1 / 52
そこに愛はない
(1)
しおりを挟む
『神成さんのお陰でナミちゃんと付き合うことになったんだ。本当にありがとう』
頬を少しだけ染めて照れ臭そうに、でも嬉しくて堪らないのを必死に隠してる顔でオサムが言う。
それは四年間ずっと側にいて、初めて見る顔だった。
◇
左胸は形が変わるほどに大きく揉みこまれ、反対に右胸は形を縁取る様にそっと手のひらで包み込まれている。
でもその指は気まぐれに私の尖りを掠めては身体を震わす私の反応を楽しみ、そしてまた何事もなかったように優しく胸をなぞる。
左右非対称で規則性のないアンバランスな刺激が私の頭をかき乱し、大量に摂取したアルコールがそれを後押しする。
じわじわと快楽に侵されて、気持ちいい以外何も考えられない。
こうして人は堕ちていくのかと、まるで他人事のように冷めた私が一歩離れた場所から、乱れよがる私を静かに観察していた。
クーラーを入れたばかりのこの部屋は、昼間溜め込んだ熱が籠っていてまだ蒸し暑く、一向に身体の火照りを冷ましてはくれない。それどころか逆に、どんどん暑くなってきているようにも感じる。
それはこの男も同じなのか、至近距離で吐く息も私の胸を弄んでいる手もかなりの熱を持っていて、それがそのまま私の中で別のものへと変化する。暑いのなら離れればいいのに、あえて身体を密着させ、更に熱を高ぶらせるような行為をするなんて。
馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
どうしてこんなことを。自分でも自分が今していることの理由がわからない。普段の私だったら絶対にあり得ない状況だ。
はっきり言って、この暑さがいけない。
あと、お酒のせいもある。
そして一番の原因は、やっぱりオサムだ。
『俺が代わりにしてやろうか?』
いつもの私だったら絶対に首を縦に振ることはないのに、不幸な条件が重なって、あろうことかこの男の甘言に唆されてしまうなんて。
どうかしていたとしか思えない。
そして、それは今の今まで続いている。
私は今もまさに、どうかしている最中だ。
私の着ていたTシャツとブラジャーは一緒くたに捲し上げられ、首の下でくしゃくしゃに丸められている。履いていたショートパンツは下着と一緒に剥ぎ取られ、無造作にポイっとベッドの下に投げ捨てられたままだ。下をそんなに雑に脱がせたのなら、上だっていっそのこと剥いで欲しい。服が皺になるしブラの形も崩れてしまう。
脱ぎたいのだと案に視線で訴えれば、男はにぃっと厭らしく三日月形に目を細めた。
そして顎をしゃくって「自分で脱げば?」と私に示す。
本当に嫌いだ、この男。
自信家で傲慢で不真面目で、いつもちゃらちゃらとしていて人をおちょくった様な態度ばかり取る。
その上から目線な態度にムッとなり、恥じらいもなく勢いよく脱いでやれば、目の前の男は本当に楽しそうにまた目元だけで笑った。
「ねえ、俺のも脱がせてよ」
甘えるようにそう言われ、私は男に冷ややかな視線を送る。
この女好きしそうな甘いマスクでそう言われれば、大抵の女子は言うことを聞いてしまうのだろう。それをわかっていてやっているのが気に食わない。
「自分で勝手に脱げば?」
自分の晒された身体を隠すことなくベッドに倒れこめば、男が今度は声をあげて笑った。
男はとても楽しそうだが、私はちっとも楽しくない。
男にいちいち反応したくなくて、私はすっと目を閉じる。閉ざされた視界は真っ暗で、当然そこには何も映っていなかった。
「女の子はもっと可愛くしないと。こんな状況なら特にね」
顔を見なくても男がにやにやと笑っているのが分かった。
いや、嗤っているのだろう。
「そんなんだから、ナミちゃんに取られちゃうんだよ」
男が口にした名前に、チクりと胸が痛む。
ナミ。
私からオサムを奪った張本人。オサムが好きになった人。
天真爛漫に笑うあの笑顔が大嫌いだった。
浅慮で煩くて感情的で周りの迷惑なんて考えないトラブルメーカー。
それなのに、いつの間にか皆を虜にしてしまうような抗えない魅力を持つ憎たらしい女。
いつの間にか輪の中心にはナミがいた。女子も男子も関係なく皆ナミが好きだった。
もちろんオサムも、そしてこの男も。
例外は私だけだった。
頬を少しだけ染めて照れ臭そうに、でも嬉しくて堪らないのを必死に隠してる顔でオサムが言う。
それは四年間ずっと側にいて、初めて見る顔だった。
◇
左胸は形が変わるほどに大きく揉みこまれ、反対に右胸は形を縁取る様にそっと手のひらで包み込まれている。
でもその指は気まぐれに私の尖りを掠めては身体を震わす私の反応を楽しみ、そしてまた何事もなかったように優しく胸をなぞる。
左右非対称で規則性のないアンバランスな刺激が私の頭をかき乱し、大量に摂取したアルコールがそれを後押しする。
じわじわと快楽に侵されて、気持ちいい以外何も考えられない。
こうして人は堕ちていくのかと、まるで他人事のように冷めた私が一歩離れた場所から、乱れよがる私を静かに観察していた。
クーラーを入れたばかりのこの部屋は、昼間溜め込んだ熱が籠っていてまだ蒸し暑く、一向に身体の火照りを冷ましてはくれない。それどころか逆に、どんどん暑くなってきているようにも感じる。
それはこの男も同じなのか、至近距離で吐く息も私の胸を弄んでいる手もかなりの熱を持っていて、それがそのまま私の中で別のものへと変化する。暑いのなら離れればいいのに、あえて身体を密着させ、更に熱を高ぶらせるような行為をするなんて。
馬鹿馬鹿しいとしか思えない。
どうしてこんなことを。自分でも自分が今していることの理由がわからない。普段の私だったら絶対にあり得ない状況だ。
はっきり言って、この暑さがいけない。
あと、お酒のせいもある。
そして一番の原因は、やっぱりオサムだ。
『俺が代わりにしてやろうか?』
いつもの私だったら絶対に首を縦に振ることはないのに、不幸な条件が重なって、あろうことかこの男の甘言に唆されてしまうなんて。
どうかしていたとしか思えない。
そして、それは今の今まで続いている。
私は今もまさに、どうかしている最中だ。
私の着ていたTシャツとブラジャーは一緒くたに捲し上げられ、首の下でくしゃくしゃに丸められている。履いていたショートパンツは下着と一緒に剥ぎ取られ、無造作にポイっとベッドの下に投げ捨てられたままだ。下をそんなに雑に脱がせたのなら、上だっていっそのこと剥いで欲しい。服が皺になるしブラの形も崩れてしまう。
脱ぎたいのだと案に視線で訴えれば、男はにぃっと厭らしく三日月形に目を細めた。
そして顎をしゃくって「自分で脱げば?」と私に示す。
本当に嫌いだ、この男。
自信家で傲慢で不真面目で、いつもちゃらちゃらとしていて人をおちょくった様な態度ばかり取る。
その上から目線な態度にムッとなり、恥じらいもなく勢いよく脱いでやれば、目の前の男は本当に楽しそうにまた目元だけで笑った。
「ねえ、俺のも脱がせてよ」
甘えるようにそう言われ、私は男に冷ややかな視線を送る。
この女好きしそうな甘いマスクでそう言われれば、大抵の女子は言うことを聞いてしまうのだろう。それをわかっていてやっているのが気に食わない。
「自分で勝手に脱げば?」
自分の晒された身体を隠すことなくベッドに倒れこめば、男が今度は声をあげて笑った。
男はとても楽しそうだが、私はちっとも楽しくない。
男にいちいち反応したくなくて、私はすっと目を閉じる。閉ざされた視界は真っ暗で、当然そこには何も映っていなかった。
「女の子はもっと可愛くしないと。こんな状況なら特にね」
顔を見なくても男がにやにやと笑っているのが分かった。
いや、嗤っているのだろう。
「そんなんだから、ナミちゃんに取られちゃうんだよ」
男が口にした名前に、チクりと胸が痛む。
ナミ。
私からオサムを奪った張本人。オサムが好きになった人。
天真爛漫に笑うあの笑顔が大嫌いだった。
浅慮で煩くて感情的で周りの迷惑なんて考えないトラブルメーカー。
それなのに、いつの間にか皆を虜にしてしまうような抗えない魅力を持つ憎たらしい女。
いつの間にか輪の中心にはナミがいた。女子も男子も関係なく皆ナミが好きだった。
もちろんオサムも、そしてこの男も。
例外は私だけだった。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
乱交的フラストレーション〜美少年の先輩はドMでした♡〜
花野りら
恋愛
上巻は、美少年サカ(高2)の夏休みから始まります。
プールで水着ギャルが、始めは嫌がるものの、最後はノリノリで犯されるシーンは必読♡
下巻からは、美少女ゆうこ(高1)の話です。
ゆうこは先輩(サカ)とピュアな恋愛をしていました。
しかし、イケメン、フクさんの登場でじわじわと快楽に溺れ、いつしかメス堕ちしてしまいます。
ピュア系JKの本性は、実はどMの淫乱で、友達交えて4Pするシーンは大興奮♡
ラストのエピローグは、強面フクさん(二十歳の社会人)の話です。
ハッピーエンドなので心の奥にそっとしまいたくなります。
爽やかな夏から、しっとりした秋に移りゆくようなラブストーリー♡
ぜひ期待してお読みくださいませ!
読んだら感想をよろしくお願いしますね〜お待ちしてます!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる