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入学初日 4
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自分が悪役であることを思い出した俺は、あまりの衝撃で暫くまともな思考ができなかった。どうやってニールと会話を終わらせたのかもよく覚えていない。あの後俺に話しかけてくれたクラスメイトもいた気がするけど、誰の名前も覚えることができなかった。初日だというのに誰とも仲良くなれていないとか、やらかしてしまった。
……いや、これからの学園生活でいくらでも友達を作るチャンスは有る。今俺が考えるべきことは、そんなことじゃない。
ニールはすでに教室を出ていったようで、どこにも姿は見えない。
「なあ、レオンは自分の属性魔法、何だと思うんだ?」
「さぁ…わからないなぁ」
「俺はなぁ、親に頼み込んで、教会でもう属性魔法を調べてもらっているんだ。俺の適正色は赤色だった。つまり、俺は炎属性ってことだ。格好いいだろ」
教会に金を積めば、水晶の儀の前に自分の属性がわかる。眼の前をお坊ちゃんはわざわざ金を払って事前に調べてもらっているらしい。
えーっと、今目の前で話してるのは誰だ?
先程からずっと話しかけてくる男子生徒に首を傾げる。
いかにも貴族、みたいな傲慢そうな男子生徒だ。先程からなぜか親しげにしてきて、鬱陶しい。よく見たら、こいつもなんか見たことあるな。
「お前はなんとなく、俺と同じ『炎』属性に見えるんだよなぁ。な、似た者同士、これから仲良くしようぜ」
「『炎』ね。…そうだね、一緒だったらいいね」
「お前は絶対『炎』だ!この俺が断言するんだから、そうに決まっている」
あ、思い出した。こいつ、いじめグループの取り巻きの一人の、ジャンだ。それと同時に、原作のレオンは炎属性であることも思い出す。
ジャンはレオンの下っ端みたいなやつだった。同じ属性であることをきっかけに二人は仲良くなるのだけど、まあ、そんなことは俺には関係のないことだ。俺はジャンと仲良くするつもりはなかった。
(こいつも原作キャラか…。どうあがいても、俺は原作ストーリーに関わらざるを得ないみたいだな)
俺が仲良くする気無くても、ジャンは話しかけてくるだろうしなぁ。
「つーか、さっきからぼうっとしているけど、大丈夫か?まさかあれだけの授業で、疲れたんじゃないだろうな。それとも家が恋しいか?」
適当に返事をしていたら、不審がられてしまった。
同族である貴族には、自分が弱っているところをあまり見せたくない。
だが、万全ではないこの状況だとボロを出すのは時間の問題であると察した俺は、未だ話しかけてくる生徒に「いや、……まだ荷解きが済んでいない」と適当に理由をつけて断り、早々に寮に戻ることにした。
ヤドリギ学園の学生はみんな寮に入ることになっている。新入生は入学式前に既に寮に引っ越してきているため、荷解きは済んでいる。
イバン先生にもらった地図を見ながら1年の寮に戻る。学園内は中庭や森があるから広い。迷子になったらやばそうだ。
学生はみんな一人一室与えられる。だから、寮に帰れば一人の時間が過ごせる。
部屋に入るなり俺は勉強机に向かうと、使っていないノートを取り出した。制服のポケットからタバコを取り出して、腰に下げていた杖を握り魔法で火をつける。灰色の杖を机に置いて、片手でタバコを吸いながらもう片方の手でペンを持ち、覚えている限りのゲームの情報を書き出していく。
まず、最初に。明日の水晶の儀で、主人公は属性魔法を診断されない。15才以上であるにも関わらず、無属性として水晶に診断されてしまうのだ。
主人公のニールは気弱で身分も低い上に、無属性の魔法しか使えない落ちこぼれになってしまう。同級生の中でも落ちこぼれな男子生徒。学校の中でも浮いた存在であるため、生徒には後ろ指を指されて笑われるようないじめられっ子となっていく。ニールはいわゆる、可哀想系主人公なのである。
そんなニールと魔法学園で知り合うレオン=フェレオルは、物語の中の悪役だ。レオンは非常に紳士的で成績優秀な、学園の模範生のような生徒である。
入学式当日にクラスで席が近かったことを縁に、ニールとレオンは友人になる。レオンは学園でいじめられるニールに手を差し伸べて、傷ついた彼に寄り添い、少しずつ彼らは仲良くなっていく。
不憫な目に遭う主人公に対し慈悲を向け、いじめられっ子のニールを度々かばってくれる聖人君子のような友人であるレオンに対し、ニールは尊敬と同時に恐れ多さも感じていた。
レオンの寛大な態度はどんなときでもニールを救った。ニールは誰よりもレオンに懐き、慕っていた。
だけど、そこで事件が起こるのだ。
(まじで可哀想なんだよな、このゲームの主人公って……)
ニールはレオンに騙され、無理やり組み敷かれて身体を開かれることになる。その場面で、優しくて紳士的だったレオンは主人公の前で変貌し、クソみたいな本性を露わにするのだ。
レオンの本性は傲慢で意地が悪くて人を見下すような性格だ。レオンはこれまで何度も弱い生徒をいじめて退学に追い込んでいる、いじめの常習犯だ。なんなら、ニールいじめを一番裏で手を引いていたのも、レオンである。最低だ。
いじめの標的に優しくして近づき、最後に地獄に突き落とすというのが趣味らしい。本当に最低だ。
野蛮で維持の悪い口調の罵倒とともに、無理やり犯されてしまったニールは深く傷ついて、心を病ませてしまう。儚なげ美人の主人公が傷つくその姿は全プレイヤーの良心に突き刺さり、悪役レオンは作品中でもプレイヤーに特に嫌われているキャラクターとなった。
(この後の展開が、うまく思い出せないんだよな…。レオンの犯行がばらされて、然るべき罰を受けるということは覚えているけど。どういう過程があって、ニールとイケメン攻略対象たちが仲良くなるんだっけ?)
心を病ませた主人公は、学内の泉で入水自殺をしようとする。そこで『あること』を知った主人公は自殺を躊躇するんだけど、何をどうやって知ったのか今の俺に見当もつかなかった。めちゃくちゃ重要なところのはずなんだけどな。
結果、そこで鉢合わせた皇太子(攻略対象)に現場が見つかって、主人公の自殺計画は失敗に終わる、ということは覚えているけど。それ以降の物語は、まったくわからない。ニールと攻略対象の馴れ初めが、さっぱりわからない。
詳しいところまで思い出せていないのが正直なところだ。
今回はニールに出会ったことをトリガーに、少しだけ記憶が蘇っている。このことを考えれば、今後ストーリーが進むに連れて思い出せていくことがよそうできるけど…思い出さないと困るし、不安だ。
物語で、レオンは学園を卒業できるのだろうか?っていうか、犯罪レベルのやばいいじめをやっていたことだし、監獄に幽閉エンドとかあり得るな。もしかしたら、最悪死亡エンドかもしれない。
肝心なことをあまり思い出せていないのは不安だ。だけど…これだけ思い出せれば、俺がやるべきことはわかった。
俺は原作のレオンではない。だから、これからの運命を変えられるはずだ。監獄エンドは勘弁して欲しいし、死ぬのはもっと嫌だ。
前世では病気のせいで早死したことだし、前世の分まで今回は人生を楽しみたいと思っている。
…それに、物語の主人公であるニールは、これから壮絶な目に合うのだ。どこまで彼を助けてあげられるかわからないけど、俺にできる範囲でニールの楽しい学園生活を守ってやりたい。
(せっかく学校に入学したというのに、いじめのせいで楽しく過ごせないとか、かわいそうだ)
学校に行く生徒たちを後ろ姿を、病室の窓から見てはため息を吐いていた昔の自分の記憶が蘇る。いくら家族が見舞いに来てくれると言っても、普通に学校に行って普通に友だちを作っている同年代が羨ましくてたまらかなったのは事実だ。他の子は持っていて、どうして俺は手に入れられないのだろうといつも疑問に思っていた。友達がいないのは、寂しい。
…そうだ。ニールの”本物の”友人になってやろう。彼には俺と同じ思いを味あわせたくなかった。物語のことを知っている俺なら、ニールの手助けくらいはできるはずだ。主人公のいい友人ポジションについて、できる限り平穏な日々を目指そう!
「よし、そうと決まれば、明日に備えてもう寝るか。水晶の儀の日に体調崩したら、元も子もないしな」
「俺って何の属性なんだろう~」と思って水晶の儀を楽しみにしてきたが、原作を思い出したせいで、レオンの属性が『炎』であることがわかってしまった。だから前ほど水晶の儀を楽しみに思っているわけではないけど、でもやっぱり異世界の儀式というのは昔からの憧れなのだ。
「炎属性ってわかっちゃったから楽しみは減ったけど、せっかくの礼式だからな。こんな機会二度と無いだろうし。明日は楽しもうっと」
人生で一度しか参加できない、水晶の儀。異世界感が凄いそれに胸を躍らせながら、短くなったタバコを灰皿につけた。
(…いい子にするなら、タバコはやめたほうが良いよな……)
この世界でも、未成年の喫煙は良くないとされている。わかっていながらも手を出したのは、ただの好奇心としか言えない。
名残惜しく思いながらも、俺はタバコをゴミ箱に……入れようとしたけど、やはりもったいなく感じて、結局机の引き出しの奥に仕舞ったのだった。
▼△▼
次の日、神々しい装飾に包まれた広い体育館で水晶の儀が行われた。
主人公はやはり『無属性』として水晶に宣言されていた。物語通りの展開だったからそれに動揺することはない。
しかし、他の人からしてみれば、こんな事態はありえないことだ。案の定、同級生たちはざわめいているし、教師達の間でも切羽詰まった声が飛び交っていた。
そんなわけない、と眉尻を下げながらニールが反論する。無属性だ、と再度学長に言われたニールは、諦めたように肩を落として再び席についた。前情報で知っていた展開とはいえ、悲しそうなニールの様子に胸が締め付けられる思いになった。
すまない、これが原作通りの展開なんだ。なんていうことをニールに心のなかで謝罪した矢先のことだった。
「レオン=フェレオル。あなたの属性は、『水』です」
「…えっ」
レオンが水属性だった。なんで……?
早速の原作との相違に、頭がくらりとした。
……いや、これからの学園生活でいくらでも友達を作るチャンスは有る。今俺が考えるべきことは、そんなことじゃない。
ニールはすでに教室を出ていったようで、どこにも姿は見えない。
「なあ、レオンは自分の属性魔法、何だと思うんだ?」
「さぁ…わからないなぁ」
「俺はなぁ、親に頼み込んで、教会でもう属性魔法を調べてもらっているんだ。俺の適正色は赤色だった。つまり、俺は炎属性ってことだ。格好いいだろ」
教会に金を積めば、水晶の儀の前に自分の属性がわかる。眼の前をお坊ちゃんはわざわざ金を払って事前に調べてもらっているらしい。
えーっと、今目の前で話してるのは誰だ?
先程からずっと話しかけてくる男子生徒に首を傾げる。
いかにも貴族、みたいな傲慢そうな男子生徒だ。先程からなぜか親しげにしてきて、鬱陶しい。よく見たら、こいつもなんか見たことあるな。
「お前はなんとなく、俺と同じ『炎』属性に見えるんだよなぁ。な、似た者同士、これから仲良くしようぜ」
「『炎』ね。…そうだね、一緒だったらいいね」
「お前は絶対『炎』だ!この俺が断言するんだから、そうに決まっている」
あ、思い出した。こいつ、いじめグループの取り巻きの一人の、ジャンだ。それと同時に、原作のレオンは炎属性であることも思い出す。
ジャンはレオンの下っ端みたいなやつだった。同じ属性であることをきっかけに二人は仲良くなるのだけど、まあ、そんなことは俺には関係のないことだ。俺はジャンと仲良くするつもりはなかった。
(こいつも原作キャラか…。どうあがいても、俺は原作ストーリーに関わらざるを得ないみたいだな)
俺が仲良くする気無くても、ジャンは話しかけてくるだろうしなぁ。
「つーか、さっきからぼうっとしているけど、大丈夫か?まさかあれだけの授業で、疲れたんじゃないだろうな。それとも家が恋しいか?」
適当に返事をしていたら、不審がられてしまった。
同族である貴族には、自分が弱っているところをあまり見せたくない。
だが、万全ではないこの状況だとボロを出すのは時間の問題であると察した俺は、未だ話しかけてくる生徒に「いや、……まだ荷解きが済んでいない」と適当に理由をつけて断り、早々に寮に戻ることにした。
ヤドリギ学園の学生はみんな寮に入ることになっている。新入生は入学式前に既に寮に引っ越してきているため、荷解きは済んでいる。
イバン先生にもらった地図を見ながら1年の寮に戻る。学園内は中庭や森があるから広い。迷子になったらやばそうだ。
学生はみんな一人一室与えられる。だから、寮に帰れば一人の時間が過ごせる。
部屋に入るなり俺は勉強机に向かうと、使っていないノートを取り出した。制服のポケットからタバコを取り出して、腰に下げていた杖を握り魔法で火をつける。灰色の杖を机に置いて、片手でタバコを吸いながらもう片方の手でペンを持ち、覚えている限りのゲームの情報を書き出していく。
まず、最初に。明日の水晶の儀で、主人公は属性魔法を診断されない。15才以上であるにも関わらず、無属性として水晶に診断されてしまうのだ。
主人公のニールは気弱で身分も低い上に、無属性の魔法しか使えない落ちこぼれになってしまう。同級生の中でも落ちこぼれな男子生徒。学校の中でも浮いた存在であるため、生徒には後ろ指を指されて笑われるようないじめられっ子となっていく。ニールはいわゆる、可哀想系主人公なのである。
そんなニールと魔法学園で知り合うレオン=フェレオルは、物語の中の悪役だ。レオンは非常に紳士的で成績優秀な、学園の模範生のような生徒である。
入学式当日にクラスで席が近かったことを縁に、ニールとレオンは友人になる。レオンは学園でいじめられるニールに手を差し伸べて、傷ついた彼に寄り添い、少しずつ彼らは仲良くなっていく。
不憫な目に遭う主人公に対し慈悲を向け、いじめられっ子のニールを度々かばってくれる聖人君子のような友人であるレオンに対し、ニールは尊敬と同時に恐れ多さも感じていた。
レオンの寛大な態度はどんなときでもニールを救った。ニールは誰よりもレオンに懐き、慕っていた。
だけど、そこで事件が起こるのだ。
(まじで可哀想なんだよな、このゲームの主人公って……)
ニールはレオンに騙され、無理やり組み敷かれて身体を開かれることになる。その場面で、優しくて紳士的だったレオンは主人公の前で変貌し、クソみたいな本性を露わにするのだ。
レオンの本性は傲慢で意地が悪くて人を見下すような性格だ。レオンはこれまで何度も弱い生徒をいじめて退学に追い込んでいる、いじめの常習犯だ。なんなら、ニールいじめを一番裏で手を引いていたのも、レオンである。最低だ。
いじめの標的に優しくして近づき、最後に地獄に突き落とすというのが趣味らしい。本当に最低だ。
野蛮で維持の悪い口調の罵倒とともに、無理やり犯されてしまったニールは深く傷ついて、心を病ませてしまう。儚なげ美人の主人公が傷つくその姿は全プレイヤーの良心に突き刺さり、悪役レオンは作品中でもプレイヤーに特に嫌われているキャラクターとなった。
(この後の展開が、うまく思い出せないんだよな…。レオンの犯行がばらされて、然るべき罰を受けるということは覚えているけど。どういう過程があって、ニールとイケメン攻略対象たちが仲良くなるんだっけ?)
心を病ませた主人公は、学内の泉で入水自殺をしようとする。そこで『あること』を知った主人公は自殺を躊躇するんだけど、何をどうやって知ったのか今の俺に見当もつかなかった。めちゃくちゃ重要なところのはずなんだけどな。
結果、そこで鉢合わせた皇太子(攻略対象)に現場が見つかって、主人公の自殺計画は失敗に終わる、ということは覚えているけど。それ以降の物語は、まったくわからない。ニールと攻略対象の馴れ初めが、さっぱりわからない。
詳しいところまで思い出せていないのが正直なところだ。
今回はニールに出会ったことをトリガーに、少しだけ記憶が蘇っている。このことを考えれば、今後ストーリーが進むに連れて思い出せていくことがよそうできるけど…思い出さないと困るし、不安だ。
物語で、レオンは学園を卒業できるのだろうか?っていうか、犯罪レベルのやばいいじめをやっていたことだし、監獄に幽閉エンドとかあり得るな。もしかしたら、最悪死亡エンドかもしれない。
肝心なことをあまり思い出せていないのは不安だ。だけど…これだけ思い出せれば、俺がやるべきことはわかった。
俺は原作のレオンではない。だから、これからの運命を変えられるはずだ。監獄エンドは勘弁して欲しいし、死ぬのはもっと嫌だ。
前世では病気のせいで早死したことだし、前世の分まで今回は人生を楽しみたいと思っている。
…それに、物語の主人公であるニールは、これから壮絶な目に合うのだ。どこまで彼を助けてあげられるかわからないけど、俺にできる範囲でニールの楽しい学園生活を守ってやりたい。
(せっかく学校に入学したというのに、いじめのせいで楽しく過ごせないとか、かわいそうだ)
学校に行く生徒たちを後ろ姿を、病室の窓から見てはため息を吐いていた昔の自分の記憶が蘇る。いくら家族が見舞いに来てくれると言っても、普通に学校に行って普通に友だちを作っている同年代が羨ましくてたまらかなったのは事実だ。他の子は持っていて、どうして俺は手に入れられないのだろうといつも疑問に思っていた。友達がいないのは、寂しい。
…そうだ。ニールの”本物の”友人になってやろう。彼には俺と同じ思いを味あわせたくなかった。物語のことを知っている俺なら、ニールの手助けくらいはできるはずだ。主人公のいい友人ポジションについて、できる限り平穏な日々を目指そう!
「よし、そうと決まれば、明日に備えてもう寝るか。水晶の儀の日に体調崩したら、元も子もないしな」
「俺って何の属性なんだろう~」と思って水晶の儀を楽しみにしてきたが、原作を思い出したせいで、レオンの属性が『炎』であることがわかってしまった。だから前ほど水晶の儀を楽しみに思っているわけではないけど、でもやっぱり異世界の儀式というのは昔からの憧れなのだ。
「炎属性ってわかっちゃったから楽しみは減ったけど、せっかくの礼式だからな。こんな機会二度と無いだろうし。明日は楽しもうっと」
人生で一度しか参加できない、水晶の儀。異世界感が凄いそれに胸を躍らせながら、短くなったタバコを灰皿につけた。
(…いい子にするなら、タバコはやめたほうが良いよな……)
この世界でも、未成年の喫煙は良くないとされている。わかっていながらも手を出したのは、ただの好奇心としか言えない。
名残惜しく思いながらも、俺はタバコをゴミ箱に……入れようとしたけど、やはりもったいなく感じて、結局机の引き出しの奥に仕舞ったのだった。
▼△▼
次の日、神々しい装飾に包まれた広い体育館で水晶の儀が行われた。
主人公はやはり『無属性』として水晶に宣言されていた。物語通りの展開だったからそれに動揺することはない。
しかし、他の人からしてみれば、こんな事態はありえないことだ。案の定、同級生たちはざわめいているし、教師達の間でも切羽詰まった声が飛び交っていた。
そんなわけない、と眉尻を下げながらニールが反論する。無属性だ、と再度学長に言われたニールは、諦めたように肩を落として再び席についた。前情報で知っていた展開とはいえ、悲しそうなニールの様子に胸が締め付けられる思いになった。
すまない、これが原作通りの展開なんだ。なんていうことをニールに心のなかで謝罪した矢先のことだった。
「レオン=フェレオル。あなたの属性は、『水』です」
「…えっ」
レオンが水属性だった。なんで……?
早速の原作との相違に、頭がくらりとした。
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