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レア・アルファ 5
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「このスイートは僕がプロデュースしたんだ。もちろん、僕自身は建築のプロじゃないから、デザイナーや建築家の手を借りたけどね。この部屋は君をイメージして作ったものなんだよ」
「俺を?」
「そう」
「けど、俺たちまだ出会ったばかりじゃ」
「うん。だから、僕の運命の相手はきっとこんな人だろうなあと想像しながら、その人が好きになってくれるのはどんな部屋かなと考えて、いつかきっとふたりですごしたいと夢見ながら作ったんだ」
「……」
何というか、このCEOは非常にドリーマーな性格をしているようだ。たしか、歳はウィキによると二十七。なのに少年のような無邪気さがある。
「これを、俺に、見せたかった?」
「そう。これが僕のできることで、君にまず見せられる最高のプレゼンだったから」
「はあ、なるほど」
自己紹介みたいなものなのか。それをわざわざ数年かけて準備するとは、どれだけ運命のオメガに入れこんでいたのか。
「ていうか、あんたすげぇ人なんだな。住む世界が違いすぎる」
「ええ? そんなことない。ここにあるものはすべて、君が望めば手に入るものなんだよ。僕と結婚すればね」
にっこりと微笑まれて、陽斗は若干身を引いた。
「……」
身の程をこえた幸せは、何というか分不相応な気がしてしまう。
この男と結婚すれば金銭的には楽になるだろうが、果たしてそんな簡単に受け入れていいものなのか。
「陽斗君、夕食は食べたかい?」
考えこんでいると、それを読んだかのように、高梨が話題を変えた。
「あ、いや、まだだけど」
「じゃあ、一緒にここで食べないか」
「無理。光斗が待ってるから」
「なら、飲み物を一杯だけでもいいから。つきあってくれないかな。君と少しでもいいから話をしたいんだ」
「……」
せっかく連れてきてくれたんだし、それぐらいならいいかと考える。
「わかった。光斗には連絡を入れとく」
「では僕は、飲み物を作るよ」
高梨がバーカウンターのほうに歩いていったので、陽斗も後をついていった。勧められたスツールに腰かけて光斗にメッセージを送る。
『ごめん少し遅くなる。腹へってる? 何か食べたい?』
するとすぐに返事がきた。
『陽斗が作っといてくれた昼飯、さっき食べたばかりだからお腹すいてない。なんにもいらないよー』
とあったので安心する。
「何がいい? 気になるものがあれば遠慮なく言ってね」
上着を脱いでカウンター内に入った高梨が、ボトルのならぶ棚を背にきいてくる。陽斗はそこそこ飲めるたちなので、ラベルを眺めて考えた。
「じゃあ、そこのウイスキーを」
三十年ものの国産ウイスキーを見つけて、即答で指名した。せっかくだから普段は飲めそうにない高級なものをと、つい欲を出してしまった。だがそれがまずかった。空きっ腹だったと気がついたのはロックを一口飲んだ後で、しかしあまりの美味さに後悔も吹き飛んだ。そして警戒心も同時に緩んでいく。
「弟の光斗君とは、仲がいいんだね」
自分もグラスを傾けながら高梨がたずねてくる。その言い方がちょっと嫉妬してるように聞こえて、陽斗はかるく微笑んだ。
「俺を?」
「そう」
「けど、俺たちまだ出会ったばかりじゃ」
「うん。だから、僕の運命の相手はきっとこんな人だろうなあと想像しながら、その人が好きになってくれるのはどんな部屋かなと考えて、いつかきっとふたりですごしたいと夢見ながら作ったんだ」
「……」
何というか、このCEOは非常にドリーマーな性格をしているようだ。たしか、歳はウィキによると二十七。なのに少年のような無邪気さがある。
「これを、俺に、見せたかった?」
「そう。これが僕のできることで、君にまず見せられる最高のプレゼンだったから」
「はあ、なるほど」
自己紹介みたいなものなのか。それをわざわざ数年かけて準備するとは、どれだけ運命のオメガに入れこんでいたのか。
「ていうか、あんたすげぇ人なんだな。住む世界が違いすぎる」
「ええ? そんなことない。ここにあるものはすべて、君が望めば手に入るものなんだよ。僕と結婚すればね」
にっこりと微笑まれて、陽斗は若干身を引いた。
「……」
身の程をこえた幸せは、何というか分不相応な気がしてしまう。
この男と結婚すれば金銭的には楽になるだろうが、果たしてそんな簡単に受け入れていいものなのか。
「陽斗君、夕食は食べたかい?」
考えこんでいると、それを読んだかのように、高梨が話題を変えた。
「あ、いや、まだだけど」
「じゃあ、一緒にここで食べないか」
「無理。光斗が待ってるから」
「なら、飲み物を一杯だけでもいいから。つきあってくれないかな。君と少しでもいいから話をしたいんだ」
「……」
せっかく連れてきてくれたんだし、それぐらいならいいかと考える。
「わかった。光斗には連絡を入れとく」
「では僕は、飲み物を作るよ」
高梨がバーカウンターのほうに歩いていったので、陽斗も後をついていった。勧められたスツールに腰かけて光斗にメッセージを送る。
『ごめん少し遅くなる。腹へってる? 何か食べたい?』
するとすぐに返事がきた。
『陽斗が作っといてくれた昼飯、さっき食べたばかりだからお腹すいてない。なんにもいらないよー』
とあったので安心する。
「何がいい? 気になるものがあれば遠慮なく言ってね」
上着を脱いでカウンター内に入った高梨が、ボトルのならぶ棚を背にきいてくる。陽斗はそこそこ飲めるたちなので、ラベルを眺めて考えた。
「じゃあ、そこのウイスキーを」
三十年ものの国産ウイスキーを見つけて、即答で指名した。せっかくだから普段は飲めそうにない高級なものをと、つい欲を出してしまった。だがそれがまずかった。空きっ腹だったと気がついたのはロックを一口飲んだ後で、しかしあまりの美味さに後悔も吹き飛んだ。そして警戒心も同時に緩んでいく。
「弟の光斗君とは、仲がいいんだね」
自分もグラスを傾けながら高梨がたずねてくる。その言い方がちょっと嫉妬してるように聞こえて、陽斗はかるく微笑んだ。
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