白猫の嫁入り

キルキ

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24 嫉妬

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「でもそれは、みきちゃんが自分で伝えるべきだよ」
「えー……、緊張するもん」
「きみが直接伝えない限りは、いつまで立っても想いが伝わらないよ。人伝てに好きって言われても、あんまり相手のことがわからないでしょ?」

彼女が大輝を好きになったのだって、彼と直接接し合う日々があったからだ。なのに大切な思いを伝えるときは顔を合わせないようにしたいだなんて、そんなの大輝に本気にしてもらえるわけ無い。

「大輝はまだ君の手に届く場所にいるんだから。神様に頼るのもいいけれど、なぁ、ここは自分で頑張ってみない?」

まあ、俺がこんなことを言えるのも、大輝がみきちゃんを酷く突き放したりしないってわかっているからだけど。

とにかくあとは彼女に頑張ってもらうしかない。頑張って本気の気持ちを彼に伝えてやってくれ。そうしたら俺の使命もようやく果たされるから……。

みきちゃんは俺の話を神妙な面持ちで聞いていた。そして、大輝が部屋に戻ってくるとすぐにここを出ていってしまった。たぶん俺の言いたいことは伝わっているはずだし、あの子にあとは任せよう。

「……あんな事を言ったからには、俺もちゃんと告白しないとな」

使命が果たされたら、きっと普通に話せるようになる。そうしたら今度は俺の番だ。

俺が大輝に自分の気持ちを……やばい、考えただけで脳みそが痛くなってきた。

どういう声色で、シチュエーションで言えばいいんだ。自分のそういう姿が想像つかなくて、立ったまま頭を抱えていると、背後から伸びてきた大きな手が俺の方を叩いた。

「みきちゃんと何か話していたよね」

……俺たちの話を聞かれていたのか?

ゆーっくり振り返ると、少し不機嫌そうな大輝の顔。な、なんか怒ってる……よね。

「内容は聞こえなかったんだけどさ。何話していたのか気になったんだけど、でもどうせ教えてくれないんでしょう」

やばい、本当に怒ってる!

接近してくる大輝の雰囲気に押されて後退りする。おろおろしながら手のひらでガードしても、彼の足は止まってくれない。

もうすぐ壁まで来ちゃうんですけど。身動きできなくなるんですけど。

「どうして俺とは何も話してくれないのか?」

俺の顔のすぐ横に、とん、と壁に手を置かれた。責め立てるような瞳に見下されて、背筋がゾクリとする。

「ねえ、とらまるの好きって、どういう好きなの。きみが言っているのって、小さな子供が言っているような好き?」

何が起きてるんだ、これ。わかんないってば。

「にゃ……っ」
「わかってるよ。君は何も言うつもりがないってこと」

言わないんじゃなくって、言えないんだってば。物理的に!

俺に詰め寄る大輝は怒っているようなのに、どこか悲しそうな表情を浮かべていた。そんな顔をさせた原因は紛れもなく俺だ。

そのことに申し訳無さがあるものの、どうしてなのか俺の中には興奮に似た欲が生まれつつあった。鋭い目で見下されていることに、大輝にそんな表情をさせているということに、どきどきしてくる。

「…うぁ…、だいき……っ」

シャツの中に大輝の手が入ってきて、変な声が出た。これ、本当に自分の声?

直接肌を撫でられるのはお風呂でもあったけど、今日はそれとは違う手付きだ。なんというか……やらしさがある。
へそや腰を爪でかりかり引っかかれる。自然に出そうになった声は大輝の唇に飲まれていった。この間のキスとは違う、舌が絡み合うキスだ。

やばい、腰が抜けそう……。

キスの合間に深く息を吸う。僅かな休憩時間に息を荒げていると、臍を掻いていた大輝の手が俺の下腹をぐっと押した。その瞬間、ぞくぞくしたものが頭に走る。

「は、あぅぅっ」

かくりと膝の力が抜けて、大輝の腕に抱きとめられた。

なにこれ。身体がすごく熱くなって……、どきどきする。

腕を大輝の首に回して目を回す俺に、大輝が囁いた。

「話してくれないなら……、身体に聞いてみるしかなさそうだね」

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