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告発※
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フードデリバリーの仕事を終えて、部屋に戻る。
さっきから、私のスマートフォンからの着信が何度も鳴っていたので確認してみると相手は希望さんからだった。
「希望さん?
どうしたんですか?」
「那智さん…。
大変なことになってて…」
普段慌てている場面をあまり見かけることがないのに、今日の希望さんは凄く混乱している。
「今、会社から離れて通話してるんだけど…」
希望さんの話によると、匿名で誰かが退職した私がアダルトコンテンツの仕事を受けている。
社則で退職1年未満の者は、動画やテレビ出演の際には会社の許可をもらわないといけないとあるのに許可しているのか?
という内容だった。
「どうせエリコだと睨んでるけどね。」
会社の内部事情を知らないと、こんな告発はできない。
私も実はそう思っていた。
「私のカタログあたり見たんでしょうね。」
「多分」
「もうすぐ、会社のビデオ通話で私は那智さんと通話しないといけないんだけど、録画されてるし会社の他の人も観に来るから、今のようには話せないの…。
で、作戦があるんだけど…」
希望さんの伝えてくれた作戦というのは
「演じる」
ということ。
元上司役の希望さん。
生活に困って下着モデルをしている私
どうして、こうなったんですか?
と、わざと厳しく接するから
生活に困って、ギリギリやっている。と、かわいそうな元部下を演じてほしい。
「まぁ、そんなに困っていたなら仕方ないわね。」
というところまで落とし込み
会社には、急な退職により生活費の工面に苦しみ働いていた。
という流れにする。
私は、希望さんの作戦に従うことにした。
「上手くできたら、ご褒美あげるからね。」
そう言われて電話が切れた。
しばらくすると、退職した会社のメールアドレスから私にメールが来た。
「苅谷です。
いつもお世話になっています。
お伺いしたいことがございますのでお時間よろしいでしょうか?」
自分のタブレットでzoomを開き、見える位置にスマートフォンを開いて置いた。
希望さんから早速LINEが来る。
「那智さん。
大丈夫?」
「準備できてます。」
服も、なるべく色褪せた地味な服を着て配信で使う道具が映らないようにカメラテストする。
ちょうど、窓から築45年の文化住宅が映る。
絶好のロケーションだ。
そうこうしているうちに、希望さんが黒いスーツ姿で画面に映る。
すごく整った顔をしているせいか、こうゆう空気の時の笑顔のない希望さんはなんだか怖く感じた。
「那智さん。
お久しぶりです。
急にお時間作っていただきありがとうございます。」
希望さんが頭を下げる。
「お久しぶりです。
お話し…というのはどのような内容なのですか?」
私が質問する。
「会社の方に匿名で問い合わせがありました。
内容はあなたが下着等で肌を露出しているという内容なのですが、これは真実なのですか?」
希望さんの顔が厳しくなる
同時にスマートフォンのLINEから
(ごめんっ🙏
演技だから気にしないで💦)
と、希望さんから送信があった。
(打ち合わせしたから大丈夫です^ ^)
私も返信する。
「はい。
モデルのお仕事でしたらさせていただいています。」
希望さんの演技を台無しにしないために、精一杯私も演じる。
「研修の時にお話ししましたよね?
動画やテレビなどに出られる際には許可がいると…。
退職されて1年未満の方も許可がいるのですが、覚えていらっしゃいましたか?」
「退職した後のあたりのことは、忘れていました。
それよりも、退職してから実家を急に出ていかなくてはならなくなり、生活の資金にも困っていてお金がいただけるならワガママなんて言える状況ではなくて、私をかわいそうに思った友人が今の仕事を紹介してくれたんです。
研修のことよりも、今を生きるのに精一杯だったんです。」
(後ろの背景もいい感じゃない?)
希望さんからLINEが入る。
(あと、上手にできてる!)
(上手くできてますか?)
私は、ちょっと嬉しくなった。
「ご実家はどうして出て行かれたのですか?」
「在宅勤務というものへの家族からの理解が得らなくて、顔さえ見れば喧嘩にしかならない。
おまけに私が体調を悪化させてからは家庭環境まで悪化してしまい、私が家にいることで状況はどんどん悪くしかならなくて、出て行くしか解決方法はなかったんです。」
実際、リアルな話だからある意味演じることなくできた。
「では、親御さんとは」
「出てからは連絡していません。」
(那智さん。
見学している他の部長さん達からも那智さんがかわいそうじゃないかと…
いい感じ😁)
「では、引越しをされてからはずっとお一人で生活されてるのですか?」
「そうです。
家賃の安いアパートに住んでいます。」
本当は、配信環境抜群のワンルームなんだけどここは敢えて貧しさをアピールした。
「まぁ、アダルトコンテンツに分類はされるかとは思いますが、私もカタログなど拝見したところ
下品な表現ではなかったので、上にはそのようにお伝えさせていただきます。
今回はお時間いただきありがとうございました。」
「はい。
ありがとうございます。」
希望さんが画面から消えた。
(大成功🎊
聞いてたみんなが那智さんが離職後実家を急に出なくてはいけなくなって、貧しい中をひとりで頑張っていると伝わったよ‼️)
希望さんの興奮がこちらにも伝わって来た。
(ありがとうございます❗️
希望さんのおかげです。)
後日談だけど、他の部長さんやら人事の方も研修でおきたいじめの内容を知っていたので
それがさらに効果があったようだ。
(私はちょっと、最後の仕上げをしてきます)
とりあえずは大成功ということもあり、ホッとして床に寝転がる。
希望さんから、またLINEが入る。
改めて大成功だったから、お約束のご褒美に夜景でも見に行きませんか?
今日は車なので迎えに行きます。
とのことだった。
ドライブ?
夜景?
まるでデート!!!
なんだか嬉しくなって、急いで服をピックアップする。
茶色のワンピースにショート丈のブーツを合わせる。
シャワーを浴びてみたり、髪にトリートメントしながらウキウキしながら準備していると、希望さんが来たようだ。
窓の外でライトが点滅する。
「那智さん。
今日は大成功だったね!」
「いきなりびっくりでしたよ~!!!」
会った瞬間お互いに大爆笑だった。
希望さんも、今はオーバーサイズのセーターに細身のデニムを履いている。
「今日は、どこに行くのですか?」
「サービスエリアが好きって前に聞いたから、サービスエリアでお食事してから夜景ツアーなんていかがですか?」
希望さんが見せてくれたのは、工場地帯の夜景スポットの案内だった。
実は隠れた人気スポットらしくて、希望さんも行きたいと思っていたらしい。
「面白そうですね!」
サービスエリアに着いた私達は、フードコートで晩御飯中
希望さんは、お寿司のセットで私は、B級グルメセット
「たこ焼きと焼きそばの後に、たい焼きの中に入ったソフトクリームも来るから楽しみ。」
「私の方も、わらび餅入りのミニパフェ…
楽しみ。」
お互いによく食べるなぁ…。
と、我ながらに思う。
絶景の工場地帯の夜景をたくさん撮影しながら、スマートフォンの待受を作ってみたり
ダラダラくつろいでみたり、帰って来たのはお互いに翌朝だった。
さっきから、私のスマートフォンからの着信が何度も鳴っていたので確認してみると相手は希望さんからだった。
「希望さん?
どうしたんですか?」
「那智さん…。
大変なことになってて…」
普段慌てている場面をあまり見かけることがないのに、今日の希望さんは凄く混乱している。
「今、会社から離れて通話してるんだけど…」
希望さんの話によると、匿名で誰かが退職した私がアダルトコンテンツの仕事を受けている。
社則で退職1年未満の者は、動画やテレビ出演の際には会社の許可をもらわないといけないとあるのに許可しているのか?
という内容だった。
「どうせエリコだと睨んでるけどね。」
会社の内部事情を知らないと、こんな告発はできない。
私も実はそう思っていた。
「私のカタログあたり見たんでしょうね。」
「多分」
「もうすぐ、会社のビデオ通話で私は那智さんと通話しないといけないんだけど、録画されてるし会社の他の人も観に来るから、今のようには話せないの…。
で、作戦があるんだけど…」
希望さんの伝えてくれた作戦というのは
「演じる」
ということ。
元上司役の希望さん。
生活に困って下着モデルをしている私
どうして、こうなったんですか?
と、わざと厳しく接するから
生活に困って、ギリギリやっている。と、かわいそうな元部下を演じてほしい。
「まぁ、そんなに困っていたなら仕方ないわね。」
というところまで落とし込み
会社には、急な退職により生活費の工面に苦しみ働いていた。
という流れにする。
私は、希望さんの作戦に従うことにした。
「上手くできたら、ご褒美あげるからね。」
そう言われて電話が切れた。
しばらくすると、退職した会社のメールアドレスから私にメールが来た。
「苅谷です。
いつもお世話になっています。
お伺いしたいことがございますのでお時間よろしいでしょうか?」
自分のタブレットでzoomを開き、見える位置にスマートフォンを開いて置いた。
希望さんから早速LINEが来る。
「那智さん。
大丈夫?」
「準備できてます。」
服も、なるべく色褪せた地味な服を着て配信で使う道具が映らないようにカメラテストする。
ちょうど、窓から築45年の文化住宅が映る。
絶好のロケーションだ。
そうこうしているうちに、希望さんが黒いスーツ姿で画面に映る。
すごく整った顔をしているせいか、こうゆう空気の時の笑顔のない希望さんはなんだか怖く感じた。
「那智さん。
お久しぶりです。
急にお時間作っていただきありがとうございます。」
希望さんが頭を下げる。
「お久しぶりです。
お話し…というのはどのような内容なのですか?」
私が質問する。
「会社の方に匿名で問い合わせがありました。
内容はあなたが下着等で肌を露出しているという内容なのですが、これは真実なのですか?」
希望さんの顔が厳しくなる
同時にスマートフォンのLINEから
(ごめんっ🙏
演技だから気にしないで💦)
と、希望さんから送信があった。
(打ち合わせしたから大丈夫です^ ^)
私も返信する。
「はい。
モデルのお仕事でしたらさせていただいています。」
希望さんの演技を台無しにしないために、精一杯私も演じる。
「研修の時にお話ししましたよね?
動画やテレビなどに出られる際には許可がいると…。
退職されて1年未満の方も許可がいるのですが、覚えていらっしゃいましたか?」
「退職した後のあたりのことは、忘れていました。
それよりも、退職してから実家を急に出ていかなくてはならなくなり、生活の資金にも困っていてお金がいただけるならワガママなんて言える状況ではなくて、私をかわいそうに思った友人が今の仕事を紹介してくれたんです。
研修のことよりも、今を生きるのに精一杯だったんです。」
(後ろの背景もいい感じゃない?)
希望さんからLINEが入る。
(あと、上手にできてる!)
(上手くできてますか?)
私は、ちょっと嬉しくなった。
「ご実家はどうして出て行かれたのですか?」
「在宅勤務というものへの家族からの理解が得らなくて、顔さえ見れば喧嘩にしかならない。
おまけに私が体調を悪化させてからは家庭環境まで悪化してしまい、私が家にいることで状況はどんどん悪くしかならなくて、出て行くしか解決方法はなかったんです。」
実際、リアルな話だからある意味演じることなくできた。
「では、親御さんとは」
「出てからは連絡していません。」
(那智さん。
見学している他の部長さん達からも那智さんがかわいそうじゃないかと…
いい感じ😁)
「では、引越しをされてからはずっとお一人で生活されてるのですか?」
「そうです。
家賃の安いアパートに住んでいます。」
本当は、配信環境抜群のワンルームなんだけどここは敢えて貧しさをアピールした。
「まぁ、アダルトコンテンツに分類はされるかとは思いますが、私もカタログなど拝見したところ
下品な表現ではなかったので、上にはそのようにお伝えさせていただきます。
今回はお時間いただきありがとうございました。」
「はい。
ありがとうございます。」
希望さんが画面から消えた。
(大成功🎊
聞いてたみんなが那智さんが離職後実家を急に出なくてはいけなくなって、貧しい中をひとりで頑張っていると伝わったよ‼️)
希望さんの興奮がこちらにも伝わって来た。
(ありがとうございます❗️
希望さんのおかげです。)
後日談だけど、他の部長さんやら人事の方も研修でおきたいじめの内容を知っていたので
それがさらに効果があったようだ。
(私はちょっと、最後の仕上げをしてきます)
とりあえずは大成功ということもあり、ホッとして床に寝転がる。
希望さんから、またLINEが入る。
改めて大成功だったから、お約束のご褒美に夜景でも見に行きませんか?
今日は車なので迎えに行きます。
とのことだった。
ドライブ?
夜景?
まるでデート!!!
なんだか嬉しくなって、急いで服をピックアップする。
茶色のワンピースにショート丈のブーツを合わせる。
シャワーを浴びてみたり、髪にトリートメントしながらウキウキしながら準備していると、希望さんが来たようだ。
窓の外でライトが点滅する。
「那智さん。
今日は大成功だったね!」
「いきなりびっくりでしたよ~!!!」
会った瞬間お互いに大爆笑だった。
希望さんも、今はオーバーサイズのセーターに細身のデニムを履いている。
「今日は、どこに行くのですか?」
「サービスエリアが好きって前に聞いたから、サービスエリアでお食事してから夜景ツアーなんていかがですか?」
希望さんが見せてくれたのは、工場地帯の夜景スポットの案内だった。
実は隠れた人気スポットらしくて、希望さんも行きたいと思っていたらしい。
「面白そうですね!」
サービスエリアに着いた私達は、フードコートで晩御飯中
希望さんは、お寿司のセットで私は、B級グルメセット
「たこ焼きと焼きそばの後に、たい焼きの中に入ったソフトクリームも来るから楽しみ。」
「私の方も、わらび餅入りのミニパフェ…
楽しみ。」
お互いによく食べるなぁ…。
と、我ながらに思う。
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