せっかくいい感じで積み上げても、どたどたと足を踏み鳴らしたり、身体がぶつかったりしちゃって、せっかくの塔は、残るはあと数個、というところでガラガラと崩れてしまう。
それでもあきらめずに何度もトライするところを見ると、やっぱり彼はどうしてもこれを高くきれいに積みたいのだろう。
そしてついに、その時は来た。
理玖君は、手持ちの積み木をすべて積んだのだ! もちろんその陰にはサンタクロースであるこの私の協力もあるわけだけど!
理玖君は、ぱちぱちと手を叩いてとっても嬉しそうだ。その場で何度も足を踏み鳴らして、大興奮である。もちろん、その足踏みでこれが倒れたら大変だから、そこは私がちゃんと支えてました。えっへん!
すると彼は、何かを思い出したようにくるりと回れ右をした。えっ、もうこの積み木おしまいなの? あんなに頑張ったのに、積み終わったらおしまい?
そう思ってちょっと寂しく思っていると――、
「まま、まま」
とたとたと、可愛らしい足音を立てて、部屋の奥へと走っていく。そうか、頑張ったもんね、ママに見せたいんだね。大丈夫、お姉さんずっと押さえてるから、ママ呼んどいで!
「……おい、何が起こってるんだ。まだか」
窓に対して横向きになっているレラは、家の中の様子が見えない。首を動かせば見えるんだろうけど、それで私の操作に支障が出たらと思うと動けないみたい。
「理玖君、ママ呼びに行ったみたい。見せたいんだと思う」
「ああ、そういうのは大事だな」
「大事? 何のこと?」
「それは――」
とレラが続きを話そうとした瞬間。
「あっ」
そう言ったのは、ワッカだったか、それともフミだったか。それとも私だったかもしれないけど。
ママを連れてきた理玖君は「あら、りっくん上手に積めたわね」というその言葉を聞いて、にっこりと満足気に笑った後――、
その積み木を壊してしまったのだ。
いくら私が支えているといっても、壊すつもりで手を出されたら、それを阻止することは難しい。
「嘘でしょ。せっかく積んだのに」
無残にも散らばった積み木を見て、思わずそんな言葉が口から出る。『かゆいところにハンド』は窓を通り抜けているけど、さすがに私のこんな小さな声までは届かない。
がくりと肩を落とし、『かゆいところにハンド』を引き抜こうとすると、
「おい、待てチビ」
それを止めたのはレラだ。
「まだプレゼントは終わってない。抜くな」
「は?」
「そうだよ花ちゃん。これからだよ」
「ここからが一番大事なんです」
トナカイ達が口々に言う。ここから? どういうこと? と視線を上げると、隣に座るママの方をちらちらと見ながら、再び積み木を積み始めている理玖君がいた。
「そうか、積むところをママに見てもらいたいんだ……」
丸い目をぱちぱちと瞬かせ、むちむちのほっぺを赤くして、ふんふんと荒い鼻息まで伝わってくるようである。彼はいま真剣なのだ。大好きなママに、自分のすごいところを見せるために。
「よっしゃ、わかったよ理玖君。一緒に頑張ろ! 私がついてるからね! あきらめずに頑張ろうね!」
理玖君につられてか、私の鼻息までふんふんと荒くなってしまったけど、こういう時真っ先に茶化してきそうなレラは、何も言ってこなかった。
そして、やっぱり何度かの失敗を経て、それはやっと完成した。
「すごいわ、りっくん」
ママは隣でぱちぱちと手を叩き、理玖君の頭をするり、となでた。理玖君はそれはもう満面の笑みで、やっぱり足をどたどたと踏み鳴らしている。あっ、あんまり揺らさないで! また倒れちゃうから!
まぁ、とにかくこれでプレゼントは終了かな? そう思って、ふぅ、と息を吐いたその瞬間。
理玖君は再びそれを壊した。
「は?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
さよならトイトイ~魔法のおもちゃ屋さん~
sohko3
児童書・童話
魔法都市フィラディノートには世界一の大賢者、ミモリ・クリングルが住んでいる。彼女は慈善活動として年に二回、世界中の子供達におもちゃを配っている。ミモリの弟子のひとりである女性、ティッサは子供達に贈る「魔法で自由に動くおもちゃ」を作る魔法使いであり、自身もおもちゃを販売する店を経営する。しかし、クリスマスに無償で配られるおもちゃは子供達に喜ばれても、お店のおもちゃはなかなか思うように売れてくれない。
「トイトイ」はティッサの作ったおもちゃの中で最高傑作であり、人生を共にする親友でもある。時に悩むティッサを見守って、支え続けている。
創作に悩む作者へ、作品の方から愛と感謝を伝えます。「あなたが作ってくれたぼくは、この世界で最高の作品なんだ」
【完結】エス★まほ ~エスパーと魔法使い、出会う~
みなづきよつば
児童書・童話
とあるエスパーいわく、「魔法使い? そんなのおとぎ話だろ」。
とある魔法使いいわく、「エスパー? そんな人間いないでしょ」。
そんなエスパーと魔法使いの少年ふたりが……、出会っちゃった!!
※※※
完結しました!
よかったら、
あとがきは近況ボードをご覧ください。
***
第2回きずな児童書大賞へのエントリー作品です。
投票よろしくお願いします!
***
<あらすじ>
中一の少年リキヤは、超能力者(エスパー)だ。
リキヤはさびしさから、同じエスパー仲間を探していたが、
ひょんなことから、同じく中一の少年マナトとテレパシーがつながる。
しかし、妙なことに、マナトは自身のことを「魔法使い」と言っていて……?
***
ご意見・ご感想お待ちしてます!
つぼみ姫
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
世界の西の西の果て、ある城の庭園に、つぼみのままの美しい花がありました。どうしても花を開かせたい国王は、腕の良い元庭師のドニに世話を命じます。年老いて、森で静かに飼い猫のシュシュと暮らしていたドニは最初は気が進みませんでしたが、その不思議に光る美しいつぼみを一目見て、世話をすることに決めました。おまけに、ドニにはそのつぼみの言葉が聞こえるのです。その日から、ドニとつぼみの間には、不思議な絆が芽生えていくのでした……。
※第15回「絵本・児童書大賞」奨励賞受賞作。
リュッ君と僕と
時波ハルカ
児童書・童話
“僕”が目を覚ますと、
そこは見覚えのない、寂れた神社だった。
ボロボロの大きな鳥居のふもとに寝かされていた“僕”は、
自分の名前も、ママとパパの名前も、住んでいたところも、
すっかり忘れてしまっていた。
迷子になった“僕”が泣きながら参道を歩いていると、
崩れかけた拝殿のほうから突然、“僕”に呼びかける声がした。
その声のほうを振り向くと…。
見知らぬ何処かに迷い込んだ、まだ小さな男の子が、
不思議な相方と一緒に協力して、
小さな冒険をするお話です。
てのひらは君のため
星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
児童書・童話
あまりの暑さで熱中症になりかけていた深森真白に、美少年が声をかけてきた。
彼は同じ中学に通う一つ年下の男子、成瀬漣里。
無口、無表情、無愛想。
三拍子そろった彼は入学早々、上級生を殴った不良として有名だった。
てっきり怖い人かと思いきや、不良を殴ったのはイジメを止めるためだったらしい。
話してみると、本当の彼は照れ屋で可愛かった。
交流を深めていくうちに、真白はどんどん漣里に惹かれていく。
でも、周囲に不良と誤解されている彼との恋は前途多難な様子で…?
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる