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真夜中のおうちごはん 6

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「なら、今度は長生きしそうな頑丈な犬を飼わないかい?」
「え?」
 いきなり勧められて目をみひらく。
 保護犬の紹介でもされるのかと思ったら、男は予想外のことを口にした。

「僕も主を失って、野良犬みたいな状態なんだ」
 そう言ってニッコリと微笑む。セレブ感あふれる紳士の思いがけない提案に、陽斗はそれが『僕は君の犬になりたい』という意味だと気がついて、ボッと顔が赤くなった。

「な、な、何を……」
 悪い冗談だ。貝殻がポトンとすまし汁に落ちる。

「君が僕の主になってくれたら、僕は君を守るために、もう一度生きる意味を得られる気がするよ」
 過度な愛情表現に、返事もできずに目を丸くする。
 そんな。レア・アルファが、機能不全の落伍者オメガの犬になりたいだなんて。

「…………」
 何と答えていいものか、気の利いた返しのひとつもできなくて、陽斗は困り顔で汁椀に視線を落とした。

 すごく嬉しい気持ちはあるけれど、今のところ発情の兆しはまったくないのだから、彼の期待には応えられない。

「ところで」
 そんな陽斗の困惑をちゃんと読んだのか、高梨はさりげなく話題を変えた。

「光斗君から連絡はきたかい?」
「あ! そうだった」
 高梨の言葉に、陽斗は今日ご馳走を用意した理由を思い出した。

「光斗と昼間、電話で話をしました。高梨さんの紹介で、番候補の人と見合いすることになったって」
「うん。僕も帰宅前、先方とビデオ通話で連絡を取った」
「高梨さんの親戚の人ですって?」

「そう。はとこにあたるのかな。名前は津久井芳樹つくいよしき。祖父の法事ぐらいでしか顔をあわせたことはなかったけれど。彼は親族の間でも評判がいいよ」
「そうなんですか」

 高梨からもいい人という言質を取れて、安堵に深く椅子にもたれかかった。
「ありがとうございます、高梨さん。これで本当に安心できます」
「役に立ててよかったよ」

 電話での光斗の声も弾んでいた。だからきっとうまくいくだろう。運命の番であれば、惹かれあわないはずがない。
 陽斗がやっと心からの明るい笑みを見せると、高梨も同じように微笑んだ。

 食事を終えて、ふたりでテーブルを片づけた後、陽斗は自室に戻ろうとする高梨をつかまえて言った。

「高梨さん」
「うん?」
「今夜はさ、何もせずゆっくり休んでくれませんか? その代わり、俺、明日の夜頑張るから」

 彼の睡眠時間を削りたくなくてお願いする。陽斗の提案に、高梨は少し戸惑った表情になった。
「頑張るって。……君は」
 相手の体調を案じる視線を向ければ、本気で心配している様子が伝わったのか高梨が微苦笑する。 
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