私の彼女は元上司

にゃる子

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退院※

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翌朝、医師からの診察を終えた私に退院許可が降りた。

やっと帰れる!!!

と、思っていたら
服がない!!!
看護師さんに聞いてみると

「私の服、全部警察の方が持って行ったんですか?」

証拠品として、事件当時に来ていた服も下着も靴まで警察に持って行かれた様子だ。
裸で帰れ!ってこと?

しばらく考えてから

こんな時に頼れるのは…

「希望さ~ん!!!
証拠品として服と靴を全部持って行かれました。」

私がLINEすると

「私のでよかったら適当に持って行くから大丈夫」
とのことだった。

傷は、かなり酷かった。
深さは達していないらしいんだけど
レーザー手術のことも、それとなく聞くことができたのだけど、自費になって金額に戸惑っていた。

帰る頃に、警察官の方が来てくださった。
エリコさんの両親からお詫びのメッセージが届いていた。
エリコさんが退院したら地方に引っ越すので安心してほしいという内容だった。

一応、慰謝料が出て…は…いたけど、エリコさんの家は、そんなに裕福でもないらしく
これが精一杯なのかな?
と…。


帰りの車で
「体調悪い?」
希望さんが心配してくれた。

傷跡のことと、傷を消す手術について相談すると

「実はね。
明日香からお金を送金してもらったの。
私のもあるから、合わせたら足りるんじゃない?」

希望さんは、自分のモデル代も私にくれた。

「え?
それは、希望さんのお金じゃないんですか?」

「いいの。
退職金いただいたから。」

実は、私に付き添いをした後に明日香さんに私のまわりに起きた一連のことを話したそうだ。

金額が確定しているからと、お金を先に振り込んでいただき、さらに作品の写真も送ってくれた。
幻想的な真夜中の森みたいな、不思議な世界観がそこには広がっていた。

「明日香から、アルバイトの話があって…」

近くに水晶が取れる場所があるらしい。
近日行われる個展のグッズ販売に使いたいのだけど、泥を取ったり磨いたりが大変だとのこと。

「まぁ、しばらく人の目を避けるにはいいかも」

焼きたてのパンが美味しかったり、空気が綺麗だったことを思い出して了承した。
私の荷物を家に取りに行くと、すぐに明日香さんの家に向かった。

「いい?絶対に那智さんには…」
「触りません!!!
希望が怖いからねぇ~」

希望さんが明日香さんに念押ししている姿に思わず笑ってしまう。

ダイニングにはブルーシートが敷いてあり、大量の泥…ていうか水晶…

その隣でコーヒーを飲みながらパンをいただいている。
期日は3日らしい。

明日香さんから説明を受けて、私は水晶を綺麗にしてからサイズ別に区分けするところまでやるそうだ。
早速、タライに水を汲んで挑戦してみる。

「綺麗…」

水晶って全部透明かと思ったけど薄いピンクや黄色に黄緑色
見ているだけで、まるで夢を見ているみたいだった。

明日香さんは、個展に出す作品の手直しやら最終仕上げ中
希望さんが帰ってからも、私は泥だらけになりながら作業をしていた。

「大変な目に遭ったばかりなんだから、サボりながらでいいからね。」
クッキーと紅茶を出してくれた。

「ありがとうございます。
明日香さん…このサイズが小さいのは破棄しちゃうんですか?」

砂くらいの水晶が、ブルーシートの隅に置いたままだ。

「これは使い道ないよ~。
欲しいなら持って帰ったら?」

「これを小さい瓶に入れたら綺麗だろうなぁと思って」

私が小さい空き瓶に水晶を入れて蓋をした。

「いいねぇ!!!
ストラップ作る工場に出すことしか考えてなかった。

希望にあげちゃう?」

結局、小さい空き瓶に入れた置き物を作ってみた。

「これは那智さんにしか作れないプレゼントだから、希望が喜ぶよ。」

個展の準備で忙しいのに、アクセサリーまで作ってくれた。

翌日からは、早起きして朝食を作ったり掃除や洗濯をお手伝いする。
コーヒーを飲んで一休みしてからお仕事開始。

夜は、一緒に屋根の上から星を眺めたり
仕事中なのに、息抜きと称して川に釣りに来てみたり
水晶を洗って磨くのは大変だったけど、ほとんど遊んでいるかのような毎日だった。

お昼ご飯は、朝に釣って来た魚。
明日香さんが山の生活を気に入っているのがすごくわかるくらいに美味しかった。

「魚だけでなくて、秋にはキノコも取れるし栗拾いも行くよ。」

おかげでスーパーに行くのは月に1度くらいだそうだ。
希望さんも会社でお昼休みなのか、LINEから着信が入る。

「明日香、那智さんに変なことしてないでしょうね?」

「変なことって、お昼ご飯一緒に食べてますよ。」

明日香さんは大爆笑している。

それから、警察からの報告を聞いたりもした。

「それって、そのエリコって人が希望に変な感情抱いて那智さんに取られたって勝手に解釈して、那智さんを会社でいじめたり今回の事件に発展したってこと?」

「私も警察から聞いてびっくりした。
で、私や那智さんがそうゆう関係なんですか?とか聞かれたから
違いますとは伝えておいた。

元部下ですが、たまに会って食事する程度です。と…。

本当のことは知れたらまた厄介だからね。」

まぁ、確かに世間には上司と部下で通した方が良さそうだ。

「仕事熱心で頭が良くて頑張り屋さんだと評価していたのに、残念だわ。」

希望さんも、自分に抱かれたエリコからの感情は複雑なものだったらしい。

「まぁ、希望が魅力的過ぎていろいろ大変だねぇ。」
「そうゆう問題でもないと思うわ。」
希望さんが、頭を抱えている。

さらに、ビッグニュースがあり
希望さんも安全のために早く新しい家に移ることになった。
今日と明日で娘さんと引越しの準備をするとのことだった。

まぁ、いろいろ特定されていたから仕方ないのかな?

明日香さんのお仕事が終わったら、私も引越しの用意をしないと…

何かと忙しくなりそうだ。

バイト期間は後1日

私は、晩御飯を食べてからも泥を取る作業に取り掛かっていた。
明日香さんと喋りながら作業していたせいか
夜中になったけど、無事終わった。

「終わったぁ!!!」
明日香さんが床に寝転ぶ

「後は業者さんに出すだけですか?」
「回収に来てくださるから引き渡すだけだよ。」

かなりサボってばかりで大丈夫かと心配もしたけど無事終わらせることができた。
残りの時間は、床掃除をお手伝いしてみたり
既に完成している作品を梱包するお手伝いをしてみたり、個展の詳細のチラシもいただいた。

希望さんと私のお土産のパンまで作っていただいた。

希望さんが、車で迎えに来てくれた。
引越しした後で疲れいるのがなんとなくわかる。

「明日香さん。
3日間ありがとうございました。」
私が帰ろうとすると、水晶でできたネックレスを手に持たせてくれた。

「希望にあげるんでしょ?
いいクリスマス過ごしてね。」

明日香さんに見送られて、私も家に帰った。

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