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23 嫉妬
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大輝が俺のことを説明するためにでっち上げようとしたとき、みきちゃんがなにかに気づいたように声を上げた。続いて聞こえてきた言葉に、俺と大輝は何も言えなくなる。
「あれ?とらまるだ!あれ?猫ちゃんじゃなくなってるけど、どうして人間になったの?」
うっそだろおい。と思ったけど、彼女は既に確信したように俺を見ていた。これは……、とぼけたり嘘をついたりしても無駄だな。
大輝、ごめん。せっかく隠そうとしてくれたところ悪いけど、すぐにバレちゃったよ。猫の仕草とかはしてないはずなんだけどね。
なんてことだ、ひと目でバレてしまうなんて。子供の感というのは、恐ろしい。
◇
「……ということだから、俺もどうしてとらまるが人間になったのかは知らないんだよね。とらまるは話すことができないから、話を聞くこともできないし」
「ふぅん……」
みきちゃんが持ってきてくれたスナック菓子を食べながら、大輝がこれまでのことを説明しているのを聞いていた。みきちゃんはお行儀よく座ってお茶を飲みながら、たまに俺の方をちらりと見てくる。
思いかえすと、大輝に俺の事情を何も教えられてないんだなぁ。それにしてもみきちゃんが俺の正体に気づくと思わなかった。猫の姿で彼女と会ったのだって数回だけだし、どうしてあんなに早くわかったんだろう。
二人の話が終わると、大輝がみきちゃんの差し入れを仕舞うために部屋を出ていった。その間ずっとぼうっとしていると、みきちゃんの小さな手が俺に腕に触れてくる。
「ねえ、貴方は猫の神様なの?」
人間化したことで神らしさが出てしまっているが、残念ながら俺は神様ではない。首を振りながら「違うよ」と返すと、「普通に話せてるじゃない」と驚かれた。そういえば、大輝が俺のことを喋れない子って紹介していたな。
「君の前では特別ってことで。このことは秘密にしててよ?」
口元に人差し指を立ててお願いすると、みきちゃんは素直に頷いてくれた。よかったよかった。またややこしいことになるところだった。
……そうだ、彼女と話すなら、大輝が居ない今が絶好のチャンス。
「みきちゃんはどうして、大輝に想いを伝えたいの?」
「……大輝くんのお嫁さんになりたいから?」
本題を切り込むと、きらりと光る幼い目が俺を見上げる。なぜそんなことを聞くんだと言いたげな、不思議そうな表情をしていた。
「もしかしたらふられちゃうかもしれないのに、それでも想いを伝えたい?」
「……」
少し意地悪な質問をしてしまったかな。でも、これは確認なのだ。
自分の使命のこと考えると、俺は彼女にどうにかやる気を出してもらって告白させるしか道がない。だから、今後俺がみきちゃんに言うことはもうすでに確定していた。
だからこれは、俺のこの行動によって二人が深く傷ついたりしないか、関係にヒビが入ったりしないかの確認だ。
「……いいもん。だって、そんなことで大輝に嫌われるわけじゃないし。それに、大輝くん大人だから、すぐどっかにいっちゃうから……今のうちに……、」
今があるうちに、あの人に聞いてほしい。
……そうだね、人生って何があるかわからないから。だから、彼女がしたいと思っている今、それをすることが大切なんだ。
彼女からしてみれば、大学生なんて遠い存在だろうし。今後が不安になるのも理解できた。それに、……失ってしまったら、二度と話すことすらできないからね。
しょうがないな。俺は恋のキューピットにはなれないけど……、この一連の騒動を終わらせる後押しをしてやろう。
……大輝が俺のことを好きっていうのが本当かどうか関係なしに、この子はふられちゃうだろうけどね。あー、まだ胸が痛い。でも、きっとみきちゃんならば立ち直ってくれるだろう。だってこんなに強い子なのだから。
「あれ?とらまるだ!あれ?猫ちゃんじゃなくなってるけど、どうして人間になったの?」
うっそだろおい。と思ったけど、彼女は既に確信したように俺を見ていた。これは……、とぼけたり嘘をついたりしても無駄だな。
大輝、ごめん。せっかく隠そうとしてくれたところ悪いけど、すぐにバレちゃったよ。猫の仕草とかはしてないはずなんだけどね。
なんてことだ、ひと目でバレてしまうなんて。子供の感というのは、恐ろしい。
◇
「……ということだから、俺もどうしてとらまるが人間になったのかは知らないんだよね。とらまるは話すことができないから、話を聞くこともできないし」
「ふぅん……」
みきちゃんが持ってきてくれたスナック菓子を食べながら、大輝がこれまでのことを説明しているのを聞いていた。みきちゃんはお行儀よく座ってお茶を飲みながら、たまに俺の方をちらりと見てくる。
思いかえすと、大輝に俺の事情を何も教えられてないんだなぁ。それにしてもみきちゃんが俺の正体に気づくと思わなかった。猫の姿で彼女と会ったのだって数回だけだし、どうしてあんなに早くわかったんだろう。
二人の話が終わると、大輝がみきちゃんの差し入れを仕舞うために部屋を出ていった。その間ずっとぼうっとしていると、みきちゃんの小さな手が俺に腕に触れてくる。
「ねえ、貴方は猫の神様なの?」
人間化したことで神らしさが出てしまっているが、残念ながら俺は神様ではない。首を振りながら「違うよ」と返すと、「普通に話せてるじゃない」と驚かれた。そういえば、大輝が俺のことを喋れない子って紹介していたな。
「君の前では特別ってことで。このことは秘密にしててよ?」
口元に人差し指を立ててお願いすると、みきちゃんは素直に頷いてくれた。よかったよかった。またややこしいことになるところだった。
……そうだ、彼女と話すなら、大輝が居ない今が絶好のチャンス。
「みきちゃんはどうして、大輝に想いを伝えたいの?」
「……大輝くんのお嫁さんになりたいから?」
本題を切り込むと、きらりと光る幼い目が俺を見上げる。なぜそんなことを聞くんだと言いたげな、不思議そうな表情をしていた。
「もしかしたらふられちゃうかもしれないのに、それでも想いを伝えたい?」
「……」
少し意地悪な質問をしてしまったかな。でも、これは確認なのだ。
自分の使命のこと考えると、俺は彼女にどうにかやる気を出してもらって告白させるしか道がない。だから、今後俺がみきちゃんに言うことはもうすでに確定していた。
だからこれは、俺のこの行動によって二人が深く傷ついたりしないか、関係にヒビが入ったりしないかの確認だ。
「……いいもん。だって、そんなことで大輝に嫌われるわけじゃないし。それに、大輝くん大人だから、すぐどっかにいっちゃうから……今のうちに……、」
今があるうちに、あの人に聞いてほしい。
……そうだね、人生って何があるかわからないから。だから、彼女がしたいと思っている今、それをすることが大切なんだ。
彼女からしてみれば、大学生なんて遠い存在だろうし。今後が不安になるのも理解できた。それに、……失ってしまったら、二度と話すことすらできないからね。
しょうがないな。俺は恋のキューピットにはなれないけど……、この一連の騒動を終わらせる後押しをしてやろう。
……大輝が俺のことを好きっていうのが本当かどうか関係なしに、この子はふられちゃうだろうけどね。あー、まだ胸が痛い。でも、きっとみきちゃんならば立ち直ってくれるだろう。だってこんなに強い子なのだから。
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