私の彼女は元上司

にゃる子

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デートは夢の国※

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今日は、希望さんとディズニーデートに行く前日。
その日のために、ディズニーショップでスーツケースを購入した。

ミニーちゃんのデザインですごく気に入っている。
パークで着るための服とか、パスケースにお菓子に…。
まるで遠足前の子供みたいな気分だ。

希望さんにLINEしてみる。

希望さんも荷造りしていたらしい。
前日に、宅配便が荷物を取りに来てくれるのもこのチケットのおかげ。
宅配便の車が来たので最終チェックを済ませてからスーツケースを引き渡す。

明日から3日間は仕事なんか忘れて楽しみまくる!!!
お互いにそう決めていた。

翌日、希望さんとパークの前で待ち合わせする。
希望さんも、今日はミッキーマウスがお尻にプリントされたデニムにミッキーマウスのパーカーを着ている。

服装だけでも楽しみなのが伝わって来た。

「電車混んでた~。」
「入り口からすごい人数…」

今回は、ガイドの方が一緒なので
この混雑は私達には無縁。

「苅谷様ですか?」
イケメンで長身の20代半ばくらいの男性スタッフが私達に声をかける。

「チケットの方を確認させていただけますか?」
私がチケットを見せると

「お待たせ致しました。
本日は、ランドで翌日がディズニーシーでお変わりないでしょうか?」

「はい。よろしくお願いします。」
希望さんが笑顔で挨拶する。
パークに入る前に盛大に私のお腹が鳴る。

確か、偶然出会った時もお腹が鳴ったなぁ…。

「那智さん。あなたはご飯食べたの?」
「楽しみ過ぎて忘れました。」

希望さんに笑われる。

「もしよろしければ、レストランに入ってから回られますか?
レストランの費用も無料となっております。」

ガイドさんは武山さんというらしい。

結局、ミッキーマウスのパンケーキのお店に行くことにした。
ここのパンケーキは数量限定らしくかなりの人気だ。

パンケーキを食べながら、美雨さんのお土産の相談をする。

「このチケットを譲ってくださったのが美雨様なのですね。
実は過去にご案内させていただいたこともありまして…」

武山さんは、美雨さんの好きなキャラクターも好きなアトラクション、食べ物についても詳しかった。
チケットの範囲外らしいのだけど、シェリーメイのお菓子をフルセットにする提案をいただいたので、現金を渡して発送していただくことにした。

キャラクターからのお手紙もお願いしてくれるということで、きっと大喜びだろうなぁと絵が浮かぶ。

「すごくハイテンションな方なんですよ…。
きっと大騒ぎすると思いますよ。」
「以前もご友人の方と賑やかでしたよ。」

やっぱり…。

それからは、スプラッシュマウンテンでずぶ濡れになってみたり、スターウォーズのアトラクションで希望さんがスパイにされたり
足が棒になるのでは?と思うくらいに走り回った。

ディナーは、宿泊先のホテルでコースメニュー。

「あ…。あの…。
テーブルマナーとか、わからないんですけど…。」

私が心配していると

「端から使えばいいの。」
と、希望さんに笑われてしまった。

いざ、レストランに案内されると

まるでテレビにでも出て来るくらい豪華だ。
希望さんがさりげな~く使う食器を指で教えてくれたおかげで難なく楽しい時間が過ごせた。

さりげなくミッキーシェイプされたメニューの数々がどれも美味しくて、パンは食べ放題と聞いて、ふたりでいくつ食べたのやら…。

ホテルの部屋はツインルームで、大きな窓からはディズニーが一望できる。
「ずっと住みたくなりますね。」
「本当に、夢の国に来たんだなぁ…と思うわね。」

お互いに、アルコールは苦手なのでノンアルコールのシャンメリーで乾杯する。

「朝はバイキングらしいですよ。」
「食べ放題、いいわね。」

きっとお互いに絶対に元は取るつもりらしい。

「寝坊しないようにしないとね。」
「誰かさんに襲われなかったら大丈夫ですよ。」
「誰かさんって?
こらーっ!!!」
「きゃああああっ笑。」

希望さんが、私に襲いかかる。

「嘘ですっ!
ごめんなさ~い!!!」

なんだか修学旅行よりも楽しくて、結局寝たのは日付が変わってからだった。

夜景を見ながら、いろんなことをたくさん話すこともできた。
普段ここまで話すこともなかったように思う。
夜景を見ながらソファーで眠ってしまい…。


「希望さんっ!
バイキング遅れちゃいますよ?」
「えっ…もうそんな時間?」

お互いにすごいスピードで早着替えして、バイキング会場に向かった。

みんな、朝が早いせいかパジャマ?で来ている人までいる。
焼きたてのパンが本当においしくて、顔を覚えられるくらいおかわりしたり、サプライズでミッキーマウスがテーブルを回ってくれたりもして、楽しい朝だった。

さらに

「パークでお召し上がりください。」

と、焼きたてのパンのプレゼントまであった。
たらふく食べたあとは、武山さんが迎えに来るまでの間にメイクをしたり、髪を巻いたり
毎日、希望さんと一瞬に暮らしたら楽しいのかな?
なんて思ってしまった。

頭が良くて、すごく優しくてなぜかそばにいると癒される。
実はすごくえっちだけど、そこも含めて大好きだから。

前は、仕事のよくできて部下を大切にできる素敵な上司だったけど
今は、もう上司でも部下でもないのだから。

パークで遊ぶ準備が出来たころに、武山さんが部屋に迎えに来てくれた。
今日は、マーメイドと写真撮影をする予約もしているので、メイクもお互いバッチリ

朝の寝坊未遂事件の話やら、テーブルマナーの話で道中の車では盛り上がった。

マーメイドの予約時間まで空き時間があるので、先に私達のお土産を見ることになった。

貝殻の形のガラスでできたピアスを希望さんと色違いで購入したり
お泊りセットやら文房具なんかもいろいろ買った。

お土産も配達してくださるそうだ。

マーメイドラグーンに写真撮影に行く。
マーメイド役の方は、おそらく英語圏の方
カタコトの日本語で挨拶してくれたのだけど、希望さんが英語で会話をはじめて、お互いにすごく盛り上がっていた。

なんだか、聞いているだけでも幸せになっていた。

実は、オフの日にひとりでいる時
飛行機の管制官とパイロットのやりとりの音声を聞きながらくつろいでいたりするのも大好きだから。

写真も、結構いい感じに上がって
ちゃんとフォトアルバムにしてくれる。

それからは、アトラクション巡り。
寝不足のはずが、そんなことを忘れてしまうくらいに楽しかった。

今日のお昼ご飯は、マーメイドラグーンのレストランになった。
アリエルがサービス満点だったことやら、武山さんが撮影してくれた写真をピックアップしてデーターでプレゼントしていただいたりもした。

武山さんの提案でディナーは食べ放題のレストランになった。

「絶対、私たちのことを
どんだけ食うんだよ?って思ってますよね?」

と、武山さんに聞いてみる

「とんでもございません!
皆様結構食べていらっしゃいますし、関西からいらっしゃったマダムなんかはタッパーまで持参してテイクアウトされてましたよ。」

「テイクアウト?
さすが、関西人。」
希望さんが大爆笑していた。

希望さんが、過去に対面で本社の応接室で面接官をしたことがあった。
アルバイトで入った年配の関西出身の方が、置いてある来客用のお菓子を全部食べてしまった…。

なんてこともあったそうだ。

「確かに、どうぞ。
とは言ったけど、遠慮…って言葉を知らない方みたいで、ゴミだけ置いて帰られたわよっ。」

結局、その方は今も掃除のお仕事を継続されているそうだ。

お昼ご飯は、笑いの絶えない時間となった。

明日はイクスピアリでお買い物してから帰ることになっている。

海底2万マイルのアトラクションの中で、希望さんが

「私、言おうかどうか迷っていたけど
旦那と離婚するかもしれないの。」

「えええっ!!!」

離れて住んでいても、お互いを尊重している気持ちもすごく希望さんから伝わっていたし
仲の良い夫婦だと思っていた。

「今いる土地で会社を設立したいそうなの。
どうしても永住権がほしいから、現地の秘書と結婚したいと…。」

「で、なんて返事したんですか?」

「娘にも、意見を聞くつもり。
私としては、旦那の人生は旦那のものだから
もし、本当にしたいことなら応援します。って伝えておいた。」

まだ、話し合いやらいろいろはあるらしいのだけど、希望さんは旦那様にも自分の人生を生きてほしいと思っているそうだ。
希望さんの家族の素晴らしいところは、みんながそれぞれに自分の人生を生きていること。

誰かのために誰かが犠牲になることもなくて、みんながそれぞれに自分軸で生きている。

「まぁ、離婚したからといっても連絡手段もいくらでもあるし、会いたいと思えばいくらでも会える世の中だからね。」

すごい爆弾発言に私が驚いていると

「娘も、大学を出たらアメリカでミュージカルに出たいからニューヨークに行きたいと…」

旦那様と離婚して、娘さんもアメリカ。
希望さんは日本でひとりになるんだ…。

私がひとりでいろいろ考えていると

「自分の人生は自分のものだからね。」
希望さんはニコリと笑う。

武山さんのガイドが素晴らしくて、メンテナンスのものや子供向けのアトラクション以外はほとんど回れた。
プレミアムチケットということで、すぐにアトラクションの順番が回って来るというのもあったのかな?

船の中のレストランのバイキングも、シーフードメインでかなり豪華だった。

制限時間いっぱいまで、デザートまで食べてあとはホテルに戻るだけとなった。
船から見る夜景も本当にキラキラしていて
停泊しているのに、まるで海外にでもいる気分になれた。

ホテルに戻ってから、明日の準備をしていると
テレビでリトルマーメイドを放送していた。
海に憧れるアリエルの娘の物語。

なんだか希望さんがぼんやりと見つめているので、邪魔しないように静かに荷物整理をする。

きっと、旦那様のこと。
娘さんのこと。
いろいろ考えているんだろうな…

そんなことを考えていると、私のスマホに着信があった。

「那智さ~ん!!!
ありがとう~。
今日、お土産が届いたんだけどシェリーメイからサインとお手紙までいただいて
限定のお菓子まで入ってたよ~。」

相変わらず、彼女はとても元気だ。

「美雨さん。
気に入っていただけてよかったです。
武山さん覚えてますか?」

「ガイド、武山さんなんだ~。
覚えてるよ~。
確か、アリスのティーカップに一緒に乗って
私達が回して遊び過ぎて酔っちゃって歩けなくなって大変だった人~。」

武山さんも大変だなぁ…と我ながらに思う。

「あの、くるくる回るやつでしょ?
美雨さん、それは酔っちゃいますよ。」

「も~。
歩けなくなって私達で看病したんだよ~。

あ、また新作用意しとくからね~。」

美雨さんとの通話を終えると、隣で希望さんが笑っている。

「本当に明るい方なのね。」
「デザイナーさんの美雨さんです。
そうですね。
大人しい場面を見たことありません。」

はじめて美雨さんに会った日のことを今でも覚えている。
実は、私以外に候補のモデルが2人いた。
無機質な会議室で、いきなり服を全部脱ぐように指示されたときには正直驚いた。
下着のモデルだから抵抗なく脱げるというのも、審査の対象だったらしいけどひとりの子はそれにドン引きして帰宅。
もう1人の同じ歳の女の子と私だけが指示に応じた。

私とは正反対なグラマラスな女の子で白い肌がとても魅力的な子。

結局、ふたりとも採用された。

審査の話を希望さんにすると

「その時から、濡らしてたんじゃないの~。」
と、揶揄われる。
「いや…。
緊張して、固まってました。」

すごくノリノリなもう1人の専属モデルは優香ちゃんという。
「那智は、身体のラインが綺麗で羨ましい。」
なんて褒めてくれた。

彼女は下着モデル以外でも美術モデルをしていると教えてくれた。

あれから現場で会うことはなかったけど、彼女も美術モデルに下着モデルにと活躍しているらしい。
今はどうしているんだろ?

あのとき交換したLINEアカウントが、そのままになっていた。

「明日こそ!
余裕を持ってバイキングに行く。」
お互いに意味のわからない目標を立てて眠りについた。

翌日、ちゃんと起きた私達はイクスピアリで映画を観たりお買い物したり
Avatarの映画を上映していたのもあって、コラボショップも出ていた。

ノンストップで遊んで、帰りの電車ではお互いが爆睡していた。
旅行なんて久しぶりだったけど、希望さんと行けてよかったと本当に思う。

希望さんの首元にコラボショップでお揃いで買った羽根のついたペンダントがキラキラしていた。

また、旅行行きたいな…。
今度はどこに行こうかな?

そんなことを考えているうちに最寄り駅に着いてそれぞれ家路についた。
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