厭世手記

深月

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9月18日

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某配信者の不倫が、一部界隈で話題になっていた。



私の父は、不倫をしていた。
私が生まれる前から、亡くなるまで、30年以上の間。
相手は多分都度変わっていたのだろう。

母の手帳を、納戸で見つけたことがある。
父が外泊をした日が細かくメモしてあった。

不倫相手から、電話がかかってきたことがある。
私がでたら、一言、死ね、と言って電話は切れた。

父の携帯電話を見てしまった時、
早く一緒になりたいね、という一文を見た。
まだ自立をしていなかった私は、
ああ、家族は捨てられるのだろうか、と足元が崩れる感覚に陥った。

生まれて初めて、人を殺したいと思った。

それでも、父は母と離婚しなかった。
本当に、いつ崩れるかわからないほど危ういバランスで
私達の家族は続いていった。
お金のこと、アルコールのこと、弟の進学のこと。
様々な問題を抱えながらも、日々は過ぎていった。
父の、不倫相手とアルコールへの逃避は加速していった。

アルコールに溺れた最期は悲惨なものだったが
入院で漸くアルコールから開放された頭で、父は母に

ママがいないとどうしたら良いかわからないから

と言った。
亡くなる前日、父は母に帰ってほしくない、と駄々をこねた。
母は、明日また来るから、と父を宥め一度家に帰った。

父に、明日は来なかった。

色々なもの…良いものも、悪いものも…を残していった
父の様々を整理している最中。
父のスマートフォンに、1通のメールが届いた。

「もう11ヶ月会えていませんね、お元気ですか。」

父の不倫相手なのだろう。
母は、私にそのメールを見せて、これ、どうしようね、とつぶやいた。
町医者なのだから、いずれ亡くなった噂は回るだろうから
放って置けばいいのではないかな、と私は答えた。



某配信者の騒動のあれやこれやを見た。
つまるところ、不倫相手の女性に離婚するから、と甘言を弄し
それを信じた…信じたかった?…相手が依存をし
最後はごめんなさい、で妻のところに戻る、という結末。

夫婦、とは何なのだろうか。
そんなに絆が強いものなのだろうか。
私にはわからない。
そんなに外で遊びたければ離婚をしてしまえば良い、と思うのに
それでも夫婦でいること、というのが大切なのだろうか。

父の不倫相手や、配信者の不倫相手のように
結局、何かあったら捨てられるのが私の末路なのだろう。
100人に聞いたら100人がそう答えるに違いない。

それでも、甘言に乗ってしまったことは愚かだとは言え、
一番の被害者が妻というのは大前提の上で、
甘言にすがってしまった彼女たちも、不憫だな、と思ってしまう。


父の不倫相手は、父の死を知ったのだろうか。
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