白猫の嫁入り

キルキ

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7 家猫

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みきちゃんは夕飯を食べたあと、少しここで寛いだ後自宅に帰っていった。大輝はみきちゃんを家まで送るために一度家を出ていったが、すぐに戻ってきた。できた大学生だなぁ。

その日の夜のことだ。俺はいつもどおり寝床で眠っていたのだが、滅多に見ることのない夢を見たのである。

真っ白な空間で、俺の意識だけが漂っている感覚がした。ふわふわな思考のままぼうっとしていると、どこからか渋い男の声が聞こえてきた。

『我……猫神なり……』
『ふぁ?』

かみ?

声の主はどこにも見えない。耳を澄ませてあたりを伺っていると、再び声が聞こえた。

『我はお前に憑いている神だ。お前に、使命を与えに来た』
『……まさか、みきちゃんがいっていた噂って本当だったの?』

夢の中だからか、普通に人間の言葉が喋れた。久しぶりのお喋りにどきどきしていると、俺の声を聞いた神様が驚いた声色で『お前、言葉を話せるのか?』と言った。俺が元人間であることは知らないようだ。

『ええ、まあ。俺ってば賢い子だからね。ところで俺に何か御用ですか神様』
『……ほお。まあいい。本題に移ろう。お前はあの娘に、恩を感じはしないか?』

まあ、感じているといえば感じていることもなくはない……。かな。

待って、この流れって、使命ってまさか……?

『施しを受けたら、報恩するのが礼儀というもの。あの子の願いを叶えてやりなさい』

あの子の願いといえば、大輝との恋愛成就だろう。俺に恋のキューピットになれと?こちとら恋愛経験皆無だぞ。

『……やっぱりか。って、待ってください。俺はそもそも猫の姿だし、そんなことできるわけ、』
『ああ、そうだな。幸いお前は普通より賢い猫のようだ。人の姿にしてしまっても良いかもしれぬな』
『人の姿!?』

人間になれるの?

人間になれるということは、天敵が居なくなるということ。体質を気にせず食べ物を食べれるということ。言葉を話せるということ。

今の猫の生活でも満足しているけど、やっぱり人間として生きるほうが俺にはあっているのだ。

『やります、恩返し!だから人間の姿にしてください!みきちゃんのためにできることはしたいんだ!』

見事な掌返しをしちゃったけど、とりあえず勢いで押し切れ!

『よかろう。お前に、力を与える』

それが聞こえたと同時に、誰かに喉元を撫でられた感覚がした。そのまま真っ白な世界が歪み、消えていく。だんだん場面が切り替わり、視界に映ってきたのは現実の世界だった。

真っ先に見たのは自分の身体。案の定素っ裸だが、ちゃんと男の人間の身体をしている。猫用ベッドに座っているのは変態臭いけど。

ちらりと視界の端に、真っ白な髪の毛が見えた。猫の姿の毛並みの色が髪の毛に反映されているみたいだ。前世はずっと黒髪で生きてきたから、新鮮である。

と、ここで尻に違和感を覚えた。横目で背後を見れば、真っ白の猫のしっぽがゆらゆら揺れている。ここは人間化できなかったのか。手で頭を触ると、猫特有のふわふわの耳があった。

まあ、これくらいなら及第点かな。あまり文句は言うまい。神様の機嫌を損ねたら、また猫の姿に戻されるかもしれないし。

自分の尻尾を掴んでみると、ふわふわした感触が手に伝わってくる。本物の尻尾だ。
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