9 / 30
9 家猫
しおりを挟む
当たり前だ。主語が抜けてるんだから。日本語っていうのは主語が欠けたら、誤解が産まれやすいっていうのに。どうして神様がそれをわかっていないんだ!
要するに俺は、みきちゃんの願いを叶えるために「大輝くん大好き」しか言えない身体になっているらしい。先程の俺のびっくり発言は、そのせいで起きた悲劇だ。
……大輝、どう思ったんだろう。きっと不快に思っただろうな。そもそも男同士だし。俺、半分猫半分人間だし。
ちらりと大輝の顔色をうかがう。もしも怒っていたらどうしよう。大輝に嫌われたら、けっこうヘコむ……って、おい。
なに、その顔
「だ、だいき?」
「~~っ」
なんでそんな、顔赤らめてんだよ。なにこのくすぐったい雰囲気は。つられてまた顔が熱くなってきたし。二人で赤面してるせいで部屋が少女漫画みたいな空気になってるし。
思いもしなかった反応に、声が詰まる。そんなになるまでにびっくりしたのだろうか。それとも、見かけによらず告白されたことがない純情男子だったのか?まずい、なんて言ってあげたら良いのだろう。
俺が大輝が好きなのは本当だけど、でもそういう意味は含まれていない"普通の好き"だ。だから、早く誤解を解いてあげないと。
そうだ、紙とペンさえあれば意思疎通できる!猫がなんで文字がかけるのかとか、そういうのは適当に嘘をでっち上げたらいいだろう。
「……だいき、」
「いいから服着ろ!ばか!」
「へぶっ」
大輝が投げたブランケットが、俺の顔面にクリーンヒットする。あぶない、舌を噛みそうになった。
大輝って、バカとかいう荒っぽい言葉話したりするんだ。優男っぽい印象があったから、少し驚いた。
顔からブランケットを退けると、そこに大輝の姿は無かった。バタバタという騒がしい足音が遠くから聞こえて、ため息をつく。
『困ったな。娘の気持ちはちっとも伝わってないようだ』
本当に困っているのかわからない声色で、神様は言う。
『つまりは、お前の伝え方が甘いということ。しばらく時間を与えるから、それまでに願いを叶えてやりなさい。さすれば、お前の要望も聞いてやろう』
『え、まって、もうどこかに行っちゃうの神様?待ってくれ、ちょっと俺の話を……』
『使命を忘れるなよ。ではさらば』
『このままだといつまで経っても使命が果たせないってば!ちょっと!』
その瞬間から、神様の声が聞こえなくなる。おいおい、これからどうすればいいっていうんだ。
打ちひしがれていると、ふすまの方から大輝がこちらを恐る恐る覗き込んできた。手に持っているのは、俺の服だろうか。俺のためにわざわざ探してきてくれたのか。
「これ、服だけど……」
俺の様子をうかがいながら、大輝がゆっくり近寄ってくる。彼の声色はいつもより俺を気遣うようなもので、違和感がすごい。
差し出された服を両手で受け取って、その場で身につける。下着にTシャツに半ズボン。全部大きめなサイズだったけど簡単な服装だったからすぐに着ることができた。
「と、とらまる……?」
「んにゃ、え、あ……」
ありがとう、って言いたいんだけど、ちゃんと言えるだろうか。多分無理だけど、一応試してみるか。
「好き……」
あっ駄目だこれ。
思うままにならない自分の声を聞いて、俺の平凡な生活はまだまだ程遠いということを悟った。
要するに俺は、みきちゃんの願いを叶えるために「大輝くん大好き」しか言えない身体になっているらしい。先程の俺のびっくり発言は、そのせいで起きた悲劇だ。
……大輝、どう思ったんだろう。きっと不快に思っただろうな。そもそも男同士だし。俺、半分猫半分人間だし。
ちらりと大輝の顔色をうかがう。もしも怒っていたらどうしよう。大輝に嫌われたら、けっこうヘコむ……って、おい。
なに、その顔
「だ、だいき?」
「~~っ」
なんでそんな、顔赤らめてんだよ。なにこのくすぐったい雰囲気は。つられてまた顔が熱くなってきたし。二人で赤面してるせいで部屋が少女漫画みたいな空気になってるし。
思いもしなかった反応に、声が詰まる。そんなになるまでにびっくりしたのだろうか。それとも、見かけによらず告白されたことがない純情男子だったのか?まずい、なんて言ってあげたら良いのだろう。
俺が大輝が好きなのは本当だけど、でもそういう意味は含まれていない"普通の好き"だ。だから、早く誤解を解いてあげないと。
そうだ、紙とペンさえあれば意思疎通できる!猫がなんで文字がかけるのかとか、そういうのは適当に嘘をでっち上げたらいいだろう。
「……だいき、」
「いいから服着ろ!ばか!」
「へぶっ」
大輝が投げたブランケットが、俺の顔面にクリーンヒットする。あぶない、舌を噛みそうになった。
大輝って、バカとかいう荒っぽい言葉話したりするんだ。優男っぽい印象があったから、少し驚いた。
顔からブランケットを退けると、そこに大輝の姿は無かった。バタバタという騒がしい足音が遠くから聞こえて、ため息をつく。
『困ったな。娘の気持ちはちっとも伝わってないようだ』
本当に困っているのかわからない声色で、神様は言う。
『つまりは、お前の伝え方が甘いということ。しばらく時間を与えるから、それまでに願いを叶えてやりなさい。さすれば、お前の要望も聞いてやろう』
『え、まって、もうどこかに行っちゃうの神様?待ってくれ、ちょっと俺の話を……』
『使命を忘れるなよ。ではさらば』
『このままだといつまで経っても使命が果たせないってば!ちょっと!』
その瞬間から、神様の声が聞こえなくなる。おいおい、これからどうすればいいっていうんだ。
打ちひしがれていると、ふすまの方から大輝がこちらを恐る恐る覗き込んできた。手に持っているのは、俺の服だろうか。俺のためにわざわざ探してきてくれたのか。
「これ、服だけど……」
俺の様子をうかがいながら、大輝がゆっくり近寄ってくる。彼の声色はいつもより俺を気遣うようなもので、違和感がすごい。
差し出された服を両手で受け取って、その場で身につける。下着にTシャツに半ズボン。全部大きめなサイズだったけど簡単な服装だったからすぐに着ることができた。
「と、とらまる……?」
「んにゃ、え、あ……」
ありがとう、って言いたいんだけど、ちゃんと言えるだろうか。多分無理だけど、一応試してみるか。
「好き……」
あっ駄目だこれ。
思うままにならない自分の声を聞いて、俺の平凡な生活はまだまだ程遠いということを悟った。
2
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。


【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる