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学園編
入学式
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「また、帝都バニー・セントラルで黒仮面の盗賊が出たんだってさ。」
そう言ってギルデは今日のアントーニオ新報を机の上に投げた。
俺、ローゼンはその投げられた新報を拾い、目を通す。
第一面にはその盗賊のニュースがでかでかと載っている。
新聞によると、今回盗まれたのは金のネックレス、ダイヤの指輪、ルビーのブローチ等貴金属のアクセサリーらしい。
黒仮面の盗賊は25年も前から確認されていて、その盗まれた殆どのものが次の月には市場に出回っているのだから、換金目的で盗んでいると考えられている。確かに、金や宝石など装飾品となっていなくとも価値がある物は換金に向いているのかもしれない。しかし、どうしてそんな大量の金が必要なのか、どうして25年も盗みを行っているのにまだ金が必要なのか、といった部分はまだ不明である。
その時、部屋の扉が開きアムレットが入ってきた。
「ギルデとローゼン、おはよう。」
アムレットはあくびをしながら部屋に入り、椅子に座った。
「眠そうだな、お前。」
俺は悪態をつくようにそう訊いた。
「ところで今日、新入生の入学式だな。ちょっと覗いてみるか?」
ギルデの提案にのり、俺とギルデとアムレットは入学式が行われる講堂に向かった。
「にしてもこの学院講堂だけは綺麗だよな。他は50年前の物を未だに使っているのに……。」
講堂は隅々まで掃除が行き届いており、金属でできている聴衆用のベンチもピカピカである。
そしてそのピカピカのベンチにはまだまだ6歳位の子供がお行儀よく座っていた。
俺たちはその聴衆用のベンチよりも後ろにある立ち見席から中の様子を見ていた。
そして前の壇上に立つ帝国側の校長が話し始めた。
「50期生の皆様、グレンチェ学院の御入学おめでとう御座います。」
そう、ここはグレンチェ学院。
この学院は二つに大人四人分くらいの高さの壁をもって分かれている。
一つがフォルク帝国が運営する帝国側、もう一方が聖神教国が運営する教国側だ。
この壁はこの二国間の国境も担っており、壁はこの学院の外にも続いている。
この巨大な壁はこの大陸の端から端まで続いているのだから凄い。
そして今いるのはそのフォルク帝国側だ。そして、新入生諸君、君たちは今日から人質だ。
この学院は二国間のある種の抑制力である。詳しいことは長くなるし、よく覚えてないが、アントーニオ新報の記念号にまとまってた気がする。
この学院は一応形だけは学院のつもりである。だが実際はもう名前をグレンチェ孤児院にでもした方が実情にあっている気がするくらいかけ離れている。
まず第一にこの学院、卒業試験はおろか、定期試験、入学試験、体力試験その他諸々の試験がない。
第二に授業は最初の一年間のみという何ともインスタントで手軽なカリキュラムだ。
そして、この学院、生徒の9割9分9厘が孤児である。
と言うのも、少し考えてみれば分かるのだが、わざわざ愛しの息子、娘を敵国の射程圏内に送り出し、そこで6歳から18歳(言い忘れていたがこの学院は6歳から18歳まで通うめちゃくちゃ過保護な教育機関である。)という実に12年間も離れさせて生活させたいと考える親はいない。
と、ならばこの学院に入学してくるのは親がいない孤児になってくるのは何も不思議ではない。
そして、学院的にはその12年間をこの学院で過ごしてくれれば、問題ないので生徒の質なんて考えていない。
だから、こんなあまりにもおかしな学院が出来たのである。
因みにアントーニオ新報によると、あのルイス・ミラデナスが開発したピルが大衆に普及し、子供を産むか産まないかの選択が出来るようになったので、そもそも孤児が少なってきている。まぁ、不幸な子供がいないことは良いことだ。
その為、学院にとっては何とかフォックス・ワイルド条約を守らないといけないので、卒業生の子供をこの学院に入れるよう呼びかけているらしいが、なかなか一厘が二厘にならないそうだ。
そして、その一厘は今、俺の隣りにいる。その名もギルデ。このギルデは何と今の皇帝の血を引く者なのである。まぁ、エラ皇帝の娘の四男の六男と妾との子供という立ち位置で皇位継承権があと少しで300番の大台にのるらしい。ていうか300人もいるんだ。皇族。
そんな感じの学院ではあるがパンとピクルスのみというもはや清貧の範疇ではないが、食事がでる。広さはベッドしか置けない位だが、各個人の個室がある。一応勉強の意識があれば教授の下で勉強が出来る。というものでこの待遇を悪く言う者はいない。俺はむしろ勉強が出来るので感謝していた。
ただ、ここにいる教授は基本なにかやらかして来た人が多いって事は考えものである。
そんな考え事をしているといつの間にか入学式は終わっていた。
俺たち三人は元いた研究室に帰っていった。
そう言ってギルデは今日のアントーニオ新報を机の上に投げた。
俺、ローゼンはその投げられた新報を拾い、目を通す。
第一面にはその盗賊のニュースがでかでかと載っている。
新聞によると、今回盗まれたのは金のネックレス、ダイヤの指輪、ルビーのブローチ等貴金属のアクセサリーらしい。
黒仮面の盗賊は25年も前から確認されていて、その盗まれた殆どのものが次の月には市場に出回っているのだから、換金目的で盗んでいると考えられている。確かに、金や宝石など装飾品となっていなくとも価値がある物は換金に向いているのかもしれない。しかし、どうしてそんな大量の金が必要なのか、どうして25年も盗みを行っているのにまだ金が必要なのか、といった部分はまだ不明である。
その時、部屋の扉が開きアムレットが入ってきた。
「ギルデとローゼン、おはよう。」
アムレットはあくびをしながら部屋に入り、椅子に座った。
「眠そうだな、お前。」
俺は悪態をつくようにそう訊いた。
「ところで今日、新入生の入学式だな。ちょっと覗いてみるか?」
ギルデの提案にのり、俺とギルデとアムレットは入学式が行われる講堂に向かった。
「にしてもこの学院講堂だけは綺麗だよな。他は50年前の物を未だに使っているのに……。」
講堂は隅々まで掃除が行き届いており、金属でできている聴衆用のベンチもピカピカである。
そしてそのピカピカのベンチにはまだまだ6歳位の子供がお行儀よく座っていた。
俺たちはその聴衆用のベンチよりも後ろにある立ち見席から中の様子を見ていた。
そして前の壇上に立つ帝国側の校長が話し始めた。
「50期生の皆様、グレンチェ学院の御入学おめでとう御座います。」
そう、ここはグレンチェ学院。
この学院は二つに大人四人分くらいの高さの壁をもって分かれている。
一つがフォルク帝国が運営する帝国側、もう一方が聖神教国が運営する教国側だ。
この壁はこの二国間の国境も担っており、壁はこの学院の外にも続いている。
この巨大な壁はこの大陸の端から端まで続いているのだから凄い。
そして今いるのはそのフォルク帝国側だ。そして、新入生諸君、君たちは今日から人質だ。
この学院は二国間のある種の抑制力である。詳しいことは長くなるし、よく覚えてないが、アントーニオ新報の記念号にまとまってた気がする。
この学院は一応形だけは学院のつもりである。だが実際はもう名前をグレンチェ孤児院にでもした方が実情にあっている気がするくらいかけ離れている。
まず第一にこの学院、卒業試験はおろか、定期試験、入学試験、体力試験その他諸々の試験がない。
第二に授業は最初の一年間のみという何ともインスタントで手軽なカリキュラムだ。
そして、この学院、生徒の9割9分9厘が孤児である。
と言うのも、少し考えてみれば分かるのだが、わざわざ愛しの息子、娘を敵国の射程圏内に送り出し、そこで6歳から18歳(言い忘れていたがこの学院は6歳から18歳まで通うめちゃくちゃ過保護な教育機関である。)という実に12年間も離れさせて生活させたいと考える親はいない。
と、ならばこの学院に入学してくるのは親がいない孤児になってくるのは何も不思議ではない。
そして、学院的にはその12年間をこの学院で過ごしてくれれば、問題ないので生徒の質なんて考えていない。
だから、こんなあまりにもおかしな学院が出来たのである。
因みにアントーニオ新報によると、あのルイス・ミラデナスが開発したピルが大衆に普及し、子供を産むか産まないかの選択が出来るようになったので、そもそも孤児が少なってきている。まぁ、不幸な子供がいないことは良いことだ。
その為、学院にとっては何とかフォックス・ワイルド条約を守らないといけないので、卒業生の子供をこの学院に入れるよう呼びかけているらしいが、なかなか一厘が二厘にならないそうだ。
そして、その一厘は今、俺の隣りにいる。その名もギルデ。このギルデは何と今の皇帝の血を引く者なのである。まぁ、エラ皇帝の娘の四男の六男と妾との子供という立ち位置で皇位継承権があと少しで300番の大台にのるらしい。ていうか300人もいるんだ。皇族。
そんな感じの学院ではあるがパンとピクルスのみというもはや清貧の範疇ではないが、食事がでる。広さはベッドしか置けない位だが、各個人の個室がある。一応勉強の意識があれば教授の下で勉強が出来る。というものでこの待遇を悪く言う者はいない。俺はむしろ勉強が出来るので感謝していた。
ただ、ここにいる教授は基本なにかやらかして来た人が多いって事は考えものである。
そんな考え事をしているといつの間にか入学式は終わっていた。
俺たち三人は元いた研究室に帰っていった。
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