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神々に魅入られし淑女《タイムレス ラヴ》
神々の領域《ヨトゥンヘイム》4
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『これってもしかして』
『絶対斬殺距離……』
青空よりも蒼く澄み切った水面のような結界。
そのすぐ背後を飛翔する二人が呟いた通り、これは俺の師匠が最期に魅せた人智を超えた大技だ。
イメージトレーニングすらしたことの無いぶっつけ本番にも関わらず、何の迷いもなくその技を発動できたのは、心身共に覚えているからだろう。
あの夜、俺が感じた竜の全てを。
触れるものは灰燼に帰す一撃が三人を飲み込んだ。
熱量だけならこの世のどんなものでも貫く最強の矛を前に、ちっぽけな人間が耐えられるはずが無い。
神の力を前にしては、これほどまでに我らは無力であるのか。
光景を目の当たりにしていたテイラーも、輸送ヘリよりずっと見守っていたアルシェも、自身の兵器が跡形もなく焼き尽くされたベッキーですら、当然の結果を当たり前のように受け入れてしまう。
直視できない光源に暗転する世界は、最後の希望を奪われた皆の心情を鏡のように映しているようだった。
その後、アンカースーツの動力源に引火したのか、未だ撃ち終わらない魔力によって形成されたレーザーの内部が次第に膨れ上がり、
パァンッ────!
悪夢を覚ます小気味いい破裂音が、空を本来あるべき青空へと戻してくれた。
たった一人の人間の力によって。
「おい、おいおいおいおい嘘だろうマジかよ!?」
輸送ヘリの窓へスタンプのように顔を張り付かせていたベッキーが頭を抱える姿に、隣で涙目の顔を覆っていたアルシェもその異変気づいて息を呑んだ。
跡形もなく消し飛ばされたと思っていた三人は健在であった。
霧散した魔力の残滓が水面に映る陽光のように煌めく中で、ほぼ無傷の状態のまま飛空戦艦へと迫っている。
「あれほどあった莫大の魔力が……全てが元の状態に還っている?」
「全部斬ったってのかよ!?あの一瞬で?」
そんな、科学や魔術の天才でも思いつかないほぼ不可能に近い方法で、俺はレーザーを完全に無力化していた。
『絶対斬殺距離』
この師匠が編み出した技は、納刀した鞘の内に込めた魔力に刀身が持つ『斬る』といった力を極限まで染み込ませることで『その魔力に触れたものへ同等の効力を与える』即ち結界内に触れたもの全てを切り裂くことができる。
その反映するための刀身が短い俺の場合、師匠の三・三メートルに対し二・三四メートルしか結界を展開するこができなかったが、それで十分だった。
電子工学によって圧縮された魔術の弾頭がその結界に触れた刹那、それは『斬れていなければならない』ものと認識されることで確定事象への収縮が開始。火の魔術が熱いように、氷の魔術が冷たいことが常識であるように、その刃物に触れたものは『斬れている』ことが世界の理として正しい状態だということになる。
結果、魔術によって人が炎や水を出す力を得る様に、『絶対斬殺距離』は『斬る』ために必要な力を魔力を介して得ることにより、常人には成し得ないスピードで刃を振るうことが出来る様になるのだ。
とはいえ、そんな超人的速度を授けられたとしても生身の身体が持つはずがない。そもそもやること自体が愚かとさえいえるほどの所業だ。一体誰が、水流や雨全てを斬り落とすと言ってそれを信じるだろうか?
ましてや相手はレーザーだ。妄言にしては度が過ぎている。
だからこそ、その常識を非常識にするためのこの二つの魔眼だ。
両眼によって手厚い身体強化を受けた俺は、瞬きの内に数万と刃を振るえる状態を作り上げ、境界線上に触れたレーザーの悉くを撃ち墜として見せた。
「テヤァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!」
生死の境にして極まった集中力を維持し続けたまま魂の雄叫びを掲げる。
振り上げた刀身は蒼く染まり、自由落下のすれ違い様に振り落とす。
ザキンッ!と金属が割れる音と同時に、土管よりも二回りも三回りも太い主砲を縦真っ二つに斬って捨てる。
ありがとう……師匠。
納刀の残身に、この技を披露してくれた恩師への他向けの花を添えて、ようやく力を抜いた。
『フォルテ!!』
自由落下のまま飛空戦艦に叩きつけれそうになった俺のことを、アンカースーツのロナが優しく抱き抱えてくれた。
そのままゆったりと船体の中、場所で例えるなら甲板とでも言えばいいのか?へと三人は着陸する。
ガッチリとしたアームフレームから降ろしてもらうと、どうやらそこで動力切れだったらしく、二人のアンカースーツが強制的に着脱される。紙一重という言葉では表せない程ギリギリの侵入だな。
「怪我は無いか、二人とも」
下手な一軒家よりも大きな主砲の砲台に隠れつつ、素早く歩兵用装備をバックパックから出しつつ俺が問いかけると、何故か二人はキョトンと呆気に取られたように顔を見合わせた。
「怪我ってダーリン……」
「寧ろそれ、こっちの台詞」
「え?どっか負傷しているか?」
専心していたあまり、自身すら気づかぬうちにどこか怪我を負ったのかと身体の節々を見やるが、それらしいものは見つからない。
「……ダーリン。自分がどれだけヤバイことしたか分かってないの?」
ロナは呆れたように肩を竦める。
「いや、お前だって躱せない銃弾が飛んで来たら対処するだろ?それと同じだよ。別に大したことじゃない。あとダーリンは止めろ」
それは謙遜ではなく、本当に俺にとっては大したことをしていなかった。
あくまで師匠が編み出した技を借りただけで、俺自身の努力は微々たるものでしかないのだ。
HK45のマガジンをポーチに収めつつそう返すと、二人はさらに呆れたようにジト目を向けてくる。
「銃弾とレーザーは全然別物だよ……」
ベネリM3の弾倉を確認しながらロナが溜息を漏らす。
「同感、それに魔眼も使って支障はないの?」
普段は滅多なことでない限り驚かないアイリスが同意しつつ、問い返してくる。
リボルビングライフルを組み立てる彼女が指摘した通り、確かにあれだけ急激に魔眼を酷使すればその反動が出てもおかしくないはずだが……不思議なくらい身体に影響は出ていなかった。
「それについても問題ない。むしろ、いい感じに身体が温まったくらいだ」
実は魔眼の使用方法についても様々な改善や工夫を凝らしていた。
ぶっつけ本番ではあったが、結果として悪魔の紅い瞳の負荷は極端に軽減され、蒼き月の瞳に関しても限定的とはいえ日中で使用できるようになったことは、本来であればもっと喜んでも差し支えない程の成果だろう。
正直ここまで劇的に変わるとは思っていなかったが、しかしそれと同時に、おれはほろ苦い思いを胸の内に零していた。
ほんと、師匠様様だな……
これら創意工夫の基となった人物、その偉大さを改めて噛み締めるように。
「さてと、第一関門は突破した。こっから先は……」
「予定通り、別行動だね」
装備の整った俺達は、百メートルほどの位置に聳える艦橋を見上げる。
アンテナや機銃といった武装でゴツゴツとした印象を与えるその頂上付近、艦橋と思しき場所のガラス窓から人影が姿を見せる。
反射する陽光の内に顔を隠したその人物はこちらを見据えた後、すぐに背を向けて窓際から遠ざかっていく。敵であるこちらの姿を確認したらしい。
息を吐くように狙撃の狙いを付けていたアイリスがライフルを降ろす。
当たりもしない標的に、ただでさえ少ない弾薬を無駄にするような愚行を彼女が犯すはずもなく、凛とした表情のままマフラーを翻す。
「あれだよね?ロナ。ボク達が潰すのは」
「うん、アルシェの地図だとあの辺りのはず……」
電子機器より中空に投影した立体地図を使い、現状を把握する二人。
上空一万メートルにも関わらず、今もこうして普通に会話ができているのも魔術防壁が復活したことにある。
外部から隔離されたことで船上の空気が安定し、微風すら皆無の空間はまるで、閉じ込められたという感覚が一番近いだろう。
そんな二人に課せられた任務がこの飛空戦艦の司令塔。即ち武器系統を司る場所を潰すことだ。
内部から破壊するといっても限度があり、そう悠長に作業している時間も無い以上、やはり外部から砲撃してもらうのが一番効果的だろう。
そこでロナ達には魔術防壁の完全撤去という、各国が渇望する任を託されたのである。
「そっちは任せたぞ、二人とも」
「フォルテも気を付けて」
少し先に行動を開始する俺へと、ロナが生真面目な様子で返してくる。
二人と違って俺の仕事は攪乱。
できる限りこの飛空戦艦で暴れることによりロナ達への注意を引き付ける。もし可能であれば動力源である神器を破壊も命じられている……というのは半分建前で、ここに来た最大の目的であるセイナを捜索して奪還することが本当の目的だ。
それにしても妙だ。
砲台から身を出しつつ甲板上を見渡す俺は内心で呟く。
外部からの偵察で判っていたことだが、この戦艦はその大きさとは裏腹に乗組員がほとんどいないのだ。
侵入すれば敵が戦艦内から溢れてくると思っていたが、未だ敵の姿は皆無だった。
待ち伏せか?とも勘繰ったが、どうやらそういう訳でもないらしい……
本当に人が殆どいないのだ。
蛻の殻と言っても差し支えない程、甲板にある弾頭を積んだコンテナも、設置された銃火器も、その全てがまるで模型のように現実感を帯びない。
おかしな話だ。人工物はあるのにそこに人が関与した形跡が見当たらないのだ。
アルシェの話しから多くの神の加護持ちがここに在籍していると聞き及んでいたのだが、この様子なら思っていたよりも簡単にセイナを────
ダガンッッ!!!!
外界から途絶された空間内に突如響いた衝突音。
「よぉ、久しぶりだなァ……」
艦橋下部の戦艦内に続く扉を豪快に蹴破り、一人の男が姿を見せた。
『絶対斬殺距離……』
青空よりも蒼く澄み切った水面のような結界。
そのすぐ背後を飛翔する二人が呟いた通り、これは俺の師匠が最期に魅せた人智を超えた大技だ。
イメージトレーニングすらしたことの無いぶっつけ本番にも関わらず、何の迷いもなくその技を発動できたのは、心身共に覚えているからだろう。
あの夜、俺が感じた竜の全てを。
触れるものは灰燼に帰す一撃が三人を飲み込んだ。
熱量だけならこの世のどんなものでも貫く最強の矛を前に、ちっぽけな人間が耐えられるはずが無い。
神の力を前にしては、これほどまでに我らは無力であるのか。
光景を目の当たりにしていたテイラーも、輸送ヘリよりずっと見守っていたアルシェも、自身の兵器が跡形もなく焼き尽くされたベッキーですら、当然の結果を当たり前のように受け入れてしまう。
直視できない光源に暗転する世界は、最後の希望を奪われた皆の心情を鏡のように映しているようだった。
その後、アンカースーツの動力源に引火したのか、未だ撃ち終わらない魔力によって形成されたレーザーの内部が次第に膨れ上がり、
パァンッ────!
悪夢を覚ます小気味いい破裂音が、空を本来あるべき青空へと戻してくれた。
たった一人の人間の力によって。
「おい、おいおいおいおい嘘だろうマジかよ!?」
輸送ヘリの窓へスタンプのように顔を張り付かせていたベッキーが頭を抱える姿に、隣で涙目の顔を覆っていたアルシェもその異変気づいて息を呑んだ。
跡形もなく消し飛ばされたと思っていた三人は健在であった。
霧散した魔力の残滓が水面に映る陽光のように煌めく中で、ほぼ無傷の状態のまま飛空戦艦へと迫っている。
「あれほどあった莫大の魔力が……全てが元の状態に還っている?」
「全部斬ったってのかよ!?あの一瞬で?」
そんな、科学や魔術の天才でも思いつかないほぼ不可能に近い方法で、俺はレーザーを完全に無力化していた。
『絶対斬殺距離』
この師匠が編み出した技は、納刀した鞘の内に込めた魔力に刀身が持つ『斬る』といった力を極限まで染み込ませることで『その魔力に触れたものへ同等の効力を与える』即ち結界内に触れたもの全てを切り裂くことができる。
その反映するための刀身が短い俺の場合、師匠の三・三メートルに対し二・三四メートルしか結界を展開するこができなかったが、それで十分だった。
電子工学によって圧縮された魔術の弾頭がその結界に触れた刹那、それは『斬れていなければならない』ものと認識されることで確定事象への収縮が開始。火の魔術が熱いように、氷の魔術が冷たいことが常識であるように、その刃物に触れたものは『斬れている』ことが世界の理として正しい状態だということになる。
結果、魔術によって人が炎や水を出す力を得る様に、『絶対斬殺距離』は『斬る』ために必要な力を魔力を介して得ることにより、常人には成し得ないスピードで刃を振るうことが出来る様になるのだ。
とはいえ、そんな超人的速度を授けられたとしても生身の身体が持つはずがない。そもそもやること自体が愚かとさえいえるほどの所業だ。一体誰が、水流や雨全てを斬り落とすと言ってそれを信じるだろうか?
ましてや相手はレーザーだ。妄言にしては度が過ぎている。
だからこそ、その常識を非常識にするためのこの二つの魔眼だ。
両眼によって手厚い身体強化を受けた俺は、瞬きの内に数万と刃を振るえる状態を作り上げ、境界線上に触れたレーザーの悉くを撃ち墜として見せた。
「テヤァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!」
生死の境にして極まった集中力を維持し続けたまま魂の雄叫びを掲げる。
振り上げた刀身は蒼く染まり、自由落下のすれ違い様に振り落とす。
ザキンッ!と金属が割れる音と同時に、土管よりも二回りも三回りも太い主砲を縦真っ二つに斬って捨てる。
ありがとう……師匠。
納刀の残身に、この技を披露してくれた恩師への他向けの花を添えて、ようやく力を抜いた。
『フォルテ!!』
自由落下のまま飛空戦艦に叩きつけれそうになった俺のことを、アンカースーツのロナが優しく抱き抱えてくれた。
そのままゆったりと船体の中、場所で例えるなら甲板とでも言えばいいのか?へと三人は着陸する。
ガッチリとしたアームフレームから降ろしてもらうと、どうやらそこで動力切れだったらしく、二人のアンカースーツが強制的に着脱される。紙一重という言葉では表せない程ギリギリの侵入だな。
「怪我は無いか、二人とも」
下手な一軒家よりも大きな主砲の砲台に隠れつつ、素早く歩兵用装備をバックパックから出しつつ俺が問いかけると、何故か二人はキョトンと呆気に取られたように顔を見合わせた。
「怪我ってダーリン……」
「寧ろそれ、こっちの台詞」
「え?どっか負傷しているか?」
専心していたあまり、自身すら気づかぬうちにどこか怪我を負ったのかと身体の節々を見やるが、それらしいものは見つからない。
「……ダーリン。自分がどれだけヤバイことしたか分かってないの?」
ロナは呆れたように肩を竦める。
「いや、お前だって躱せない銃弾が飛んで来たら対処するだろ?それと同じだよ。別に大したことじゃない。あとダーリンは止めろ」
それは謙遜ではなく、本当に俺にとっては大したことをしていなかった。
あくまで師匠が編み出した技を借りただけで、俺自身の努力は微々たるものでしかないのだ。
HK45のマガジンをポーチに収めつつそう返すと、二人はさらに呆れたようにジト目を向けてくる。
「銃弾とレーザーは全然別物だよ……」
ベネリM3の弾倉を確認しながらロナが溜息を漏らす。
「同感、それに魔眼も使って支障はないの?」
普段は滅多なことでない限り驚かないアイリスが同意しつつ、問い返してくる。
リボルビングライフルを組み立てる彼女が指摘した通り、確かにあれだけ急激に魔眼を酷使すればその反動が出てもおかしくないはずだが……不思議なくらい身体に影響は出ていなかった。
「それについても問題ない。むしろ、いい感じに身体が温まったくらいだ」
実は魔眼の使用方法についても様々な改善や工夫を凝らしていた。
ぶっつけ本番ではあったが、結果として悪魔の紅い瞳の負荷は極端に軽減され、蒼き月の瞳に関しても限定的とはいえ日中で使用できるようになったことは、本来であればもっと喜んでも差し支えない程の成果だろう。
正直ここまで劇的に変わるとは思っていなかったが、しかしそれと同時に、おれはほろ苦い思いを胸の内に零していた。
ほんと、師匠様様だな……
これら創意工夫の基となった人物、その偉大さを改めて噛み締めるように。
「さてと、第一関門は突破した。こっから先は……」
「予定通り、別行動だね」
装備の整った俺達は、百メートルほどの位置に聳える艦橋を見上げる。
アンテナや機銃といった武装でゴツゴツとした印象を与えるその頂上付近、艦橋と思しき場所のガラス窓から人影が姿を見せる。
反射する陽光の内に顔を隠したその人物はこちらを見据えた後、すぐに背を向けて窓際から遠ざかっていく。敵であるこちらの姿を確認したらしい。
息を吐くように狙撃の狙いを付けていたアイリスがライフルを降ろす。
当たりもしない標的に、ただでさえ少ない弾薬を無駄にするような愚行を彼女が犯すはずもなく、凛とした表情のままマフラーを翻す。
「あれだよね?ロナ。ボク達が潰すのは」
「うん、アルシェの地図だとあの辺りのはず……」
電子機器より中空に投影した立体地図を使い、現状を把握する二人。
上空一万メートルにも関わらず、今もこうして普通に会話ができているのも魔術防壁が復活したことにある。
外部から隔離されたことで船上の空気が安定し、微風すら皆無の空間はまるで、閉じ込められたという感覚が一番近いだろう。
そんな二人に課せられた任務がこの飛空戦艦の司令塔。即ち武器系統を司る場所を潰すことだ。
内部から破壊するといっても限度があり、そう悠長に作業している時間も無い以上、やはり外部から砲撃してもらうのが一番効果的だろう。
そこでロナ達には魔術防壁の完全撤去という、各国が渇望する任を託されたのである。
「そっちは任せたぞ、二人とも」
「フォルテも気を付けて」
少し先に行動を開始する俺へと、ロナが生真面目な様子で返してくる。
二人と違って俺の仕事は攪乱。
できる限りこの飛空戦艦で暴れることによりロナ達への注意を引き付ける。もし可能であれば動力源である神器を破壊も命じられている……というのは半分建前で、ここに来た最大の目的であるセイナを捜索して奪還することが本当の目的だ。
それにしても妙だ。
砲台から身を出しつつ甲板上を見渡す俺は内心で呟く。
外部からの偵察で判っていたことだが、この戦艦はその大きさとは裏腹に乗組員がほとんどいないのだ。
侵入すれば敵が戦艦内から溢れてくると思っていたが、未だ敵の姿は皆無だった。
待ち伏せか?とも勘繰ったが、どうやらそういう訳でもないらしい……
本当に人が殆どいないのだ。
蛻の殻と言っても差し支えない程、甲板にある弾頭を積んだコンテナも、設置された銃火器も、その全てがまるで模型のように現実感を帯びない。
おかしな話だ。人工物はあるのにそこに人が関与した形跡が見当たらないのだ。
アルシェの話しから多くの神の加護持ちがここに在籍していると聞き及んでいたのだが、この様子なら思っていたよりも簡単にセイナを────
ダガンッッ!!!!
外界から途絶された空間内に突如響いた衝突音。
「よぉ、久しぶりだなァ……」
艦橋下部の戦艦内に続く扉を豪快に蹴破り、一人の男が姿を見せた。
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