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4 出会い
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……しょうがないな~、ちょっとくらいなら触らせてやっても良いよ。
差し出されたチーズに噛みつくと、大輝がチーズから手を離す。いつもの癖で早食いしたせいで、あっという間にチーズがなくなってしまった。飯は食えるときに食う、が習慣づいているせいだ。獲物を横取りされてはたまらない。
「ふふ……。チーズ好きなんだね。機嫌は直してくれた?」
「ニャ~」
「うん、よかったあ。ねえ、撫でてもいい?」
撫でることに許可を求めてくる人間は初めて見た。不思議な感覚だ。みんな勝手に触ってくるし、許可も求めない。
でも、こうやって人間に下手に出てこられると、なんだか気分が良かった。前世で猫は罪深いと思っていたが、こうして実際に猫になってみて彼らの気分がわかった気がする。
気分がいいついでに、撫でさせてやろう。言葉で返事ができないからその代わりに、頭を大輝の手のひらに押し付けた。俺の反応に答えるように、大輝の手が俺の頭を撫でる。
「……ありがとう、とらまる。かわいいね、ふわふわしてる」
「にゃーん」
「お風呂に入れたあとにとらまるの毛並みを見て、すごく驚いたよ。こんなに毛並みが白いなんて思ってなかったんだ。出会ったときは薄汚れていたから」
白?ってことは、俺って白猫だったのか。
「知っているかな。とらまるの目って、青色をしているんだよ。美人さんだねー」
……。
すごく喋るな、この男。俺の目を見つめながらそう言ってくる大輝に対して、そんなことを思った。
動物に対して話しかけてくる人間はいたけど、こんなに話しかけてくる人は初めてかもしれない。
「青色の瞳の猫って難聴の子が多いみたいだから心配だったけど、この様子だったら本当に大丈夫そうだね。お医者さんにも見てもらったし……」
え、そうなの?それは知らなかったな。
思わず自分の耳を片手で触る。俺の聴覚は前世と変わらず、正常に感じていた。
難聴じゃなくて本当によかった。もしも耳が聞こえていなかったら、もっと早い段階で猫生を終えていただろうな。外の世界は危険がいっぱいなのだ。
「……あれ、耳が気になる?」
「みゃあ……」
「大丈夫だよ、もしもなにか障害があったとしても、きみのことを大事に大事にするから。絶対に捨てたりしないから、安心して」
そういうことじゃない……けど、そう言ってもらえるのは…、ちょっと安心するかも。
……俺、この人に愛されてるのかなぁ。
ふと視界に入った大輝の腕に、ひっかき傷がついているのが見えた。あれは、彼が俺を抱き上げたときの……、俺が数時間前につけてしまった傷である。
自分の手当もせずに俺ばっかり構っているのかよ。変な人だな。
「………にゃ」
「あれ、眠くなった?……めっちゃ溶けてるじゃん。猫ってこんなに液状化するんだ」
仕方ないから、今日のところはこれで大人しくしておいてやろう。こいつが自分のために時間を使えるように、おりこうにしておくから。……抱っこされない限りは。
「おやすみ、とらまる。夕飯になったらまた来るよ」
おやすみ、大輝。
前世ぶりにかけられたその言葉に、そう返してやりたかった。だけど俺は猫だから、そういう代わりにしっぽを一振りすることしかできなかった。
差し出されたチーズに噛みつくと、大輝がチーズから手を離す。いつもの癖で早食いしたせいで、あっという間にチーズがなくなってしまった。飯は食えるときに食う、が習慣づいているせいだ。獲物を横取りされてはたまらない。
「ふふ……。チーズ好きなんだね。機嫌は直してくれた?」
「ニャ~」
「うん、よかったあ。ねえ、撫でてもいい?」
撫でることに許可を求めてくる人間は初めて見た。不思議な感覚だ。みんな勝手に触ってくるし、許可も求めない。
でも、こうやって人間に下手に出てこられると、なんだか気分が良かった。前世で猫は罪深いと思っていたが、こうして実際に猫になってみて彼らの気分がわかった気がする。
気分がいいついでに、撫でさせてやろう。言葉で返事ができないからその代わりに、頭を大輝の手のひらに押し付けた。俺の反応に答えるように、大輝の手が俺の頭を撫でる。
「……ありがとう、とらまる。かわいいね、ふわふわしてる」
「にゃーん」
「お風呂に入れたあとにとらまるの毛並みを見て、すごく驚いたよ。こんなに毛並みが白いなんて思ってなかったんだ。出会ったときは薄汚れていたから」
白?ってことは、俺って白猫だったのか。
「知っているかな。とらまるの目って、青色をしているんだよ。美人さんだねー」
……。
すごく喋るな、この男。俺の目を見つめながらそう言ってくる大輝に対して、そんなことを思った。
動物に対して話しかけてくる人間はいたけど、こんなに話しかけてくる人は初めてかもしれない。
「青色の瞳の猫って難聴の子が多いみたいだから心配だったけど、この様子だったら本当に大丈夫そうだね。お医者さんにも見てもらったし……」
え、そうなの?それは知らなかったな。
思わず自分の耳を片手で触る。俺の聴覚は前世と変わらず、正常に感じていた。
難聴じゃなくて本当によかった。もしも耳が聞こえていなかったら、もっと早い段階で猫生を終えていただろうな。外の世界は危険がいっぱいなのだ。
「……あれ、耳が気になる?」
「みゃあ……」
「大丈夫だよ、もしもなにか障害があったとしても、きみのことを大事に大事にするから。絶対に捨てたりしないから、安心して」
そういうことじゃない……けど、そう言ってもらえるのは…、ちょっと安心するかも。
……俺、この人に愛されてるのかなぁ。
ふと視界に入った大輝の腕に、ひっかき傷がついているのが見えた。あれは、彼が俺を抱き上げたときの……、俺が数時間前につけてしまった傷である。
自分の手当もせずに俺ばっかり構っているのかよ。変な人だな。
「………にゃ」
「あれ、眠くなった?……めっちゃ溶けてるじゃん。猫ってこんなに液状化するんだ」
仕方ないから、今日のところはこれで大人しくしておいてやろう。こいつが自分のために時間を使えるように、おりこうにしておくから。……抱っこされない限りは。
「おやすみ、とらまる。夕飯になったらまた来るよ」
おやすみ、大輝。
前世ぶりにかけられたその言葉に、そう返してやりたかった。だけど俺は猫だから、そういう代わりにしっぽを一振りすることしかできなかった。
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