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if集
【If】蛇のウロコ 蛇男編④
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※裕也と安元さんと付き合ってる
※安元さんは自分が蛇男であることを教えているが、実際に蛇の姿は見せていない(つもり)。本当は自分が気づいてないときに思いっきり見られている。
※前話『安元さんに浮気を疑われる話』のその後の話(かもしれない)
という前提の話
腰に誰かが抱きついている。目を開けると、見慣れた上司の頭が俺の腹にくっついていた。
微睡みの中で、無意識にその髪を撫でていた。普段きっちりセットされている髪が、俺の前では乱れている。
カーテンからは淡い朝日が漏れてきていた。朝方だが、もう少し寝よう。
彼の腕が巻き付いた腰が少々苦しい。視界の端に見えた自分の腕に、蛇が絡みついた痕のような、掴まれたあとの赤いあざがついている。
彼は俺を腕や手で締め付けるのが好きだ。蛇の特性を受け継いでいるのか、獲物をぐるぐる巻にしてるととても安心するらしい。セックスしてるときも手首や腰を掴んでは、色濃く後をつけている。彼の力は強くて、正直いつも痛いのだが、「痛い」と言ってしまうと彼が行為を止めてしまうことを知っているからいつも好きにさせている。
獲物扱いされてることは遺憾だが、こうされてると安心してしまう自分もいた。仕返しと言わんばかりにその頭を抱きしめたら、硬い皮膚に触れた。
上半身を起こして上司の顔をじっくり見る。ぼんやりと頬に浮き上がった銀色の鱗が、朝日をきらりと反射した。よく見るとその銀色は薄い茶色の模様がついているが、銀の輝きのせいで影の役割を果たしている。
「きれい」
指で鱗の形をなぞると、恋人はくすぐったそうに身じろいだ。俺の腰を抱え直して、再び眠りに入っていく。彼の動きに合わせて滑らかに動く鱗から目を離せない。
もう一度鱗を撫でる。人間の肌より温度が低く、微細なでこぼこがある。
きっと今、彼の瞼の下では瞳孔が縦に割れていることだろう。気を抜いてる時ほど本来の姿が出てしまう、と嘆いていた上司は今、無防備にも俺に寝顔を晒している。
彼はこの、本来の蛇の姿を俺に見せたがらない。それは、蛇男としての代々継がれた歴史が大きく関わっているようだった。
どの歴史においても、人々に嫌がられ、蔑まれた蛇の姿。それを人間に見せるのは、どうしても抵抗があるようだ。俺としては、蛇の姿の安元さんもきれいだと思っているし、もっと見せてほしいと思うけど……。彼の心の準備ができるまでは、強請らないようにすると決めた。
それに、案外彼のこの姿を見れるチャンスは意外と多い。朝方早く目を覚ましたら、こうした姿は見れるし。セックスしてる時だって、鱗が浮き出ているときがある。
セックス中にそういうことになると、彼は「見るな」と言って俺の目を手で覆ってくる。だけどたまーに、自分の姿に気づかず行為を続けられることがある。手足の鱗は直ぐに気づくが、自分の顔に出てしまう蛇の姿にはとことん自覚できていない節があった。それをいいことに、何も指摘せず楽しくなってる俺も俺だけど。
普段は俺に嫌われたくなくて必死で取り繕うくせに、こういうところでボロが出てしまう。ボロが出ていることに気づかないで、俺の腕の中で安心しきった顔をする。ふふ、変なの
こんなところも愛おしく思っている。
「ん……おはよう。先に起きていたのか」
「おはようございます」
「……俺の顔になにか付いてるのか?」
「目と鼻と口が」
「そういうこと聞いてんじゃねえよ」
「何でもないですって」
「じゃあなぜそんなに見て……おい、何ニヤけてんだ。全部吐け、おい」
「何もないって言ってるじゃないですか」
朝起きた安元さんの頬からは、鱗が消えていた。それを見て思わず笑みがこぼれた。
※安元さんは自分が蛇男であることを教えているが、実際に蛇の姿は見せていない(つもり)。本当は自分が気づいてないときに思いっきり見られている。
※前話『安元さんに浮気を疑われる話』のその後の話(かもしれない)
という前提の話
腰に誰かが抱きついている。目を開けると、見慣れた上司の頭が俺の腹にくっついていた。
微睡みの中で、無意識にその髪を撫でていた。普段きっちりセットされている髪が、俺の前では乱れている。
カーテンからは淡い朝日が漏れてきていた。朝方だが、もう少し寝よう。
彼の腕が巻き付いた腰が少々苦しい。視界の端に見えた自分の腕に、蛇が絡みついた痕のような、掴まれたあとの赤いあざがついている。
彼は俺を腕や手で締め付けるのが好きだ。蛇の特性を受け継いでいるのか、獲物をぐるぐる巻にしてるととても安心するらしい。セックスしてるときも手首や腰を掴んでは、色濃く後をつけている。彼の力は強くて、正直いつも痛いのだが、「痛い」と言ってしまうと彼が行為を止めてしまうことを知っているからいつも好きにさせている。
獲物扱いされてることは遺憾だが、こうされてると安心してしまう自分もいた。仕返しと言わんばかりにその頭を抱きしめたら、硬い皮膚に触れた。
上半身を起こして上司の顔をじっくり見る。ぼんやりと頬に浮き上がった銀色の鱗が、朝日をきらりと反射した。よく見るとその銀色は薄い茶色の模様がついているが、銀の輝きのせいで影の役割を果たしている。
「きれい」
指で鱗の形をなぞると、恋人はくすぐったそうに身じろいだ。俺の腰を抱え直して、再び眠りに入っていく。彼の動きに合わせて滑らかに動く鱗から目を離せない。
もう一度鱗を撫でる。人間の肌より温度が低く、微細なでこぼこがある。
きっと今、彼の瞼の下では瞳孔が縦に割れていることだろう。気を抜いてる時ほど本来の姿が出てしまう、と嘆いていた上司は今、無防備にも俺に寝顔を晒している。
彼はこの、本来の蛇の姿を俺に見せたがらない。それは、蛇男としての代々継がれた歴史が大きく関わっているようだった。
どの歴史においても、人々に嫌がられ、蔑まれた蛇の姿。それを人間に見せるのは、どうしても抵抗があるようだ。俺としては、蛇の姿の安元さんもきれいだと思っているし、もっと見せてほしいと思うけど……。彼の心の準備ができるまでは、強請らないようにすると決めた。
それに、案外彼のこの姿を見れるチャンスは意外と多い。朝方早く目を覚ましたら、こうした姿は見れるし。セックスしてる時だって、鱗が浮き出ているときがある。
セックス中にそういうことになると、彼は「見るな」と言って俺の目を手で覆ってくる。だけどたまーに、自分の姿に気づかず行為を続けられることがある。手足の鱗は直ぐに気づくが、自分の顔に出てしまう蛇の姿にはとことん自覚できていない節があった。それをいいことに、何も指摘せず楽しくなってる俺も俺だけど。
普段は俺に嫌われたくなくて必死で取り繕うくせに、こういうところでボロが出てしまう。ボロが出ていることに気づかないで、俺の腕の中で安心しきった顔をする。ふふ、変なの
こんなところも愛おしく思っている。
「ん……おはよう。先に起きていたのか」
「おはようございます」
「……俺の顔になにか付いてるのか?」
「目と鼻と口が」
「そういうこと聞いてんじゃねえよ」
「何でもないですって」
「じゃあなぜそんなに見て……おい、何ニヤけてんだ。全部吐け、おい」
「何もないって言ってるじゃないですか」
朝起きた安元さんの頬からは、鱗が消えていた。それを見て思わず笑みがこぼれた。
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