白猫の嫁入り

キルキ

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13 日常

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人間の身体を手に入れて一番嬉しかったことが、人と同じものを食べれるようになったことだ。猫は食べれない食べ物があるし、人間の作る料理だって食べさせてもらえない。だから生前と同じように食事を取れることが心底嬉しかったのだ。

最初の頃は大輝も、「とらまるにこの料理食べさせて大丈夫なのか?」という顔をしていたけど、俺が人間の食べ物も平気だとわかると色々な料理を作ってくれた。

そして、彼の手料理はすごく美味しいのだ。

久しぶりに味噌汁を飲んだときは、まじで泣きそうになった。見た目は異国人っぽいかもしれないけど、中身は純日本人の男なのだ。味噌汁断ちは拷問に等しい仕打ちである。日本食バンザイ。

味噌汁以外にもハンバーグやカレーライスなど、俺にとっては懐かしの食べ物が食卓に並べられた。お菓子も食べれるし。人間って最高。傍から見たら完全なヒモだけど。

そして、忘れそうになってきているが俺には神様から下された使命がある。大輝の友達であるみきちゃんの秘めたる想いを大輝に伝えることだ。

だけど、現状だとそれが達成できなさそうなのだ。神様の余計な図りのせいで言葉に制限がかかっているから、俺の口から彼に伝えることはできない。

そこで考えたのは、みきちゃんを説得して第きに告白してもらうということである。これなら手っ取り早いし、というかこれしか方法がない。問題なのは、前回ここに遊びに来て以来彼女と会う機会がまったくないことだが……。

と一人部屋で唸っていると、キッチンにつながるふすまが開かれた。部屋の外にいたのは、エプロンをつけてお玉を手に持っている完全主夫スタイルの大輝だ。

「とらまるー、シチュー出来たからおいで」
「だいきー!好きだよ!」

勢いをつけて大輝に飛びつくと、彼の長い腕に難なく支えられる。続きはシチュー食べてから考えよ!

シチューは好きな料理の中の一つだ。煮込み料理にハズレはない。大輝の腕に手を絡めながら食卓に向かうと、一口大の野菜が沈められたホワイトシチューが湯気を立てながら俺を待っていた。美味しそう。

大輝は料理が上手だけど、いつから自分で作るようになったのだろう。大学一年と言っていたから春から一人暮らしを始めたと考えると、その間に料理の練習をしたのだろうか……それにしては上手すぎる気もする。

そこそこの時間を彼とともに過ごしたつもりだったけど、俺はあまり彼のことを知らないんだなぁ。もっと仲良くなれたら、いろいろわかってくるのだろうか。

とろみのある白い汁をスプーンで掬って食べる。鉛筆同様、箸を使うことも今の俺にとっては難しいから、シチューじゃなくても俺のお供はスプーンかフォークだ。使い方わわかっているのになぁ。

あ、ブロッコリーが入っている。前世の母はブロッコリーが嫌いで、シチューにも入っていることがなかったから新鮮だ。

「とらまるはシチューが好きなの?」
「好き!」
「そっかぁ~。また作ってあげるから、ゆっくり食べな?」

久しぶりに会話が成立した気がする。すごく嬉しい!

給食でブロッコリー入りシチューを食べた覚えはあるけど、かなり前のことだからどんな感じだったか忘れたな。楽しみだ。なんて思って気を急かしたせいで、冷めてないシチューをうっかり口に入れてしまった。

「っ……ぅ……」
「…もしかして火傷した?」
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