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紫電の王《バイオレットブリッツ》
紫電の王《バイオレットブリッツ》27
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笑った…?
高速で飛び周りながら移動するベルゼの声が廃工場内に響く中、後方から右足の狙った攻撃を躱したフォルテは立ち上がりながら持っていた武器を構えた。その時一瞬だけアタシを見た横顔が少しだけ笑っていたような気がした。
やけくそになったというわけではなく、かといって余裕というわけでもないその表情の意図している部分はアタシには分からなかったが、どちらにしても絶望的状況であることは変わらない。
「骨ごとなます切りにしてやるよッ!!」
ベルゼがそう叫ぶが廃工場全体で反響する。目にも止まらぬスピードで動き続けるベルゼを、声のみを頼りに位置を特定することはもう不可能に近い。
「ハーハッハッハッハッ!!」
「クッ!」
ベルゼの猛攻がフォルテを襲う。四方八方からの鉤爪の攻撃を前にその場から動くことができない。ギリギリのところで猛攻を防いではいるが、捌き切れなかった攻撃が時折フォルテの皮膚が露出している顔や手、防刃性の低いズボンを履いている足などを切り裂いていく。漆黒のロングコートも防刃性ではあるようだが、切れなくてもその金属バットで殴られる以上の衝撃が防げるわけではないので、攻撃を受けるたびに右へ左へ身体が揺さぶられる。なます切りにされるのも時間の問題だった。
アタシのように鉄柱を背にして戦うといった方法もあるが、運の悪いことにフォルテから一番近い鉄柱でも3m以上離れている。鉄柱の裏に移動する前におそらくやられてしまうだろう。また、ベルゼの攻撃の届かない廃工場の外に逃げるといった手段もあるが、出口までも10m以上離れているのでそれも無理だ。
魔眼を使ってようやく互角の戦いを繰り広げてきたフォルテからしたらこの状況は絶体絶命と言っても過言ではないのだ。にもかかわらずフォルテは取り乱した様子もなく、血で濡れたHK45を左のレッグホルスターに閉まってから村正改を漆喰のロングコートの腰の位置にあった鞘に納刀した。
右足を後ろに引いて腰を軽く落とし、右手で納刀した刀の柄を握った姿、陸上短距離選手が立った状態で走り出すスタンディングスタートと似た恰好をしたフォルテを見たアタシは内心で呟いた。
居合の構え。鞘のないアタシのグングニルとは無縁の、武器を閉まった状態から相手に襲撃された際にどんな状態からでも迎撃できるよう日本の武士が編み出した技の一つだ。
フォルテの左の横顔と縦に入った傷跡がアタシの目に映る。
静かに息を吐きながら両目を閉じたフォルテの気配が廃工場を飛び回っていたベルゼの気配とは裏腹に静かになっていくのをアタシは感じた。四月の冷たい空気がフォルテの周辺だけさらに冷たくなって氷点下まで下がっていくかのようなそんな気さえした。なぜかそんなフォルテにアタシは息を呑むような、または見入ってしまうような不思議な感覚に陥っていた。
悪魔の紅い瞳が切れた状態で何をしようというの……?
絶望的状況でも諦めていないフォルテ姿勢に、アタシは「逃げろ」と叫ぶことすら忘れてしまっていた。
「それじゃあ斬……あの世で閻魔によろしくなぁッ!!」
叫びながらベルゼがフォルテの背後からもの凄いスピードで突っ込んでいった。
地面を這うように低空でベルゼは飛びながら、フォルテの左側を通り過ぎるように接近しながら右手に装備した鉤爪を無造作にフォルテのガラ空きになった項に向かって振りぬいた。
青い…光…?
ベルゼの動きを目で捉えきれなかったアタシは二人が交錯した瞬間、なにか青い光を見たような気がした。アタシの瞳のようなブルーサファイアの深い青ではない、澄んだ空のような空色。
その光が見えたのとほぼ同時に大きな金属音が廃工場に響いた。
「なッ!?」
「ッ!!」
その光景にベルゼは驚きの声を上げて、アタシは思わず目を丸くした。
フォルテの左眼が見開かれていたのだ。
その瞳から空色の光を零しながら。
「がはッ!?」
ベルゼがフォルテの左斜め前、アタシの左側の奥にあった無造作に積んであった廃材に吹き飛んだ。
直ぐに廃材からベルゼは立ち上がったが、右の脇腹からは血を流れ出し、倒れるのを堪えるように大股開いて乱れた呼吸を整えようとしていた。
そこでアタシはようやくベルゼがフォルテに斬られたことを理解した。
背後から斬りかかったベルゼに対してフォルテは、その超人的な反応で右手で抜いた村正改を左肩の後ろに立てるように持っていった。首に右腕が巻き付かせるような格好だ。
必殺の斬撃を止められたベルゼは空中の何もない空間で勢いが死んでしまい無防備な状態になったところを、フォルテが態勢をさらに低くして防いだ右の鉤爪の下に入り込むようにベルゼの懐に近づいてから村正改で右の脇腹を切り裂いた。その衝撃でベルゼは廃材に突っ込んだようだ。
「おい、おいおいおいおいッ!そんなんありかよッ!?えぇ!?おい!」
ベルゼは攻撃を受けたはずなのに、その苦しささえ忘れてしまうほど興奮をした様子でフォルテを見上げた。
そうだフォルテは…!
アタシは吹き飛ばされたベルゼから視線をフォルテに戻すと、そこには村正改を持った鬼人のような威圧感のある一人の男が立っていた。
右眼には時間切れで使えなくなっていったはずの悪魔の紅い瞳、そして左眼には。
「青い瞳ッ!?」
オッドアイ。
古傷のついた左眼には対照的とも言える空色の青い瞳がそこにはあった。
悪魔の紅い瞳のレーザーのような光ではなく。その左眼は零れ出した青白い光が空に立ち上っていくような輝き方をしていた。瞳から煙が出ているようなそんな感じに近い印象だった。
オッドアイをしたフォルテは何も言わずに村正改についた血を地面へと払った。
「どういう手品だよ…!?おい!?お前が「蒼き月の瞳」をあの女から奪ったのは知ってたけどよ……両目で魔眼を使えるなんざ聞いてねぇぞおいッ!?大体、お前はもう悪魔の紅い瞳を使えないはずなのにどうして魔眼が発動している!?」
どういうことなの?
アタシはフォルテの左眼が魔眼であることすら知らなかった。
だがフォルテのことを知っているはずのベルゼですら、そのオッドアイを見たことが無いと言っているのだ。
それを聞いたフォルテは固く閉じていた口を開いた。
「教えてやるよ、これが俺が編み出した二つの魔眼の応用方法だ」
「応用方だと…?」
「基本的に魔眼は何かを触媒にして発動している。俺の右眼は「肉体」左眼は「月明かり」そしてお前は確か「雷または電気」だったか?」
なるほど、アタシの電撃がベルゼに利かなかったのはそう言うことね……
アタシの発した電撃をベルゼは自分のエネルギーへと変換することで攻撃を耐え、さらにその変換した電気エネルギーを逆流させることでアタシを気絶させたのか。
確かにアタシは電気に対して常人よりも多少抵抗はあるがそれはあくまで身構えている時の話し。唐突に電気を流されれば気絶はする。幾ら打たれ強い格闘家がいたとしても、予期していない打撃の前には一発で気を失ってしまうのと同じだ。
「そして俺の左眼の蒼き月の瞳の能力は身体や武器の補助。右眼は肉体を無理矢理強化する体の内側に作用する魔眼対して、こっちは身体の動きを外側からサポートするものだから身体への負担は少ない」
「だが、その瞳は無理な譲渡で体質の合っていないお前はその眼を発動すれば力を抑えることができずに強大な力と引き換えに理性を失うはずだろ……?なのにどうして理性を保っていることができるんだ!?わざわざ一番能力を発揮しやすい満月の日まで選んだっていうのによッ!」
「あぁ、お前の言う通りだよ……だけどつい最近ようやくできるようになったのさ、魔眼同士でリミッターを掛け合うという方法が」
無理な譲渡?理性?リミッターを掛け合う…?
今日は難しい言葉が多く、正直魔術には疎いアタシは二人が何を話しているのかあまり分かっておらずポカンとしている中、ベルゼはそれを理解したのか驚いた様子で目を見開いた。
「お前まさか……!?」
「そう、お前の思った通り。二つの魔眼を同時に発動させ左眼で全身に補助をかけた状態で右眼を発動させる。これが右眼に対するリミッターだ。そして使い慣れている右眼を使って左眼を強化することで無理矢理矯正、二つ目のリミッターを施すことで能力を抑制しているのさ。これで上手く力を分散させることができるから、理性を保ったまま両目の力を発揮させた最高の状態で戦うことができる」
さっきのベルゼの攻撃も両目で強化した肉体のおかげでフォルテは反応することができたということらしい。多分常人のアタシではあの攻撃は捌くことはできなかった。それを捌くどころか追撃まで与えてしまうあたり、フォルテの両眼の魔眼の力がどれだけ強力なのかが伝わってくる。
「つまりは悪魔の紅い瞳の触媒である肉体の負担全てを蒼き月の瞳の触媒である月の光に置きかえているということか……」
呟くようにベルゼは言ってから顔を軽く伏せてから身体を小刻みに震わした。
「クックックックッ…」
そして堪えるような笑いとあの不気味な笑みに戻ったベルゼが再び顔を上げた。
「ヒャーハッハッハッハッ!!前言撤回だぁ!最高だよ……最高だよお前はッ!「月下の鬼人」の名はやっぱ伊達じゃねーなぁ!」
今日一番の笑う声を響かせながらベルゼは両腕の鉤爪をフォルテに構えた。
溢れ出ている脇腹の血など抑える様子もない。
「さあ、終わりにしようベルゼ。この戦いも、お前との因縁も……!」
フォルテは左のレッグホルスターからHK45を抜きながら静かにそう言った。
「あぁ!行くぜぇぇ!!」
廃材から紫の電流をバチバチと鳴らしながら超高速で移動したベルゼがフォルテに襲い掛かった。
高速で飛び周りながら移動するベルゼの声が廃工場内に響く中、後方から右足の狙った攻撃を躱したフォルテは立ち上がりながら持っていた武器を構えた。その時一瞬だけアタシを見た横顔が少しだけ笑っていたような気がした。
やけくそになったというわけではなく、かといって余裕というわけでもないその表情の意図している部分はアタシには分からなかったが、どちらにしても絶望的状況であることは変わらない。
「骨ごとなます切りにしてやるよッ!!」
ベルゼがそう叫ぶが廃工場全体で反響する。目にも止まらぬスピードで動き続けるベルゼを、声のみを頼りに位置を特定することはもう不可能に近い。
「ハーハッハッハッハッ!!」
「クッ!」
ベルゼの猛攻がフォルテを襲う。四方八方からの鉤爪の攻撃を前にその場から動くことができない。ギリギリのところで猛攻を防いではいるが、捌き切れなかった攻撃が時折フォルテの皮膚が露出している顔や手、防刃性の低いズボンを履いている足などを切り裂いていく。漆黒のロングコートも防刃性ではあるようだが、切れなくてもその金属バットで殴られる以上の衝撃が防げるわけではないので、攻撃を受けるたびに右へ左へ身体が揺さぶられる。なます切りにされるのも時間の問題だった。
アタシのように鉄柱を背にして戦うといった方法もあるが、運の悪いことにフォルテから一番近い鉄柱でも3m以上離れている。鉄柱の裏に移動する前におそらくやられてしまうだろう。また、ベルゼの攻撃の届かない廃工場の外に逃げるといった手段もあるが、出口までも10m以上離れているのでそれも無理だ。
魔眼を使ってようやく互角の戦いを繰り広げてきたフォルテからしたらこの状況は絶体絶命と言っても過言ではないのだ。にもかかわらずフォルテは取り乱した様子もなく、血で濡れたHK45を左のレッグホルスターに閉まってから村正改を漆喰のロングコートの腰の位置にあった鞘に納刀した。
右足を後ろに引いて腰を軽く落とし、右手で納刀した刀の柄を握った姿、陸上短距離選手が立った状態で走り出すスタンディングスタートと似た恰好をしたフォルテを見たアタシは内心で呟いた。
居合の構え。鞘のないアタシのグングニルとは無縁の、武器を閉まった状態から相手に襲撃された際にどんな状態からでも迎撃できるよう日本の武士が編み出した技の一つだ。
フォルテの左の横顔と縦に入った傷跡がアタシの目に映る。
静かに息を吐きながら両目を閉じたフォルテの気配が廃工場を飛び回っていたベルゼの気配とは裏腹に静かになっていくのをアタシは感じた。四月の冷たい空気がフォルテの周辺だけさらに冷たくなって氷点下まで下がっていくかのようなそんな気さえした。なぜかそんなフォルテにアタシは息を呑むような、または見入ってしまうような不思議な感覚に陥っていた。
悪魔の紅い瞳が切れた状態で何をしようというの……?
絶望的状況でも諦めていないフォルテ姿勢に、アタシは「逃げろ」と叫ぶことすら忘れてしまっていた。
「それじゃあ斬……あの世で閻魔によろしくなぁッ!!」
叫びながらベルゼがフォルテの背後からもの凄いスピードで突っ込んでいった。
地面を這うように低空でベルゼは飛びながら、フォルテの左側を通り過ぎるように接近しながら右手に装備した鉤爪を無造作にフォルテのガラ空きになった項に向かって振りぬいた。
青い…光…?
ベルゼの動きを目で捉えきれなかったアタシは二人が交錯した瞬間、なにか青い光を見たような気がした。アタシの瞳のようなブルーサファイアの深い青ではない、澄んだ空のような空色。
その光が見えたのとほぼ同時に大きな金属音が廃工場に響いた。
「なッ!?」
「ッ!!」
その光景にベルゼは驚きの声を上げて、アタシは思わず目を丸くした。
フォルテの左眼が見開かれていたのだ。
その瞳から空色の光を零しながら。
「がはッ!?」
ベルゼがフォルテの左斜め前、アタシの左側の奥にあった無造作に積んであった廃材に吹き飛んだ。
直ぐに廃材からベルゼは立ち上がったが、右の脇腹からは血を流れ出し、倒れるのを堪えるように大股開いて乱れた呼吸を整えようとしていた。
そこでアタシはようやくベルゼがフォルテに斬られたことを理解した。
背後から斬りかかったベルゼに対してフォルテは、その超人的な反応で右手で抜いた村正改を左肩の後ろに立てるように持っていった。首に右腕が巻き付かせるような格好だ。
必殺の斬撃を止められたベルゼは空中の何もない空間で勢いが死んでしまい無防備な状態になったところを、フォルテが態勢をさらに低くして防いだ右の鉤爪の下に入り込むようにベルゼの懐に近づいてから村正改で右の脇腹を切り裂いた。その衝撃でベルゼは廃材に突っ込んだようだ。
「おい、おいおいおいおいッ!そんなんありかよッ!?えぇ!?おい!」
ベルゼは攻撃を受けたはずなのに、その苦しささえ忘れてしまうほど興奮をした様子でフォルテを見上げた。
そうだフォルテは…!
アタシは吹き飛ばされたベルゼから視線をフォルテに戻すと、そこには村正改を持った鬼人のような威圧感のある一人の男が立っていた。
右眼には時間切れで使えなくなっていったはずの悪魔の紅い瞳、そして左眼には。
「青い瞳ッ!?」
オッドアイ。
古傷のついた左眼には対照的とも言える空色の青い瞳がそこにはあった。
悪魔の紅い瞳のレーザーのような光ではなく。その左眼は零れ出した青白い光が空に立ち上っていくような輝き方をしていた。瞳から煙が出ているようなそんな感じに近い印象だった。
オッドアイをしたフォルテは何も言わずに村正改についた血を地面へと払った。
「どういう手品だよ…!?おい!?お前が「蒼き月の瞳」をあの女から奪ったのは知ってたけどよ……両目で魔眼を使えるなんざ聞いてねぇぞおいッ!?大体、お前はもう悪魔の紅い瞳を使えないはずなのにどうして魔眼が発動している!?」
どういうことなの?
アタシはフォルテの左眼が魔眼であることすら知らなかった。
だがフォルテのことを知っているはずのベルゼですら、そのオッドアイを見たことが無いと言っているのだ。
それを聞いたフォルテは固く閉じていた口を開いた。
「教えてやるよ、これが俺が編み出した二つの魔眼の応用方法だ」
「応用方だと…?」
「基本的に魔眼は何かを触媒にして発動している。俺の右眼は「肉体」左眼は「月明かり」そしてお前は確か「雷または電気」だったか?」
なるほど、アタシの電撃がベルゼに利かなかったのはそう言うことね……
アタシの発した電撃をベルゼは自分のエネルギーへと変換することで攻撃を耐え、さらにその変換した電気エネルギーを逆流させることでアタシを気絶させたのか。
確かにアタシは電気に対して常人よりも多少抵抗はあるがそれはあくまで身構えている時の話し。唐突に電気を流されれば気絶はする。幾ら打たれ強い格闘家がいたとしても、予期していない打撃の前には一発で気を失ってしまうのと同じだ。
「そして俺の左眼の蒼き月の瞳の能力は身体や武器の補助。右眼は肉体を無理矢理強化する体の内側に作用する魔眼対して、こっちは身体の動きを外側からサポートするものだから身体への負担は少ない」
「だが、その瞳は無理な譲渡で体質の合っていないお前はその眼を発動すれば力を抑えることができずに強大な力と引き換えに理性を失うはずだろ……?なのにどうして理性を保っていることができるんだ!?わざわざ一番能力を発揮しやすい満月の日まで選んだっていうのによッ!」
「あぁ、お前の言う通りだよ……だけどつい最近ようやくできるようになったのさ、魔眼同士でリミッターを掛け合うという方法が」
無理な譲渡?理性?リミッターを掛け合う…?
今日は難しい言葉が多く、正直魔術には疎いアタシは二人が何を話しているのかあまり分かっておらずポカンとしている中、ベルゼはそれを理解したのか驚いた様子で目を見開いた。
「お前まさか……!?」
「そう、お前の思った通り。二つの魔眼を同時に発動させ左眼で全身に補助をかけた状態で右眼を発動させる。これが右眼に対するリミッターだ。そして使い慣れている右眼を使って左眼を強化することで無理矢理矯正、二つ目のリミッターを施すことで能力を抑制しているのさ。これで上手く力を分散させることができるから、理性を保ったまま両目の力を発揮させた最高の状態で戦うことができる」
さっきのベルゼの攻撃も両目で強化した肉体のおかげでフォルテは反応することができたということらしい。多分常人のアタシではあの攻撃は捌くことはできなかった。それを捌くどころか追撃まで与えてしまうあたり、フォルテの両眼の魔眼の力がどれだけ強力なのかが伝わってくる。
「つまりは悪魔の紅い瞳の触媒である肉体の負担全てを蒼き月の瞳の触媒である月の光に置きかえているということか……」
呟くようにベルゼは言ってから顔を軽く伏せてから身体を小刻みに震わした。
「クックックックッ…」
そして堪えるような笑いとあの不気味な笑みに戻ったベルゼが再び顔を上げた。
「ヒャーハッハッハッハッ!!前言撤回だぁ!最高だよ……最高だよお前はッ!「月下の鬼人」の名はやっぱ伊達じゃねーなぁ!」
今日一番の笑う声を響かせながらベルゼは両腕の鉤爪をフォルテに構えた。
溢れ出ている脇腹の血など抑える様子もない。
「さあ、終わりにしようベルゼ。この戦いも、お前との因縁も……!」
フォルテは左のレッグホルスターからHK45を抜きながら静かにそう言った。
「あぁ!行くぜぇぇ!!」
廃材から紫の電流をバチバチと鳴らしながら超高速で移動したベルゼがフォルテに襲い掛かった。
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