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揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》
揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》28
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「ちょ、ちょっとッ!さっき警備の方は大丈夫ってアンタ言ってたじゃない……!それに、監視してたんじゃないの!?これはどういうことよ!?」
後部座席から前のめりにセイナが顔を出してロナにがなり立てる。
「ごめんセイナちょっと待って……!」
それをロナは運転席が左側のセダンのハンドルを左手一本で操作しながら、開いた右手でセイナを静止してからスマートフォンを取り出した。
「フォルテ、これでジェイクに電話を!これなら盗聴の危険は無いから!セイナ!悪いけど、横に置いてあるICコートの内側ポケット、左の上から二番目の中に小型通信機が入っているからそれを取って!」
ロナがスミソニアン博物館から逃げ出してきた一般人を巧みなハンドル操作で上手く躱しながらそうがなり立てる。
「その前に説明を────!」
「ロナだって混乱しているのッ!それが無いと今の状況を確認することも判断することもできないの!お願い早くッ!」
ロナはそう言ってクラクションを鳴らしながら無造作にハンドルを切っていく。
揺れる車内の中、セイナは大きく舌打ちしてから「分かったわよッ!」と言い放ってから深緑色のポンチョのポケットを探りだした。
その様子を横目に俺はロナのスマートフォンを使ってCIA長官であるジェイクに電話していた。
『私だ』
短いコール音の後すぐにジェイクが出る。
彼が今何処にいるのかは分からないが、何やら後ろが騒がしい。
「ジェイクかッ!?俺だ!フォルテだ!今、スミソニアン博物館に向かっている最中で博物館の屋根が吹き飛んだ!」
『なんだと……!それはミサイルか!?』
「ミサイルじゃない!ただの爆発だ!何言ってるんだ!?」
普段落ち着いた様子で紳士的な男の口から、慌てたような様子で放たれた冗談に俺はスマホに怒鳴った。
『そうか……』
「随分騒がしいようだがそっちも何かあったのかッ!?」
人の走る音や怒鳴り声が電話越しに鳴り響いてジェイクの声が聞き取りにくい。
「あぁ……こっちも緊急で情報が入ったところだ。おそらくそろそろ、君たちのところにもその警報が鳴るはずだ……」
「警報!?何の警報だッ!?」
スミソニアン博物館のすぐ近くの道に沿いにロナが車を止め、通話したまま車から降りた瞬間────
ウゥゥゥゥ!!!!
重厚感のあるアラーム音が街中に鳴り響いた。
そして────
ビービービービー!!
「ッ!!」
スマートフォンからけたたましいアラート音が鳴り響き、驚いた俺がスマートフォンを耳から放した。
そのアラート音は俺だけでなく、周りで逃げ惑う全ての人のスマートフォンから同様に鳴り響いていた。
この音はまさか────
「嘘……でしょ……!?」
ロナがその音の正体に気づいたのか、絶望した表情でそう呟いた。
「なにッ!?なにが起きてるのよフォルテ!?ロナ!?」
状況が分かっていないセイナが俺とロナの顔を交互に覗き込みながらそう叫ぶ。
「……ッ!」
俺は通話中のロナのスマートフォンをスピーカーオンの状態にした。
『聞いての通りだ諸君……たった今、我々アメリカに対し、他国からミサイル攻撃の標的にされているとの情報が国家軍事指揮センターのミサイル攻撃警報システムから入ってきた。私自身は今、ホワイトハウスの戦況指令室でその指揮を執っているところだ。直に大統領もお見えになるだろう』
あらかじめもう知っていたおかげでアラート音を聞いても落ち着いていたジェイクが淡々と状況を伝えてきた。
それを聞いて、俺とロナに続いてセイナも顔が真っ青になった。
「ど、どこの国からの攻撃なんだ!?」
『それが分からないんだ……』
「どういうことなの……?」
セイナがスマートフォンに向けてしゃべる。
さっきのように取り乱した様子ではなかったが、それでも焦りの色は収まるどころかさらに増していた。
『ミサイルの標的にされているという情報だけが入ってきているんだ。それがどこからなのか全然検討がつけれないんだ。もしかしたらレーダーに引っかからない新手のステルス式ミサイルかもしれない……』
「79年や80年代にあったシステムの誤作動の可能性は?」
今度はロナが専門家的ポディションでジェイクに尋ねる。
「その線が薄いことは君が一番よく分かっているだろう?なんせこれは君が────」
「いくらロナがシステムを設計したからといって全てが確実とは限らない……大体今朝まではそういった動きをしている他国は見当たらなかった。仮に今日準備して攻撃しようとしたにしては早すぎる。システムの誤作動か、それとも意図的に誰かがシステムに直接細工、誤作動を誘発させる何かの細工をしたのかもしれない……」
『細工の件は我々も疑っている……だが、仮にそうだとしても、攻撃される可能性が1パーセントでもあるのなら、我々はこのアラートを無視することはできない……これから我々は大陸間弾道ミサイルを待機、及び国防総省にもいつでも戦闘機を飛ばせるように待機させるようもう既に動いている』
短く力のこもったその言葉を前に体中が凍るような感覚が俺達を襲った。
ジェイクはこう言っているのだ。
我々はいつでも戦争できるように待機すると。
「クソッ!!一体どこの誰が!?」
俺がそう吐き捨てると、ジェイクがさらにこう告げてきた。
『悪いが君たちにも手伝って欲しいことがある。今すぐホワイトハウスの方に三人とも戻ってきて欲しい』
「そ、そんな……!?神器の置いてあるスミソニアン博物館が目の前で爆発しているのよ!?もしかしたらヨルムンガンドの連中がまた奪いに来たのかもしれないに、のこのこ帰れるわけがないでしょうッ!」
それにセイナが反発する。
『君は確かセイナ君……だったか?悪いが状況が変わったのだ……気持ちは分かるが今は我々の指示に────』
「ジェイク、ちょっと待って────」
ロナがしゃべるジェイクを遮って、さっきセイナに取ってもらった小型の通信機を耳元に装着して手を当てた。
「どうした……?うん……なんですって!?」
「今度は何だロナ!?」
俺がロナにそう声を掛けると、ロナはそのハニーイエローの瞳で俺を見上げた。
「ヤールングレイプルが盗まれたッ!」
「なんですってッ!?でも厳重に警備しているはずじゃないの?」
ロナの言葉にセイナがそのブルーサファイアの瞳を見開いた。
「今情報を伝えてきたうちの職員の話だと、どうやら厳重な電磁ロックがミサイル攻撃の非常事態で一時的に全て解除されたところを狙われたらしい……金庫の中は既にもぬけの殻……さらにCIA職員の一人がその神器を持って逃走したらしい!その職員が今────」
そうロナが行ったタイミングでスーツ姿の30代くらいの男がスミソニアン博物館を囲う塀を飛び越えて道路沿いの道に飛び出してきた。手にはあのロナに見せてもらった動画で映っていた神器の入った白い箱を抱えていた。俺達から大体20m位の距離だ。
「クッ!」
俺は走り出そうとしていたセイナとロナよりも先に前に出て二人の肩を抑えつけた。
「何するのよフォルテッ!?」
「早くしないとアイツ逃げちゃうよ!?」
セイナとロナが俺を睨みつけた。
それに対し、俺は落ち着いた様子で二人の顔を交互に見ながらこう呟いた。
「二人とも待て、さっきから情報が錯乱してどれが真実でどれが嘘か分からない……だからアイツに全員で向かって戦力を一つにするのは得策じゃない……あれが仮に陽動だとしたら敵の思うツボだッ!アイツ一人なら俺一人で追いかけられる。二人はここで待機して状況に合わせて動いてくれ……」
「……分かった……」
ロナは静かにそう言ってから身体の力を緩めた。
「で、でもッ……!」
セイナは神器を奪われたことで焦り、俺の静止を振り払って男を追いかけようとしていた。
「頼むセイナ……!気持ちは分かる。だが、こういう時こそ互いを信頼するもんだ。お前の母さんは言ってただろ?全部ひとりで片づけようとするな……ここは俺に任せろ……!」
両肩を持ってその綺麗なブルーサファイアの瞳を真っすぐ見つめながら俺がそう言うと、母さんという部分に反応してセイナの顔が少しだけ落ち着きを取り戻した。
「……分かったッ……!ただし逃がしたら承知しないからね……!」
「あぁ……!任せておけ!」
俺はそう言ってから、スーツの男を追いかけるため、目の前の人混みに向かって走り出した。
後部座席から前のめりにセイナが顔を出してロナにがなり立てる。
「ごめんセイナちょっと待って……!」
それをロナは運転席が左側のセダンのハンドルを左手一本で操作しながら、開いた右手でセイナを静止してからスマートフォンを取り出した。
「フォルテ、これでジェイクに電話を!これなら盗聴の危険は無いから!セイナ!悪いけど、横に置いてあるICコートの内側ポケット、左の上から二番目の中に小型通信機が入っているからそれを取って!」
ロナがスミソニアン博物館から逃げ出してきた一般人を巧みなハンドル操作で上手く躱しながらそうがなり立てる。
「その前に説明を────!」
「ロナだって混乱しているのッ!それが無いと今の状況を確認することも判断することもできないの!お願い早くッ!」
ロナはそう言ってクラクションを鳴らしながら無造作にハンドルを切っていく。
揺れる車内の中、セイナは大きく舌打ちしてから「分かったわよッ!」と言い放ってから深緑色のポンチョのポケットを探りだした。
その様子を横目に俺はロナのスマートフォンを使ってCIA長官であるジェイクに電話していた。
『私だ』
短いコール音の後すぐにジェイクが出る。
彼が今何処にいるのかは分からないが、何やら後ろが騒がしい。
「ジェイクかッ!?俺だ!フォルテだ!今、スミソニアン博物館に向かっている最中で博物館の屋根が吹き飛んだ!」
『なんだと……!それはミサイルか!?』
「ミサイルじゃない!ただの爆発だ!何言ってるんだ!?」
普段落ち着いた様子で紳士的な男の口から、慌てたような様子で放たれた冗談に俺はスマホに怒鳴った。
『そうか……』
「随分騒がしいようだがそっちも何かあったのかッ!?」
人の走る音や怒鳴り声が電話越しに鳴り響いてジェイクの声が聞き取りにくい。
「あぁ……こっちも緊急で情報が入ったところだ。おそらくそろそろ、君たちのところにもその警報が鳴るはずだ……」
「警報!?何の警報だッ!?」
スミソニアン博物館のすぐ近くの道に沿いにロナが車を止め、通話したまま車から降りた瞬間────
ウゥゥゥゥ!!!!
重厚感のあるアラーム音が街中に鳴り響いた。
そして────
ビービービービー!!
「ッ!!」
スマートフォンからけたたましいアラート音が鳴り響き、驚いた俺がスマートフォンを耳から放した。
そのアラート音は俺だけでなく、周りで逃げ惑う全ての人のスマートフォンから同様に鳴り響いていた。
この音はまさか────
「嘘……でしょ……!?」
ロナがその音の正体に気づいたのか、絶望した表情でそう呟いた。
「なにッ!?なにが起きてるのよフォルテ!?ロナ!?」
状況が分かっていないセイナが俺とロナの顔を交互に覗き込みながらそう叫ぶ。
「……ッ!」
俺は通話中のロナのスマートフォンをスピーカーオンの状態にした。
『聞いての通りだ諸君……たった今、我々アメリカに対し、他国からミサイル攻撃の標的にされているとの情報が国家軍事指揮センターのミサイル攻撃警報システムから入ってきた。私自身は今、ホワイトハウスの戦況指令室でその指揮を執っているところだ。直に大統領もお見えになるだろう』
あらかじめもう知っていたおかげでアラート音を聞いても落ち着いていたジェイクが淡々と状況を伝えてきた。
それを聞いて、俺とロナに続いてセイナも顔が真っ青になった。
「ど、どこの国からの攻撃なんだ!?」
『それが分からないんだ……』
「どういうことなの……?」
セイナがスマートフォンに向けてしゃべる。
さっきのように取り乱した様子ではなかったが、それでも焦りの色は収まるどころかさらに増していた。
『ミサイルの標的にされているという情報だけが入ってきているんだ。それがどこからなのか全然検討がつけれないんだ。もしかしたらレーダーに引っかからない新手のステルス式ミサイルかもしれない……』
「79年や80年代にあったシステムの誤作動の可能性は?」
今度はロナが専門家的ポディションでジェイクに尋ねる。
「その線が薄いことは君が一番よく分かっているだろう?なんせこれは君が────」
「いくらロナがシステムを設計したからといって全てが確実とは限らない……大体今朝まではそういった動きをしている他国は見当たらなかった。仮に今日準備して攻撃しようとしたにしては早すぎる。システムの誤作動か、それとも意図的に誰かがシステムに直接細工、誤作動を誘発させる何かの細工をしたのかもしれない……」
『細工の件は我々も疑っている……だが、仮にそうだとしても、攻撃される可能性が1パーセントでもあるのなら、我々はこのアラートを無視することはできない……これから我々は大陸間弾道ミサイルを待機、及び国防総省にもいつでも戦闘機を飛ばせるように待機させるようもう既に動いている』
短く力のこもったその言葉を前に体中が凍るような感覚が俺達を襲った。
ジェイクはこう言っているのだ。
我々はいつでも戦争できるように待機すると。
「クソッ!!一体どこの誰が!?」
俺がそう吐き捨てると、ジェイクがさらにこう告げてきた。
『悪いが君たちにも手伝って欲しいことがある。今すぐホワイトハウスの方に三人とも戻ってきて欲しい』
「そ、そんな……!?神器の置いてあるスミソニアン博物館が目の前で爆発しているのよ!?もしかしたらヨルムンガンドの連中がまた奪いに来たのかもしれないに、のこのこ帰れるわけがないでしょうッ!」
それにセイナが反発する。
『君は確かセイナ君……だったか?悪いが状況が変わったのだ……気持ちは分かるが今は我々の指示に────』
「ジェイク、ちょっと待って────」
ロナがしゃべるジェイクを遮って、さっきセイナに取ってもらった小型の通信機を耳元に装着して手を当てた。
「どうした……?うん……なんですって!?」
「今度は何だロナ!?」
俺がロナにそう声を掛けると、ロナはそのハニーイエローの瞳で俺を見上げた。
「ヤールングレイプルが盗まれたッ!」
「なんですってッ!?でも厳重に警備しているはずじゃないの?」
ロナの言葉にセイナがそのブルーサファイアの瞳を見開いた。
「今情報を伝えてきたうちの職員の話だと、どうやら厳重な電磁ロックがミサイル攻撃の非常事態で一時的に全て解除されたところを狙われたらしい……金庫の中は既にもぬけの殻……さらにCIA職員の一人がその神器を持って逃走したらしい!その職員が今────」
そうロナが行ったタイミングでスーツ姿の30代くらいの男がスミソニアン博物館を囲う塀を飛び越えて道路沿いの道に飛び出してきた。手にはあのロナに見せてもらった動画で映っていた神器の入った白い箱を抱えていた。俺達から大体20m位の距離だ。
「クッ!」
俺は走り出そうとしていたセイナとロナよりも先に前に出て二人の肩を抑えつけた。
「何するのよフォルテッ!?」
「早くしないとアイツ逃げちゃうよ!?」
セイナとロナが俺を睨みつけた。
それに対し、俺は落ち着いた様子で二人の顔を交互に見ながらこう呟いた。
「二人とも待て、さっきから情報が錯乱してどれが真実でどれが嘘か分からない……だからアイツに全員で向かって戦力を一つにするのは得策じゃない……あれが仮に陽動だとしたら敵の思うツボだッ!アイツ一人なら俺一人で追いかけられる。二人はここで待機して状況に合わせて動いてくれ……」
「……分かった……」
ロナは静かにそう言ってから身体の力を緩めた。
「で、でもッ……!」
セイナは神器を奪われたことで焦り、俺の静止を振り払って男を追いかけようとしていた。
「頼むセイナ……!気持ちは分かる。だが、こういう時こそ互いを信頼するもんだ。お前の母さんは言ってただろ?全部ひとりで片づけようとするな……ここは俺に任せろ……!」
両肩を持ってその綺麗なブルーサファイアの瞳を真っすぐ見つめながら俺がそう言うと、母さんという部分に反応してセイナの顔が少しだけ落ち着きを取り戻した。
「……分かったッ……!ただし逃がしたら承知しないからね……!」
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