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神々に魅入られし淑女《タイムレス ラヴ》
神々の領域《ヨトゥンヘイム》15
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「アキラ……だと?」
俺の知っているアキラ。
それはセブントリガーの副隊長に他ならない。
そのアキラのことを彩芽は弟と言ったのだ。
「……まさか、アキラと一緒にテロ事件を起こしたってのは……」
「ご名答。加藤彰と共にアメリカ大使館でテロ事件を引き起こしたのはこの私だ。あの時の結果は惨敗だったけど」
でも、それも昔の話し。
彩芽は顔を離し、磔のように動けなくなっている俺の姿を、まるで写真にでも収める様に拝覧する。
「アメリカ政府はあの子を捕らえて洗脳し、自分達の利益のために利用した。お前はその中でも主犯格に値する男だ。生かしておくわけがないだろう?」
俺のことを目の敵にして睨む表情は、確かにアキラとやや似ている部分がある。
それでもアイツは、ここまで人に憎悪を向けることは一度も無かった。
「分かるか、この気持ちが?二度だぞ!!二度も家族をアメリカという国に奪われた私の気持ちが!?」
こんなに血走った、怒りだけで世界を観るようなことは絶対に……
「分からねえよ……お前の気持なんか……」
「何だと?」
止せばいいのに。
強がりからか、俺はそんな悪態をついていた。
いや、この際だからハッキリと言ってやろう。
どうせもう長くは持ちそうにないのだから。
「お前は……他人に、押し付けるばかりで、理解されることを求めていない。自分の憎悪をぶつけることばかり考え、それを正当化するためだけに被害者面しているに過ぎない」
「それの何が悪い!!私は、家族の無念を晴らすために、こうして全てを、私の全てを捧げてきたんだ!!私には憎悪を体現する権利も義務もあって然るべきなんだ」
「それだって結局は……自分を正当化するための言い訳に……グッ!!」
黒いロンググローブに包まれた指先が、俺の喉を引き千切らんとばかりに気道を締め付ける。
「黙れ黙れ黙れぇッッッ!!死にぞこないの分際で、生意気に説教するんじゃない!!」
や、やべぇ……
呼吸が……
女性のものとは思えない握力が酸素を断ち、首元にめり込んだ爪から血が滲み出す。
今の俺にはそれを引きはがせるほどの力も気力も、腹部から零れ落ちる血と共に失われている。
それでもコイツには面と向かって言ってやるんだ。
だって、アキラと過ごしたあの一年間。ずっとそれだけを考えていたのだから。
「あぎらは……お前なんかど……一緒じゃない……アイツは自分の罪と向き合って、そして、それを償う道へと進んだ……洗脳だって……していない。アイツは……お前のように、ただ徒に、関係のない人へ憎悪を振りまくことなんて……ぅっ」
「何が違う?アキラは私と共にテロを起こそうとした共犯者だ!罪には罰を、その覚悟があったからこそあの子は私に付き従ってくれていた。全く同じ思想だったんだよ。私達が血の繋がった家族だったからこそ!!」
家族。
彼女からその言葉を聞いて、胸の内で燻っていた火種が一気に燃え上がった。
「────だからこそアイツは、爆弾のスイッチを押さなかったんだ」
俺の右手が、今にも首を圧し折ろうとしていたか細い左手首を握ると、
バキンッッ!!
「っ……!ああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」
耳を劈く少女の悲鳴が、閑散としていた街の情景を切り裂く。
自らの血が反射する紅い瞳が視たのは、小枝のようにか細い腕を力任せに握り潰す己の姿だった。
堪らず両手の力を緩めた彩芽が後退ると同時に、墜ちる寸前だった俺の細胞達に酸素が送り込まれる。
「クッ!!」
悪いと思いながら、後方に居たセイナを突き放す。
突き刺さっていたグングニルが無表情のまま尻もちをついたセイナと合わせて、沼から引き抜くような嫌な感触と音を響かせながらも抜け落ちる。
幸い、重要臓器への傷は浅いようだが、それでも身体の中はミキサーを掛けたようにグチャグチャになっていた。
その証拠に傷口から溢れる血には、一部臓物らしき肉片が入り混じっている。
痛いという言葉すら忘れてしまいそうな程の激痛は、まるで電極でも突き刺しているのではと思うほど全身を何百何千と駆け巡っていた。
「このっ……!」
モール街の壁に身を預けながら彩芽が俺を睨め付ける。
「スイッチを押さなかった……だと?あれは作動しなかっただけで、あの子の意志じゃない。お前如きが何を知っているというんだ……っ」
その瞳には薄っすらと涙すら滲んでいた。
無理もない、プレス機のような力で手首を粉々に砕いたのだ。
寧ろ、未だ闘志が瞳から消えていないことには感服する。
「知っているさ。あの時の映像も、当時不発だった爆弾も全て、資料として残っていたんだからな」
彩芽が本気で驚いたように、黒曜に輝く瞳を丸くした。
「爆弾の扱いに長けたアイツは……わざとスイッチが作動させない様にしていたんだ。アメリカという国を恨んでいながら、関係のない人々までは巻き込まないためと、そして、お前という家族を殺さないためにも」
これらは全て、アメリカ政府の資料からロナに頼んで揃えてもらった真実だ。
この事件のショックから、アキラは恐らく記憶を失ったのだろう。
もしかすると、事件後に姉を失ったと思っていたアキラの心が、無意識に安全装置を掛けていたのかもしれない。姉を失った苦しみを忘れるために、そして、姉に関する情報を吐かないために。
「だから違うんだよ、アイツは。自分と同じ立場の人間を作らないためにもギリギリのところで踏み止まれたんだ。もちろん、お前も含めてな。だけどお前はどうだ?関係のない人々まで多く巻き込んで、自分と同じ境遇の人間を作ろうとしているじゃないか!」
「……あっそ」
吐血混じりの俺の叫び声を受けて、彩芽は使い物にならなくなった左手を放る。
だらん……と垂れさがる様子は、まるで彼女が俺の話しへの興味を全く失ったことをそのまま表しているようだった。
「だから何だって言うの……結局、私の憎悪は変わらない。例え家族の皆が望んでいなくても、私自身がその生き方を望んでいるんだから」
彼女が拠り所としていた壁に映る影が、先の沼と同じように波紋を浮かべる。
「さようなら、フォルテ・S・エルフィー。遺言にしては随分つまらないお話だったわね」
さっきまで取り乱していたのが嘘のように、淡々とした口調で語る彩芽。
己の生き方を曲げられない不器用な彼女にとって、その在り方こそが唯一『彩芽』という存在を繋ぎ止めておくための在り方なのだろう。
人には誰しも譲れないものがある。
同時にその重さも人それぞれだ。
矛盾を感じるかもしれないが、人にとって物事の捉えは千差万別。
趣味を第一の選択肢にしている人が、必ずしも家族を第一にしている人と同等の価値観を持っているとは限らない。前者が後者を超えることは無いし、後者が前者より劣ることもまた十分にあり得る話しだ。
その中でも彩芽にとっては、復讐に身を任せるこそ、彼女にとっては命にも代えがたい譲れないものであり、それを放棄することは即ち、生きていながら死んでいるのと同等である価値観なのだ。
俺の口先一つで変えられるような、簡単な覚悟じゃないんだ。
「セイナ、その男を殺せ」
音なく響いた死神の死刑宣告に、後方で呆然と倒れたままだったセイナがこくりと頷いた。
墜とした『グングニル』を拾うことなく、レッグホルスターに装備していたコルト・カスタムを何の躊躇いなく構える。
狙いはもちろん……俺の後頭部だ。
「セイ……ナ……」
「…………」
朦朧と意識の波が浮き沈みを繰り返す中、銃口を圧しつける少女の名を口遊んでみたが、酸化した宝石のようにそのブルーサファイアの瞳に光は戻らない。
三角穴式のリングハンマーは軽い。ほんの少し指先がトリガーに触れただけで、俺の頭には地獄行のトンネルが開通するだろう。
カチ……カチ……カチ……
だが、何時まで経ってもその時は訪れない。
セイナの指先がまるで時を刻む指針のように、引き金に触れては止め、触れては止め、を繰り返していた。
「…………?どうした、早くその男にトドメを刺せ!!」
言うことを聞かない動物へ鞭を振るうように、彩芽が再度命令を告げた。
それでもセイナは、命令に付き従う肉体の動きを精神で無理矢理封じ込めるように、無表情のまま懸命に右手の人差し指が動いてしまうことを抑えている。
思考操作が解け始めているのか?
「そんなバカな……っ!貴様の中の神は私が掌握したんだぞ?どうして命令が利かない!?」
今までの彩芽の洗脳はそう簡単に解けるものではなく、解除するには最低一度気を失わせる必要があるほど強固な印象だ。
そしてそれは彼女自身にとっても誤算だったらしい。
突然訪れた逆転の可能性。
俺はここに掛けるしかないと最後の力を振り絞った。
「セイナ、セイナ俺だ。フォルテだ!!眼を覚ませ、お前はいつだって人に命令する立場だっただろ!」
死に際に見た最後の希望に思いを託すべく、俺はあらん限りの言葉を振り絞った。
「黙れぇッ!!命令権はこの彩芽にある!!お前の指先呼吸一つまで全てこの私の物なんだ!!」
「お前が求めていたのは人を抑圧する力じゃない、先導するための志だろ!!こんな奴の命令なんかに負けてんじゃねえよ!!」
口から再び血が入り混じる。
喉から溢れたこの血は臓腑が損傷したからではない。
今の叫びで喉自体が張り裂け喀血したようだ。
俺にできる最後の力を振り絞った魂の叫び。
それが彼女の心に響かないはずもなく。
「……え……」
瞳を小刻みに瞬かせるセイナ。
死んでいたブルーサファイアの瞳にも光が灯る。
ようやく眼の前で起きている状況を認識したようだった。
俺の知っているアキラ。
それはセブントリガーの副隊長に他ならない。
そのアキラのことを彩芽は弟と言ったのだ。
「……まさか、アキラと一緒にテロ事件を起こしたってのは……」
「ご名答。加藤彰と共にアメリカ大使館でテロ事件を引き起こしたのはこの私だ。あの時の結果は惨敗だったけど」
でも、それも昔の話し。
彩芽は顔を離し、磔のように動けなくなっている俺の姿を、まるで写真にでも収める様に拝覧する。
「アメリカ政府はあの子を捕らえて洗脳し、自分達の利益のために利用した。お前はその中でも主犯格に値する男だ。生かしておくわけがないだろう?」
俺のことを目の敵にして睨む表情は、確かにアキラとやや似ている部分がある。
それでもアイツは、ここまで人に憎悪を向けることは一度も無かった。
「分かるか、この気持ちが?二度だぞ!!二度も家族をアメリカという国に奪われた私の気持ちが!?」
こんなに血走った、怒りだけで世界を観るようなことは絶対に……
「分からねえよ……お前の気持なんか……」
「何だと?」
止せばいいのに。
強がりからか、俺はそんな悪態をついていた。
いや、この際だからハッキリと言ってやろう。
どうせもう長くは持ちそうにないのだから。
「お前は……他人に、押し付けるばかりで、理解されることを求めていない。自分の憎悪をぶつけることばかり考え、それを正当化するためだけに被害者面しているに過ぎない」
「それの何が悪い!!私は、家族の無念を晴らすために、こうして全てを、私の全てを捧げてきたんだ!!私には憎悪を体現する権利も義務もあって然るべきなんだ」
「それだって結局は……自分を正当化するための言い訳に……グッ!!」
黒いロンググローブに包まれた指先が、俺の喉を引き千切らんとばかりに気道を締め付ける。
「黙れ黙れ黙れぇッッッ!!死にぞこないの分際で、生意気に説教するんじゃない!!」
や、やべぇ……
呼吸が……
女性のものとは思えない握力が酸素を断ち、首元にめり込んだ爪から血が滲み出す。
今の俺にはそれを引きはがせるほどの力も気力も、腹部から零れ落ちる血と共に失われている。
それでもコイツには面と向かって言ってやるんだ。
だって、アキラと過ごしたあの一年間。ずっとそれだけを考えていたのだから。
「あぎらは……お前なんかど……一緒じゃない……アイツは自分の罪と向き合って、そして、それを償う道へと進んだ……洗脳だって……していない。アイツは……お前のように、ただ徒に、関係のない人へ憎悪を振りまくことなんて……ぅっ」
「何が違う?アキラは私と共にテロを起こそうとした共犯者だ!罪には罰を、その覚悟があったからこそあの子は私に付き従ってくれていた。全く同じ思想だったんだよ。私達が血の繋がった家族だったからこそ!!」
家族。
彼女からその言葉を聞いて、胸の内で燻っていた火種が一気に燃え上がった。
「────だからこそアイツは、爆弾のスイッチを押さなかったんだ」
俺の右手が、今にも首を圧し折ろうとしていたか細い左手首を握ると、
バキンッッ!!
「っ……!ああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」
耳を劈く少女の悲鳴が、閑散としていた街の情景を切り裂く。
自らの血が反射する紅い瞳が視たのは、小枝のようにか細い腕を力任せに握り潰す己の姿だった。
堪らず両手の力を緩めた彩芽が後退ると同時に、墜ちる寸前だった俺の細胞達に酸素が送り込まれる。
「クッ!!」
悪いと思いながら、後方に居たセイナを突き放す。
突き刺さっていたグングニルが無表情のまま尻もちをついたセイナと合わせて、沼から引き抜くような嫌な感触と音を響かせながらも抜け落ちる。
幸い、重要臓器への傷は浅いようだが、それでも身体の中はミキサーを掛けたようにグチャグチャになっていた。
その証拠に傷口から溢れる血には、一部臓物らしき肉片が入り混じっている。
痛いという言葉すら忘れてしまいそうな程の激痛は、まるで電極でも突き刺しているのではと思うほど全身を何百何千と駆け巡っていた。
「このっ……!」
モール街の壁に身を預けながら彩芽が俺を睨め付ける。
「スイッチを押さなかった……だと?あれは作動しなかっただけで、あの子の意志じゃない。お前如きが何を知っているというんだ……っ」
その瞳には薄っすらと涙すら滲んでいた。
無理もない、プレス機のような力で手首を粉々に砕いたのだ。
寧ろ、未だ闘志が瞳から消えていないことには感服する。
「知っているさ。あの時の映像も、当時不発だった爆弾も全て、資料として残っていたんだからな」
彩芽が本気で驚いたように、黒曜に輝く瞳を丸くした。
「爆弾の扱いに長けたアイツは……わざとスイッチが作動させない様にしていたんだ。アメリカという国を恨んでいながら、関係のない人々までは巻き込まないためと、そして、お前という家族を殺さないためにも」
これらは全て、アメリカ政府の資料からロナに頼んで揃えてもらった真実だ。
この事件のショックから、アキラは恐らく記憶を失ったのだろう。
もしかすると、事件後に姉を失ったと思っていたアキラの心が、無意識に安全装置を掛けていたのかもしれない。姉を失った苦しみを忘れるために、そして、姉に関する情報を吐かないために。
「だから違うんだよ、アイツは。自分と同じ立場の人間を作らないためにもギリギリのところで踏み止まれたんだ。もちろん、お前も含めてな。だけどお前はどうだ?関係のない人々まで多く巻き込んで、自分と同じ境遇の人間を作ろうとしているじゃないか!」
「……あっそ」
吐血混じりの俺の叫び声を受けて、彩芽は使い物にならなくなった左手を放る。
だらん……と垂れさがる様子は、まるで彼女が俺の話しへの興味を全く失ったことをそのまま表しているようだった。
「だから何だって言うの……結局、私の憎悪は変わらない。例え家族の皆が望んでいなくても、私自身がその生き方を望んでいるんだから」
彼女が拠り所としていた壁に映る影が、先の沼と同じように波紋を浮かべる。
「さようなら、フォルテ・S・エルフィー。遺言にしては随分つまらないお話だったわね」
さっきまで取り乱していたのが嘘のように、淡々とした口調で語る彩芽。
己の生き方を曲げられない不器用な彼女にとって、その在り方こそが唯一『彩芽』という存在を繋ぎ止めておくための在り方なのだろう。
人には誰しも譲れないものがある。
同時にその重さも人それぞれだ。
矛盾を感じるかもしれないが、人にとって物事の捉えは千差万別。
趣味を第一の選択肢にしている人が、必ずしも家族を第一にしている人と同等の価値観を持っているとは限らない。前者が後者を超えることは無いし、後者が前者より劣ることもまた十分にあり得る話しだ。
その中でも彩芽にとっては、復讐に身を任せるこそ、彼女にとっては命にも代えがたい譲れないものであり、それを放棄することは即ち、生きていながら死んでいるのと同等である価値観なのだ。
俺の口先一つで変えられるような、簡単な覚悟じゃないんだ。
「セイナ、その男を殺せ」
音なく響いた死神の死刑宣告に、後方で呆然と倒れたままだったセイナがこくりと頷いた。
墜とした『グングニル』を拾うことなく、レッグホルスターに装備していたコルト・カスタムを何の躊躇いなく構える。
狙いはもちろん……俺の後頭部だ。
「セイ……ナ……」
「…………」
朦朧と意識の波が浮き沈みを繰り返す中、銃口を圧しつける少女の名を口遊んでみたが、酸化した宝石のようにそのブルーサファイアの瞳に光は戻らない。
三角穴式のリングハンマーは軽い。ほんの少し指先がトリガーに触れただけで、俺の頭には地獄行のトンネルが開通するだろう。
カチ……カチ……カチ……
だが、何時まで経ってもその時は訪れない。
セイナの指先がまるで時を刻む指針のように、引き金に触れては止め、触れては止め、を繰り返していた。
「…………?どうした、早くその男にトドメを刺せ!!」
言うことを聞かない動物へ鞭を振るうように、彩芽が再度命令を告げた。
それでもセイナは、命令に付き従う肉体の動きを精神で無理矢理封じ込めるように、無表情のまま懸命に右手の人差し指が動いてしまうことを抑えている。
思考操作が解け始めているのか?
「そんなバカな……っ!貴様の中の神は私が掌握したんだぞ?どうして命令が利かない!?」
今までの彩芽の洗脳はそう簡単に解けるものではなく、解除するには最低一度気を失わせる必要があるほど強固な印象だ。
そしてそれは彼女自身にとっても誤算だったらしい。
突然訪れた逆転の可能性。
俺はここに掛けるしかないと最後の力を振り絞った。
「セイナ、セイナ俺だ。フォルテだ!!眼を覚ませ、お前はいつだって人に命令する立場だっただろ!」
死に際に見た最後の希望に思いを託すべく、俺はあらん限りの言葉を振り絞った。
「黙れぇッ!!命令権はこの彩芽にある!!お前の指先呼吸一つまで全てこの私の物なんだ!!」
「お前が求めていたのは人を抑圧する力じゃない、先導するための志だろ!!こんな奴の命令なんかに負けてんじゃねえよ!!」
口から再び血が入り混じる。
喉から溢れたこの血は臓腑が損傷したからではない。
今の叫びで喉自体が張り裂け喀血したようだ。
俺にできる最後の力を振り絞った魂の叫び。
それが彼女の心に響かないはずもなく。
「……え……」
瞳を小刻みに瞬かせるセイナ。
死んでいたブルーサファイアの瞳にも光が灯る。
ようやく眼の前で起きている状況を認識したようだった。
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