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閑話 SIDE ニール・エグバード
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努力という言葉がこれほど似合う人を、今まで見たことがなかった。周りは彼を天才だともてはやしているけど、僕がレオンが誰よりも努力していることを知っている。
あの怒涛の儀式が行われてから、数ヶ月が経った。相変わらず僕は無属性のままだけど、学園生活には慣れてきた。やっぱり学校の中では浮いた存在のままだしいじめっ子にも目をつけられているけど、なんだかんだで無事に過ごせてきている。何度か襲われかけたのは流石にやばいと思ったけど、レオンの助けもあってなんとか貞操を保つことができていた。
レオン・フェレオル。僕の友達。僕が今まで無事に通学を続けられているのは、彼のおかげと言っても過言ではなかった。
何故か僕を助けてくれるレオンは、入学初日からずっと僕のそばに居てくれた。いじめっ子たちが流した僕の噂を知っているはずなのに、彼だけは僕に普通に話しかけてくれるし、僕が困っているときはフォローをしてくれる。この前は休日に遊びに誘ってくれたし、僕が手を伸ばせば抱きしめ返してくれた。そこまでしてくれるレオンを、好きにならないわけが無い。気がつけば頭の中がレオンのことでいっぱいになって、彼への感情がどんどん大きくなっていくのがわかった。
レオンは僕以外にもたくさん友達がいる。優しくて優秀な彼のことだから、誰にでもこんなことをしているのだろう。それが寂しかった。
何かに顔を塞がれてなんだか息苦しい。
息がしやすい方に顔を傾けた拍子に、ぼんやりと視界が揺れだした。目の前には、寝息をたてているレオンの顔があった。
そうだ、昨日。レオンのところに泊まったんだった。半ば押しかけるような形だったけど、レオンが「わかった」って言うものだから、あのまま二人で布団でおしゃべりをしながら寝てしまったんだ。
レオンは僕の背中にしっかり手を回しながら、ぐっすり眠っている。昨晩は「一日中寝てたんだからもう寝られない」とか言っていたのに、今はすっかり寝入っているようだ。
彼にぎゅうぎゅう抱きしめられるのは慣れているけど、彼の胸元に顔を埋める形になっているからとても息苦しい。そうっと頭を動かして体勢を変えようとしたら、レオンが僕から手を離してしまった。
レオンがごそごそと身じろぎをして、くるりと身体が向こう側に向けられる。顔が見えなくなって残念だ。別にあのままの体勢でも良かったのに。僕の方から彼にくっついてあげようかとも考えたが、起こしてしまうのが怖くて結局やらないことにした。
落ちかかっている掛け布団をレオンにかけ直して、自分も再び布団にもぐる。
「……ふふ」
布団についたレオンのにおい。僕、ほんとうに彼の部屋にいるんだ。その満足感に、無意識に口角が上がる。
僕と一緒にいたって何のメリットもないだろうに、この学園で、彼だけは僕と友だちになってくれた。ずっと僕のそばに居てくれて何度も手助けをしてくれる彼に、特別な感情を抱くのはそう遅くないことだった。
きっと僕は、レオンのことが好きだ。
彼の中では、僕は大勢の友人の中のひとりにすぎないだろう。『一番好き』って言ってはくれたけど、優しい彼のことだから、きっと誰にでも言っているだろうし。でも僕はレオンの特別になりたい。恋人じゃなくてもいいから、とりあえずは彼の特別になりたい。
彼の両親の話を軽く噂で聞いたことがある。フェレオル家は、代々知性に優れた男が家を継ぐことになっている。フェレオル家で産まれた長男は幼い頃から親に生活を管理されて、厳しい教育をしているらしい。成績が非凡な者は全員フェレオル家から縁を切られてしまうそうだ。
一度だけ、レオンが母親と電話をしているところに遭遇したことがある。母親との会話なのに、レオンはどこか一歩線を引いたような態度で話していた。
レオンは家族の温かみを知らずに今までを生きている。レオンが自分の体に無頓着だったり、自らを痛めつけるようにタバコを吸ったりするのも、もしかしたらそれが原因なのかもしれない。レオンのことを本気で心配するような人が今までにいなかったから、自分の体がどれだけ大切なものなのかわかっていないのかもしれない。
僕が家族のあったかさを教えてあげたいと思うのは、思い上がり過ぎかもしれないけど。でも僕だって、彼の支えになりたいのだ。
……本当は、普段からずっと彼のそばにいたいんだけど。彼は友だちが多いし、庶民の僕が側にいたら彼の体裁も悪いだろうし。
そのためには、もっと強くならないといけない。ジャン達をどうにかできるようにならないと、僕はずっと彼に迷惑をかける事になる。
「……杖、茶色だなぁ」
無属性の象徴である茶色の杖が目に入って、ため息をつく。無属性のままだと魔法面では誰にも勝てっこないから、それ以外の方法で反抗するしかない。
僕が落ちこぼれで、出来損ないじゃなかったら、胸を張って彼の隣にいれるのに。
……ああ、そういえば、明日は学園長に属性魔法の再診断をしてもらうんだった。次こそ何か現れてくれると良いな。
あの怒涛の儀式が行われてから、数ヶ月が経った。相変わらず僕は無属性のままだけど、学園生活には慣れてきた。やっぱり学校の中では浮いた存在のままだしいじめっ子にも目をつけられているけど、なんだかんだで無事に過ごせてきている。何度か襲われかけたのは流石にやばいと思ったけど、レオンの助けもあってなんとか貞操を保つことができていた。
レオン・フェレオル。僕の友達。僕が今まで無事に通学を続けられているのは、彼のおかげと言っても過言ではなかった。
何故か僕を助けてくれるレオンは、入学初日からずっと僕のそばに居てくれた。いじめっ子たちが流した僕の噂を知っているはずなのに、彼だけは僕に普通に話しかけてくれるし、僕が困っているときはフォローをしてくれる。この前は休日に遊びに誘ってくれたし、僕が手を伸ばせば抱きしめ返してくれた。そこまでしてくれるレオンを、好きにならないわけが無い。気がつけば頭の中がレオンのことでいっぱいになって、彼への感情がどんどん大きくなっていくのがわかった。
レオンは僕以外にもたくさん友達がいる。優しくて優秀な彼のことだから、誰にでもこんなことをしているのだろう。それが寂しかった。
何かに顔を塞がれてなんだか息苦しい。
息がしやすい方に顔を傾けた拍子に、ぼんやりと視界が揺れだした。目の前には、寝息をたてているレオンの顔があった。
そうだ、昨日。レオンのところに泊まったんだった。半ば押しかけるような形だったけど、レオンが「わかった」って言うものだから、あのまま二人で布団でおしゃべりをしながら寝てしまったんだ。
レオンは僕の背中にしっかり手を回しながら、ぐっすり眠っている。昨晩は「一日中寝てたんだからもう寝られない」とか言っていたのに、今はすっかり寝入っているようだ。
彼にぎゅうぎゅう抱きしめられるのは慣れているけど、彼の胸元に顔を埋める形になっているからとても息苦しい。そうっと頭を動かして体勢を変えようとしたら、レオンが僕から手を離してしまった。
レオンがごそごそと身じろぎをして、くるりと身体が向こう側に向けられる。顔が見えなくなって残念だ。別にあのままの体勢でも良かったのに。僕の方から彼にくっついてあげようかとも考えたが、起こしてしまうのが怖くて結局やらないことにした。
落ちかかっている掛け布団をレオンにかけ直して、自分も再び布団にもぐる。
「……ふふ」
布団についたレオンのにおい。僕、ほんとうに彼の部屋にいるんだ。その満足感に、無意識に口角が上がる。
僕と一緒にいたって何のメリットもないだろうに、この学園で、彼だけは僕と友だちになってくれた。ずっと僕のそばに居てくれて何度も手助けをしてくれる彼に、特別な感情を抱くのはそう遅くないことだった。
きっと僕は、レオンのことが好きだ。
彼の中では、僕は大勢の友人の中のひとりにすぎないだろう。『一番好き』って言ってはくれたけど、優しい彼のことだから、きっと誰にでも言っているだろうし。でも僕はレオンの特別になりたい。恋人じゃなくてもいいから、とりあえずは彼の特別になりたい。
彼の両親の話を軽く噂で聞いたことがある。フェレオル家は、代々知性に優れた男が家を継ぐことになっている。フェレオル家で産まれた長男は幼い頃から親に生活を管理されて、厳しい教育をしているらしい。成績が非凡な者は全員フェレオル家から縁を切られてしまうそうだ。
一度だけ、レオンが母親と電話をしているところに遭遇したことがある。母親との会話なのに、レオンはどこか一歩線を引いたような態度で話していた。
レオンは家族の温かみを知らずに今までを生きている。レオンが自分の体に無頓着だったり、自らを痛めつけるようにタバコを吸ったりするのも、もしかしたらそれが原因なのかもしれない。レオンのことを本気で心配するような人が今までにいなかったから、自分の体がどれだけ大切なものなのかわかっていないのかもしれない。
僕が家族のあったかさを教えてあげたいと思うのは、思い上がり過ぎかもしれないけど。でも僕だって、彼の支えになりたいのだ。
……本当は、普段からずっと彼のそばにいたいんだけど。彼は友だちが多いし、庶民の僕が側にいたら彼の体裁も悪いだろうし。
そのためには、もっと強くならないといけない。ジャン達をどうにかできるようにならないと、僕はずっと彼に迷惑をかける事になる。
「……杖、茶色だなぁ」
無属性の象徴である茶色の杖が目に入って、ため息をつく。無属性のままだと魔法面では誰にも勝てっこないから、それ以外の方法で反抗するしかない。
僕が落ちこぼれで、出来損ないじゃなかったら、胸を張って彼の隣にいれるのに。
……ああ、そういえば、明日は学園長に属性魔法の再診断をしてもらうんだった。次こそ何か現れてくれると良いな。
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