15 / 30
15 日常
しおりを挟む
なんだろうこれ。えーと、手紙の差出人は……"みきより"。みきちゃんから貰った手紙か。
手紙の内容はありきたりのないものだ。今日は学校で縄跳びをした。給食で苦手なものが出た。数学のテストで100点を取った。みきちゃんの優しい気持ちがすごく伝わってくる。前世での妹を思い出して、少し泣けてきた。鶴や猫、ヘビなど様々な動物の形をした折り紙が机に飾られていた。これもきっとみきちゃんが大輝にあげたのだろう。
あれくらいの歳の子は、敬愛を"恋愛感情"として捉えてしまうことがある。だからもし仮にあの子が告白して振られたとしても、大人になればよき思い出となるはず……と思っていたんだけどな。
こうして直接彼女の想いの形を目にすると、胸に来るものがある。みきちゃんの想いを伝えると意気込んでおいて、一番彼女のことを理解できていなかったのは俺だったのだ。どんな形であれ、みきちゃんが大輝のことを大好きなことに変わりはない。
あの子、振られたらすごく傷つきそうだなぁ。
……どうすればいいんだろう。
このまま彼女の想いが冷めていくのを待てば誰も傷つかないんだけど、恋心が消えると限らないし。仮にそうだとしても俺の使命が果たせなくなる。
やっぱりあの子に告白してもらうしかないかぁ。
「はーあ……神様が余計なことをしなければこんなに悩まなくて済むのに。いや、そもそもあの子があんな願い事を俺にしなければ……」
大輝が居ないから、言いたい言葉がそのまま口から出てくる。
改めて辺りを見渡すと、部屋はそこそこ整頓されていた。大学生にしては物が少ないけど、至って普通の男子大学生の部屋だ。ベッドの脇に置かれた、小さな仏壇以外は。
「……誰だろう、この人たち」
二人の男女の写真が置いてある。目を凝らしてよく見れば、大輝にどことなく似ている気がした。えっ、これってもしかして?
「とらまる?」
背後から大輝の声が聞こえて飛び上がった。何も悪いことはしてないのに、やましいことをした気分になる。勝手に見てごめん。
片手に薬箱を持った大輝が、俺の視線の先を目で追う。
「ああ、写真を見てたのか。その人たちは、俺の家族なんだ。父さんと母さん。ふたりとも数年前に亡くなったんだ。……よかったら挨拶してあげて」
ああー、やっぱりそうだよなぁ。……辛いな…………。
続けて話を聞いたところ、両親がなくなってからは親戚のところで世話になっていたらしい。しかしあまり歓迎されてなかったから、大学入学をきっかけに縁を切る覚悟で家を出たと言う。思い切ったことをするものだ。
「父さん、母さん。この子がとらまるだよ。俺の新しい家族なんだ。本当は猫だったんだけど……この話は長くなるから、また今度ね」
喋らない俺の代わりに、大輝が仏壇に向かって話し始める。ずっとこうして話しかけてきたのだろうか。
家族が一番だった俺には、痛いほど彼の気持ちがわかる。一人は辛いし、寂しい。
「二人にはいつか会わせてやりたいって思っていたんだ。だから、今日とらまるが俺の部屋に来てくれて嬉しいよ」
家族は側にいないとだめなんだ。だから、こんな───こんなことはあってはいけない。
手紙の内容はありきたりのないものだ。今日は学校で縄跳びをした。給食で苦手なものが出た。数学のテストで100点を取った。みきちゃんの優しい気持ちがすごく伝わってくる。前世での妹を思い出して、少し泣けてきた。鶴や猫、ヘビなど様々な動物の形をした折り紙が机に飾られていた。これもきっとみきちゃんが大輝にあげたのだろう。
あれくらいの歳の子は、敬愛を"恋愛感情"として捉えてしまうことがある。だからもし仮にあの子が告白して振られたとしても、大人になればよき思い出となるはず……と思っていたんだけどな。
こうして直接彼女の想いの形を目にすると、胸に来るものがある。みきちゃんの想いを伝えると意気込んでおいて、一番彼女のことを理解できていなかったのは俺だったのだ。どんな形であれ、みきちゃんが大輝のことを大好きなことに変わりはない。
あの子、振られたらすごく傷つきそうだなぁ。
……どうすればいいんだろう。
このまま彼女の想いが冷めていくのを待てば誰も傷つかないんだけど、恋心が消えると限らないし。仮にそうだとしても俺の使命が果たせなくなる。
やっぱりあの子に告白してもらうしかないかぁ。
「はーあ……神様が余計なことをしなければこんなに悩まなくて済むのに。いや、そもそもあの子があんな願い事を俺にしなければ……」
大輝が居ないから、言いたい言葉がそのまま口から出てくる。
改めて辺りを見渡すと、部屋はそこそこ整頓されていた。大学生にしては物が少ないけど、至って普通の男子大学生の部屋だ。ベッドの脇に置かれた、小さな仏壇以外は。
「……誰だろう、この人たち」
二人の男女の写真が置いてある。目を凝らしてよく見れば、大輝にどことなく似ている気がした。えっ、これってもしかして?
「とらまる?」
背後から大輝の声が聞こえて飛び上がった。何も悪いことはしてないのに、やましいことをした気分になる。勝手に見てごめん。
片手に薬箱を持った大輝が、俺の視線の先を目で追う。
「ああ、写真を見てたのか。その人たちは、俺の家族なんだ。父さんと母さん。ふたりとも数年前に亡くなったんだ。……よかったら挨拶してあげて」
ああー、やっぱりそうだよなぁ。……辛いな…………。
続けて話を聞いたところ、両親がなくなってからは親戚のところで世話になっていたらしい。しかしあまり歓迎されてなかったから、大学入学をきっかけに縁を切る覚悟で家を出たと言う。思い切ったことをするものだ。
「父さん、母さん。この子がとらまるだよ。俺の新しい家族なんだ。本当は猫だったんだけど……この話は長くなるから、また今度ね」
喋らない俺の代わりに、大輝が仏壇に向かって話し始める。ずっとこうして話しかけてきたのだろうか。
家族が一番だった俺には、痛いほど彼の気持ちがわかる。一人は辛いし、寂しい。
「二人にはいつか会わせてやりたいって思っていたんだ。だから、今日とらまるが俺の部屋に来てくれて嬉しいよ」
家族は側にいないとだめなんだ。だから、こんな───こんなことはあってはいけない。
13
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。


【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる