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発情してはいけない 16*

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 痛みを忘れるほどの、強い快楽を与えられる。全身が痺れ、手足がガクガクとわなないた。
 オメガ特有の神経系が、痛みを脳まで伝え、記憶に番を刷りこませる。
 この男が、お前の、運命の相手なのだと。

「――あ…………」
 瞬間、意識がどこか遠いところに飛ばされた。
 視界がぼやけ、魂が肉体から浮遊するような奇怪な現象に見舞われる。
 そして何かがブワッと膨張し、肌を突き破って爆発した。

「うっ――」
 高梨が呻く。
 陽斗は何が起こったのかわからず呆然とした。自分はいったいどうなってしまったのか。

「……陽斗? どした」
 目をむき、動きをとめた陽斗を、光斗がいぶかしげに眺めてくる。

「これは」
 陽斗の首から口を離した高梨が、大きく息を吸いこんで吐いた。
「すごい香りだ」
 目を瞬かせ、胸を上下させる。

「え? じゃあ、陽斗、もしかして?」 
「……あ」
 陽斗は自分の身体が、今までにないほど熱を持ち、血流が激しく全身を駆け巡るのを感じた。胸の奥からこんこんと性の欲望がわいてくる。

「あ、は……ッ」
 心臓がドクドクと波打ち、肉茎と後孔がむずかゆくなる。
 もっと、もっとこすって、抉えぐって突き刺して、奥まで犯して。そんな切実な願いが無尽蔵に生まれてくる。

「して、して、もっと、してよ、ふたりとも」
 信じられない言葉が口をついて出る。けれどこれが純粋な望みだ。
「ああ、もっと、犯してよ。めちゃくちゃにして」
「陽斗、発情したんだ」

 ――これが発情なのか。
 嵐のような情欲にのまれながら、陽斗は思った。

「高梨さん、してよ、して。もっと動いてッ」
「陽斗君」
 振り返り、腰を揺すって高梨の雄を喰い締める。
「んゥッ……」

 陽斗の振る舞いに、高梨が苦痛の呻きをあげた。眉根をよせ、けれど、どこか嬉しそうに口角をあげる。
「可愛いすぎる」

 気持ちよさに忘我の表情となった陽斗を見て、男の目元も赤らんだ。上体を起こして陽斗の腰を掴みなおすと、奥深く突きこんでくる。
「あ……あ、あは、あ、あン……あ、ああッ」

 ビクビクと身体がしなる。すると腕の下の光斗も煽られて身悶えた。高梨が逞しい腰を前後させればその震動が陽斗を通して光斗にも伝わるらしく、弟は大きく足を広げ、ウットリとした表情になって快感を貪った。

「ひ……ぁ……は、すご、陽斗っ」
「ぁあ、高梨さっ、い、いい、……こんな、は、おかしくなる」

 脳が溶けていくようだ。精神も肉体もただ高梨の性器のためだけに存在しているような錯覚に陥る。そして陽斗は、毎夜彼にいじめられた体内のオメガ宮が、新たな証を求めて活性化していくのを感じた。

 陽斗が力を抜いて光斗に身を任せると、高梨も二度目の放埒に自身を大きく波打たせる。
「――ツ、はァ……ッ」
 しばし雄の解放に没頭し、それから上半身を倒してきた。
「……陽斗君」

 うなじにキスを落として、体重をかけないようにそっと抱きしめてくる。高級そうなスーツはクシャクシャで、でもそんなことはまったく構わないといった様子だった。

「僕のオメガ」
 噛みついた場所に何度も口づけを繰り返す。
「愛してるよ。すごく可愛い。もう離さない」
  合間に、甘い言葉をシャワーのように浴びせかけた。
「……ん」

 そんなことをされると、またしたい気持ちがわいてくる。それは高梨も同じようで、陽斗の身体から出ていく気配がない。

 もちろん光斗も同様で、陽斗の肌をまさぐる手をとめない。
 そうして三人で、満足するまで欲望を解放させた。 
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