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続 その後の話
46 あの人の今は
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会社の廊下を歩いていると、どっと笑い声を上げながら歩く別部署の集団に遭遇した。集団の明るい雰囲気に目を回しそうになりながら、邪魔にならないように端っこを歩いていたとき、集団の中に見覚えのある人がいることに気づいた。
絵莉さんと、彼女に寄り添う誰か。彼は確か、佐野くん、だったか。俺の元カノである絵莉さんの浮気相手だ。
会話を聞いたところによると、佐野は取引先企業の社員だったらしい。社長御子息で、生まれながら出世ルートに入っているいわば勝ち組だったようだ。そんな彼が絵莉さんを抱き寄せると、周囲の人間たちが沸いた。
がやがやと楽しげなその集団を、迷惑そうに見ている社員もいる。あの部署では公認の交際関係、という感じらしい。俺との交際は隠していたけど、佐野くんとの交際は公表してしまったようだ。大丈夫だろうか。社内恋愛…ということには、なるのか、ならないのか。何もトラブルにならないといいんだけど。
もしかしたら俺も、仕事の都合で彼らと関わらざるを得ないときが来るかもしれない。佐野くんが俺のことをどれくらい知っているのかわからないが、厄介なことには違いなかった。俺の精神面にも良くない。
そそくさとその場から離れようとしたとき、一瞬だけ絵莉さんと目があった。彼女は俺からすぐに目を離すと、部署の人たちの会話に入っていった。
……安元さんに言っておこうかな。取引先企業の佐野くんと、あまりいい関係じゃないてことを。
私情で仕事に迷惑をかけるのは申し訳ないが、さらなる失対を犯すのも嫌だ。理由を聞かれるだろうから、答え方を考えないといけないな。元カノの浮気相手……って説明したらいいかな。なんか上司にこんなこと知られるの嫌だな。
安元さんは俺と絵莉さんが付き合っていたことを知っているから、色々察してくれるかもしれない。別れた理由は教えてないのだが、この際言ってしまってもいいか。なんて思えるくらいには、俺は彼のことを信頼している。ガラの悪そうな人たちと歩いているときもあるけど、口は硬いし気配りもできるし。
と思って安元さんに相談しに行ったのだが、どうやら既に手回しをしていてくれたらしく、サラッと話が終わった。当然のように佐野くんと俺の関係を知っていたけど、……え、俺、安元さんに話した覚えが無いんだけど?知らないところで話が行ってたのかな……でも、絵莉さんが話したとは思えないし……。
顔が広い田川もそういうところがある。世渡り上手な人の情報網の広さはいつまで経っても不可解だ。あまりにも知っていて当然という態度で淡々と言われたため、言及する余地も無かったのだけど。
絵莉さんと、彼女に寄り添う誰か。彼は確か、佐野くん、だったか。俺の元カノである絵莉さんの浮気相手だ。
会話を聞いたところによると、佐野は取引先企業の社員だったらしい。社長御子息で、生まれながら出世ルートに入っているいわば勝ち組だったようだ。そんな彼が絵莉さんを抱き寄せると、周囲の人間たちが沸いた。
がやがやと楽しげなその集団を、迷惑そうに見ている社員もいる。あの部署では公認の交際関係、という感じらしい。俺との交際は隠していたけど、佐野くんとの交際は公表してしまったようだ。大丈夫だろうか。社内恋愛…ということには、なるのか、ならないのか。何もトラブルにならないといいんだけど。
もしかしたら俺も、仕事の都合で彼らと関わらざるを得ないときが来るかもしれない。佐野くんが俺のことをどれくらい知っているのかわからないが、厄介なことには違いなかった。俺の精神面にも良くない。
そそくさとその場から離れようとしたとき、一瞬だけ絵莉さんと目があった。彼女は俺からすぐに目を離すと、部署の人たちの会話に入っていった。
……安元さんに言っておこうかな。取引先企業の佐野くんと、あまりいい関係じゃないてことを。
私情で仕事に迷惑をかけるのは申し訳ないが、さらなる失対を犯すのも嫌だ。理由を聞かれるだろうから、答え方を考えないといけないな。元カノの浮気相手……って説明したらいいかな。なんか上司にこんなこと知られるの嫌だな。
安元さんは俺と絵莉さんが付き合っていたことを知っているから、色々察してくれるかもしれない。別れた理由は教えてないのだが、この際言ってしまってもいいか。なんて思えるくらいには、俺は彼のことを信頼している。ガラの悪そうな人たちと歩いているときもあるけど、口は硬いし気配りもできるし。
と思って安元さんに相談しに行ったのだが、どうやら既に手回しをしていてくれたらしく、サラッと話が終わった。当然のように佐野くんと俺の関係を知っていたけど、……え、俺、安元さんに話した覚えが無いんだけど?知らないところで話が行ってたのかな……でも、絵莉さんが話したとは思えないし……。
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