壁があるこの世界で……。

学園編

仕事 四

「ルイスは何を作っていたんでしょうか？」

　クヌーが下のベットに横になって寝そべっている。私はその上のベッドの上で先程止まった駅の水道で洗ったシャツを天井から吊るしうちわで扇いでいた。

「まぁ、分かれば苦労しないよ。それに我々の仕事はどっちかと言うと機械を見て分かるところとかを探るって事らしいし……。」

　列車の旅も五日目に入っている。

「と言うか、五十年もやっているのにまだ分からないことを我々に探れっていうのが無理な話なんだよ。」

　その時、突然窓を叩く音が聞こえた。窓を開けると、一人の少年が立っている。列車は駅のホームで停まっていた。

「やぁ、オジサン達。魚とパン買わない？」

「いくらだ？」

「パンが一つで千フォル、魚の干物が一匹で五百フォル。」

　その少年が抱えているバスケットにはとても千フォルの価値があると思えない、小ぶりなパンと、三百フォルでも高いと思う魚の干物が入っていた。

「そのパンに千フォル？ボッタクリにも限度が……。」

「やだな～。ボッタクリじゃないよ。少しだけ高いのは手数料と輸送費ってものが値段に入っているからだよ。」

　物は言いようだな。

　でも、オウル・エルノシアで買った、パンは今日の朝の分で食べ終わってしまった。

　もう食べ物はない。

　だが……。

「いいか、少年。こんな寝台列車には車内販売ってものがあってな、と思ったら来たな。」

　ドアのベルが鳴ったので上のベッドに乗ったまま扉を開ける。

　狭い廊下には制服を着たおばさんが立っていた。横にある手押し車には少年が持っていたようなパンと魚の干物が入っている。

「パンが千三百フォル、魚の干物が八百フォルです。」

「なんで、こっちの方が高いんだよ。」

「そりゃ、子供より大人の方が人件費がかかりますから手数料がかかりますし、輸送費もこの値段に入っていますので……。」

　私はすぐに上のベッドの窓から頭を出して、

「少年、パンを二つ、下のお兄さんが二千フォル出す。」

「オッケー。」

「ちょ、教授？なんで私が？」

「下のベッドに居る君のほうがお金を出しやすいだろ？まぁ、後でお金は払うから……。」

「いや、これがあるんで大丈夫です。お金を皿の中に入れてください。」

　見ると少年は先に皿が乗っていた長い棒を出し、高く持ち上げた。丁度、上の窓の位置に皿が来る。

「賢いな、君。」

　私は二千フォル、そこに置いた。