SEVEN TRIGGER

匿名BB

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揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》

揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》3

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 だが。
 俺はさっきの微笑ましい出来事を思い出してた思考を止めて、視界を上部のLED照明から目の前にある射撃レーン戻すとそこには。
 バンッ!!バンッ!!バンッ!!バンッ!!
 聞きなれた.45ACP弾の訓練用弾フランジブルを撃つセイナの姿がそこにはあった。
 集中した表情で次々にターゲットに銃弾を当てていくその姿は、とてもアイスクリームをペロペロと美味しそうに食べていた少女とは思えないほど鋭く、凛々しい印象を与えられる。
 そんな姿を見た俺は大きなため息をつきながら再び天井のLED照明に眼を向けた。
 なんでこんなに不機嫌なのかって?
 俺は青いベンチに預けた首を右に捻って壁にかかった時計の方を見た。
 時刻は16時を過ぎていた。
 射撃場に来たのは12時過ぎ。セイナが銃を撃ち始めてかれこれもう4時間も経っているのだ。
 女性の買い物(今回は買ってはいないが)は長くなるってことをすっかり忘れてたぜ。
 ここは地下だから見えないが、外はいまごろ太陽が沈みかけて夕日にでもなっているころだろう。こりゃあ家の修繕は明日になりそうだな。
 まあここまで購入した資材を一緒に運んでくれたし、これくらいで済むなら安いもんだから別にいいんだけどさ。
 再び俺は射撃レーンで銃を撃っていたセイナの方に視線を向けた。
 反動で揺れる黒のプリーツスカート、そこからのぞく同じく黒のニーソックスと太腿部分の絶対領域とそこに巻かれた二本のレッグホルスターのベルトがいやらしく見え隠れし、金髪のポニーテールも反動のたびにゆさゆさと揺れていた。顔も口を引き結んだ凛々しい表情になっていて、こんな見た目の少女が普段は50口径をぶっ放していると思うとほんと恐ろしいなと感じる。
 そう思いながらセイナの後ろ姿を凝視していた視線を、今度は横にあった両腕を広げたくらいのサイズのテーブル上に移した。
 そこには世界中の様々なハンドガンやリボルバーがずらりと置いてあった。
 SIGシグ SAUERザウエル P226とP227
 GLOCKグロック 18Cと21
 M9ベレッタSOCOMソーコム MK23
 さらにはSスミス&MウェッソンM2944マグナムMATEBAマテバ Modello 6モデロシックス Unicaウニカ
 などなどこの4時間の間にセイナが撃った俺の私物の銃たちだ。
 そもそも何故こんなに時間が要しているかいうと……
「なにそんなアホ面下げてんのよ」
 横のテーブルに顔を向けていた俺の前方から中学生くらいの幼い少女声が聞こえてきた。
 左奥を見ていた顔を前方に戻すと、そこにはセイナが立っていた。
 さっきまで目の前で銃を撃っていたこともあり、普段と違って頭には外した防弾性の透明ゴーグルが乗っていて、同じく肩にも外した防音ヘッドフォンを乗せていた。よく見ると首筋にはほんのりと汗が一筋流れており、セイナはそれを片手で髪と一緒に払った。金髪のポニーテールがパサァと広がり、女性フェロモンと香水の水仙スイセンが混じったいい香りが俺の鼻腔をくすぐった。
 その幼い見た目でやる大人のような色っぽい仕草のギャップに俺は思わず顔が赤くなるのを感じた。
「別に、お前は日本人でもないのに真面目だなって思ってただけさ」
 顔が赤くなったことがセイナにバレないように顔を背けたまま俺は適当に返答した。
「そう言うアンタは見た目は日本人の癖に真面目ではないわよね」
 別にセイナは俺に嫌みのつもりとかでそう言った感じではなく、単にコイツの中で日本人=真面目という印象が強かったのだろう。少し首を傾げながらそう言ったセイナに俺は苦笑まじりに返答した。
「全ての日本人が真面目ってわけではないのさ。それに俺は一応両親も日本人で生まれも日本の生粋の日本人ではあるけど、アメリカで過ごしていた方がおそらく長いから、中身はそっちに近いのかもしれないな」
 と俺は少し自嘲気味にそう言うと、セイナは少し驚いたように表情をしてからこう聞いてきた。
「えッ?そうなの?じゃあ今の名前は?」
「昔ある人から貰ったんだ、最初は確かに日本人の名前だったんだろうけど、訳あってそれを思い出せなくてな。それで今はフォルテって名乗っているんだ」
「ふぅん……そうなんだ。そう言えば前から気になってはいたんだけど、アンタの名前の「S」ってなんて言うの?」
「んー秘密」
「なにそれ?」
 セイナは首を傾げてこちらを見た。
 俺はそれ以上「S」のことについて聞かれたくなかったので。
「で、そいつの調子はどうだ?」
 と無理矢理話題を切り替えるようにセイナに問いかけた。
「んー悪くはないんだけど…なんか違うのよね…」
 セイナは右手に持った45口径ハンドガンのM1911コルト・ガバメントを見ながら唸り声をあげていた。
「んー困ったな。ハンドガン系でなにか他に銃はあったかな……」
 俺は両腕を頭の後ろに回そうとしたところで今は左腕義手が無いことを思い出し、少しバツが悪くなってワシャワシャと自分の黒髪の後頭部を掻いた。
 そんな俺にセイナはよくやる片足体重で腰に手を当てる格好になりながらため息まじりにこう言った。
「でも、なんでこんなに銃があるのにアンタは50口径だけは持っていないのよ……?」
 そう、これが4時間もここで銃を撃つことになった原因なのである。
「当たり前だろ…ここにあるのは俺が使う銃ともらった銃を保管している倉庫みたいなもんだ。50口径なんて俺は使わないし、使うやつも知り合いにいないから無くて当然だろ」
 いくら日本で銃が認可されているとは言え、大口径の銃の手続きは結構面倒なのである。だから市販の店で取り寄せるにはそれなりの手続きが必要になるので時間がかかる。それも含めて俺の私物の中から代わりの銃を探していたのだが、なかなかいい銃が見つからないのだ。
 最初に超無難なSIGシグ SAUERザウエル P226とM9ベレッタGLOCKグロック 18Cを渡して撃たせると。
9m弾パラは軽すぎて嫌」
 というのでGLOCKグロック21 .45ACP弾を撃つタイプを持ってくると。
「そもそもGLOCKグロックはフレームがプラスチックポリマー2で剛性が低いのと、リロードした時にたまにスライドが戻り切らなくて後ろから一回叩かないといけないのが嫌いなのよね」
 というので.45ACP弾を撃てるSIGシグ SAUERザウエルP227を持ってくると。
「これはちょっとしっくりこないわね」
 というのでダメもとでSOCOMソーコム MK23を持ってきたがこれが意外に当たりだったらしいが、どうもライトとサプレッサーが付いた状態でないと感覚が悪くなるらしく。
「デカすぎてホルスターに収まらないから嫌だ」
 というのでもうヤケクソ気味にSスミス&MウェッソンM2944マグナムMATEBAマテバ Modello 6モデロシックス Unicaウニカを持ってきた。
「いいか、この銃はM2944マグナムといって世界で最強の銃だ」
 と実は俺も影響されてアメリカにいた時に買ったM2944マグナムを言いたかったお決まりのセリフでセイナに渡してやると
「最強は.50AE弾よ、それにアタシリボルバー苦手なのよね」
 とマジレスしながらも、慣れた手つきで弾を込めて銃を撃っていたがやはりこれも違うかったらしい。言うまでもないがMATEBAマテバ Modello 6モデロシックス Unicaウニカ通称オートマチックリボルバーの方は論外だったとのこと。
 ここまで探しても見つからないなら、最悪港町の裏市場で中古品を探せないこともないのだが、Desertデザート Eagleイーグルはパーツの組み合わせが荒い部分が多いので、セイナが使っているようなしっかり手入れされたものはまず手に入らないだろう。
 色々と悩みに悩んだ末、最後にこのM1911コルト・ガバメントを撃たせてダメなら別の手段を考えようと思っていたのだが、意外に反応は悪くなかったので。
「どう違うんだ?」
 と聞いてみると。セイナは自分の右手に持ったM1911コルト・ガバメント色々な角度から眺めながら。
M1911フォーティーファイブが悪いというより、この今アタシが持っている銃自体が悪いような感じなのよね……ノーマル過ぎちゃって多分アタシの手になじんでないんだと思う……多少改造してあれば話しは別なんでしょうけどね」
 と唸るようにそう言ったセイナの言葉に、俺は一つ可能性を見つけてこう聞き返した。
「てことは多少使いやすいようにカスタムされていればいいんだな?」
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