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続 その後の話

51 寝込みを襲われた話※

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干上がりそうな外を歩いて、やっとのことで我が家の玄関を開ける。食材が入った袋を床に置くと、直ぐにエアコンをつけた。買い出しから帰ってきて早々にシャワーを浴びたくなったが、まずは買ってきたものを冷蔵庫に詰めようかな。

どうやらもうすぐ台風が来るらしい、という記事を読んで、急いで買い物にでかけたのは先程のこと。実際に台風が到達するのは三日後なのだが、時間があるうちに用を済ませておきたかった。

雨なんて降るのか?というくらいの憎らしい快晴が窓から見える。お出かけで疲れるのは当然のことなのだが、もう少し体力をつけたほうがいいかもしれない。外で偶然すれ違ったお隣さんに「手伝いましょうか?」と言われる始末なのだから、相当きつそうに見えたのだろう。そこまでひ弱ではないつもりなんだけどな。

まあ、一人暮らしの男が買う食糧なんて大したことはない。何が荷物になったのかといえば、後で買おうと思って散々後回しにしていた日用品である。石鹸やらアルミホイルやら歯ブラシやら……張り切って買いすぎたかもしれない。

汗だくなせいでシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。顔を汗を拭っていると、無垢そうな金色の瞳がいつものグラスの中に浮かんでいるのが視界に入る。

クラゲさんは暑さや寒さなどは感じていないらしく、この猛暑の中でも涼しい顔をしている。寧ろ、汗だくで息を荒げる俺を不思議そうに見てるくらいだった。

「今日はあついな……」

片付けている間に部屋が冷えてきたようで、息苦しさがマシになってくる。やっぱり風呂に入る前に、もうちょっと涼んでいようかな。

買い溜めしようと思ってそこそこの量を買ったのだが、もっと帰りのことを注意して考えるべきだったな。

二つの小さな双眼がこちらを見ていることに気づいていたが、声をかける元気はなかった。クラゲさんがじっと見てくることは俺にとっては日常に過ぎなくて、特に気にもせずにソファに座って、目を閉じた。

エアコンの風が、汗を冷やしていった。



台風の日は、父さんと母さんが二人とも一日中家に居る確率が高かった。外に出られるような状況じゃないから、必然とも言える。

あの二人が一緒にいる空間は耐え難い空気感があったのだが、台風の日は不思議なことに、喧嘩も揉め事も何も起こらなかった。

気まぐれに父親に手をあげられることも、普段より少なかった気がする。思えば、台風の吹き荒れる雨風にそれどころではない心情だったのかもしれない。大したことも怒らずに終わるだろうと思っていても、心のどこかで不安な気持ちがあったのだ。

大人になって、こんなふうに昔を思い出していると、あの人たちも人間だったんだなぁという気づきがある。

あの家を出たのがもう随分昔のようなことに感じる。俺はもうあの寒い部屋を抜けだしていて、今回の台風も一人きりで凌ぐのだ。

……いや、今回はもう一人じゃないんだったな。









自分が思っているよりも疲れていたのだろうか。いつの間にかソファに横たわって眠っていたらしい。だが、違和感を感じてゆっくりと意識が浮上する。俺は寝る前、確かにエアコンをつけていたはずなのに、部屋が暑いままのような気がするのだ。寧ろ、意識が落ちる寸前では汗が冷えて少し寒いくらいだったのに。

「……ぁ、あ……っ」

首や足に、汗が垂れる。体の中心がぞわぞわする。というか、なんか変な声が聞こえる……?

遠くから、甲高くて小さな声が脳に流れてくる。それが自分の声だと自覚したところで、瞼を上げた。

見慣れた天井が見える。エアコンの方を見れば、やはり稼働していた。やけに身体が火照っていて、ちゅくちゅくといういやらしい音が聞こえる。嫌な予感がして下半身を見れば、ぐっしょり濡れたスウェットと、その下で蠢く何かがいた。

「ふ……あ…ぁっ……?」

スウェットに手をかけようとしたところで、陰茎が緩く扱かれる。びくんと身体が痙攣して、息が抜けるように喘いだ。

下着に入り込んでいるのはクラゲさんであるとしか考えられない。犯人はきっと彼だ。こんな風に寝込みを襲われるとは思っていなかった。ちょっと悔しい。

下着の隙間に入っているせいでゆるい動きしかできないらしく、ゆっくりとした動きで股間にへばりつかれている。まさかずっとされていたのだろうか。気持ちいいのに射精には至らない快感に、腰が揺れる。

「あっつい……」

熱いのは俺の身体の方だ。

口から唾液が垂れていたのを拭って、身体を起こす。流石にソファを汚すのは、後のことを考えるとはばかれる。

顔が熱いし、どきどきする。クラゲさんの触手が後ろの窄まりを撫でている。

服を着たままって……もどかしいけど、気持ちいいかも……?って、だめだめ、最近クラゲさんのせいで性的観念が変わってきているし、このまま流されてはだめだ。

……とはいえ、拒否をする理由は一切無くて。

下着の中ではきっと、あの金色の目を持った彼が悠々と俺の肌を弄んでいるのだろう。目に見えない場所にいるから、具体的に何をされているのかは想像することしかできない。

「は、ン……」

あの触手がたくさん絡みついているのだろうか。それともクラゲさんの薄い体が股間の隅々まで張り付いているのだろうか。どこまで、触られたんだろう。

前屈みでぞくぞくする中心を押さえながら、自室の布団にふらりと倒れ込む。両膝をついたままうつ伏せになって、下着の中のぬめりに身を震わせた。

何されているのかわからない、といった状況に思ったよりも気分が昂ぶってしまったようで、なかなかズボンを下げれずにいた。

「やば……このまま、いきそ……」

対して擦られていない中心が、破裂してしまいそうなくらい勃ちあがっている。頭がくらくらしてきて馬鹿になりそうだ。

布の上からクラゲさんを撫でると、お返しと言わんばかりに竿がきゅうっと締め付けられた。










(この後クラゲさんといっぱい遊んだ裕也は、湯船に浸かりながらアイスを食べてみるという贅沢で至福のひとときを過ごした)
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