私の彼女は元上司

偶然？！※

今日は、美雨さんと一緒にとある会社の企画会議に参加することになっている。

「似合う～！！！」
私のスーツ姿に、ハイテンションな美雨さん。

普段、スーツなんて着ない私は美雨さんに黒いスーツを借りている。
スーツなんだけど、ミニスカートに細いリボンまで付いていて、ゴスロリ服のようだ。

「なんだか緊張しちゃいますね…」

「下着コレクションのカタログの打ち合わせだから、那智さんも連れて行く！って約束しちゃったんだ。」

美雨さんは、なんだかウキウキしている様子だった。
私と同じ黒いスーツに、美雨さんはピンクのリボンタイを付けている。

打ち合わせの場所は、都内の高速ビル群にある。
美雨さんは慣れた様子で建物に入り、エレベーターに乗り込む。
最上階の景色が一望できる会議室で、既に関係者がチラホラ…。

「那智さん？」

聞き慣れた声にドキッとした。
まさか…。

声の方を振り向くと

希望さん！！！
ネイビー色のパンツスーツ姿の彼女に思わず驚いてしまった

「なんでここに？」

「実はね。
早期退職したら、アダルトグッズ開発のオンライン接客部門に転職しようかと思って」

希望さんは、優しく笑う。

実は、スカウトも受けているらしく今日は会議に参加してプロジェクトの様子を見学させていただいているそうだ。

「こちら、デザイナーの美雨さん。
チケットくれたのは彼女なんです。」

「あなたが？
ありがとう！！！
すごく楽しかった！！！」

希望さんは、美雨さんと握手しながら

「実はね…。」



会議が終わってから、原宿のカフェに来ていた。
カラフルな照明に、ケーキやキャンディーをモチーフにしたテーブルや椅子。
おとぎ話に出て来そうなお店。

ここは、美雨さんのお気に入りのお店

「まさか、那智さんの彼女さんだなんて？
えぇぇぇっ！！？
女性？？？

って思っちゃいました。」

美雨さんは、驚きを隠せない様子だ。
会議の最中も、いろいろ考えてしまったらしく、落ち着くことが出来なかった。

「だから、最近色気が増したというかなんだか満たされ感が溢れているというか…」

流石、美雨さんはアーティスト
いろんな事に勘づいていたらしい。

もちろん。
このことは、私と希望さん、美雨さんだけの秘密。

私は、会議で何故かフードデリバリーの話題になり、モデルをしながらシークレットデリバリー部門の一員になった。

どうしても男性の配達員から商品を受け取るのに抵抗があるという女性のお客様限定のオプションを付けるそうだ。

カタログの方も、まるで何かの写真集のようだ。
取扱っている下着は、夜のお楽しみ用なのに
背景の世界観やら美雨さんの演出のおかげでまるで夢の世界のようだ。

みんな彼とのお楽しみの時間を楽しんでくれればと私も思う。

「それは、希望さんが毎度お元気だから。」
「そうゆう那智さんもすごいから…。」

「同じオフィスでお仕事になったら、那智さんにも開発お手伝いしてもらいましょうね。」

と、美雨さんもなんだか楽しそうだ。


「ちゃんと歩いて帰れるのかな？」　

私が心配すると　

「もっとして～っ！！！て、私が離してもらえなくりそうな感じするけど…。」

「邪魔はしませんので…っていうか、防音の部屋でも作らないといけなくなりそうですね。」

なんだか楽しくなってきた。

たまたま偶然の会議での出会い。
また、希望さんが上司になるのかな？

レインボー色のカラフルなパンケーキが3人分運ばれて来た。

「すごい色してるね…。」

希望さんがびっくりしている

「いろんな味がしておススメなんですよ。」
美雨さんイチオシのメニューらしい。

「赤いところがイチゴで、緑のところがキウイ…面白い！！！」
「でしょ？」

さらに、セットになっているソースで味チェンできた。
普段はなかなか来ることがないけど、たまにはこんなお店もいいのかな？

「希望さんの転職先、旦那様が知ったらびっくりしそうですよね？」
「その辺りは大丈夫なんですか？」

美雨さんも、希望さんが一応…既婚者ということで心配している。

「実は、昨日離婚して来たんだ。
で、早期退職のことも報告はした。
今の家は私1人だと管理やらいろいろ大変だから、退職したらマンションに引っ越す予定なんだけどね。」

いつの間にか、独身になっている希望さんに2人で驚いた。

旦那様と、新しい奥様ともオンラインで会話もして、お互いに納得した形で離婚が決まったらしい。

さらに…

娘さんも、アメリカで住むシェアアパートを決めて来たらしい。
この家族の行動力の凄さに尊敬してしまう。

私達が、賑やかに会話している片隅で、黒いジャンバーを着てコーヒーを飲む女性がいた…。

「那智…。
まだ苅谷さんと仲良くしてるなんて…。」

先日まで希望さんの部署で勤務していたけれど、那智さんへのパワハラが発覚して
解雇されたばかりだ。

エリコの手にしたスマートフォンには、希望が働く会社のお客様相談室のメールフォーム

匿名希望の設定にしてエリコが何か入力しはじめた。

以前、勤務していた従業員がアダルトコンテンツの仕事を…。

メールフォームに一通り入力すると、何もなかったかのように帰って行った。

「新しいおうちも決まったんですか？」
美雨さんがなんだか嬉しそうだ。

「候補はいくつか絞ってあるのだけど、どこも素敵だしなかなか決められなくて。」

「もし、決まったら内装は私に！！！」
「美雨さんにお願いしたら、ここのカフェみたいになりそうね。」

希望さんが笑う。
新しい会社の休憩室と受付の内装は、実は美雨さんの担当になっている。

「う～んと可愛くして、そこにいるだけでワクワクするようなのがいいなぁ」

受付もAIが担当するらしくて、その制服のデザインも彼女の担当
美雨さんから、テーマは「チョコレート」と教えて貰った。

甘くて、とろけるような優美な時間

というのがコンセプトらしい。

すごくぶっ飛んでいて時々何を考えてるかわからない時もあるけれど、美雨さんは
やっぱりすごいアーティストさんなんだと実感してしまう。

なんだか、この先の未来が楽しみで仕方なくなるような
ワクワクするような時間だった。