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続 その後の話
43 お化けひきつけーる①
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あの占い師さんに興味本位で「あの香水と逆の効果があるものはあるか」と尋ねに行ったら、"お化けひきつけーる"も貰いました。
手のひらにある香水の瓶は、"お化けひきつけーる"と書いてある。例の占い師に頂いたものだ。嫌がーるとそっくりのファンシーなデザイン、どこか気が抜けそうなゆるいフォント。
その香水をつけたのは、ただの好奇心だった。
こう言っては何だけど、クラゲさんは俺のことが好きだ。たぶん、かなり。いっぱい触ってくるし、俺のことをよく目で追っているし、こっちからスキンシップしてあげると喜んでくれる。
だけどもしも、もしもこの香水をつけたら、どうなっちゃうんだろう。今以上にべったりになってくれるのかな。体に抱きつかれてぎゅうってされて、離れなくなったりして。きっとかわいいだろうな。
そんな軽い気持ちでつけただけだった。が、これはそんな気軽につけてはいけないものだったらしい。そんなこと、"お化け嫌がーる"のときに学んだはずなのに。
浴室に足を踏み入れた途端、視界が反転した。洗い場の硬い床に倒れる直前、柔らかいものに庇われる。誰かが上に乗ってきて、服がびちゃりと濡れていく。
「ーーっ、あぶな……っ」
俺を床に引き倒した相手は、確認せずともわかった。黄金の双眼がぴかぴかしながら、目の前に迫ってきている。よく見ると、目も透明な体もいつもより膨張している。
まずい。思っていたより、効いてるみたいだ。
「く、くらげさ」
服の裾から生温い触手が入ってきて、口を噤む。普段より性急なそれは不器用に俺の腹を弄っていて、少しくすぐったい。
今は昼間で、俺も服を着たままだ。この後は夕飯の支度をしないといけないし、まだ彼とそういうことをする気分にはなれない。
彼の横腹をぺしぺし叩いて咎める。離れて、と頼むが、クラゲさんは俺の上から退こうとしない。それどころかますます俺の体を這う触手の数は増えて行って、身動ぎもできそうにないくらい身体を拘束された。
「クラゲさん……?こ、こわいよ」
普段と違う様子に怖くなって、弱々しい声が出る。俺が怯えると大抵のことはやめてくれるのだが、クラゲさんは聞く耳も持たない感じだ。俺の声が届いてくれているのかも怪しい。
びり、と布を破られる音がした。さっきまで布の下を這っていた触手に、シャツが引きちぎられている。邪魔だと言いたげな手付きでどんどん服が取り払われていく。その様子を見た瞬間、ぞわりと鳥肌が立った。
これは本気でまずい
大したことない外着だったから破られてもそこまでダメージがないが、状況は何も良くない。いやだ、離れてと抵抗するが、この大きな怪物の前で俺の力が叶うわけがなかった。
思いっきり理性が飛んでるクラゲさんが、何をしてくるかなんて微塵も想像できない。軽い気持ちで怪物を揶揄しようとしたことが間違いだったのだ。
びりびり、という音が浴室に響いていく音を聞きながら、俺は歯を噛み締める。今後のことを想像して、身構えた。
手のひらにある香水の瓶は、"お化けひきつけーる"と書いてある。例の占い師に頂いたものだ。嫌がーるとそっくりのファンシーなデザイン、どこか気が抜けそうなゆるいフォント。
その香水をつけたのは、ただの好奇心だった。
こう言っては何だけど、クラゲさんは俺のことが好きだ。たぶん、かなり。いっぱい触ってくるし、俺のことをよく目で追っているし、こっちからスキンシップしてあげると喜んでくれる。
だけどもしも、もしもこの香水をつけたら、どうなっちゃうんだろう。今以上にべったりになってくれるのかな。体に抱きつかれてぎゅうってされて、離れなくなったりして。きっとかわいいだろうな。
そんな軽い気持ちでつけただけだった。が、これはそんな気軽につけてはいけないものだったらしい。そんなこと、"お化け嫌がーる"のときに学んだはずなのに。
浴室に足を踏み入れた途端、視界が反転した。洗い場の硬い床に倒れる直前、柔らかいものに庇われる。誰かが上に乗ってきて、服がびちゃりと濡れていく。
「ーーっ、あぶな……っ」
俺を床に引き倒した相手は、確認せずともわかった。黄金の双眼がぴかぴかしながら、目の前に迫ってきている。よく見ると、目も透明な体もいつもより膨張している。
まずい。思っていたより、効いてるみたいだ。
「く、くらげさ」
服の裾から生温い触手が入ってきて、口を噤む。普段より性急なそれは不器用に俺の腹を弄っていて、少しくすぐったい。
今は昼間で、俺も服を着たままだ。この後は夕飯の支度をしないといけないし、まだ彼とそういうことをする気分にはなれない。
彼の横腹をぺしぺし叩いて咎める。離れて、と頼むが、クラゲさんは俺の上から退こうとしない。それどころかますます俺の体を這う触手の数は増えて行って、身動ぎもできそうにないくらい身体を拘束された。
「クラゲさん……?こ、こわいよ」
普段と違う様子に怖くなって、弱々しい声が出る。俺が怯えると大抵のことはやめてくれるのだが、クラゲさんは聞く耳も持たない感じだ。俺の声が届いてくれているのかも怪しい。
びり、と布を破られる音がした。さっきまで布の下を這っていた触手に、シャツが引きちぎられている。邪魔だと言いたげな手付きでどんどん服が取り払われていく。その様子を見た瞬間、ぞわりと鳥肌が立った。
これは本気でまずい
大したことない外着だったから破られてもそこまでダメージがないが、状況は何も良くない。いやだ、離れてと抵抗するが、この大きな怪物の前で俺の力が叶うわけがなかった。
思いっきり理性が飛んでるクラゲさんが、何をしてくるかなんて微塵も想像できない。軽い気持ちで怪物を揶揄しようとしたことが間違いだったのだ。
びりびり、という音が浴室に響いていく音を聞きながら、俺は歯を噛み締める。今後のことを想像して、身構えた。
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