4 / 52
そこに愛はない
(4)
しおりを挟む
「んあっ!」
「お前今オサムのこと考えてただろ」
両方の尖りを同時につままれ、身体が跳ねた。
急に与えられた強すぎる刺激に、思いがけず大きな声が漏れる。ぐりぐりと尖りを捏ねられれば、沈んでいた思考が強制的に戻され、また頭の中が快楽で侵される。
「んー!ああっ、んんっ!」
「あんな童貞臭い奴がこんなにテクニシャンなわけねーだろ」
荒くなる息を抑えながら何とか口を塞ごうとするも、絶え間なく与えられる刺激にそれは叶わない。自分のものとは思えない甘い高い声を聞きたくなくて、男の手を止めようと手を伸ばすが、身体を密着させられればそれも叶わない。最後の抵抗とばかりに思いきり男を睨みつければ、ケラケラと声を上げて笑われた。
「ああ、でと。あいつも今頃ナミちゃんとやってんのかなー」
男の言葉に胸が痛む。
私が欲してやまなかった場所に別の女が居座り、そしてオサムに愛されるなんて。私が想像することしかできなかった情事中のオサムを、あの女は実際に見ることができるなんて。
まだ実感がない。そんなのは嘘だ。信じられるわけがない。
それなのにさっきから締め付けてくる胸の痛みが、これは現実だと私に訴えている。
私の胸を枕代わりに男が頭を預けてくる。そして、まるで暇つぶしでもするかのように私の尖りをくりくりとこねながら、憂鬱げにため息を吐いた。
「いいなー、俺もナミちゃんの清楚おっぱい揉みたかった。こんなでかいおっぱいじゃナミちゃんの代わりにならねーよ」
なおも男は顔を横に向け片胸に頭を乗せたまま、反対側の胸をまさぐっている。
最低の言葉、最低の状況、最低の光景。
「うるさい。黙れ」
「こっえーの。まあまあ、フラれた者同士仲良くしようって」
倒していた頭を上げて、上目遣いで私を見る男に、私は嘲笑うかのように鼻で嗤った。
「あんたなんて、オサムの代わりよ」
「うわー、ひでえ言い種。オサムとの妄想セックスに付き合わされるなんて、俺可哀そう」
「どうせあんただって一緒でしょ」
オサムがナミと付き合うということは、私が失恋し、そしてこの男も失恋したということだ。
この男がさっき言った通り、フラれた者同士寂しさやむなしさを紛らわすのにちょうど良かっただけ。
欲しかったものが手に入らなかったから、目の前にあるものを取りあえずの代役に仕立ててるだけ。
最低なのはこの男だけじゃない。ーー私もだ。
「はいはい。じゃあ、童貞っぽくやればいいんだろ?」
「オサムっぽく、よ。あんたはその下品な口を閉じるだけでいい。私が用があるのは身体だけなんだから」
自分でもかなり最低なことを言っている自覚はあったが、男は怒りもせず反対に噴き出す様に笑ってから、「はいはい。仰せのままに」と言って本当に口を噤んだ。
そのことを確認してから、私もそっと目を閉じる。
消えかけていたオサムを呼び起こす様に暗闇を見回せば、すぐにオサムは現れた。
ナミと付き合うことを嬉しそうに私に報告してきたそんな顔を、私にもずっと向けてほしかった。女として私を見てほしかった。一度でいいから、私のことを好きになってほしかった。
「お前今オサムのこと考えてただろ」
両方の尖りを同時につままれ、身体が跳ねた。
急に与えられた強すぎる刺激に、思いがけず大きな声が漏れる。ぐりぐりと尖りを捏ねられれば、沈んでいた思考が強制的に戻され、また頭の中が快楽で侵される。
「んー!ああっ、んんっ!」
「あんな童貞臭い奴がこんなにテクニシャンなわけねーだろ」
荒くなる息を抑えながら何とか口を塞ごうとするも、絶え間なく与えられる刺激にそれは叶わない。自分のものとは思えない甘い高い声を聞きたくなくて、男の手を止めようと手を伸ばすが、身体を密着させられればそれも叶わない。最後の抵抗とばかりに思いきり男を睨みつければ、ケラケラと声を上げて笑われた。
「ああ、でと。あいつも今頃ナミちゃんとやってんのかなー」
男の言葉に胸が痛む。
私が欲してやまなかった場所に別の女が居座り、そしてオサムに愛されるなんて。私が想像することしかできなかった情事中のオサムを、あの女は実際に見ることができるなんて。
まだ実感がない。そんなのは嘘だ。信じられるわけがない。
それなのにさっきから締め付けてくる胸の痛みが、これは現実だと私に訴えている。
私の胸を枕代わりに男が頭を預けてくる。そして、まるで暇つぶしでもするかのように私の尖りをくりくりとこねながら、憂鬱げにため息を吐いた。
「いいなー、俺もナミちゃんの清楚おっぱい揉みたかった。こんなでかいおっぱいじゃナミちゃんの代わりにならねーよ」
なおも男は顔を横に向け片胸に頭を乗せたまま、反対側の胸をまさぐっている。
最低の言葉、最低の状況、最低の光景。
「うるさい。黙れ」
「こっえーの。まあまあ、フラれた者同士仲良くしようって」
倒していた頭を上げて、上目遣いで私を見る男に、私は嘲笑うかのように鼻で嗤った。
「あんたなんて、オサムの代わりよ」
「うわー、ひでえ言い種。オサムとの妄想セックスに付き合わされるなんて、俺可哀そう」
「どうせあんただって一緒でしょ」
オサムがナミと付き合うということは、私が失恋し、そしてこの男も失恋したということだ。
この男がさっき言った通り、フラれた者同士寂しさやむなしさを紛らわすのにちょうど良かっただけ。
欲しかったものが手に入らなかったから、目の前にあるものを取りあえずの代役に仕立ててるだけ。
最低なのはこの男だけじゃない。ーー私もだ。
「はいはい。じゃあ、童貞っぽくやればいいんだろ?」
「オサムっぽく、よ。あんたはその下品な口を閉じるだけでいい。私が用があるのは身体だけなんだから」
自分でもかなり最低なことを言っている自覚はあったが、男は怒りもせず反対に噴き出す様に笑ってから、「はいはい。仰せのままに」と言って本当に口を噤んだ。
そのことを確認してから、私もそっと目を閉じる。
消えかけていたオサムを呼び起こす様に暗闇を見回せば、すぐにオサムは現れた。
ナミと付き合うことを嬉しそうに私に報告してきたそんな顔を、私にもずっと向けてほしかった。女として私を見てほしかった。一度でいいから、私のことを好きになってほしかった。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】
私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……?
*短編です。あっさり終わります
*他サイトでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる