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Prologue
Prologue11
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「おいおい、マジでこんな作戦やるのか?」
俺の作戦を聞いたジェームス隊員がガスマスクの上からでも伝わる、驚きの反応でそう言った。
エリザベス3世と電話し終わった俺は、セイナと共に軍用車のランドローラーウルフに戻り、残りのSASの隊員二人と集まって計四人で最終的な作戦会議を開いていた。
「確かに作戦内容は常識では考えられないものだが、本当にこんなことできるのか?」
ジェームス隊員に続いてロバート隊員が口を開き俺に質問してくる。
「ああ、俺がさっき話した能力を使えば可能だ。ただし限度は最大で五分間だ」
俺は右手をパーにして、「五分」とジェスチャーしながらそう答えた。
それを聞いたセイナが────
「要は五分以内に全員を始末すればいいんでしょ?それだけあれば十分だわ」
「ふん」と鼻を鳴らしながら自信満々にそう答えた。セイナの発言は単なる強がりのようにも聞こえるかもしれないが、これは単なる強がりではなく、本気で自分に自信があるという気持ちの表れからくるものだということが、その力強い瞳や態度からひしひしと伝わってきた。
「セイナ、余裕そうなお前に一つ提案がある」
「なによ?提案って?」
俺の提案とやらに反応したセイナが、顔だけこちらに向けて上目遣いで俺を見てきた。こいつ、力はゴリラみたいに強いからあまり意識していなかったが、可憐な見た目で上目遣いという何気ないしぐさ。その凛々しい見た目でのかわいらしいしぐさのギャップに、俺は一瞬だけドキッとしてしまう。まあセイナからしたら、俺が身長178㎝でセイナが目測で155㎝位だから、身長差でほんとに無意識に上目遣いになっているだけなんだろうが…
「この作戦中にお前は一人も殺すな」
「はぁ!?何でよ?」
俺の提案にセイナは大声を上げた。まあ、普段から悪人を大量に始末している連中に殺すな、なんて提案すれば当然の反応ともいえる。
「妹や一般市民にあれだけのことされて、ただで返すわけないじゃない…全員皆殺しに決まってるわ」
セイナは顔だけでなく全身を俺の方に向けなおし、あまり無い胸を張りながら力強くそう言った。さっきの無意識にやっていた上目遣いと違って、キッとこちらを睨むその顔は、かわいらしさは微塵もなくなり、凛々しいものとなっていた。
「なんだよ、お前が五分もあれば楽勝っていうから提案したのに、まあ、できないって言うなら仕方ないか~訓練小隊だからそこまでの実力も……」
「ちょっと待ちなさい、誰ができないなんて言った?別にやろうと思えばそれくらいできるわよ!」
俺がしゃべっている最中にセイナが割りこんで抗議してくる。セイナと戦闘した時からかなりの負けず嫌いだとは思っていたが、こんなあからさまな煽りに反応するあたり相当なものだと窺える。
「口先だけなら誰でも言えるからな~」
「分かったわよ!全員生け捕りにすればいいんでしょ?やってやるわよ!」
俺のさらなる煽りに、セイナは目をひん剥かせながら早口でそう言った。チョロいなーコイツ…
そんな隊長を見て、部下であるロバート隊員も「ああ、隊長の悪い癖が……」と言いながら頭を抱えている。ジェームス隊員は神妙な面持ちで何か考えているようだった。
ともあれ、これでなんとかテロリストを皆殺しにされなくて済みそうだ。
俺がここまで生け捕りにこだわるのは、単に殺しが嫌いというのもあるが、一番の理由はおそらく今回の事件、まだ確定ではないが、雷神トールの神器と皇帝陛下失踪に深く関りがあるのではないかと俺は考えている。そうでなければテロリストたちの要求がセイナの身柄であるというのも理解できないし、そもそも出生を隠していた王女の情報を知っていたこともおかしい。テロリストを捕らえて犯行の理由や情報を聞き出す必要があると俺は思ったのだ。
(それにまだ、神器と皇帝陛下捜索をやると決めたわけではないしな…)
テロリストを生け捕りにして、多少なりと情報が入ればたぶん俺なんかではなく、SASの本隊員やM16辺りが神器と皇帝陛下を探してくれるだろう。そうなれば、わざわざ厄介ごとに巻き込まれる必要もなくなる…と俺が考えていると。
「俺はやっぱり、この作戦には反対だ」
静かに何かを考えていたジェームス隊員が急に口を開いた。唐突な作戦反対に俺を含めた三人がジェームス隊員の方を向く。
「確かに作戦自体は悪くないと思う。だが、俺はお前の実力とその能力を信用したわけではない。もしお前がしくじって隊長に何かあったらどうするつもりだ?」
隊長の命を部下の自分ではなく、どこの馬の骨とも知らないやつに任せるなんて到底できない。ジェームス隊員はそう言いたいらしい。
(なるほど、確かにもっともな意見だな)
ジェームス隊員の言葉に俺はどう言いくるめるか考えていると、俺のよりも先に横にいたセイナが口を開いた。
「ジェームス隊員、確かにあなたの言いたいことも分かります。でもアタシはこの作戦が一番効果的だと考ています。無理を言って申し訳ないですが、アタシのことと同じように彼を信用してください」
「信頼」こればっかりは幾ら理屈を並べてもなかなか納得させることはできない。本来であれば信頼とは時間をかけて構築していくもので、いきなりあって間もない人間に信用しろと言われてもできないのが当たり前だ。
訓練小隊とはいえ隊長を務めているセイナは、瞬時にこのことに気づいて俺よりも先に話しをしてくれたのだろう。流石は隊長、部下のことをよく分かってるな。
「ですが、隊長に何かあっては女王陛下に顔合わせできません……」
隊長であるセイナに説得されても折れないジェームス隊員、隊長の言葉で説得できないとなると納得させるのに時間がかかってしまう、そう思った俺は面倒になって
「じゃあもしこいつに何かあったら、腹でも首でも切ってやるよ。それでいいか?」
右手の親指だけを立ててでセイナを指しながら、やけくそ気味に言った。
「ちょっあんた本気!?」
突然の切腹発言に、驚いたセイナが俺の方に振り向く。ジェームス隊員は少し俯いて考えるようなしぐさをしてから顔を上げて俺の方に向き直り
「分かった、この作戦あんたを信頼してやってやる」
と言ってきた。どうやら、なんとか説得できたようだ。
「よしッ!じゃあ、全員配置に着け!作戦開始時刻は16:00に行う!」
「「「了解!」」」
「その願い、神に代わって、このフォルテ・S・エルフィーが貰い受けた!!」
俺はそう叫びながら、ケンブリッジ大学の礼拝堂の北側に唯一隣接している建物の屋上からジャンプし、ステンドグラスを破りながら建物に侵入した。
悪魔の紅い瞳を使って身体能力を5倍まで引き上げ、背中にセイナを背負って敵を見下ろす。
「3、5、9…敵は全部で9人だ!」
俺は15m眼下のテロリストと人質の位置や人数を把握し、背中のセイナと、付けているインカム越しに情報を流す。建物の真ん中に人質が集められていて、その周りをテロリストが四方二人ずつで守っていた。だがよく見ると、テロリストの包囲から外れた西側の位置に男女の人質二人と、それに銃を向けたテロリストがいた。人質の男は太腿から出血し、女はその男に覆いかぶさって守ってた。
(あれは……!?)
「セイナッッ!!」
倒れた男を庇っている女性がセイナの妹であるリリー王女だということが分かり、俺は素早くセイナに声をかけた。
「見れば分かるわよ!ッッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!
背中に神器グングニルと右手にDesert Eagleを装備したセイナが、俺の頭の横から右手を突き出し、倒れた人質の男とリリー王女を撃とうとしていたテロリストの銃と足を正確に撃ち抜いた。
「ぐああああ!!」
撃たれたテロリストは大声を上げながら、その場に倒れ込んだ。
セイナを背負った俺は、悪魔の紅い瞳を使用した状態で、ステンドガラスから入ってきた勢いをそのままに、逆側の壁に飛び移った。
「さーて、作戦開始だッ!セイナ、振り落とされんなよッ!」
「フォルテこそ、弾に当たるんじゃないわよッ!」
俺とセイナが互いに言い合った瞬間、下から残りのテロリスト八人が、こちらに向けて全自動で銃を撃ってくる。
ダダダダダッ!!
「ッッ!!」
俺が張り付いていた壁にテロリストが装備していたAK-47の7.62×39㎜弾が撃ち込まれ、背後のステンドグラスをバリバリと割っていく。
激しい銃声と人質の悲鳴が入り混じる中、セイナを背負ったまま俺は、悪魔の紅い瞳の能力で身体能力を5倍まで上げた状態を保ちつつ、反対側の壁にジャンプし、テロリストの攻撃を避ける。
「このッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!
セイナが俺に背負われた状態で、反対側の壁に移る前に、空中で敵に狙いを定めてDesert Eagleを撃つ。
「ぎゃああああ!!」
南側にいた二人のうちの一人がセイナに撃たれて悲鳴を上げた。テロリストの右手と左足、持っていた銃を、セイナが三発の銃弾で正確に撃ち抜いていたのだ。
この作戦は、平面に突入してしまうとテロリスト越しに人質を撃つ可能性が生じてしまう。そこで天井に注意を引き付け、射線上に人質がいない状況を作るために俺が考えたものだ。背中にセイナを背負った状態で隣の建物から突入し、俺が悪魔の紅い瞳で身体能力を上げた状態のまま、建物の壁を交互に移動することでテロリストの攻撃を避ける。また、俺が銃弾を避けている隙に背負われたセイナがテロリストを銃で無力化する役割となっている。言うなれば、セイナは「固定砲台」、俺はその「足」と二人一役という感じかな?
俺はまた壁に着地し、直ぐに足に力を込めて再び反対側の壁に向かってジャンプし、テロリストに的を絞らせない。
「リロードッ!」
着地した瞬間を狙い撃ちされないように、セイナが装弾数七発であるDesert Eagleのマガジンに入った残りの二発の弾でテロリストを牽制し、すぐさまリロードに入る。
「くらえッ!」
こちらがリロードに入った隙を見て、東側にいたテロリストが銃を撃とうとしているを俺が見つけたので、セイナが俺の前に落とした空になったDesert Eagleのマガジンを、空中で右足に力を込めて思いっきりそのテロリストに向かって蹴る。
カーンッ!どさッ!
銃を撃とうとしていたテロリストの頭に、強化状態の俺の蹴りにより飛んでいったマガジンが見事に直撃し、いい音を鳴らしながら失神してその場に倒れた。三人を無力化できたので残りは東西に一人ずつ、南北に二人ずつ、合計六人。
ここまでは順調に敵の数を減らすことができたが、流石にテロリストも馬鹿じゃない。ただ闇雲に銃を乱射するのではなく、こちらの動きを予想して着地の瞬間を狙おうとするものや、礼拝堂の長椅子を立て代わりにしてこちらの攻撃を躱すもの、人質を盾にしようとするものなど、行動パターンを変えてきたのだ。
「クッ!!やっぱりアタシの銃だけだと火力が足りないッ!」
セイナはリロードし終えた銃でテロリストに応戦しつつそう叫んだ。
敵の装備が装弾数30発のアサルトライフルAK-47に対して、こちらは50口径とはいえ装弾数7発のハンドガンDesert Eagleが一丁のみ、火力負けるするのは当然である。
さらに、本来であればこちらを狙ってくる敵を重点的に狙いたいが、人質がいるため、そちらに害を及ぼす敵を優先しなければならない。そんな状況では撃ち漏らした敵が出てくるのは必然だ。
「セイナッ!危ないッ!!」
人質を盾に使おうとしていたテロリストをセイナがDesert Eagleで牽制しているなか、別のテロリストが俺たちが壁に着地する瞬間を狙って、こっちに銃を撃ってきていた。
「ちぃッ!!」
バンッ!!バンッ!!バンッ!!
壁に飛び移った瞬間、俺はセイナを右腕一本で支えながら、左手で左足のレッグホルスターからハンドガンHK45を抜き、セーフティーを解除しながら三発の銃弾をテロリストに撃ち込む。
「ぐああああ!」
俺の放った銃弾は、一発目と三発目の銃弾がテロリストの両太腿を貫き、悲鳴を上げながら態勢を崩した。その状態のまま銃を撃ったテロリストの弾丸は、俺たちよりも遥か上空に逸れていき、なんとか被弾を免れる。
「ッッ!」
両腕から片腕でセイナを支えたことで安定感が無くなり、セイナが俺の背中に前のめりに倒れてきた。
俺の右肩にセイナの顔が乗っかってきて、右頬にその長いさらさらとした黄金色の金髪が当たってきた。髪からはほのかな水仙のような香りと、汗ばんだ身体から女性フェロモンのようないい香りがしてきて俺の鼻腔を刺激する。さらに前のめりに背中に倒れてきたことにより、セイナの平均よりも少し小さいその慎ましい胸が押し当てられる。
(ッツ!?)
小さくても柔らかさは十分に感じるその胸の感触に、俺は一瞬だが動きを止めてしまった。
俺も男だし、反応してしまうのは男の性としてこればかりはしょうがない。反応しない方が女性に対して失礼というか…
まあそれは置いといて、例え一瞬とはいえコンマ何秒、戦場で敵を前にして動きを止めるというのはそれは死に直結する。
「クッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!
セイナが俺の背中に勢いよく寄りかかりながらも、右手のDesert Eagleを二発、無理な態勢のまま撃つ。
「ぎゃあああ!!」
目視で確認できなかったが、どうやらこちらを狙っていたテロリストを一人無力化してくれたようだった。
これであと四人、俺は重力で壁から下に落ちる前に、再びセイナを背負い直して空中へ飛び出した。しかし、俺がセイナをカバーし、さらその際にできた隙をセイナにカバーしてもらったことで、その間に態勢を立て直した残りのテロリスト四人が空中の俺たちに向けて一斉に銃を構えた。
誰かの仕事のカバーをすれば、自分の仕事もおろそかになってしまい、そのしわ寄せはどんどん大きくなっていき、最終的にそれは自分自身をさらに苦しめる。流石に空中での逃げ場のない状況で四人の全自動によるAK-47の一斉射撃、計120発を捌ききることができない。
セイナを庇いながら俺が身を挺して何とか銃弾を捌くか?
それだと俺が被弾しすぎたらセイナを落としてしまう。AK-47の7.62×39㎜弾なんて防弾繊維の服を着ているとはいえ、服を貫通しないとは限らないし、貫通しなくてもその衝撃はとてつもないものであることは変わらない。
じゃあセイナと一緒にどうにか捌くか?
だめだ、俺とセイナで銃は一丁ずつ、村正改とグングニルは一応持ってはいるけど、俺は片手しか使えないし、セイナにいたっては両手でないと振るうことすらままならない。
(クソッ!何かないのか!?)
テロリストたちが引き金に指をかける。
万事休すか…そう思った瞬間、俺とセイナのインカムに一つの無線が入る。
『こちらB、準備できました。』
無線でBチームであるSASの訓練小隊の二人から連絡が入る。
「よしッ!!Do it!!」
バァン!!!バァン!!!
「GO!!GO!!GO!!GO!!」
巨大な爆発音とともにケンブリッジ大学の南北の壁に大きな穴が開く。
爆風の中を両サイドから声を上げながらSAS訓練小隊が率いる警察SWAT隊と、イギリス軍の混合チームが一斉に突撃し、側面攻撃を開始する。
「な、なんだ!?」
上空の俺たちに気を取られていたテロリストたちは何が起こったのか分からず、爆風の中、その場で足を止めてしまう。
さっきも言ったが、戦場で敵の前で足を止めてしまうのはそれは死に直結する。
七面鳥撃ちと化したテロリストたちは、爆風のなか突入してきたSASの混合部隊によって無力化させられる。
「クッ、クソッ!!」
四人中三人を制圧したところで、最後に残ったテロリストの一人が銃を捨て、東側の扉に走って逃げて行ってしまう。
「あいつッ!!」
俺の背中に乗っていたセイナが逃げたテロリストに気づいて右手の銃を撃とうとする。
「待て、撃つなセイナ」
俺は銃を撃とうとしていたセイナを静止しつつ、壁から地上に降りて悪魔の紅い瞳を解除する。
「ちょっとッ!!なんで見逃したの!?早くあいつを追わないと!!」
急に俺が動いたことによって狙いが定まらず、銃を撃つことができなかったセイナは、背中から飛び降りて大声で怒鳴ってきた。
「大丈夫、あの方面なら問題ないよ」
「あの方面なら?それってどういう…」
パンッ!!
俺の言葉に疑問を持ったセイナが聞き返そうとしたタイミングでインカム越しに一つの銃声が響く。
突然の銃声にセイナは驚きの表情をしながら、誰が誰を撃ったか分からず、音の真相を確かめるため耳のインカムに手を当てる。
「ターゲットダウン、申し訳ありません隊長、遅くなりました」
「アーノルド!来ていたの!?」
聞き覚えのある男の声にセイナが反応する。そう、彼はSAS訓練小隊の最後の一人であるアーノルド隊員だ。
女王陛下に警察と軍の協力を要請する際に、バックアップ要因として俺が東側にスナイパーとして彼の配置をお願いしていたのだが、急な要請にもかかわらず仕事を完璧にこなしてくれたようだ。
「うおおおお!!」
警察の中の誰かが大型の救出作戦の成功に歓喜の声を上げ、それにつられてイギリス軍や人質たちも声を上げた。長い緊張が解けてか人質の中にはその場に倒れる人や、泣き出してしまう人がいる中、セイナは辺りをかき分けながら妹のリリー王女のもとに駆け寄ろうとする。
「はぁ……はぁ……リリー……!」
姉であることを世間に隠しているセイナは、大声で妹の名を呼びたい気持ちをぐっと押し殺して、静かに駆け寄ろうとしていた。
俺は悪魔の紅い瞳によって消耗しきった身体で立っていることすら辛くなり、その場に倒れこんで感動の姉妹の再開を微笑みながら見ようとしていた。
「ッ!?」
俺は一つの違和感に気づいた。人質の中にいた警備員の格好をした一人の男性が、横になっていた身体を急に起こしてセイナの後ろを追いかける形で走り出したのだ。
テロリストは全て拘束して無力化しているしているという油断から、セイナを含めて誰一人その違和感に気づいていなかった。
「セイナぁぁ!!後ろ!!」
俺は消耗して立ち上がる事すら辛い身体を気力で無理矢理起こしながら、後ろから近づく男に気づいていないセイナに大声で呼びかけた。
「えっ?」
俺の声に気づいたセイナが、後ろを振り返る。するとセイナの背後に近づいてきた警備員の男性はセイナを横に突き飛ばし、座り込んでいたリリー王女を捕まえ、どこかに隠し持っていたハンドガンのグロック26とナイフを首に突きつけて大声で叫んだ。
「全員動くな!!」
俺の作戦を聞いたジェームス隊員がガスマスクの上からでも伝わる、驚きの反応でそう言った。
エリザベス3世と電話し終わった俺は、セイナと共に軍用車のランドローラーウルフに戻り、残りのSASの隊員二人と集まって計四人で最終的な作戦会議を開いていた。
「確かに作戦内容は常識では考えられないものだが、本当にこんなことできるのか?」
ジェームス隊員に続いてロバート隊員が口を開き俺に質問してくる。
「ああ、俺がさっき話した能力を使えば可能だ。ただし限度は最大で五分間だ」
俺は右手をパーにして、「五分」とジェスチャーしながらそう答えた。
それを聞いたセイナが────
「要は五分以内に全員を始末すればいいんでしょ?それだけあれば十分だわ」
「ふん」と鼻を鳴らしながら自信満々にそう答えた。セイナの発言は単なる強がりのようにも聞こえるかもしれないが、これは単なる強がりではなく、本気で自分に自信があるという気持ちの表れからくるものだということが、その力強い瞳や態度からひしひしと伝わってきた。
「セイナ、余裕そうなお前に一つ提案がある」
「なによ?提案って?」
俺の提案とやらに反応したセイナが、顔だけこちらに向けて上目遣いで俺を見てきた。こいつ、力はゴリラみたいに強いからあまり意識していなかったが、可憐な見た目で上目遣いという何気ないしぐさ。その凛々しい見た目でのかわいらしいしぐさのギャップに、俺は一瞬だけドキッとしてしまう。まあセイナからしたら、俺が身長178㎝でセイナが目測で155㎝位だから、身長差でほんとに無意識に上目遣いになっているだけなんだろうが…
「この作戦中にお前は一人も殺すな」
「はぁ!?何でよ?」
俺の提案にセイナは大声を上げた。まあ、普段から悪人を大量に始末している連中に殺すな、なんて提案すれば当然の反応ともいえる。
「妹や一般市民にあれだけのことされて、ただで返すわけないじゃない…全員皆殺しに決まってるわ」
セイナは顔だけでなく全身を俺の方に向けなおし、あまり無い胸を張りながら力強くそう言った。さっきの無意識にやっていた上目遣いと違って、キッとこちらを睨むその顔は、かわいらしさは微塵もなくなり、凛々しいものとなっていた。
「なんだよ、お前が五分もあれば楽勝っていうから提案したのに、まあ、できないって言うなら仕方ないか~訓練小隊だからそこまでの実力も……」
「ちょっと待ちなさい、誰ができないなんて言った?別にやろうと思えばそれくらいできるわよ!」
俺がしゃべっている最中にセイナが割りこんで抗議してくる。セイナと戦闘した時からかなりの負けず嫌いだとは思っていたが、こんなあからさまな煽りに反応するあたり相当なものだと窺える。
「口先だけなら誰でも言えるからな~」
「分かったわよ!全員生け捕りにすればいいんでしょ?やってやるわよ!」
俺のさらなる煽りに、セイナは目をひん剥かせながら早口でそう言った。チョロいなーコイツ…
そんな隊長を見て、部下であるロバート隊員も「ああ、隊長の悪い癖が……」と言いながら頭を抱えている。ジェームス隊員は神妙な面持ちで何か考えているようだった。
ともあれ、これでなんとかテロリストを皆殺しにされなくて済みそうだ。
俺がここまで生け捕りにこだわるのは、単に殺しが嫌いというのもあるが、一番の理由はおそらく今回の事件、まだ確定ではないが、雷神トールの神器と皇帝陛下失踪に深く関りがあるのではないかと俺は考えている。そうでなければテロリストたちの要求がセイナの身柄であるというのも理解できないし、そもそも出生を隠していた王女の情報を知っていたこともおかしい。テロリストを捕らえて犯行の理由や情報を聞き出す必要があると俺は思ったのだ。
(それにまだ、神器と皇帝陛下捜索をやると決めたわけではないしな…)
テロリストを生け捕りにして、多少なりと情報が入ればたぶん俺なんかではなく、SASの本隊員やM16辺りが神器と皇帝陛下を探してくれるだろう。そうなれば、わざわざ厄介ごとに巻き込まれる必要もなくなる…と俺が考えていると。
「俺はやっぱり、この作戦には反対だ」
静かに何かを考えていたジェームス隊員が急に口を開いた。唐突な作戦反対に俺を含めた三人がジェームス隊員の方を向く。
「確かに作戦自体は悪くないと思う。だが、俺はお前の実力とその能力を信用したわけではない。もしお前がしくじって隊長に何かあったらどうするつもりだ?」
隊長の命を部下の自分ではなく、どこの馬の骨とも知らないやつに任せるなんて到底できない。ジェームス隊員はそう言いたいらしい。
(なるほど、確かにもっともな意見だな)
ジェームス隊員の言葉に俺はどう言いくるめるか考えていると、俺のよりも先に横にいたセイナが口を開いた。
「ジェームス隊員、確かにあなたの言いたいことも分かります。でもアタシはこの作戦が一番効果的だと考ています。無理を言って申し訳ないですが、アタシのことと同じように彼を信用してください」
「信頼」こればっかりは幾ら理屈を並べてもなかなか納得させることはできない。本来であれば信頼とは時間をかけて構築していくもので、いきなりあって間もない人間に信用しろと言われてもできないのが当たり前だ。
訓練小隊とはいえ隊長を務めているセイナは、瞬時にこのことに気づいて俺よりも先に話しをしてくれたのだろう。流石は隊長、部下のことをよく分かってるな。
「ですが、隊長に何かあっては女王陛下に顔合わせできません……」
隊長であるセイナに説得されても折れないジェームス隊員、隊長の言葉で説得できないとなると納得させるのに時間がかかってしまう、そう思った俺は面倒になって
「じゃあもしこいつに何かあったら、腹でも首でも切ってやるよ。それでいいか?」
右手の親指だけを立ててでセイナを指しながら、やけくそ気味に言った。
「ちょっあんた本気!?」
突然の切腹発言に、驚いたセイナが俺の方に振り向く。ジェームス隊員は少し俯いて考えるようなしぐさをしてから顔を上げて俺の方に向き直り
「分かった、この作戦あんたを信頼してやってやる」
と言ってきた。どうやら、なんとか説得できたようだ。
「よしッ!じゃあ、全員配置に着け!作戦開始時刻は16:00に行う!」
「「「了解!」」」
「その願い、神に代わって、このフォルテ・S・エルフィーが貰い受けた!!」
俺はそう叫びながら、ケンブリッジ大学の礼拝堂の北側に唯一隣接している建物の屋上からジャンプし、ステンドグラスを破りながら建物に侵入した。
悪魔の紅い瞳を使って身体能力を5倍まで引き上げ、背中にセイナを背負って敵を見下ろす。
「3、5、9…敵は全部で9人だ!」
俺は15m眼下のテロリストと人質の位置や人数を把握し、背中のセイナと、付けているインカム越しに情報を流す。建物の真ん中に人質が集められていて、その周りをテロリストが四方二人ずつで守っていた。だがよく見ると、テロリストの包囲から外れた西側の位置に男女の人質二人と、それに銃を向けたテロリストがいた。人質の男は太腿から出血し、女はその男に覆いかぶさって守ってた。
(あれは……!?)
「セイナッッ!!」
倒れた男を庇っている女性がセイナの妹であるリリー王女だということが分かり、俺は素早くセイナに声をかけた。
「見れば分かるわよ!ッッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!
背中に神器グングニルと右手にDesert Eagleを装備したセイナが、俺の頭の横から右手を突き出し、倒れた人質の男とリリー王女を撃とうとしていたテロリストの銃と足を正確に撃ち抜いた。
「ぐああああ!!」
撃たれたテロリストは大声を上げながら、その場に倒れ込んだ。
セイナを背負った俺は、悪魔の紅い瞳を使用した状態で、ステンドガラスから入ってきた勢いをそのままに、逆側の壁に飛び移った。
「さーて、作戦開始だッ!セイナ、振り落とされんなよッ!」
「フォルテこそ、弾に当たるんじゃないわよッ!」
俺とセイナが互いに言い合った瞬間、下から残りのテロリスト八人が、こちらに向けて全自動で銃を撃ってくる。
ダダダダダッ!!
「ッッ!!」
俺が張り付いていた壁にテロリストが装備していたAK-47の7.62×39㎜弾が撃ち込まれ、背後のステンドグラスをバリバリと割っていく。
激しい銃声と人質の悲鳴が入り混じる中、セイナを背負ったまま俺は、悪魔の紅い瞳の能力で身体能力を5倍まで上げた状態を保ちつつ、反対側の壁にジャンプし、テロリストの攻撃を避ける。
「このッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!
セイナが俺に背負われた状態で、反対側の壁に移る前に、空中で敵に狙いを定めてDesert Eagleを撃つ。
「ぎゃああああ!!」
南側にいた二人のうちの一人がセイナに撃たれて悲鳴を上げた。テロリストの右手と左足、持っていた銃を、セイナが三発の銃弾で正確に撃ち抜いていたのだ。
この作戦は、平面に突入してしまうとテロリスト越しに人質を撃つ可能性が生じてしまう。そこで天井に注意を引き付け、射線上に人質がいない状況を作るために俺が考えたものだ。背中にセイナを背負った状態で隣の建物から突入し、俺が悪魔の紅い瞳で身体能力を上げた状態のまま、建物の壁を交互に移動することでテロリストの攻撃を避ける。また、俺が銃弾を避けている隙に背負われたセイナがテロリストを銃で無力化する役割となっている。言うなれば、セイナは「固定砲台」、俺はその「足」と二人一役という感じかな?
俺はまた壁に着地し、直ぐに足に力を込めて再び反対側の壁に向かってジャンプし、テロリストに的を絞らせない。
「リロードッ!」
着地した瞬間を狙い撃ちされないように、セイナが装弾数七発であるDesert Eagleのマガジンに入った残りの二発の弾でテロリストを牽制し、すぐさまリロードに入る。
「くらえッ!」
こちらがリロードに入った隙を見て、東側にいたテロリストが銃を撃とうとしているを俺が見つけたので、セイナが俺の前に落とした空になったDesert Eagleのマガジンを、空中で右足に力を込めて思いっきりそのテロリストに向かって蹴る。
カーンッ!どさッ!
銃を撃とうとしていたテロリストの頭に、強化状態の俺の蹴りにより飛んでいったマガジンが見事に直撃し、いい音を鳴らしながら失神してその場に倒れた。三人を無力化できたので残りは東西に一人ずつ、南北に二人ずつ、合計六人。
ここまでは順調に敵の数を減らすことができたが、流石にテロリストも馬鹿じゃない。ただ闇雲に銃を乱射するのではなく、こちらの動きを予想して着地の瞬間を狙おうとするものや、礼拝堂の長椅子を立て代わりにしてこちらの攻撃を躱すもの、人質を盾にしようとするものなど、行動パターンを変えてきたのだ。
「クッ!!やっぱりアタシの銃だけだと火力が足りないッ!」
セイナはリロードし終えた銃でテロリストに応戦しつつそう叫んだ。
敵の装備が装弾数30発のアサルトライフルAK-47に対して、こちらは50口径とはいえ装弾数7発のハンドガンDesert Eagleが一丁のみ、火力負けるするのは当然である。
さらに、本来であればこちらを狙ってくる敵を重点的に狙いたいが、人質がいるため、そちらに害を及ぼす敵を優先しなければならない。そんな状況では撃ち漏らした敵が出てくるのは必然だ。
「セイナッ!危ないッ!!」
人質を盾に使おうとしていたテロリストをセイナがDesert Eagleで牽制しているなか、別のテロリストが俺たちが壁に着地する瞬間を狙って、こっちに銃を撃ってきていた。
「ちぃッ!!」
バンッ!!バンッ!!バンッ!!
壁に飛び移った瞬間、俺はセイナを右腕一本で支えながら、左手で左足のレッグホルスターからハンドガンHK45を抜き、セーフティーを解除しながら三発の銃弾をテロリストに撃ち込む。
「ぐああああ!」
俺の放った銃弾は、一発目と三発目の銃弾がテロリストの両太腿を貫き、悲鳴を上げながら態勢を崩した。その状態のまま銃を撃ったテロリストの弾丸は、俺たちよりも遥か上空に逸れていき、なんとか被弾を免れる。
「ッッ!」
両腕から片腕でセイナを支えたことで安定感が無くなり、セイナが俺の背中に前のめりに倒れてきた。
俺の右肩にセイナの顔が乗っかってきて、右頬にその長いさらさらとした黄金色の金髪が当たってきた。髪からはほのかな水仙のような香りと、汗ばんだ身体から女性フェロモンのようないい香りがしてきて俺の鼻腔を刺激する。さらに前のめりに背中に倒れてきたことにより、セイナの平均よりも少し小さいその慎ましい胸が押し当てられる。
(ッツ!?)
小さくても柔らかさは十分に感じるその胸の感触に、俺は一瞬だが動きを止めてしまった。
俺も男だし、反応してしまうのは男の性としてこればかりはしょうがない。反応しない方が女性に対して失礼というか…
まあそれは置いといて、例え一瞬とはいえコンマ何秒、戦場で敵を前にして動きを止めるというのはそれは死に直結する。
「クッ!!」
ダンッ!!ダンッ!!
セイナが俺の背中に勢いよく寄りかかりながらも、右手のDesert Eagleを二発、無理な態勢のまま撃つ。
「ぎゃあああ!!」
目視で確認できなかったが、どうやらこちらを狙っていたテロリストを一人無力化してくれたようだった。
これであと四人、俺は重力で壁から下に落ちる前に、再びセイナを背負い直して空中へ飛び出した。しかし、俺がセイナをカバーし、さらその際にできた隙をセイナにカバーしてもらったことで、その間に態勢を立て直した残りのテロリスト四人が空中の俺たちに向けて一斉に銃を構えた。
誰かの仕事のカバーをすれば、自分の仕事もおろそかになってしまい、そのしわ寄せはどんどん大きくなっていき、最終的にそれは自分自身をさらに苦しめる。流石に空中での逃げ場のない状況で四人の全自動によるAK-47の一斉射撃、計120発を捌ききることができない。
セイナを庇いながら俺が身を挺して何とか銃弾を捌くか?
それだと俺が被弾しすぎたらセイナを落としてしまう。AK-47の7.62×39㎜弾なんて防弾繊維の服を着ているとはいえ、服を貫通しないとは限らないし、貫通しなくてもその衝撃はとてつもないものであることは変わらない。
じゃあセイナと一緒にどうにか捌くか?
だめだ、俺とセイナで銃は一丁ずつ、村正改とグングニルは一応持ってはいるけど、俺は片手しか使えないし、セイナにいたっては両手でないと振るうことすらままならない。
(クソッ!何かないのか!?)
テロリストたちが引き金に指をかける。
万事休すか…そう思った瞬間、俺とセイナのインカムに一つの無線が入る。
『こちらB、準備できました。』
無線でBチームであるSASの訓練小隊の二人から連絡が入る。
「よしッ!!Do it!!」
バァン!!!バァン!!!
「GO!!GO!!GO!!GO!!」
巨大な爆発音とともにケンブリッジ大学の南北の壁に大きな穴が開く。
爆風の中を両サイドから声を上げながらSAS訓練小隊が率いる警察SWAT隊と、イギリス軍の混合チームが一斉に突撃し、側面攻撃を開始する。
「な、なんだ!?」
上空の俺たちに気を取られていたテロリストたちは何が起こったのか分からず、爆風の中、その場で足を止めてしまう。
さっきも言ったが、戦場で敵の前で足を止めてしまうのはそれは死に直結する。
七面鳥撃ちと化したテロリストたちは、爆風のなか突入してきたSASの混合部隊によって無力化させられる。
「クッ、クソッ!!」
四人中三人を制圧したところで、最後に残ったテロリストの一人が銃を捨て、東側の扉に走って逃げて行ってしまう。
「あいつッ!!」
俺の背中に乗っていたセイナが逃げたテロリストに気づいて右手の銃を撃とうとする。
「待て、撃つなセイナ」
俺は銃を撃とうとしていたセイナを静止しつつ、壁から地上に降りて悪魔の紅い瞳を解除する。
「ちょっとッ!!なんで見逃したの!?早くあいつを追わないと!!」
急に俺が動いたことによって狙いが定まらず、銃を撃つことができなかったセイナは、背中から飛び降りて大声で怒鳴ってきた。
「大丈夫、あの方面なら問題ないよ」
「あの方面なら?それってどういう…」
パンッ!!
俺の言葉に疑問を持ったセイナが聞き返そうとしたタイミングでインカム越しに一つの銃声が響く。
突然の銃声にセイナは驚きの表情をしながら、誰が誰を撃ったか分からず、音の真相を確かめるため耳のインカムに手を当てる。
「ターゲットダウン、申し訳ありません隊長、遅くなりました」
「アーノルド!来ていたの!?」
聞き覚えのある男の声にセイナが反応する。そう、彼はSAS訓練小隊の最後の一人であるアーノルド隊員だ。
女王陛下に警察と軍の協力を要請する際に、バックアップ要因として俺が東側にスナイパーとして彼の配置をお願いしていたのだが、急な要請にもかかわらず仕事を完璧にこなしてくれたようだ。
「うおおおお!!」
警察の中の誰かが大型の救出作戦の成功に歓喜の声を上げ、それにつられてイギリス軍や人質たちも声を上げた。長い緊張が解けてか人質の中にはその場に倒れる人や、泣き出してしまう人がいる中、セイナは辺りをかき分けながら妹のリリー王女のもとに駆け寄ろうとする。
「はぁ……はぁ……リリー……!」
姉であることを世間に隠しているセイナは、大声で妹の名を呼びたい気持ちをぐっと押し殺して、静かに駆け寄ろうとしていた。
俺は悪魔の紅い瞳によって消耗しきった身体で立っていることすら辛くなり、その場に倒れこんで感動の姉妹の再開を微笑みながら見ようとしていた。
「ッ!?」
俺は一つの違和感に気づいた。人質の中にいた警備員の格好をした一人の男性が、横になっていた身体を急に起こしてセイナの後ろを追いかける形で走り出したのだ。
テロリストは全て拘束して無力化しているしているという油断から、セイナを含めて誰一人その違和感に気づいていなかった。
「セイナぁぁ!!後ろ!!」
俺は消耗して立ち上がる事すら辛い身体を気力で無理矢理起こしながら、後ろから近づく男に気づいていないセイナに大声で呼びかけた。
「えっ?」
俺の声に気づいたセイナが、後ろを振り返る。するとセイナの背後に近づいてきた警備員の男性はセイナを横に突き飛ばし、座り込んでいたリリー王女を捕まえ、どこかに隠し持っていたハンドガンのグロック26とナイフを首に突きつけて大声で叫んだ。
「全員動くな!!」
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